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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 保健所におけるHIV抗体検査の実施について

[場所] 
[年月日] 1991年2月4日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成三年二月四日)

(健政計発第九号・健医感発第九号)

(各都道府県・各政令市・各特別区・衛生主管部(局)長あて厚生省健康政策局計画課長・保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長連名通知)

 標記については、種々ご高配を煩わせていたところであるが、今般、各都道府県・指定都市の保健所におけるHIV抗体検査(以下「検査」という。)の実施状況等について調査したところ、プライバシー保護の観点から必ずしも十分ではない状況がみられるため、次の事項に留意の上保健所における匿名による検査の実施について遺漏なきようお願いする。

   記

1 実施体制の整備

 (1) すべての保健所において、「エイズ対策の推進について」(昭和六二年三月一四日付健政計発第一三号・健医感発第二〇号厚生省健康政策局計画課長・同保健医療局結核難病感染症課感染症対策室長連名通知)に基づき一般相談窓口においてエイズに関する相談を行うとともに検査のための採血を行う。検査はスクリーニング検査及び必要に応じ行う確認検査とする。また、関係医療機関との連携を強化し、適切な事後指導が行われるよう体制を整える。

 (2) 各都道府県・政令市・特別区においては、検査の実施について、以下の事項を参考として指針又は基準を作成し、当該事業の実施に当たり管下保健所の統一を図るとともに、常に当該事業の実施状況を把握する。

2 検査受付

 (1) 電話等による検査申込みも受け付ける。

 (2) 受付時に匿名検査について説明する。

 なお、匿名検査とは、本名に限らず仮名を名乗る必要もなく、番号又は記号等でよいものとする。

 (3) 受付を行った際、即時に検査できない場合は、検査日時及び場所を指定し、受付番号を登録する。

 (4) 受付窓口においては、HIV抗体検査であると特定するような表示は避ける。

 (5) 電話等により事前に受付を行った場合には、窓口で受け付ける職員が、既に登録した受付番号等によりあらかじめ来所者の来所目的を確認し、改めてHIVのための検査であることの再確認を行わないようにする。

 (6) 窓口で受付を行った職員が、検査受診者のプライバシーの保てる場所に案内した上、直接担当職員に取り次ぐ。

 (7) 検査申込書には氏名、生年月日、連絡先等本人が特定される事項は含めないものとする。

 (8) 受付時及び検査のための採血の際には、問診等は行わない。

 (9) 検査結果については、本人に直接告知するものとし、本人には再度来所することにつき了解を得る。この際、検査申込書の控に当該告知予定日時その他本人であることを確認するのに必要な事項を記載する。

3 採血及び検体

 (1) 採血に当たっては、針刺し等の事故がないよう十分注意し、万一事故が発生した場合には、「HIV医療機関内感染予防対策指針」に基づき適切に対応する。

 (2) 検体容器には、検体番号のみを表示し、氏名及び「エイズ」、「HIV」等の文字の表示は行わず、HIV抗体検査であることを明示するため、ラベルに記号、色等の標識を付す。

4 検査結果の告知

 (1) 検査結果の告知は、医師が行う。

 (2) 検査結果の告知は、告知予定日時に来所した者に対し、検査申込書の控により本人であることを確認した上で行う。なお、電話による告知は行わない。

 (3) 告知は個室などプライバシーが十分保てる場所において行うよう配慮する。

 (4) 抗体陽性者に対しては、医療機関での精密検査が必要であることを説明し、あらかじめ連携を取っている医療機関を紹介する。

 (5) 検査結果に関する相談については希望者に対してのみ応じ、特に希望のない場合は必要最小限の保健指導にとどめる。

5 その他

 (1) エイズ予防に携わるすべての職員は、エイズに関する正しい知識を持ち、かつ個人のプライバシー等人権の保護を重視して業務に従事するものとする。

 (2) 住民が採血を受ける機会を可能な限り多く設ける。また、検査料、検査場所及び検査の申し込み方法等具体的な情報を常に広報するよう努めるものとする。