[文書名] ハノイ・香港等における原因不明の重症急性呼吸器症候群の集団発生に伴う対応について
(平成15年3月16日)
(健感発第0316001号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
標記については、「ハノイ・香港等における病院内での原因不明の重症呼吸器疾患の集団発生に関するWHOの緊急情報について」(平成15年3月12日健感発第0312002号)にて、貴管内の医療機関等の関係機関への周知及び疑われる事例等の報告を依頼し、また「ハノイ・香港等における原因不明の重症呼吸器疾患の集団発生に伴う国内における対応について」(平成15年3月14日健感発第0314002号)にて、報告基準を通知していたところです。
今般、WHOが報告基準を改正しましたので、先に通知しました報告基準を別紙のとおり改正しますので御了知ください。
また、重症急性呼吸器症候群患者の処置については、原則、個室管理とし、標準予防策に加え、空気感染や接触感染の防止に留意するよう貴管内の医療機関、医師会等の関係機関への周知方お願いします。
なお、今後、治療法等に関する新たな情報が入り次第、適宜情報提供等を行うので、適切な対応をお願いします。
(別紙)
原因不明の重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome;SARS)の報告基準(改正版)
平成15年3月16日
現在WHOは原因不明の重症急性呼吸器症候群の集団発生を調査中である。
平成15年2月26日、ベトナムのハノイで入院した肺炎患者が急激に呼吸不全を併発して死亡した。患者は中国本土と香港を旅行した直後に発病した。また患者に4―7日間医療行為を施したこの病院のスタッフも発病した。初発症状はいずれも高熱と筋肉痛であり、発病した病院スタッフには、2―5日後に咳、咽頭痛、息切れ、呼吸困難感など様々な呼吸器症状が見られ、その後肺炎を併発し、重症例は成人呼吸窮迫症候群に陥った。胸部レントゲン写真上は、片側、または両側性の陰影が認められ、間質浸潤は認められることもないこともある。発病3―4日後の検査では7万/μL以下の血小板減少、4000/μL以下の白血球減少がみられた。
香港でも中国本土に旅行後、急性呼吸不全を合併した患者が3月7日入院した。この病院でも治療に当たった複数の病院スタッフが発病し、ベトナムと同じ症状を呈しており、現在も発病するスタッフがいるとされる。
原因不明の重症急性呼吸器症候群の症例定義
○疑い例
2003年2月1日以降に以下の全ての症状を示して受診した患者で
・38度以上の急な発熱
・咳、息切れ、呼吸困難感などの呼吸器症状
かつ、以下のいずれかを満たす者
・原因不明の重症急性呼吸器症候群の発生が報告されている地域(*)へ旅行した者
・原因不明の重症急性呼吸器症候群の症例を看護・介護するか、同居しているか、近距離で接触するか、患者の気道分泌物、体液に触れた者
(*)WHOが3月15日現在、報告されていると示した地域は、インドネシア、カナダ、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ベトナム、香港である。
○可能性例
疑い例であって、
・胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者
または
・原因不明の呼吸器疾患で死亡し、剖検により呼吸窮迫症候群の病理学的所見を示した者
(備考) 重症急性呼吸器症候群は、発熱、呼吸器症状に加え、頭痛、筋硬直、食欲不振、倦怠感、意識混濁、発疹、下痢等の症状を伴なう。