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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウエストナイル熱の流行予測のための死亡カラス情報の収集等について(保健所などへの住民等からの通報の取扱いについて)

[場所] 
[年月日] 2002年12月13日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成14年12月13日)

(健感発第1213001号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)

 ウエストナイル熱については、トリと蚊の間で感染環が成立しており、大型で人に近い環境で生息しているカラス等も本病に感染し死亡することから、その生態を観察することが、疾病の侵入監視と流行予測に有効であるとされています。

 そこで、貴部局にあっては、地域の住民等から保健所などに寄せられるカラスの死亡情報について、下記のモニタリングを開始し、早期の異常発見に準備されるよう御願い致します。

 なお、都道府県の警察にも、カラスの死亡情報がウエストナイル熱の監視に有用であることを、別添のとおり周知していることを申し添えます。

 また、厚生労働省では、カラスの生息の多い公園等における死亡カラスのスポット的なサーベイランスについて、今後、各自治体あてに実施依頼を予定していますので、併せて申し添えます。


   記

1 情報収集の目的

 地域において、住民から通報されるカラスの死亡例の情報を収集し、ウエストナイル熱の侵入の早期発見に資すること。

2 モニタリングの方法

 (1) 住民等からカラスの死亡に関する通報情報を収集し、まずは、地域におけるカラスの死亡の保健所等への通報実態(通常時の死亡情報数)の把握に努める。

 (2) 通報される死亡数に基づき、地域における死亡数の経時的な増加傾向の有無を観察し、疫学的にウエストナイル熱が疑われる兆候の早期発見に努める。

 (3) 万が一、死亡数に通常時とは異なる増加傾向が認められ、かつ疫学的にウエストナイル熱の発生が疑われる場合には、新鮮な検体の採取に努め、発生状況等に応じて、適宜、厚生労働省結核感染症課、国立感染症研究所に連絡の上、必要な対応を行う。

 (4) 採取した検体については、地方衛生研究所にてウエストナイルウイルスの検査(PCR)を実施する。

3 参考(ウエストナイル熱によるカラスの死亡について)

 (1) 米国では、ウエストナイル熱の流行によるカラスの死亡は、人の流行に先立ち(2~3ヶ月)始まっていたことが報告されている(別紙1)。

 (2) 同じく、ウエストナイル熱の流行によるカラスの死亡については、通常1羽で見られることが多く(約90%)、複数羽で発見される場合にあっても平均2.8羽とのことである(別紙2:P240参照)。すなわち、一時期に、一ヶ所で、多数のカラスが死亡する場合にあっては、他の毒殺等の原因の究明も必要である。

 (3) また、カラスのウエストナイル熱の検査については、死後24時間以内の新鮮な死体が必要となり、それ以上の時間を経過した死体では、腐敗、ウジの発生、その後の乾燥などから十分な検査が不可能である。

 (4) なお、ウエストナイル熱の人への伝播は、ウイルスを保有するトリを吸血した蚊が人を吸血して成立することから、死亡したカラスに誤って触れても、人がウイルスに感染することはない。

{別紙とグラフは省略}