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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウエストナイル熱の流行地域より入国し、当該疾病への感染が疑われる患者の診療・入院に関する対応要領の周知とウエストナイル熱対策啓発用CD−ROMの配布について

[場所] 
[年月日] 2004年6月10日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成16年6月10日)

(健感発第0611001号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長)

 ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む)については、4類感染症に指定され発生動向調査が実施されており、これまでのところ国内での患者発生は報告されておりません。しかしながら、米国等国外における流行が続いていることを踏まえ、ウエストナイル熱流行地域からの入国者で輸入感染症例が発生することも想定されることから、今般、輸入感染症例に関する対処法について、専門家の協力を得て別紙のとおり対応要領をとりまとめましたので、医療機関等の関係者に対する周知徹底をお願いいたします。

 また、今般、新興・再興感染症研究事業研究班(注)より、米国CDC(Center for Disease Control and Prevention)が制作したウエストナイル熱の啓発のためのCD−ROM(英語版)を訳した日本語吹き替え版が提供されたことから、国内におけるウエストナイル熱対策に資するため、関係機関、関係団体に配布することとしました。つきましては貴自治体におかれましても、公衆衛生部局担当者、医療従事者、動物等取扱業者、一般の方等へのウエストナイル熱の普及啓発への活用をお願いいたします。

 (注) 厚生科学研究費補助金の新興・再興感染症研究事業「節足動物媒介性ウイルスに対する診断法の確立、疫学及びワクチン開発に関する研究(主任研究官:国立感染症研究所ウイルス第一部 倉根一郎部長)」(分担研究者:国立感染症研究所ウイルス第1部 高崎智彦)」

  ※同旨の通知は社団法人日本医師会感染症危機管理対策室長にも発出された。


(別紙)

ウエストナイル熱流行地からの入国者が発熱・頭痛等を訴えて

医療機関に受診があった場合の対応について

1 ウエストナイル熱の流行地域について

過去3年間の海外の主たる流行地域は、米国、カナダ、メキシコ、カリブ海地域、チュニジア及びイスラエル

 2 患者への対応について

  (1) 発病前2週間以内に流行地に滞在していた場合は、ウエストナイルウイルスへの感染が疑われるので、ただちに病原体診断・血清学的診断を行うこととし、最寄りの保健所に連絡・依頼すること。

     (参考:「感染症の診断・治療ガイドライン」追補「ウエストナイル熱」)

  (2) 病室内での患者の診療については、標準予防策で十分であること。

  (3) 患者の入院に際しては隔離の必要は無いこと。

  (4) ヒト−ヒト感染(経口感染・接触感染・飛沫感染・空気感染)及びヒト−蚊−ヒト感染は無いので、全身状態に問題がなければ、面会の制限は特に必要としないこと。

  (5) 退院の判断は、他のウイルス性脳炎と同様であること。

  (6) 患者はウイルス血症をきたすので、患者の採血時には手袋を着用し、針刺し事故防止等、基本的な注意を行うこと。(但し、ウイルス血症は、抗体価の上昇とともに速やかに消失し、持続感染、潜伏感染をきたすことはない)

  (7) 患者に使用した食器、器具、リネン類からの感染は無く、取扱は通常の処理で十分であること。

3 蚊の捕獲・検査について

 ウエストナイル熱が疑われる患者が入院した場合に、病院内の蚊を捕獲しウイルスの有無を検査することや蚊の駆除を行うことは、ウエストナイル熱の感染防御の観点からは必要ない(一般的に、病院内に蚊のいないこと、日常そのような対策がとられるべきことは望ましい)。