[文書名] 重症急性呼吸器症候群についての患者、疑似症患者の判断基準等について(通知)
(平成15年7月14日)
(健感発第0714001号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
重症急性呼吸器症候群を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第6項の指定感染症として定める等の政令(平成15年政令第304号。以下単に「政令」という。)及びその関係省令の施行に当たっての留意点等については、重症急性呼吸器症候群を感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第6項の指定感染症として定める等の政令及び関係省令の施行について(平成15年7月14日健発第0714006号)により通知したところであるが、重症急性呼吸器症候群の患者及び疑似症患者の判断基準を下記のとおり定めるので、十分にご了知願いたい。
記
1 患者及び疑似症患者の判断基準について
重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。以下「SARS」という。)の患者又は疑似症患者についての判断基準は、別紙のとおりとすること。
なお、当該基準については、今後の知見の収集・分析の結果を踏まえて、随時改訂していく予定であるので申し添える。
2 感染症発生動向調査との関係について
今般施行される通知については、SARSの患者及び疑似症患者を指定感染症の報告対象としているが、症例定義の改正とそれに伴うSARSコロナウイルスの行政検査の実施等について(SARS対策第13報)」(平成15年5月8日健感発第0508002号)の別紙1における疑い例についても、感染症発生動向調査の一環として報告されたいこと。
なお、この政令が施行される時点においては、「WHOが公表したSARS伝播確認地域」は存在しないため、同通知の(1)2若しくは3、又は(2)2若しくは3に該当する者は存在しないが、今後新たにSARS感染者が発生した場合にはこれらの要件に該当する者は当然に疑い例として対応する必要があること。
(別紙)
SARS患者、疑似症患者の判断基準について
1.定義
SARSコロナウイルスの感染による重症急性呼吸器疾患である。
2.臨床的特徴
多くは2―7日、最大10日間の潜伏期間の後に、急激な発熱、咳、全身倦怠、筋肉痛などのインフルエンザ様の前駆症状が現れる。2―数日間で呼吸困難、乾性咳嗽、低酸素血症などの下気道炎症が現れ、胸部CT、X線写真などで肺炎像が出現する。肺炎になった者の80―90%が1週間程度で回復傾向になるが、10―20%がARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし、人工呼吸器などを必要とするほど重症となる。
致死率は10%弱。WHOは推計として15%と発表としている。
3.報告の基準
(1) 患者の判断基準
診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、かつ、以下の方法によって病原体診断や血清学的診断がなされたもの。
【材料】鼻咽頭ぬぐい液、喀痰、尿、便、血清など
・病原体の検出:ウイルス培養検査
・病原体の遺伝子の検出:RT―PCR法
・血清抗体の検出:酵素免疫測定法(ELISA)又は免疫蛍光法(IFA)
注) これらの検査所見(特にRT―PCR、ウイルス分離)で陰性になった場合であっても、SARSを否定することはできない。この場合には、医師の総合判断により、疑似症例として取り扱うこととする。
(2) 疑似症患者の判断基準
疑似症の診断:臨床所見、渡航歴などにより判断する。
以下の①又は②に該当し、かつ③の条件を満たすものとする。
① 平成14年11月1日以降に、38度以上の急な発熱及び咳、呼吸困難等の呼吸器症状を示して受診した者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
(一) 発症前10日以内にSARSの「疑い例」・「可能性例」を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者
(二) 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)へ旅行した者
(三) 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)に居住していた者
② 平成14年11月1日以降に死亡し、病理解剖が行われていない者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
(一) 発症前10日以内にSARSの「疑い例」・「可能性例」を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者
(二) 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)へ旅行した者
(三) 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARSの伝播確認地域)に居住していた者
③ 次のいずれかの条件を満たす者
(一) 胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者
(二) 病理解剖所見が呼吸窮迫症候群の病理所見として矛盾せず、はっきりとした原因がないもの
注) 他の診断によって症状が説明ができる場合は除外すること。