[文書名] 高病原性鳥インフルエンザに関する患者サーベイランスの強化について(通知)
(平成16年2月2日)
(健感発第0202001号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
高病原性鳥インフルエンザについては、平成16年1月12日に、国内の養鶏農場において鶏での感染が確認され、さらに1月13日に、ベトナムにおいて同疾患のヒトへの感染事例の発生がWHO西太平洋地域事務局(WPRO)から発表されたところである。
同疾患については、昨年の感染症法の改正により四類感染症に追加され、診断を行った医師から直ちに届出が行われることとされており、また、平成16年1月12日付け事務連絡により、高病原性鳥インフルエンザへの感染が疑われる患者についても情報提供を求めているところであるが、この度、高病原性鳥インフルエンザにり患している(疑いのある)者を早期に把握し、必要な対応を行うために、1月12日付け事務連絡における情報提供等の具体的な方法として、別紙のとおり、「高病原性鳥インフルエンザに関する患者サーベイランスの基準等について」を定めたので、御了知いただくとともに、貴管内の医師会、医療機関等の関係機関への周知方お願いする。
※同旨の通知は社団法人日本医師会感染症危機管理対策室長にも発出された。
高病原性鳥インフルエンザに関する患者サーベイランスの基準等について
1.高病原性鳥インフルエンザウイルスへの感染が疑われる者の報告基準
下記(1)又は(2)に該当する者であって、発熱等のインフルエンザ様の症状がある者
(1) 高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染している又はその疑いのある鳥(鶏、あひる、七面鳥、うずら等)との接触歴を有する者
(2) 高病原性鳥インフルエンザが流行している地域へ旅行し、鳥との濃厚な接触歴を有する者
2.対応
(1) 医療機関
上記「1.疑い例の報告の基準(対象)」に当てはまる患者を診察した場合には、「四類感染症発生届(別記様式3)」をもって速やかに最寄りの保健所に「疑い例」として提出するとともに、検査に必要な検体を確保すること。
(2) 保健所
医療機関から(1)についての疑い例の報告があった場合には、当該保健所は地方衛生研究所(以下「地衛研」という。)と調整の上、速やかに検体を地衛研に搬入するとともに、必要に応じ患者の感染源等に関する調査を行うこと。
(3) 地方衛生研究所
地衛研では、搬入された検体について、ウイルス分離を行い、A型インフルエンザウイルスが分離され、かつ、H1、H3のいずれでもない場合には、国立感染症研究所ウイルス第三部に連絡の上、検体を送付すること。
また、この場合、地衛研又は保健所は、速やかに都道府県、保健所を設置する市又は特別区の本庁に報告すること。
なお、インフルエンザの迅速診断キットでは偽陰性の場合もあるので、必要に応じて検査を複数回行うとともに、他の病原検索も行うことが望まれる。
(4) 都道府県、保健所を設置する市及び特別区
地衛研又は保健所から(3)の報告があった場合は、速やかに厚生労働省健康局結核感染症課に報告するとともに、当該患者を診断した医師に対し、平成15年11月5日健感発第1105006号「感染症法に基づく医師から都道府県知事等への届出のための基準について」に基づき、「高病原性鳥インフルエンザ」(参考資料参照)の確定例として保健所に届出を行うよう指導すること。
高病原性鳥インフルエンザの患者サーベイランスの流れ
{図は省略}
【参考資料】
平成15年11月5日健感発第1105006号「感染症法に基づく医師から都道府県知事等への届出のための基準について」の「(10) 高病原性鳥インフルエンザ」の届出基準
《定義》
高病原性鳥インフルエンザウイルスによるヒトの感染症をいう。
鳥インフルエンザウイルスのうち、特にH5及び(又は)H7亜型のヘマグルチニンを持つものはニワトリに対する病原性が強い。ヒトに対しても強い病原性を獲得する可能性が高い。H5N1ウイルスの感染により、1997年に香港で6名が死亡し、さらに2003年に2名が死亡した。2003年にオランダでニワトリにH7N7ウイルスの感染症が発生、流行した際に、獣医師が1名死亡した。現在のところ、我が国では家禽類からは、H5及びH7ウイルスは検出されていない。
《臨床的特徴》
感染した家禽あるいは野生鳥などからヒトにH5またはH7ウイルスが感染することがごく稀にある。オランダでのA/H7N7による事例では、ヒトからヒトへの感染も起こったと報告されている。潜伏期間は通常のインフルエンザと変わりなく、1~3日と考えられており、症状は突然の高熱、咳などの呼吸器症状の他、重篤な肺炎、全身症状を引き起こす。A/H7N7ウイルスの感染では結膜炎を起こした。過去の香港でのA/H5N1ウイルスによる事例では、感染拡大防止のために大規模な家禽の屠殺処分が行われた。
上述の症状のごとくインフルエンザを疑わせる症状があり、A型インフルエンザウイルスが分離同定されるものの、A/H1N1あるいはA/H3N2に対する抗血清と反応せず、亜型判別不能の場合には本疾患を疑う。
《届出基準》
○ 診断した医師の判断により、症状や所見から当該疾患が疑われ、ウイルス分離において、A型インフルエンザウイルスが同定されるものの、A/H1N1、A/H3N2の抗血清に反応せず、亜型判定不能であり、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断がなされたもの。
・病原体の検出
例、咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料など上下気道からの検体から、A/H1N1、A/H3N2以外のA型インフルエンザウイルスの分離同定 など
・病原体の遺伝子の検出
例、咽頭拭い液、肺胞洗浄液、剖検材料など上下気道からの検体から、A/H1N1、A/H3N2以外のA型インフルエンザウイルスの遺伝子の検出 など
・血清抗体の検出
例、A/H1N1、A/H3N2以外のA型インフルエンザウイルスに対する抗体の上昇を確認
《備考》
まん延防止には、インフルエンザ予防接種歴、渡航歴、症状詳細、職業、野生鳥や鶏との接触歴などの情報を把握することが有用である。