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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づくサルの輸入検疫について

[場所] 
[年月日] 1999年12月1日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成11年12月1日)

(衛乳第228号)

(農林水産省畜産局衛生課長あて厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知)

 貴省におかれましては、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「法」という。)に基づき、サルのエボラ出血熱及びマールブルグ病について、平成12年1月1日より輸入検疫に係る検査を実施するために準備方進められていることと思います。

 このようななか、先般、「感染症予防にかかる動物対策検討会」(座長:東京大学大学院農学生命科学研究科吉川泰弘教授)において、「法第54条に基づくサルの輸入禁止地域の指定について」(別添1)が報告され、その際にサルの赤痢及び結核等についても、動物由来感染症の予防対策の観点から、関係機関の協力を得て適切に対応することとされたところであります。

 このため、貴省におかれましても、輸入検疫の係る検査においてサルが赤痢又は結核等の動物由来感染症にかかっている等を確認した際は、その旨を検疫施設の所在地を管轄する保健所に連絡するとともに、輸入業者等に対しても「輸入動物特にサルによる人に健康被害の防止について」(昭和49年衛情第10号厚生省公衆衛生局保健情報課長通知)(別添2)の周知等について協力方よろしくお願いします。

(別添1)

法第54条に基づくサルの輸入禁止地域の指定について<報告>

平成11年10月 感染症予防に係る動物対策検討会

1.はじめに

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)に基づき、感染症の病原体を媒介するおそれのある動物のうち政令で定めた動物種の輸入に関する措置をとることとなった。

 具体的には、法第54条に基づき、エボラ出血熱及びマールブルグ病の発生状況その他の事情を考慮して、特定の地域から発送されたサルの輸入を禁止し、当該地域以外から輸入されるサルについても、輸出国における検査の結果、エボラ出血熱及びマールブルグ病にかかっていない又はその疑いがない旨等を記載した輸出国政府機関が発行した証明書又はその写しを添付することが義務づけられた。

 本検討会では、法第54条に基づくサルの輸入禁止地域の指定の基本的な考え方及び現時点において収集された情報に基づく輸入禁止地域の検討等を行った。

 なお、本検討会においては、新感染症、指定感染症等に係る事項等動物由来感染症にかかる事項を検討する必要が生じた際には随時検討を行うこととしたい。

2.法第54条に基づくサルの輸入禁止地域の指定の基本的考え方

 (1) 定義

  ア サル

  エボラ出血熱及びマールブルグ病について、霊長類における感受性の種差が明らかとなっていないため、当面、原猿亜目(prosimian)、真猿亜目(monkey)及び類人猿(ape)

  イ エボラ出血熱

  エボラウイルス(フィロウイルス科)によるヒト又はサルの熱性疾患をいう。

  ウ マールブルグ病

  マールブルグウイルス(フィロウイルス科)によるヒト又はサルの熱性疾患をいう。

  エ 地域

  アジア、アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、オセアニア、中近東をいう。

  オ サルの自然生息地域

  現在、サルが生息する赤道をはさんだ北回帰線と南回帰線の間のいわゆる熱帯・亜熱帯を含む地域をいう。

 (2) 輸入禁止地域の要件

  ア サルの自然生息地域の場合

   (ア) 次のいずれかに該当する地域は輸入禁止とする。

    ① ヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ病が発生したことをWHO又は当該国政府が報告した国又はそのサルの原産国を含む地域

    ② ヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ病の発生情報が不明と判断される国を含む地域

   (イ) 上記(ア)に関わらず、次に該当する国については輸入禁止地域から除外する。

    ① (ア)の①に該当する地域のうち、その報告がヒトへの病原性が明らかでないウイルス株(例:エボラウイルスレストン株)によるサルのエボラ出血熱の発生のみであって、かつ、次に掲げるサーベイランス等の制度及び実施体制が全て整備されている国

    ・ヒトの感染症に関するサーベイランス

    ・野生サルの監視

    ・サルの輸出入検疫

    ② (ア)の②に該当する地域のうち、上記①に掲げる制度及び実施体制がすべて整備されている国

  イ サルの自然生息地域以外の地域の場合

   サルの輸出入検疫の制度及び実施体制が整備されている国は輸入禁止地域から除外する。

  ウ その他

   上記ア及びイに関わらず、次に該当する国又はこれを含む地域については個別に輸入禁止措置をとることを検討する。

   (ア) ヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ病が発生した国

   (イ) エボラ出血熱又はマールブルグ病が発生したサルを輸出した国

   (ウ) 隣国においてヒト又はサルのエボラ出血熱又はマールブルグ病が発生した国

   (エ) 我が国に対して必要な情報が提供されない国

   (オ) その他エボラ出血熱又はマールブルグ病にかかっているサルを輸出するおそれのある国

3.法第54条第1号に規定された省令で定める地域(輸入禁止地域)

 過去6年間に我が国にサルの輸入した実績があり今後も輸入を継続して行う予定がある旨の回答があった国で、次に掲げる国を除く全地域

 (1) 2の(2)のア(イ)①に属する国

  ・中華人民共和国

  ・フィリピン共和国

 (2) 2の(2)のア(イ)②に属する国

  ・ガイアナ協同共和国

  ・スリナム共和国

 (3) 2の(2)のイに属する国

  ・アメリカ合衆国(調整中)

4.その他

 現在、輸入されるサルに係る感染症対策に関しては、「輸入動物特にサルによるヒトの健康被害の防止について」(昭和49年5月9日衛情第10号、厚生省公衆衛生局保健情報課長から各都道府県等の衛生主管部局長あて通知)により赤痢の予防対策について、「サル類の輸入について」(平成10年7月17日衛乳第181号、厚生省生活衛生局乳肉衛生課長から(社)全日本航空事業連合会会長等あて通知)により輸送中のサル類からの感染防止対策について、行政指導により対応しているところであるが、動物由来感染症の予防としてサルへの対策が重要な赤痢、結核等については、引き続き本措置を継続するとともに、より一層の指導を行うことが必要であるから、今後の対策について、関係機関の協力を得て適切に対応するべきである。

感染症予防に係る動物対策検討会構成員名簿

氏名   所属及び役職

内田幸憲   神戸検疫所長

倉田毅   国立感染症研究所副所長

竹田美文   国立感染症研究所所長

松山茂   (社)日本獣医師会専務理事

山田章雄   国立感染症研究所霊長類センター長

山内一也   (財)日本生物科学研究所主任研究員

吉川泰弘   東京大学大学院農学生命科学研究科教授

氏名は五十音順とする。


/厚生省/農林水産省/令第二号

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第54条第一号及び第55条第1項に基づき、並びに同法を実施しするため、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第54条第一号の輸入禁止地域等を定める省令を次のように定める。

平成11年12月1日

厚生大臣 丹羽 雄哉

農林水産大臣 玉沢徳一郎


感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第54条第一号の輸入禁止地域等を定める省令

(輸入禁止地域)

第1条 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「法」という。)第54条第一号の厚生省令、農林水産省令で定める地域は、次の表の上欄に掲げる指定動物につき、相当下欄に掲げる地域以外の地域とする。

指定動物    地域

サル  1 アメリカ合衆国

    2 中華人民共和国、フィリピン共和国、ガイアナ協同共和国、スリナム共和国

(禁止動物の輸入許可の手続)

第2条 法第54条各号に掲げる動物(以下この条において「禁止動物」という。)の輸入につき同条ただし書の許可を受けようとする者は、厚生大臣及び農林水産大臣に別記様式第一号による申請書を提出しなければならない。

2 厚生大臣及び農林水産大臣は、前項の許可をしたときは、当該申請者に対し、別記様式第二号による輸入許可証明書を禁止動物一頭当たり一通ずつ交付する。

3 前項の輸入許可証明書の交付を受けた者は、これを発送人に送付し、当該禁止動物とともに、発送させなければならない。

(証明書に記載すべき事項)

第3条 法第55条第1項の厚生省令、農林水産省令で定める事項は、次のとおりとする。

 一 荷受人及び荷送人の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

 二 輸入しようとする指定動物の種類、性、年齢及び生産地又は捕獲地

 三 輸入しようとする指定動物の搭載予定地、搭載予定年月日及び搭載予定船舶名又は搭載予定航空機名

 四 その他参考となるべき事項

附則

この省令は平成12年1月1日から施行する。

{別記は省略}