[文書名] 動物由来感染症予防体制整備事業の実施について
(平成16年5月27日)
(健発第0527001号)
(各都道府県知事・各政令市市長あて厚生労働省健康局長)
本整備事業については、平成14年4月15日健発第号本職通知の別紙「動0415001物由来感染症予防体制整備事業実施要綱(以下「実施要綱」という。)により動物由来感染症に関する正しい知識の普及、動物における動物由来感染症の病原体保有状況に関する情報の収集等を目的として実施されてきたところである。
今般、昨年11月の「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の改正に対応するため、実施要綱の一部を別紙新旧対照表のとおり改正し、平成16年4月1日から適用することとしたので通知する。
なお、本事業の実施については、社団法人日本医師会及び社団法人日本獣医師会に対し、協力を依頼しているので、当該団体等関係機関と連携し、事業の円滑な実施を図られたい。
{別紙(画像1〜6)は省略}
別紙
動物由来感染症予防体制整備事業実施要綱
1.目的
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」と」いう。)で規定される感染症の多くは、動物由来感染症(人の感染症のうち、病原体が動物に由来する感染症)であり、平成15年11月の同法改正において、獣医師、動物等取扱業者等の責務規定の創設(第5条の2)、感染症の発生の状況、動向及び原因の調査のための動物等の調査規定の明示(第15条)、対物措置(動物、節足動物等も対象として含む)の対象とする疾患の拡充(第27条、第28条、第29条、第35条)等、動物由来感染症対策の強化が図られたところである。
また、同法第9条第1項に基づく「感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針」においても、国民の果たすべき役割(第1.六)、獣医師等の果たすべき役割(第1.八)、動物由来感染症対策(第11.四.2、3、4、5)等が新たに示されたところである。
以上のような動物由来感染症対策に対する法的な整備状況を踏まえ、各自治体において、以下の事業を選択、実施することにより、動物由来感染症の予防体制の整備に資することを目的とする。
(1) 動物由来感染症に関する正しい知識の習得及び普及を図る。
(2) 我が国の人又は動物(若しくはその両方)における動物由来感染症の保有状況、発生状況及び動向に関する情報収集及び監視体制の確立のため、医療と獣医療の連携を図りつつ、本症に関する情報の収集、分析、提供の体制を整備する。
(3) 動物由来感染症の発生予防とともに発生時の適切かつ迅速な対応等について、事前に必要な対応の検討を行って動物由来感染症発生時等対応計画等(以下「対応計画」という。)を策定し、併せて感染症に関する施策を担当する部門(以下「感染症対策担当部門」という。)と、感染症媒介昆虫等(感染症を媒介するねずみ族及び昆虫等をいう。)の駆除等環境衛生に関する施策を担当する部門(以下「環境衛生対策担当部門」という。)、ペット等動物に関する施策を担当する部門(以下「動物対策担当部門」という。)及び動物等取扱業者の指導を行う機関(以下「動物管理センター等」という。)等との連携体制を整備する。
(4) 輸入動物由来感染症が国内に侵入した可能性のある場合等において、緊急的に動物に関する情報収集を実施し、そのまん延の防止を図る。
2.実施主体
実施主体は、都道府県及び保健所を設置する市(以下「都道府県等」という。)とする。
3.事業内容
都道府県等は、以下の(1)~(3)の事業項目から、適宜必要項目を選択して実施する。
(1) 動物由来感染症に関する研修、普及啓発
都道府県等は、医療関係者、獣医療関係者、動物等取扱業者等及び地域住民に対し動物由来感染症に関する正しい知識を普及し、動物由来感染症の予防、迅速な診断及び治療等に寄与するため、研修会の開催及びポスター等の作成等による啓発活動を行う。
(2) 動物由来感染症に関する情報収集・分析・提供体制の整備
ア.情報関連体制整備検討会の設置
本事業の適切な運用を図るため、都道府県等は、獣医学、医学等の専門家(5名程度)からなる検討会(以下「情報関連体制整備検討会」という。)を設置し、情報収集の手段、情報の分析、提供に関する事業計画の立案を行う。
イ.動物由来感染症疫学情報の収集
都道府県等は、管下の動物の飼育、管理又は棲息状況等を勘案して、調査点及び時期等を定め、管内の動物管理センター等の関係機関及び地域の獣医師会等の協力のもと、発生状況及び動向、抗体保有状況等疫学情報を収集する。また、必要に応じ、抗体保有状況等調査の結果が陽性となった動物の所有者等、あるいは動物由来感染症と診断された患者が所有する動物等の調査結果等についての情報収集を行い、行政機関、医療機関及び獣医療機関間で情報を共有することにより相互の連携体制を確立する。
ウ.情報提供
都道府県等は、情報関連体制整備検討会での検討結果を踏まえ、医療機関及び獣医療機関が、迅速かつ適切に動物由来感染症による健康危害防止対策を講ずることができるよう、調査結果を医療機関、獣医療機関等に情報提供し、併せて保健所、動物管理センター等の行政機関を活用することにより、地域の住民及び動物等取扱業者に情報提供を行う。
(3) 対応計画の策定及び連携体制の整備
ア.対応体制整備検討会の設置
動物由来感染症の発生予防とともに発生時の適切かつ迅速な対応に資するため、都道府県等は、獣医学、医学等の専門家(5名程度)からなる検討会(以下「対応体制整備検討会」という)を設置し、事前に地域の実情にあわせた必要な対応について検討を行う。
イ.発生時対応計画等の策定
都道府県等は、対応体制整備検討会の検討結果に基づき、発生時対応計画、マニュアル等を作成し、動物由来感染症対策に関係する部門(感染症対策担当部門、環境衛生対策担当部門、動物対策担当部門等)及び関係機関(保健所、動物管理センター等、地方衛生研究所、地方医師会、医療機関、地方獣医師会、獣医療機関及び大学等)間で共有し、連携体制を整備する。
4.事業実施上の留意事項
(1) 研修・普及啓発について
都道府県等は、研修会の実施、ホームページ、ポスター、ハンドブック、ガイドラインの作成等による普及啓発活動の企画立案を行う場合には、感染症に関する有識者の意見を得ること。
(2) 動物由来感染症に関する情報収集・分析・提供体制の整備について
ア.情報収集項目の選定
対象とする感染症及びその感染源となり得る動物等について情報関連体制整備検討会で選定すること。
イ.情報の収集手段及び協力機関の選定
情報の収集のための協力機関(保健所、動物管理センター等、地方衛生研究所、地方医師会、医療機関、地方獣医師会、獣医療機関及び大学等)を設け、情報収集方法を選定する。
ウ.情報の分析
都道府県等は、収集された情報について、月別、年別、地域別等多角的な集計を行い、そのデータをもとに検討会で専門家による分析を行うこと。なお、緊急的な対応が必要な場合はこの限りでない。
(3) 対応計画の策定及び連携体制の整備
関係機関等は、平時より情報交換等を行うことにより連携体制の強化を図ること。
(4) 検討会について
都道府県等が3.(2)及び3.(3)の両事業を実施する場合、3.(2)ア「情報関連体制整備検討会」及び3.(3)ア.「対応体制整備検討会」を「動物由来感染症対策検討会」等共用の検討会として設置しても差し支えない。
5.費用
国は本事業に要する費用のうち都道府県等が支弁するものについて、別に定める保健事業費等国庫負担(補助)金交付要綱に基づき、その一部を負担(補助)するものとする。
なお、「3.(2)イ.動物由来感染症疫学情報の収集」に係る病原体保有状況調査、採材・検査等に係る費用については、感染症法第15条に基づき行う調査として、感染症発生動向調査事業(保健事業費等負担金)の対象となり、その他の費用については、動物由来感染症予防体制整備事業(疾病予防事業費等補助金)の対象となる。
6.成果の報告
都道府県等は、事業の成果について、厚生労働省健康局結核感染症課あて報告すること。
7.適用時期
この実施要綱は、平成14年4月1日から適用する。