[文書名] 感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針の一部改正について
(平成15年12月19日)
(健発第1219001号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長あて厚生労働省健康局長通知)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律(平成15年法律第145号。以下「改正法」という。)が平成15年11月5日に施行されたことに伴い、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第9条第1項に基づく感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針(平成11年厚生省告示第115号。以下「基本指針」という。)の一部を別添のとおり改正し、本日より適用することとしたので、下記のとおり通知する。
貴職におかれては、内容を御了知いただき、その施行に遺漏なきようお願いする。
記
I 改正の趣旨
基本指針は、感染症法第9条第3項において、少なくとも5年ごとに再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとされているところである。今般の改正は、改正法が、平成15年11月5日に施行され、基本指針に定める事項が改正されたこと等を踏まえ、必要な見直しを行うものであること。
II 予防計画の改正
基本指針の改正は本日から適用されるが、感染症法第10条第3項では、都道府県は、基本指針が変更された場合には、予防計画に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更するものとされており、各都道府県においては、予防計画について、基本指針の改正を踏まえた見直しを可及的速やかに行う必要があるものであること。
また、予防計画の改正を行う場合には、法第10条第4項に基づき、あらかじめ、市町村及び診療に関する学識経験者の団体の意見を聴取するとともに、改正を行ったときは、感染症法第10条第5項に基づき、遅滞なく、これを公表し、厚生労働省健康局結核対策課まで提出されたいこと。
III 改正の概要
1.感染症の予防の推進の基本的な方向について
(1) 近隣の都道府県等の相互協力(第一の五の4関係(追加))
都道府県等(都道府県、保健所を設置する市及び特別区をいう。以下同じ。)は、複数の都道府県等の広域的な地域に感染症のまん延のおそれがあるときには、近隣の都道府県等や、人及び物質の移動に関して関係の深い都道府県等と相互に協力しながら感染症対策を行う必要があるものとしたこと。
また、都道府県等は、複数の都道府県等にわたる広域的な地域に感染症のまん延のおそれがある場合に備え、国と連携を図りながら、近隣都道府県等との協力体制について、あらかじめ、協議しておくことが望ましいものとしたこと。
なお、都道府県等が単独で感染症対策を講じる場合においても、必要に応じて積極的疫学調査や患者の搬送などについて近隣の都道府県等に協力を求めながら対策を講じていくことを視野に入れて対策を講じていくことが望ましい。
(2) 獣医師等の果たすべき役割(第一の八関係(追加))
改正法により獣医師等の責務が規定されたことを踏まえ、獣医師等は、感染症の予防のために寄与するよう努めるものとし、動物等取扱業者は、動物等が感染症を人に感染させることのないように適切な管理等に努めるものとしたこと。
2.検疫所における感染症の国内への進入予防対策について(第二の五の2及び5関係(追加))
検疫感染症に感染したおそれのある者について、検疫所が入国後の健康状態の報告を求め、異状を確認した場合には、都道府県等に通知することにより連携を図るものとしたこと。
3.積極的疫学調査について(第三の五関係)
・患者が発生した場合や感染症発生動向調査において通常と異なる傾向が認められた場合等の他にも、海外で感染症が流行している場合であって、国内における当該感染症の発生の予防上必要と認められる場合や感染症の病原体を媒介すると疑われる動物についての調査が必要な場合などにおいても積極的疫学調査が行われるものとしたこと。
・都道府県等は、必要に応じて国や他の都道府県等の地方衛生研究所等に協力を求めながら積極的疫学調査を進めるものとしたこと。
・緊急時において、国が自ら積極的疫学調査を実施する場合には、地域の実情を把握している都道府県等と連携しながら調査を行うものとしたこと。
4.感染症に係る医療の提供のための体制について(第四の四の2関係(追加))
重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。以下「SARS」という。)等への対応を踏まえ、国内に病原体が常在しない感染症が発生するおそれが高まる場合は、都道府県が当該感染症の外来診療を担当する医療機関を選定し、保健所が当該医療機関に感染が疑われる患者を誘導するなど初期診療体制の確立を図り、地域における医療提供体制に混乱を生じないよう検討することが必要であるものとしたこと。
5.緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに医療の提供のための施策に関する事項について
(1) 緊急時における感染症の発生の予防及びまん延の防止並びに医療の提供のための施策(第十の一関係(追加))
・SARSへの対応を踏まえ、一類感染症、二類感染症又は新感染症の患者の発生又はそのまん延のおそれが生じた場合には、都道府県は、当該感染症の患者が発生した場合の具体的な医療提供体制等について必要な計画を定め、これを公表するものとしたこと。
・感染症法第51条の2又は第63条の2の規定に基づき、国が、感染症の患者の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために緊急の必要があると認めるときには、都道府県等に対して、感染症法により行われる事務について必要な指示を行い、迅速かつ的確な対策が講じられるようにするものとしたこと。
・新感染症の患者の発生や生物兵器を用いたテロリストによる攻撃が想定される場合など、地方公共団体に十分な知見がないような状況で対策が必要とされる場合には、国は、職員や専門家の派遣等必要な支援を行うものとしたこと。
(2) 緊急時における国と地方公共団体との連絡体制(第十の二の3及び4関係(追加))
・緊急時における国から都道府県等への連絡については、迅速かつ確実に連絡が行われる方法により行うものとしたこと。
・緊急時においては、国は都道府県等に対して対策を講じる上で有益な情報を、都道府県等は国に対して地域における患者の発生状況等の情報提供を相互に行うことにより、緊密な連携を図ることが重要であるものとしたこと。
6.動物由来感染症対策について(第十一の四関係)
・動物由来感染症対策の重要性を踏まえ、ペット等の動物を飼育する国民についても、動物由来感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めることが重要であるものとしたこと。
・動物由来感染症対策については、媒介動物対策や、動物等取扱業者への指導、獣医師との連携等が必要であることから、都道府県等の感染症対策部門において、ペット等の動物に関する施策を担当する部門と適切に連携をとりながら対策を講じていくことが重要であるものとしたこと。