[文書名] 米国における人でのサル痘(Monkeypox)の発生について(第2報)(感染源動物の特定と疑いのある動物の我が国への輸入)
(平成15年7月3日)
(健感発第0703001号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
米国でのプレーリードッグを介したサル痘の流行については、「米国における人でのサル痘(Monkeypox)の発生について(平成15年6月10日付け健感発第061002号)」で通知したところです。
今般、米国CDCは、ペット用のプレーリードッグにサル痘ウイルスを媒介した動物が、4月9日にガーナから米国に輸入されたアフリカ産げっ歯類(ガンビアネズミ及び数種類のリス、ヤマネ等)であったと公表しましたので情報提供致します(別添1:7月2日付けCDC公表)。
これに関連し、本日WHOより、4月9日にガーナから輸入されたアフリカ産げっ歯類の一部が、5月8日に米国から日本に再輸出された旨の、米国CDC情報の提供がありました。
これを踏まえ、我が国においても、下記の情報提供を行うと共に、輸入動物の追跡調査等の必要な対応を行っているので、御了知の上、関係者への周知等、よろしく対応方お願いします。
なお、本通知については、財務省、農林水産省、環境省の他、日本医師会、日本獣医師会、全日本動物輸入業者協議会等にも通知したことを申し添えます。
記
1 米国CDCからの情報概要
(1) 4月9日、米国テキサス州の動物取扱業者によりガーナから輸入され、米国でのサル痘流行の感染源となったアフリカ産げっ歯類の一部が、他に輸入されたアフリカ産げっ歯類とともに、5月8日、米国の同者から日本の輸入者1社あてに再輸出された。
(2) 日本に再輸出されたげっ歯類は、アフリカヤマネ17匹。
2 日本に輸入されたアフリカヤマネの流通実態(別添2:聞き取り調査結果)
(1) 17匹のうち、8匹は輸入者施設に到着時に既に死亡(共食い等による)。残り9匹はペット販売店2社(4匹:東京都A社、5匹:横浜市B社)に出荷。
(2)
① A社が入荷した4匹中、3匹は死亡(温度管理不備)。残り1匹は販売された後に死亡(購入者が後日来店し、1週間ほど前に動物が死亡したことを告げ、別種のリスを購入)
② B社が入荷した5匹中、3匹は死亡(共食い)。残り2匹は生存し在庫中。
3 今後の対応について
(1) 関係自治体に依頼し、輸入者及びペット販売店に立ち入り調査を行い、聞き取り調査結果の確認等を実施。
(2) 在庫中の2匹について、国立感染症研究所でサル痘の検査を実施し、感染の有無を確認。
(3) 動物輸入団体等に対し、引き続き中央及び西アフリカを原産地とするげっ歯類の輸入について、輸入を自粛するよう強く要請。
※同旨の通知は財務省関税局業務課長、財務省関税局監視課長、農林水産省消費・安全局衛生管理課長、環境省自然環境局総務課長、社団法人日本医師会感染症危機管理対策室長、社団法人日本獣医師会会長、社団法人日本動物園水族館協会会長、全日本動物輸入業者会会長、全国ペット小売業協会にも発出された。
(参考)
アフリカヤマネ(学名:Graphiurus spp.、英名:African Dormice)
胴長:約6cm、体重:約18~30g
(別添1)
[CDC報道公表(仮訳)]
2003年7月2日 CDC広報部
齧歯類におけるサル痘の確認
汚染拡散阻止を目的とした暫定的勧告
CDCはこれまで、サバンナオニネズミ1頭、ヤマネ3頭、キリス属2頭がサル痘ウイルスを保有していることを確認した。これらの動物は本年4月9日に輸入されたアフリカ産齧歯類の一部であった。この輸入便は最近合衆国内で発生したサル痘の原因と考えられている。
このためCDCは該当する便の全ての動物に対して検疫と安楽死処分を行うようにガイドラインを発表し、これらの動物と接触したアメリカ産のプレーリードッグやそのほかのサル痘の恐れのある動物についても同様の措置をとるように勧告した。これらの勧告はサル痘ウイルスが人およびそのほかの動物に拡がるのを防ぐことを目的としている。
CDCの「Global migration and quarantine programs:広域流通検疫プログラム」の部長代理Dr.Martin Cetronは「この措置の目的は合衆国内の市民、ペット、および野生動物にサル痘ウイルスが拡がったり、国内にウイルスが定着するのを防ぐことにある。」と語っている。
CDCはほかの連邦政府機関、州および郡等の衛生部とともに81名のサル痘疑似患者および可能性例について調査を行っている。このうち32名は実験室検査によって感染が確認されている。
今回のサル痘の流行に対する緊急対策の一環として、すでにCDCは4月9日にガーナを出荷された動物および、そのほかのサル痘感染動物と接触した動物に関しては、飼育している販売店または家庭内での留め置き検疫や留置を行うように勧告を行っている。今回のガイドラインではこれらの動物に対する安楽死処分を求めるものである。同一施設内で飼育しているほかの動物についても全て上記アフリカ産の齧歯類およびプレーリードッグの殺処分時から6週間の検疫を完全実施し、サル痘に対する監視を行う必要がある。
検疫期間中は一般人から隔離し、施錠した室内での管理、ケージまたはそのほかの適切な飼育容器への収容を行う。この期間中、発熱、咳、眼からの排出物(眼は混濁したり汚れて見える)、リンパ節の腫脹による四肢の腫れ、水疱様の発疹の出現について観察を行う。
Dr.Cetronは「これらの措置は公衆衛生対策を実効あるものとするために必須である。今回のサル痘流行の封じ込めを成功させるためには、公衆衛生関係者、ペット業界、そして飼い主の間の真の協力関係が必要となる」と語っている。
CDCではペットの飼い主に対して、サル痘に感染した恐れがあったり発症したプレーリードッグやほかの動物を屋外に逃がしたり殺処分して埋却することがないよう、強く注意を呼びかけている。そのような場合には動物の処分について最寄りの衛生部または農林部に相談し、外来性齧歯類またはプレーリードッグの健康状態について相談することが求められる。
(別添2)
平成15年7月3日現在
ガーナから米国経由で輸入されたサル痘に感染の疑いがあるアフリカヤマネの流通実態について
(輸入業者及び販売店からの聞き取りに基づく)
{図は省略}