[文書名] 国際保健規則(2005)
国際保健規則(2005)(仮訳)
第一編-定義、目的及び範囲、諸原則及び管轄機関
第一条 定義
1.国際保健規則(以下「本規則」と称する)の適用上、
「影響のある対象」とは、公衆衛生リスクを構成するような感染した若しくは汚染された人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包若しくは人間の遺体、又は感染若しくは汚染の保因源をいう。
「影響のある地域」とは、本規則に基づきWHOにより保健上の措置を勧告された特定の地理的地域をいう。
「航空機」とは、国際通行を行なう航空機をいう。
「空港」とは、国際航空の発着するすべての空港をいう。輸送機関の「到着」とは、次のことをいう。
(a)海上航行の船舶の場合は、港の特定区域への到着又は錨泊。
(b)航空機の場合は、空港への到着。
(c)内水航行の国際通行船舶の場合は、入域地点への到着。
(d)列車又は路上車輛の場合は、入域地点への到着。
「手荷物」とは、旅行者の手廻品をいう。
「貨物」とは、輸送機関上又はコンテナ内で輸送される物品をいう。
「権限当局」とは、本規則に基づく保健上の措置の実施及び適用を所管する機関をいう。
「コンテナ」とは、輸送用機材の一種であって次の性質を備えたものをいう。
(a)耐久性があり、従って反復使用に適するよう十分な強度があること。
(b)一種又はそれ以上の輸送型式による物品の輸送を、中途において詰め替えを行なわないことによって容易化するよう特に設計されていること。
(c)とくに一型式の輸送機関から他の型式のものへ積替えの際に簡便な操作ができるような装置を備えていること。
(d)内容物の充填及び空荷の操作を容易にするよう特別に設計されていること。
「コンテナ積み込み区域」とは、国際通行において使用されるコンテナのために設けられた場所又は施設をいう。
「汚染」とは、人体若しくは動物の体表面又は消費製品その他の無機物(輸送機関を含む)に、公衆衛生リスクを構成するおそれのある感染性又は有毒性の病原体又は物質が存在していることをいう。
「輸送機関」とは、国際通行に使用される航空機、船舶、列車、路上車輛その他の輸送手段をいう。
「輸送機関の運行者」とは、輸送機関を管理する自然人若しくは法人又はその代理人をいう。
「乗組員」とは、輸送機関に搭乗する乗客でない者をいう。
「除染」とは、人体若しくは動物の体表面又は消費製品その他の無機物(輸送機関を含む)に存在する公衆衛生リスクを構成するおそれのある感染性又は有毒性の病原体又は物質を除去するための保健上の措置を行なう手続をいう。
「出発」とは、人、手荷物、貨物、輸送機関又は物品が領域を去る行為をいう。
「ねずみ族駆除」とは、入域地点において手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、施設、物品及び郵送小包に存在する人の疾病のげっ歯類の媒介動物を管理する又は殺すための保健上の措置を行なう手続をいう。
「事務局長」とは、WHOの事務局長をいう。
「疾病」とは、その病原又は源泉にかかわらず、人に対して重大な害を生じさせる又は生じさせるおそれのある病気又は医学的症状をいう。
「消毒」とは、化学的又は物理的な薬剤により人体若しくは動物の体表面又は手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品並びに郵送小包に存在する感染性病原体を管理する又は殺すための保健上の措置を行なう手続をいう。
「虫類駆除」とは、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び郵送小包に存在する人の疾病の媒介虫類を管理する又は殺すための衛生上の措置を行なう手続をいう。
「事象」とは、疾病の顕在化又は疾病を潜在させる事態の発生をいう。
「自由交通許可」とは、船舶については入港、乗船若しくは上陸、又は貨物若しくは用品の荷おろし若しくは積み込みを行なうことの許可を、航空機については着陸後に搭乗若しくは上陸、又は貨物若しくは用品の荷おろし若しくは積み込みを行なうことの許可を、さらに陸上輸送車輛については到着とともに乗車若しくは上陸、又は貨物若しくは用品の荷おろし若しくは積み込みを行なうことの許可をいう。
「物品」とは、輸送機関上で使用するものを含め、国際通行によって輸送される動植物を含む有形物をいう。
「陸上越境地点」とは、路上車輛及び列車によって利用されるものを含む、参加国の陸上の入域地点をいう。
「陸上輸送車輛」とは、列車、バス、トラック及び自動車を含む、国際通行を行なう陸路輸送用のモーター付き輸送機関をいう。
「保健上の措置」とは、疾病又は汚染の拡大を防止するために適用される手続をいう。保健上の措置には、法執行措置或いは安全保障措置は含まれない。
「病人」とは、公衆衛生リスクをもたらすおそれのある身体的不調をきたした者又は影響を受けた者をいう。
「感染」とは、公衆衛生リスクを構成するおそれのある感染性病原体が人及び動物の身体に入り、増大又は増殖することをいう。
「検査」とは、公衆衛生リスクが存在するか否かを確認するために権限当局により又はその監督の下で行なわれる地域、手荷物、コンテナ、輸送機関、施設、物品又は郵送小包(関連資料及び書類を含む)の検査をいう。
「国際交通」とは、人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包の国境を越えた移動(国際取引を含む)をいう。
「国際通行」とは、次のことをいう。
(a)輸送機関にあっては、複数の国の領域内の入域地点間の通行、又は同一国の領域
(領域が複数にわたる場合を含む)内の入域地点間の通行であっても輸送機関がその通行の途中に他国の領域に接触する場合は、その接触に係る通行。
(b)旅行者にあっては、その者が通行を開始する国の領域以外の国の領域への立入りを伴う通行。
「立ち入った」とは、密接若しくは個人的な接触又は質問を通じて不快感を惹き起こしうることをいう。
「侵襲」とは、皮膚の穿刺若しくは切開又は身体への器具若しくは異物の挿入又は体腔の検査をいう。本規則の適用上、耳、鼻並びに口の医学的検査、耳腔体温計、口腔体温計若しくは皮膚体温計又は熱探知計を利用した体温検査、医学的検診、聴診、体外触診、検影法、尿、便若しくは唾液標本の体外的採取、体外的血圧測定、及び心電図検査は侵襲とは看做されないものとする。
「隔離」とは、感染又は汚染が拡がることを防止するための方法として、病人又は影響のある人又は汚染された手荷物、コンテナ、輸送機関、物品若しくは郵送小包を他から分離することをいう。
「医学的検査」とは、授権された保健職員又は権限当局の直接の監督の下にある者が対象者の健康状態及び他者に対する潜在的な公衆衛生リスクを確認するために行なう予備的なアセスメントをいい、これには保健上の書類の検査、及び個々の状況において正当化される場合には身体検査が含まれることもある。
「IHR国家連絡窓口」とは、本規則に規定する「WHOIHR連絡窓口」と常に連絡をとれるよう各参加国が指定する国内機関をいう。
「本機関」又は「WHO」とは、世界保健機関をいう。
「永住」とは、関係参加国の国内法において定義する意味を有する。
「個人データ」とは、特定の又は特定可能な自然人に関するすべての情報をいう。
「入域地点」とは、旅行者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品並びに郵送小包の国境を越えた入出国のための通過点及びそれらに対して入出国に関する業務を提供する機関並びに区域をいう。
「港」とは、国際通行船舶が入出港する内水内の港又は海港をいう。
「郵送小包」とは、郵便その他の配達業務により国際的に運送される住所付き送付物又は包装物をいう。
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」とは、本規則において次のとおり規定する異常事態をいう。
(i)疾病の国際的拡大により他国に公衆衛生リスクをもたらすと認められる事態。
(ii)潜在的に国際的対策の調整が必要な事態。
「公衆衛生上の観察」とは、疾病伝播の危険を確認する目的で長期的に旅行者の健康状態を監視することをいう。
「公衆衛生リスク」とは、人の集団的健康に負の影響を及ぼすおそれのある事態をいい、とくに国際的に拡大するおそれのあるもの又は重大且つ直接の危難をもたらすおそれのあるものをいう。
「検疫措置」とは、感染又は汚染が拡がる可能性を防止するための方法として、発病していないが疑いのある者又は疑いのある対象手荷物、コンテナ、輸送機関若しくは物品を他から分離すること、及び/又は、活動を制限することをいう。
「勧告」及び「勧告された」とは、本規則に基づき発せられる暫定的又は恒常的勧告をいう。
「保有宿主」とは、感染性病原体が常態的に寄生しその存在が公衆衛生リスクを構成するおそれのある動植物その他の実体をいう。
「路上車輛」とは、列車以外の陸上輸送車輛をいう。
「科学的証拠」とは、確立し且つ受容されている科学的方法に基づき一定水準の証明を提供する情報をいう。
「科学的諸原則」とは、科学的方法を通じて認知され受容されている自然に関する基本法則及び事実をいう。
「船舶」とは、国際通行を行なう海上航行又は内水航行の船舶をいう。
「恒常的勧告」とは、第十六条に従い、疾病の国際的拡大を防止又は削減し国際交通の阻害を小限に抑えるために、必要な日常的又は定期的に適用される適当な保健上の措置に関して、WHOが特定の進行中の公衆衛生リスクについて発する非拘束的な助言をいう。
「サーベイランス」とは、公衆衛生を目的とするデータの体系的継続的収集、収集並びに分析を行い、及び必要な場合にアセスメント並びに公衆衛生対策のために公衆衛生上の情報を適宜伝達することをいう。
「疑いのある対象」とは、公衆衛生リスクに晒されたことがある又は晒された可能性があると参加国がみなす人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包で、疾病の拡大の源泉になる可能性のあるものをいう。
「暫定的勧告」とは、第十五条に従い、疾病の国際的拡大を防止又は減弱し、国際交通の阻害を最小限に抑えるために、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に対応してWHOが時限的に特定の危険に適用するために発する非拘束的な助言をいう。
「一時滞在」とは、関係参加国の国内法において定義する意味を有する。
「旅行者」とは、国際通行を行なう自然人をいう。
「媒介体」とは、公衆衛生リスクを構成するおそれのある感染性病原体を常態的に運ぶ虫類その他の動物をいう。
「検証」とは、参加国が当該参加国の領域内で発生した事象の状況を確認するためにWHOに情報を提供することをいう。
「WHOIHR連絡窓口」とは、「IHR国家連絡窓口」と常に連絡をとれるようWHOが設ける部局をいう。
2.文脈が別段特定又は確定する場合を除き、本規則という場合には本規則の附録が含まれる。
第二条 目的及び範囲
本規則の目的及び範囲は、国際交通及び取引に対する不要な阻害を回避し、公衆衛生リスクに応じて、それに限定した方法で、疾病の国際的拡大を防止し、防護し、管理し、及びそのための公衆衛生対策を提供することである。
第三条 諸原則
1.本規則の実施は、人間の尊厳、人権及び基本的自由を完全に尊重して行なわなければならない。
2.本規則の実施は、国連憲章及び世界保健機関憲章に従って行なわなければならない。
3.本規則の実施は、疾病の国際的拡大から世界のすべての人々を保護するために普遍的に適用するという目標に従って行なわなければならない。
4.諸国は、国連憲章及び国際法の諸原則に従い、自国の保健政策に基づき立法を行い且つそれを実施する主権的権利を有する。その際、諸国は本規則の目的を尊重することが求められる。
第四条 管轄機関
1.各参加国は、個々の自国管轄権内において、本規則に基づく保健上の措置の実施を所管する機関及びIHR国家連絡窓口を指定又は設置しなければならない。
2.IHR国家連絡窓口は、本条第三項に規定するWHOIHR連絡窓口と常に連絡がとれるようにしなければならない。IHR国家連絡窓口の任務には、次のものを含めるものとする。
(a)関係参加国のために、とくに第六条から第十二条に基づき、本規則の実施に関する緊急連絡をWHOIHR連絡窓口に送付すること。及び、
(b)サーベイランス並びに報告、入域地点、公衆衛生業務、診療所並びに病院の所管省庁その他の政府機関を含む参加国の関係行政部局に情報を伝達し、且つそれらからの情報を整理すること。
3.WHOはIHR連絡窓口を指定し、IHR国家連絡窓口と常に連絡がとれるようにしなければならない。WHOIHR連絡窓口は、とくに第六条から第十二条に基づき、関係参加国のIHR国家連絡窓口に本規則の実施に関する緊急連絡を送付するものとする。WHOは、本機関の本部又は地域拠点にWHOIHR連絡窓口を指定することができる。
4.参加国は自国のIHR国家連絡窓口の詳細な連絡先をWHOに通知し、WHOはWHOIHR連絡窓口の詳細な連絡先を参加国に通知しなければならない。これらの詳細な連絡先は継続的に更新し、毎年確認するものとする。WHOは、本条に従い通知されたIHR国家連絡窓口の詳細な連絡先をすべての参加国が利用できるようにしなければならない。
第二編-情報及び公衆衛生対策
第五条 サーベイランス
1.各参加国は、可及的速やかに、但し自国に対して本規則が発効してから五年以内に、本規則に従い事象を検知し、アセスメントし、通報し且つ報告する能力(附録第一に詳細記載)を構築し、強化し且つ維持しなければならない。
2.参加国は、附録第一のパートA第二項に言及するアセスメントの後、正当な必要性に基づき実施計画をWHOに報告し、その際、本条第一項の義務を履行するために二年間の延長を受けることができる。さらに参加国は、新規の実施計画により支持される例外的な場合に、二年を超えない範囲で事務局長に追加的な延長を求めることができる。事務局長は、第五十条に基づき設置される委員会(以下「再検討委員会」という)の技術的な助言を考慮して決定を行なうものとする。本条第一項に規定する期間後、延長を認められた参加国は、完全な履行までの進捗状況を毎年WHOに報告しなければならない。
3.WHOは、要請に基づき、本条第一項に規定する能力を参加国が構築、強化及び維持するのを援助するものとする。
4.WHOは、そのサーベイランス活動を通じて事象に関する情報を収集し、国際的な疾病の拡大と国際交通の阻害をもたらす可能性をアセスメントするものとする。本項に基づきWHOが受理した情報は、それが適当な場合には第十一条及び四十五条に従って扱われるものとする。
第六条 通報
1.各参加国は、附録第二の決定手続に従って、自国領域内で発生した事象をアセスメントしなければならない。各参加国は、公衆衛生上の情報をアセスメントした後二十四時間以内に、決定手続に従い自国領域内で発生した国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するおそれのあるすべての事象及びそれら事象に対して実施される一切の保健上の措置を、IHR国家連絡窓口を通じて、利用できる最も効率的な伝達手段により、WHOに通報しなければならない。WHOが受けた通報に国際原子力機関(IAEA)の権限事項が含まれる場合には、WHOは直ちにそれをIAEAに通報するものとする。
2.通報後、参加国は引き続き、可能な限り、通報した事象に関して入手しうる正確且つ十分詳細な公衆衛生上の情報(症例の定義、検査結果、リスクの源泉並びに種類、症例並びに死者の数、疾病の拡大に関する状況、及び実施された保健上の措置を含む)を適宜WHOに伝達するとともに、必要な場合には潜在的な国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に対応するに際して直面した困難並びに必要な支援を報告しなければならない。
第七条 予期されない又は特異な公衆衛生上の事象が発生した場合の情報の共有
参加国は、その原因又は発生源にかかわらず、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するおそれのある予期されない又は特異な公衆衛生上の事象が自国領域内で発生した証拠がある場合には、関連するすべての公衆衛生上の情報をWHOに提供しなければならない。この場合、第六条の規定が全面的に適用されるものとする。
第八条 協議
参加国は、第六条に規定する通報が要求されない事象、とくに決定手続を完了するために入手しうる情報が不十分であるような事象が自国の領域内で発生した場合にも、IHR国家連絡窓口を通じてそれをWHOに通報し、適当な保健上の措置についてWHOと協議することができる。かかる連絡は、第十一条第二項乃至第四項に従って扱われる。自国の領域内でかかる事象が発生した参加国は、自国が取得した一切の疫学的証拠をアセスメントするためにWHOに援助を要請することができる。
第九条 その他の報告
1.WHOは、通報又は協議以外の情報源から報告があった場合にはそれを検討し、確立した疫学上の諸原則に基づき報告をアセスメントし、さらに領域内で事象が発生していると申し立てられた参加国に対し当該事象についての情報を伝達するものとする。WHOは、前記の報告に基づき何らかの行動を講じる前に、領域内で事象が発生していると申し立てられた参加国と協議し、第十条に規定する手続に従って当該参加国から検証を得るよう試みるものとする。前記の目的のため、WHOは受理した情報を参加諸国が利用できるようにするものとし、適正に正当化される場合のみその情報源を秘密に維持することができる。前記の情報は、第十一条に規定する手続に従って使用される。
2.各参加国は、次のものの輸出入により判明した、自国の領域外で確認された疾病の国際的拡大をもたらすおそれのある公衆衛生リスクに関する証拠を、実行可能な限り、証拠の受領後二十四時間以内にWHOに通知しなければならない。
(a)人の症例
(b)感染又は汚染を運ぶ媒介動物
(c)汚染された物品
第十条 検証
1.WHOは、第九条に従って、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するおそれのある事象が領域内で発生していると申し立てられた参加国に対し、通報又は協議以外の情報源からの報告を検証するよう要請するものとする。この場合、WHOは、検証を要請している報告のことを関係参加国に通知するものとする。
2.前項及び第九条に従い、各参加国は、WHOから要請があった場合には、次の事項を検証し且つ提供しなければならない。
(a)二十四時間以内に、WHOの要請に対する初の応答又は確認。
(b)二十四時間以内に、WHOの要請に言及されている事象の状況に関して入手しうる公衆衛生上の情報。及び、
(c)本条に規定する関連情報を含め、第六条に基づくアセスメントに関してWHOに提出する情報。
3.WHOは、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するおそれのある事象に関する情報を受理した場合には、疾病の国際的拡大の潜在的可能性、国際交通の阻害可能性及び管理措置の十分性をアセスメントするために関係参加国と協働することを申し出るものとする。かかる行動には、国内権限当局が実地アセスメントを行い且つ調整するのを支援するための他の基準設定組織との協働及び国際援助の動員の申し出を含めることができる。また、参加国から要請があった場合には、WHOは前記の申し出を裏付ける情報を提供するものとする。
4.参加国が協働の申し出を受け入れなかった場合であっても、公衆衛生リスクの重大さから正当化される場合には、WHOは関係参加国の見解を考慮しつつ当該参加国にWHOによる協働の申し出を受け入れるよう促す一方、自身が入手可能な情報を他の参加国と共有することができる。
第十一条 WHOによる情報の提供
1.本条第二項に従うことを条件として、WHOは、すべての参加国及び適当な場合には関係する政府間組織に対し、可及的速やかに且つ最も効率的な手段により機密扱いで、第五条乃至第十条に基づき受理した、各参加国が公衆衛生リスクに対処するのに必要な公衆衛生上の情報を送付するものとする。WHOは、他の参加国が同様の事態の発生を防止するのに有効と思われる情報をそれら諸国に伝達することが望ましい。
2.WHOは、第六条、第八条及び第九条第二項に基づき受理した情報を本規則に規定する検証、アセスメント及び援助のために使用するものとし、これら規定に言及する参加国と別段合意しない限り、次の時点まではかかる情報を一般的に他の参加国に利用させてはならない。
(a)第十二条に従って当該事象が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成すると認定されるまで。又は、
(b)確立した疫学上の諸原則に従って感染又は汚染の国際的な拡大を裏付ける情報が
WHOにより確認されるまで。又は、
(c)次のことの証拠があるまで。
(i)汚染、病原体、媒介体若しくは保有宿主の性質上、国際的拡大に対する管理措置が成功しないと思われること。又は、
(ii)疾病のそれ以上の拡大を防止するために必要な措置を実施するのに十分な実行上の能力を参加国が欠いていること。又は、
(d)感染又は汚染されたおそれのある旅行者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包の国際的移動の性質及び範囲から、国際的な管理措置の適用が直ちに必要とされるまで。
3.WHOは、本条に基づき情報を利用できるようにする意思について、自国の領域で事象が発生している参加国と協議するものとする。
4.本条第二項に基づきWHOが受理した情報を本規則に従い参加諸国が利用できるようになった状況において、同一の事象に関する他の情報が既に公有となっていて、且つ、権威ある独立の情報の公表が必要とされている場合には、WHOは前記の情報を公衆も利用できるようにすることができる。
第十二条 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の認定
1.事務局長は、(とくに自国の領域内で事象が発生している参加国から)受理した情報に基づき、当該事象が本規則に規定する基準並びに手続に照らして国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するか否かを認定するものとする。
2.事務局長は、本規則の下で行なわれたアセスメントに基づき、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が発生していると考える場合には、その予備的決定について自国の領域内で当該事象が発生している参加国と協議するものとする。事務局長と参加国がかかる認定について見解の一致をみた場合、事務局長は、第四十九条に規定する手続に従い、第四十
八条に基づき設置された委員会(以下「緊急委員会」という)に適当な暫定的勧告に関する見解を求めるものとする。
3.前記第二項の協議の後四十八時間以内に、事務局長と自国の領域内で事象が発生した参加国との間で当該事象が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するか否かについて意見の一致に至らなかった場合には、第四十九条に規定する手続に従って決定が行なわれるものとする。
4.事象が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するか否かの決定に際して、事務局長は次のものを考慮しなければならない。
(a)参加国から提供された情報、
(b)附録第二に記載する決定手続、
(c)緊急委員会の助言、
(d)科学的諸原則及び入手可能な科学的証拠その他の関連情報、及び
(e)人の健康に対するリスク、疾病の国際的拡大のリスク、及び国際交通を阻害するリスクに関するアセスメント。
5.事務局長は、自国の領域内で国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が発生した参加国と協議した後、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が終わったと考える場合には、第四十九条に規定する手続に従って決定を行なうものとする。
第十三条 公衆衛生対応
1.各参加国は、可及的速やかに、但し自国に対して本規則が発効してから五年以内に、附録第一に規定する通り、公衆衛生リスク及び国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に迅速且つ効果的に対応する能力を構築し、強化し且つ維持しなければならない。WHOは、加盟国と協議して、参加国が公衆衛生対応能力を構築するのを支援するための指針を公表するものとする。
2.参加国は、附録第一のパートA第二項に言及するアセスメントの後、正当な必要性に基づき実施計画をWHOに報告し、その際、本条第一項の義務を履行するために二年間の延長を受けることができる。さらに参加国は、新規の実施計画により支持される例外的な場合に、二年を超えない範囲で事務局長に追加的な延長を求めることができる。事務局長は、再検討委員会の技術的な助言を考慮して決定を行なうものとする。本条第一項に規定する期間後、延長を認められた参加国は、完全な履行までの進捗状況を毎年WHOに報告しなければならない。
3.WHOは、参加国からの要請がある場合には、必要に応じて現地支援のために国際専門家チームを動員することを含め、技術的な指針並びに援助を提供し及び実施される管理上の措置の効果をアセスメントすることを通じて、公衆衛生リスクその他の事象に対する対策で協働するものとする。
4.WHOは、第十二条の規定に従い関係参加国と協議した上で国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が発生していると認定する場合には、本条第三項に規定する支援に加え、国際的なリスクの重大性及び管理上の措置の十分性についてのアセスメントを含む追加的援助を当該参加国に提供することができる。かかる協働には、国内権限当局が実地アセスメントを行い且つ調整するのを支援するための国際援助の動員の申し出を含めることができる。また、参加国から要請があった場合には、WHOは前記の申し出を裏付ける情報を提供するものとする。
5.参加国は、WHOから要請があった場合には、可能な範囲で、WHOが調整する対策活動を支援することが望ましい。
6.WHOは、要請があった場合には、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の影響を受ける又は脅威に晒される他の参加諸国にも適当な指針及び援助を提供するものとする。
第十四条 政府間組織及び国際機関とWHOの協力
1.WHOは、適当な場合には、協定その他類似の取極の締結を含め、本規則の実施に際して他の権限ある政府間組織又は国際機関と協力し且つその活動を調整するものとする。
2.事象の通報又は検証又は事象に対する対応が一次的に他の政府間組織又は国際機関の権限の範囲内にある場合、WHOは公衆衛生のために十分な措置が適用されるよう確保するためにこれら組織又は機関とその活動を調整するものとする。
3.前項にかかわらず、本規則のいずれの規定もWHOが公衆衛生上の目的で助言、支援又は技術的その他の援助を提供することを妨げたり制限したりするものではない。
第三編-勧告
第十五条 暫定的勧告
1.第十二条に従い国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が発生していると認定された場合には、事務局長は、第四十九条に規定する手続に従い、暫定的勧告を行なうものとする。かかる暫定的勧告は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が終結したと認定された後であっても、適当な場合には修正又は延長することができる。このような場合、その再発を防止するため又は迅速な検知を行なうために必要であれば、別の暫定的勧告を行なうこともできる。
2.暫定的勧告には、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の発生した参加国又は他の参加国が疾病の国際的拡大を防止又は削減し国際交通に対する不要な阻害を回避するために人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び/又は郵送小包に関して実施する保健上の措置を含めることができる。
3.暫定的勧告は、第四十九条に規定する手続に従い、いつでも解除することができる。また暫定的勧告は、その発布後三箇月で自動的に満了するものとするが、更に三箇月を上限に期間を修正又は延長することができる。なお暫定的勧告は、当該勧告が関連する国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が認定されてから二回目の世界保健総会を超えて継続することはできない。
第十六条 恒常的勧告
WHOは、第五十三条に従い、日常的又は定期的に適用される適当な保健上の措置に関する恒常的勧告を行なうことができる。参加国は、疾病の国際的拡大を防止又は削減し国際交通に対する不要な阻害を回避するため、特定の進行中の公衆衛生リスクに対し、人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び/又は郵送小包に関して恒常的措置を適用することができる。WHOは、適当な場合には、第五十三条に従い、かかる勧告を修正又は解除することができる。
第十七条 勧告の基準
暫定的又は恒常的勧告を発布、修正又は解除する際、事務局長は次のことを考慮するものとする。
(a)直接関係する参加国の見解、
(b)場合に応じて、緊急委員会又は再検討委員会の助言、
(c)科学的諸原則及び入手可能な科学的証拠並びに情報、
(d)状況に適したリスクアセスメントに基づき、適当な保健水準を満たすと思われる合理的に利用可能な代替措置よりも国際交通を制限せず且つ人に立ち入らない保健上の措置、
(e)関連する国際的規準並びに文書、
(f)他の関連する政府間組織並びに国際機関によってとられる活動、及び
(g)その他事象に関連する適当な具体的情報。
暫定的勧告に関する限り、本条の項目(e)及び(f)に対する事務局長の考慮は、緊急性に応じて制限される場合もある。
第十八条 人、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び郵送小包に関する勧告
1.人に関してWHOが参加国に発する勧告には、次の助言を含めることができる。
− 特定の保健上の措置は勧告しない。
− 影響のある地域における旅行歴を再調査する。
− 医学的検査及びすべての検査機関での分析の証明書を再調査する。
− 医学的検査を要求する。
− 予防接種その他の予防法の証明書を再調査する。
− 予防接種その他の予防法を要求する。
− 疑いのある者を公衆衛生上の観察の下に置く。
− 疑いのある者に対して検疫措置その他の保健上の措置を実施する。
− 必要に応じて影響のある者を隔離し処置を実施する。
− 疑いのある者又は影響のある者の接触先の追跡を実施する。
− 疑いのある者又は影響のある対象者の入域を拒絶する。
− 影響のない者の影響のある地域への入域を拒絶する。及び
− 影響のある地域の人に対する出国時検査及び/又は制限を実施する。
2.手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び郵送小包に関してWHOが参加国に発する勧告には、次の助言を含めることができる。
− 特定の保健上の措置は勧告しない。
− 積荷目録及び輸送経路を再調査する。
− 検査を実施する。
− 感染又は汚染を除去するために出航時又は輸送中にとられた措置の証明書を再調査する。
− 媒介動物及び保有宿主を含め、感染又は汚染を除去するための処置を手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包又は人間の遺体に対して実施する。
− 人間の遺体の安全な取扱い及び輸送を確保するための特定の保健上の措置の利用。
− 隔離又は検疫措置を実施する。
− 別に可能な処置又は処理が成功裡に行なわれない場合、管理された状況下にある感染した又は汚染した又は感染したおそれのある対象である手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包の押収及び破壊。及び
− 入出国を拒絶する。
第四編-入域地点
第十九条 一般的義務
各参加国は、本規則に規定する他の義務のほか、次のことを行なわなければならない。
(a)指定した入域地点に関し、附録第一に記載された能力が第五条第一項及び第十三条第一項に規定する期間内に構築されるよう確保しなければならない。
(b)自国領域内の指定した入域地点における権限当局を特定しなければならない。及び、
(c)特定の潜在的な公衆衛生リスクに対応するために必要な場合には、媒介動物及び保有宿主を含む疾病の国際的拡大をもたらすおそれのある感染源又は汚染源に関する入域地点における関連データを、実行可能な限りWHOに提供しなければならない。
第二十条 海空港
1.参加国は、附録第一に記載された能力を構築する海空港を指定しなければならない。
2.参加国は、第三十九条及び附録第三に記載する様式に従って「船舶衛生管理免除証明書」並びに「船舶衛生管理証明書」が発行されるよう確保しなければならない。
3.各参加国は、次のことを行なう権限を付与した港のリストをWHOに送付しなければならない。
(a)船舶衛生管理証明書の発行及び附録第一並びに第三に言及する役務の提供。又は、
(b)船舶衛生管理免除証明書のみの発行。及び、
(c)船舶衛生管理免除証明書を受け取ることのできる港に船舶が到着するまで一箇月間の同証明書の延長。
各参加国は、リストされた港の地位に変更があった場合には、その一切の変更をWHOに通知しなければならない。
4.WHOは、関係参加国から要請があった場合には、適当な調査を行なった後、当該参加国の領域内の空港又は海港が本条第一項及び第三項に規定する要件に合致していることを
証明するための手配を行なうことができる。かかる証明は、当該参加国と協議した上で、WHOによる定期的な再検討に服せしめることができる。
5.WHOは、権限ある政府間組織及び国際機関と協働して、本条に基づく海空港のための証明指針を策定し公表するものとする。またWHOは、証明済みの海空港のリストも公表するものとする。
第二十一条 陸上越境地点
1.公衆衛生上の理由により正当化される場合には、参加国は、次のことを考慮に入れて、附録第一に規定する能力を構築する陸上越境地点を指定することができる。
(a)参加国の指定しようとする陸上越境地点における、他の入域地点と比較した場合の多種多様な国際交通の量及び頻度。及び、
(b)特定の陸上越境地点に到着する前の、国際交通の出発点又は通過点にあたる地域に存在する公衆衛生リスク。
2.国境を接する参加国は、次のことを検討することが望ましい。
(a)第五十七条に従い、陸上越境地点における疾病の国際的伝播の防止又は管理に関して二国間若しくは多国間の協定又は取極を締結すること。
(b)本条第一項に従い附録第一に規定する能力を構築するために、隣接する陸上越境地点を共同で指定すること。
第二十二条 権限当局の役割
1.権限当局は、次の義務を有するものとする。
(a)影響のある地域から入出する手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包及び人間の遺体が媒介動物並びに保有宿主を含む感染源又は汚染源に侵されない状態を維持するよう、それらを責任をもって監視しなければならない。
(b)入域地点において旅行者が使用する施設が衛生的であり、且つ、媒介動物並びに保有宿主を含む感染源又は汚染源のない状態を維持することを、実行しうる限り確保しなければならない。
(c)本規則の下で適当な限り、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包及び人間の遺体からの一切のねずみ族駆除、消毒、虫類駆除若しくは除染処置又は人的な衛生措置を責任をもって監督しなければならない。
(d)輸送機関の運行者に対し、できる限り事前に輸送機関に管理措置を適用する旨を伝達し、且つ、それを実施する方法に関する入手しうる限りの情報を書面により提供しなければならない。
(e)すべての汚染水若しくは食物、人若しくは動物の排泄物、廃水その他一切の汚染物質の輸送機関からの除去及び安全廃棄を責任をもって監督しなければならない。
(f)港、河川、運河、海峡、湖その他の国際水路の水を汚染しうる汚水、廃物、バラスト水その他潜在的に疾病を惹き起こす可能性のある物質の船舶からの廃棄を監視し且つ管理するために、本規則に合致する実行可能なあらゆる措置を講じなければならない。
(g)必要な検査及び医学的検査の実施を含め、入域地点における旅行者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包及び人間の遺体に関する業務提供者の業務を責任をもって監督しなければならない。
(h)予期されない公衆衛生上の事象に対処するため、効果的な偶発事態対策を有していなければならない。
(i)本規則に従ってとられた関連の公衛生上の措置についてIHR国家連絡窓口に連絡しなければならない。
2.影響のある地域から到着する旅行者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包及び人間の遺体に関してWHOが勧告する保健上の措置は、当該の影響のある地域からの出発時に適用された措置が不十分であったという確証可能な示唆及び/又は証拠がある場合には、到着時に再び適用することができる。
3.虫類駆除、ねずみ族駆除、消毒、除染その他の衛生措置は、人を傷つけず且つできる限り不快にさせないよう、或いは公衆衛生に影響するほど環境を壊さないよう、或いは手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品及び郵送小包を損壊しないような形で実施しなければならない。
第五編-公衆衛生上の措置
第一章-一般規定
第二十三条 到着及び出発時の保健上の措置
1.適用可能な国際的合意及び本規則の関連条文に従うことを条件として、参加国は、公衆衛生のため、到着又は出発時に次のものを要求することができる。
(a)旅行者に関しては、
(i)旅行者に連絡がとれるよう、旅行者の目的地に関する情報
(ii)到着の前に影響のある地域又はその近隣に旅行したか否か、或いは感染又は汚染に接触した可能性があるか否かを確認するための旅行者の旅程に関する情報、及び本規則に基づき要求される場合には旅行者の保健上の書類の再調査。及び/又は、
(iii)公衆衛生上の目的を達成するために最小限に立ち入った形で行われる、非侵襲的な医学的検査。
(b)手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品、郵送小包及び人間の遺体の検査。
2.参加国は、本条第一項に規定する措置又はそれ以外の措置により得られた公衆衛生リスクに関する証拠を基に、疑いのある対象又は影響のある旅行者に対し、本規則に従った追加的な保健上の措置、とくに疾病の国際的拡大を防止するという公衆衛生上の目的を達成すると思われる最小限に立ち入った及び侵襲的な医学的検査をケースバイケースで適用することができる。
3.第三十一条第二項に規定する場合を除き、及び参加国の法律及び国際的義務に従って、旅行者又はその親権者若しくは保護者による事前の明示的な説明を受けた上での同意
(インフォームド・コンセント)がない限り、本規則の下で一切の医学的検査、予防接種その他の予防法又は保健上の措置を旅行者に対して施してはならない。
4.本規則に基づき予防接種その他の予防法を受ける旅行者又はその親権者若しくは保護者は、参加国の法律及び国際的義務に従って、予防接種を施した場合若しくは施さなかった場合のリスク及びその他の予防法を利用した場合若しくは利用しなかった場合のリスクをすべて知らされなければならない。参加国は、自国の法律に従い、前記の要求事項を医療従事者に伝えなければならない。
5.疾病の伝播するリスクを伴う一切の医学的検査、医学的手続、予防接種その他の予防法は、そのリスクを最小限に抑えるため、確立した国内的若しくは国際的な安全指針及び規準に従ってのみ旅行者に対して実施又は投与しなければならない。
第二章-輸送機関及び輸送機関の運行者に関する特別規定
第二十四条 輸送機関の運行者
1.参加国は、輸送機関の運行者が次のことを確実に行なうよう、本規則に合致する実行可能なあらゆる措置を講じなければならない。
(a)WHOが勧告し自国が採択した保健上の措置を履行すること。
(b)輸送機関上で適用されるWHOが勧告し自国が採択した保健上の措置を旅行者に周知すること。
(c)自国が責任を有する輸送機関が媒介動物並びに保有宿主を含む感染源又は汚染源に侵されないよう永久に維持すること。証拠が検知された場合、感染源又は汚染源を管理するための措置の適用が要求されることもある。
2.本条に基づき輸送機関及び輸送機関の運行者に適用される特別規定を附録第四に規定する。また、媒介動物によって媒介される疾病に関して輸送機関及び輸送機関の運行者に適用される特別措置を附録第五に規定する。
第二十五条 輸送中の船舶及び航空機
第二十七条及び第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意によって許可されない限り、参加国は、次のものに対して保健上の措置を適用してはならない。
(a)影響のある地域から来航したのでない船舶であって、他国の領域内の港に行く途中に当該参加国の領域内の海運上の運河又は水路を通過するもの。かかる船舶に対してはいずれも、権限当局の監督の下、燃料、水、食糧及び供給物を積み込むことを許可しなければならない。
(b)当該参加国の管轄権内の水域を通過する、港又は沿岸に寄航しない船舶。
(c)当該参加国の管轄権内の空港に在る輸送中の航空機。但し、搭乗並びに上陸又は荷おろし並びに積み込みを行なわない空港の特定区域に立入りを制限することはできる。また、かかる航空機に対してはいずれも、権限当局の監督の下、燃料、水、食糧及び供給物を積み込むことを許可しなければならない。
第二十六条 輸送中の民間トラック、列車及びバス
第二十七条及び第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意によって許可されない限り、搭乗並びに上陸又は荷おろし並びに積み込みを行なわずに領域を通過する、影響のある地域から来たのでない民間トラック、列車又はバスに対しては保健上の措置を適用してはならない。
第二十七条 影響のある輸送機関
1.感染源及び汚染源を含む公衆衛生リスクの事実又は証拠に基づき臨床的徴候又は症状及び情報が輸送機関上で検知された場合には、権限当局は当該輸送機関を影響のある対象とみなし、次のことを行なうことができる。
(a)適当な場合には当該輸送機関に消毒、除染、虫類駆除又はねずみ族駆除を施し、或いは自身の監督の下でかかる処置実施させることができる。
(b)本規則に規定する公衆衛生リスクに対し十分な管理を確保するために採用された方法を個々のケースにおいて決定することができる。また、その手続のためにWHOが助言した手法又は物質がある場合には、権限当局が安全且つ信頼できると判断する他の手法がない限り、それを採用することが望ましい。
権限当局は、疾病の拡大を防止するために必要な場合には、輸送機関の隔離を含む追加的な保健上の措置を実施することができる。かかる追加的措置は、IHR国家連絡窓口に報告することが望ましい。
2.入域地点の権限当局が本条の下で要求される管理措置を実施できない場合であっても、次の条件を満たす場合には、影響のある輸送機関の出発を許可することができる。
(a)権限当局は、出発時に、申告された次の入域地点の権限当局に対し、(b)項に記載する種類の情報を通報しなければならない。及び、
(b)船舶の場合、検知した証拠及び要求した管理措置を船舶衛生管理証明書に記載しなければならない。
かかる船舶に対してはいずれも、権限当局の監督の下、燃料、水、食糧及び供給物を積み込むことを許可しなければならない。
3.影響のある対象とみなされた輸送機関について権限当局が次の点につき満足した場合には、そのようにみなすことを止めなければならない。
(a)本条第一項に規定する措置が効果的に実施された場合。及び、
(b)公衆衛生リスクを構成しうる条件が当該輸送機関上に存在しない場合。
第二十八条 入域地点の船舶及び航空機
1.第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意の規定に従い、船舶又は航空機はすべての入域地点への寄航を公衆衛生上の理由によって妨げられてはならない。
但し、入域地点が本規則に規定する保健上の措置を適用するよう整備されていない場合には、船舶又は航空機に対し措置可能な最寄りの適当な入域地点へ自己の責任において進航するよう命ずることができるが、当該船舶又は航空機がかかる進航を安全に行なえないと思われる運航上の問題を抱えている場合はこの限りではない。
2.第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意の規定に従い、船舶又は航空機は公衆衛生上の理由から自由交通許可を参加国によって拒絶されてはならない。とくに、船舶又は航空機は乗船若しくは上陸、貨物若しくは用品の荷おろし若しくは積み込み、又は燃料、水、食糧及び供給物の積み込みを妨げられてはならない。但し参加国は、検査及び、もし船舶又は航空機上に感染源若しくは汚染源が検知された場合には必要な消毒、除染、虫類駆除、ねずみ族駆除その他当該感染若しくは汚染の拡大を防止するために必要な措置を実施することを条件として自由交通許可を付与することができる。
3.参加国は、実行しうる限り、前項の規定を条件として、船舶又は航空機に対し、到着前にそれらから受理した情報に基づいて、その到着による疾病の導入又は拡大がないと判断したときは、無線その他の通信手段による自由交通許可の付与を認めなければならない。
4.船長又は機長又はその代理人は、感染性疾病の徴候を示す病状又は公衆衛生リスクが船舶又は航空機上で発生したことを知り得た場合には、速やかにその一切の病状又は公衆衛生リスクの証拠を、行先地の港又は空港に到着する前に可能な限り早急に、港又は空港の管制に連絡しなければならない。かかる情報は、直ちに当該港又は空港の権限当局に送達されなければならない。緊急を要する状況の場合、かかる情報は当該船長又は機長から直接、関係の港又は空港の当局に伝達されることが望ましい。
5.航空機の機長又は船舶の船長の制御できない理由のため、疑いのある又は影響のある航空機又は船舶が着陸を予定していた空港以外の場所に着陸する場合又は停泊を予定していた港以外の場所に停泊する場合には、次のことを実施しなければならない。
(a)当該航空機の機長又は船舶の船長又はその他の責任者は、最寄りの権限当局と遅滞なく連絡をとるためにあらゆる努力をしなければならない。
(b)権限当局は、着陸の通報を受けたとき直ちにWHOが勧告する保健上の措置又は本規則に規定するその他の保健上の措置をとることができる。
(c)緊急目的又は権限当局と連絡をとるために必要な場合を除き、航空機又は船舶のいかなる搭乗者又は乗船者も、当該権限当局によって許可されない限り、その附近を離れ又いかなる貨物もその附近から移動させてはならない。
(d)権限当局の要求するすべての保健上の措置が完了したとき、その航空機又は船舶は、当該保健措置に関する限り、着陸又は停泊予定であった空港又は港へ進行するか、又は技術的理由のためにそれができない場合には便宜な位置にある他の空港又は港へ進行するかのいずれかを行なうことができる。
6.本条の規定にかかわらず、船長又は機長は、搭乗又は乗船している旅行者の保健及び安全のため必要な緊急措置をとることができる。船長又は機長は、本項に基づいてとった一切の措置について可能な限り速やかに権限当局に通報しなければならない。
第二十九条 入域地点の民間トラック、列車及びバス
WHOは、参加諸国と協議して、入域地点における民間トラック、列車及びバス
への保健上の措置の適用及び陸上越境地点の通行のための指針を策定しなければならない。第三章-旅行者に関する特別規定
第三十条 公衆衛生上の観察下にある旅行者
第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意によって許可される場合には、到着時に公衆衛生上の観察下に置かれた疑いのある旅行者は、差し迫った公衆衛生リスクをもたらさない限り、引き続き国際的な旅行を行なうことができる。但しその場合、参加国は、目的地の入域地点を管轄する権限当局に対し、当該旅行者の到着予定を知る限りにおいて通報する。また旅行者は、到着した時に関係当局に出頭しなければならない。
第三十一条 旅行者の入域に係る保健上の措置
1.侵襲的な医学検査、予防接種その他の予防法は、旅行者が参加国の領域に入域する条件としてこれを要求してはならない。但し、第三十二条、四十二条及び四十五条に従うことを条件として、次の場合に本規則が参加諸国に対し医学的検査、予防接種その他の予防法又は予防接種その他の予防法の証明書を要求することを排除していないときはこの限りではない。
(a)公衆衛生リスクが存在するか否かを認定するのに必要な場合、
(b)一時滞在又は永住を希望するすべての旅行者に対し入域の条件とする場合、
(c)第四十三条又は附録第六及び第七に従ってすべての旅行者に対し入域の条件とする場合、又は
(d)第二十三条に従ってそれが実施される場合。
2.もし本条第一項に基づき参加国が医学的検査又は予防接種その他の予防法を受けるよう要求する旅行者がかかる一切の措置に同意しなかった場合、或いは第二十三条第一項(a)に規定する情報又は書類の提出を拒んだ場合には、当該関係参加国は、第三十二条、四十二条及び四十五条に従うことを条件として、当該旅行者の入域を拒否することができる。差し迫った公衆衛生リスクの証拠が存在する場合、参加国は、自国の法律に従いかかるリスクを管理するのに必要な範囲で、次のものを受けるよう当該旅行者に強制又は第二十三条第三項に従い助言することができる。
(a)公衆衛生上の目的を達成すると思われる、最小限に立ち入った侵襲的な医学的検査。
(b)予防接種その他の予防法。或いは、
(c)隔離、検疫拘束又は旅行者を公衆衛生上の監察下に置くことを含め、疾病の拡大を阻止又は管理するための確立した追加的保健措置。
第三十二条 旅行者の扱い
本規則に基づく保健上の措置の実施にあたり、参加諸国は旅行者をその尊厳、人権及び基本的自由を尊重して扱い、且つ、かかる措置に伴う不快感や苦痛を最小限に抑えなければならない。かかる扱いには、次のものが含まれる。
(a)すべての旅行者を丁重且つ丁寧に扱うこと。
(b)旅行者の性別、社会文化的、人種的又は宗教的関係に配慮すること。
(c)検疫措置、隔離又は医学的検査その他公衆衛生のための措置を受ける旅行者に対しては、十分な食事、水、適当な宿泊施設、衣類、手荷物その他の所有物の保全、適当な医療、可能な場合には理解できる言語による必要な連絡手段、及びその他の適当な援助を提供又は準備すること。
第四章-物品、コンテナ及びコンテナ積み込み区域に関する特別規定
第三十三条 輸送中の物品
第四十三条に従うことを条件として又は適用可能な国際的合意によって許可されない限り、生きている動物以外の物品で積換えすることなく通過するものは、本規則に基づく保健上の措置に付され又は公衆衛生上の目的で留置されることはない。
第三十四条 コンテナ及びコンテナ積み込み区域
1.参加諸国は、コンテナの荷主が、とくに荷詰の過程にある間、媒介動物及び保有宿主を含む感染源又は汚染源の存在がない状態に維持された国際交通用のコンテナを使用するよう、実行しうる限り確保しなければならない。
2.参加諸国は、コンテナ積み込み区域が、媒介動物及び保有宿主を含む感染源又は汚染源の存在がない状態に維持されるよう、実行しうる限り確保しなければならない。
3.参加国の見解において国際的なコンテナ交通の量が十分に多いときはいつでも、権限当局は、本規則に規定された義務を履行するのを確保する目的でコンテナ積み込み区域及びコンテナの衛生状態をアセスメントするため、検査を含め、本規則に合致するあらゆる実行可能な措置をとらなければならない。
4.コンテナを検査及び隔離する施設は、できる限りコンテナ積み込み区域で利用できるようにしなければならない。
5.コンテナの荷受人及び荷送人は、コンテナを重複使用する場合、交差汚染を回避するためにあらゆる努力をしなければならない。
第六編-保健上の書類
第三十五条 一般規則
本規則に規定する又はWHOの勧告する以外の保健上の書類は、国際交通に際して要求してはならない。但し、本条は、一時滞在又は永住を求める旅行者、及び適用可能な国際的合意に基づく国際取引上の物品又は貨物の公衆衛生上の状態に関する書類要求には適用されないものとする。権限当局は、及び旅行者の健康に関する接触情報様式および質問票(第二十三条に規定する要求事項に合致したもの)に完全に記入するよう旅行者に要求することができる。
第三十六条 予防接種その他の予防法の証明書
1.本規則又は関係の決議並びに証明書に従って旅行者に施される予防接種その他の予防法は、附録第六及び特定の疾病に関する附録第七(適用がある場合)の諸規定に準拠したものでなければならない。
2.附録第六及び附録第七(適用がある場合)に準拠して交付された予防接種その他の予防法の証明書を保有する旅行者は、たとえ影響のある地域から渡来した者であっても、当該証明書に言及された疾病を理由に入域を拒否されてはならない。但し、当該予防接種その他の予防法が効果的でないという検証可能な示唆及び/又は証拠を権限当局が有する場合はこの限りでない。
第三十七条 海運保健明告書
1.船長は、参加国の領域内の初の寄航港に到着する前に船内の保健状況を確かめ、また、当該参加国が要求しない場合を除き、到着に際し又は当該船舶の装備上参加国が事前の提出を要求する場合には船舶の到着前に、海運保健明告書を完成してその港の権限当局に提出しなければならない。また、船医が乗っている場合は、その船医が、明告書に副署しなければならない。
2.船長は、船医が乗っている場合はその船医も、国際通行中の船内の保健状態に関し、権限当局が要求するいかなる情報をも提供しなければならない。
3.海運保健明告書は、附録第八に記載する様式に従わなければならない。
4.参加国は、
(a)すべての到着船舶による海運保健明告書の提出を省略するか、又は、
(b)影響のある地域から到着する船舶に関する勧告に従い海運保健明告書の提出を要求するか、或いは感染し若しくは汚染されていると思われる船舶に対しそれを要求するか、
のいずれかを決定できる。
参加国は、船舶の運航者又はその代理人にかかる要求を告知しなければならない。
第三十八条 航空機総合明告書の保健欄
1.飛行中又は参加国の領域内の初の空港に着陸した際、機長又はその代理人は、当該参加国が要求しないときを除き、その能力の最善を尽くして、附録第九に明記する様式に準拠した航空機総合明告書の保健欄を完成し、当該空港の権限当局に提出しなければならない。
2.機長又はその代理人は、国際通行中の機内の保健状態及び当該航空機に対して適用されたすべての保健上の措置に関し、当該参加国が要求するいかなる情報をも提供しなければならない。
3.参加国は、
(a)すべての到着航空機による航空機総合明告書の保健欄の提出を省略するか、又は、
(b)影響のある地域から到着する航空機に関する勧告に従い航空機総合明告書の保健欄の提出を要求するか、或いは感染し若しくは汚染されていると思われる航空機に対しそれを要求するか、
のいずれかを決定できる。
参加国は、航空機の運航者又はその代理人にかかる要求を告知しなければならない。
第三十九条 船舶衛生証明書
1.船舶衛生管理免除証明書及び船舶衛生管理証明書の有効期間は、最大六箇月とする。この期間は、港で要求される検査又は管理措置が完了しない場合、一箇月間延長することができる。
2.有効な船舶衛生管理免除証明書又は船舶衛生管理証明書が作成されず又は公衆衛生リスクの証拠が船内で検知された場合には、参加国は第二十七条第一項に規定する手続に入ることができる。
3.本条に言及する証明書は、附録第三の様式に準拠したものでなければならない。
4.管理措置は、できる限り、船舶及び船倉が空のときに実施しなければならない。脚荷
(バラスト)しかない船舶の場合は、その状態で実施するものとする。
5.管理措置が要求され且つ満足に完了されたとき、権限当局は、証拠が検知され管理措置が実施された旨を記載した船舶衛生管理証明書を発給するものとする。
6.権限当局は、媒介体及び保有宿主を含め船舶に感染又は汚染がないことを確認した場合、第二十条に基づき指定されたいずれかの港において船舶衛生管理免除証明書を発給することができる。同証明書は通常、船舶及び船倉が空のとき、又は単にバラストその他完全な船倉の検査を妨げないような種類や配置の物しかないときに船舶の検査が実施された場合に限り、発給されるものとする。
7.管理措置が実施された港の権限当局が、管理作業の際に満足な結果を得ることができない状況があったと認めた場合、当該権限当局は作成する船舶衛生管理証明書にその旨を記入しなければならない。
第七編-料金
第四十条 旅行者に対する保健上の措置の料金
1.一時滞在又は永住を希望する旅行者を除き、及び本条第二項の規定に従うことを条件として、参加国は、本規則に従い、公衆衛生のための次の事項に該当する措置については料金を課してはならない。
(a)被検者たる旅行者の健康状態を確認するため参加国が要求できる本規則に定めた医学的検査又は補助的検査。
(b)到着した際に旅行者に施された予防接種その他の予防法で、公表された要求事項にないもの、又は要求事項にはあるが実施の十日前以降にそれが公表された場合。
(c)旅行者の適切な隔離又は検疫措置の要求事項。
(d)適用された措置の内容及び日付が明記された、旅行者に対して発給される証明書。又は、
(e)旅行者の携帯する手荷物に適用されるすべての保健上の措置。
2.主に旅行者のために為されるものを含め、本条第一項に掲げる事項以外の保健上の措置については、参加国は料金を課することができる。
3.本規則に規定する保健上の措置を旅行者に適用するために料金を課する場合は、各参加国において、それぞれ単一の料金表によるものとし、且つ料金はすべて、
(a)この料金表に従わなければならない。
(b)行なった業務の実費を越えてはならない。及び、
(c)関係旅行者の国籍、住所若しくは在住期間による差別を設けることなく徴収しなければならない。
4.料金表の制定及びその改訂は、少なくとも実施の十日前に公表しなければならない。
5.本規則のいかなる規定も、本条第一項の保健上の措置を提供するに際して要した経費の弁済を、参加国が次の者に要求するのを妨げるものではない。
(a)従業員に関して、その輸送機関の運行者又は所有者。又は、
(b)適用される保険の業者。
6.いかなる情況であれ、本条第一項又は第二項に掲げる料金の支払いまでの間、旅行者又は輸送機関の運行者が参加国の領域を出立する権利を否定してはならない。
第四十一条 手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包に係る料金
1.本規則に規定する保健上の措置を手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包に適用するために料金を課する場合は、各参加国において、それぞれ単一の料金表によるものとし、且つ料金はすべて、
(a)この料金表に従わなければならない。
(b)行なった業務の実費を越えてはならない。及び、
(c)関係手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包の国籍、旗、登録若しくは所有権による差別を設けることなく徴収しなければならない。特に、自国と他国の手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品又は郵送小包との間に差別を設けてはならない。
2.料金表の制定及びその改訂は、少なくとも実施の十日前に公表しなければならない。
第八編-一般規定
第四十二条 保健上の措置の実施
本規則に従ってとられる保健上の措置は直ちに開始し、遅滞なく完了し、透明かつ無差別に適用しなければならない。
第四十三条 保健上の追加措置
1.本規則は、参加国が、自国の関連国内法及び国際法上の義務に従って、特定の公衆衛生リスク又は国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に対応して、次のような保健上の措置を実施するのを妨げるものではない。
(a)WHOの勧告と同じかそれ以上の保健水準を達成するもの。又は、
(b)第二十五条、第二十六条、第二十八条第一項並びに第二項、第三十条、第三十一条第一項(c)号及び第三十三条により別段禁止されているもの。
但し、かかる措置は、本規則に合致することを条件とする。
また、かかる保健上の措置は、適当な保健水準を満たすと思われる合理的に利用可能な代替措置よりも国際交通を制限せず且つ人に対して侵襲的又は立ち入ったものであってはならない。
2.参加国は、本条第一項に言及する保健上の措置又は第二十三条第二項、第二十七条第一項、第二十八条第二項及び第三十一条第二項(c)号に基づく保健上の追加措置を実施するか否かの決定に際しては、次のものに基づかなければならない。
(a)科学的諸原則。
(b)人の健康にリスクがあるという入手可能な科学的証拠、又はその証拠が不十分な場合には、WHOその他の関連政府間組織及び国際機関からのものを含む入手可能な情報。及び、
(c)WHOから入手可能な一切の具体的指針又は助言。
3.本条第一項に言及する保健上の追加措置で国際交通を大幅に阻害するものを実施しようとする参加国は、その公衆衛生上の根拠と関連する科学的情報をWHOに提供しなければならない。WHOは、その情報を他の参加諸国と共有し、さらに実施される保健上の措置に関する情報も共有しなければならない。本条の適用上、大幅な阻害とは、国境を越える旅行者、手荷物、貨物、コンテナ、輸送機関、物品等の入出国の拒絶、又はその二十四時間以上の遅延を一般的に意味する。
4.WHOは、本条第三項並びに第五項に従い提供された情報及びその他の関連情報をアセスメントした後、関係参加国に対し、当該措置の適用を再検討するよう要請することができる。
5.本条第一項及び第二項に言及する保健上の追加措置で国際交通を大幅に阻害するものを実施する参加国は、実施の四十八時間以内に、その措置及び保健上の根拠をWHOに通報しなければならない。但し、それらが暫定的又は恒常的勧告に含まれる場合にはこの限りでない。
6.本条第一項又は第二項に従い保健上の措置を実施した参加国は、三箇月以内に、WHOの助言及び本条第二項の基準を斟酌してその措置を見直すものとする。
7.本条第一項又は第二項に従ってとられる措置の影響を受けるすべての参加国は、第五十六条に規定する自国の権利を損なうことなく、かかる措置を実施する参加国に協議を申し入れることができる。この協議の目的は、当該措置の基礎である科学的情報並びに公衆衛生上の根拠を明確にし、相互に受け入れられる解決を模索することにある。
8.本条の規定は、集会に参加する旅行者に対する措置の実施にも適用することができる。
第四十四条 協働及び援助
1.参加諸国は、次の事項において、できる限り相互に協働することを約束する。
(a)本規則に規定する事象の検知並びにアセスメント、及びそれらに対する対策。
(b)とくに本規則の下で要求される公衆衛生上の能力の構築、強化及び維持における技術協力及び後方支援の提供又は促進。
(c)本規則に基づく義務の履行を促進するための財政的資源の動員。及び、
(d)本規則を実施するための法案その他の法的行政的規定の法律化。
2.WHOは、要請があれば、次の事項においてできる限り参加国と協働するものとする。
(a)本規則の効果的実現を促進するための公衆衛生上の能力のアセスメント。
(b)参加国に対する技術協力及び後方支援の提供又は促進。及び、
(c)開発途上諸国が附録第一に掲げる能力を構築し、強化し且つ維持するのを支援するための財政的資源の動員。
3.本条に規定する協働は、二国間関係、地域的ネットワーク、WHOの地域事務所、政府間組織及び国際機関を含む多様な経路を通じて実現することができる。
第四十五条 個人データの取扱い
1.参加国が本規則に従い他の参加国又はWHOから収集し又は受理した特定の又は特定可能な人に関する保健情報は秘密に保持するものとし、国内法によって要求される場合には匿名のものに加工しなければならない。
2.第一項の規定にかかわらず、公衆衛生リスクをアセスメントし及び管理するために不可欠な場合には、参加国は個人データを開示及び加工することができる。但しその場合、参加国は国内法に従い、WHOとともに、個人データについて次のことを確保しなければならない。
(a)公正かつ合法的に加工し、さらに前記の目的に両立しない仕方で加工しないこと。
(b)前記の目的に照らして十分かつ妥当で、それから逸脱しないこと。
(c)正確かつ必要に応じて最新の状態に維持すること。不正確又は不完全なデータは消去又は訂正されるよう、あらゆる合理的な措置をとらなければならない。及び、
(d)必要以上に長く保持しないこと。
3.WHOは、要請があれば、本条に言及する個人データを、不当に遅滞又は費用請求することなく解り易い形式で、できる限り個人に提供しなければならない。また、必要があれば、訂正を認めなければならない。
第四十六条 生物体、試薬その他診断のための物質の輸送及び取扱い
参加諸国は、国内法に従い且つ関連する国際的指針を考慮しつつ、本規則に規定する検査及び公衆衛生対策上の目的のため、生物体、診断用標本、試薬その他の物質の輸送、入出国、加工及び処分を容易に行なえるようにしなければならない。
第九編-IHR専門家名簿、緊急委員会及び再検討委員会
第一章-IHR専門家名簿
第四十七条 構成
事務局長は、あらゆる関連分野の専門家からなる名簿(以下「IHR専門家名簿」という)を作成するものとする。事務局長は、本規則に別段規定しない限り、専門家アドバイザリーパネル及び委員会のためのWHO規則(以下「WHOアドバイザリーパネル規則」という)に従い、IHR専門家名簿の登録者を任命するものとする。さらに事務局長は、各参加国から要請があればそれぞれ登録者一名を、また適当な場合には関連する政府間並びに地域的経済統合組織から提案された専門家を任命するものとする。関係参加国は、事務局長に対し、自国の提案する各登録専門家の資格及び専門分野を通告しなければならない。事務局長は、参加国及び関連する政府間並びに地域的経済統合組織に、IHR専門家名簿の構成を定期的に通知するものとする。
第二章-緊急委員会
第四十八条 任務及び構成
1.事務局長は緊急委員会を設置し、緊急委員会は事務局長の要請に基づき、次のものに関する見解を提供するものとする。
(a)事象が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するか否か。
(b)国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の終結。
(c)暫定的勧告の発布、修正、延長又は解除の提案。
2.緊急委員会は、IHR専門家名簿から事務局長が選任した専門家及び適当な場合には本機関の他の専門家アドバイザリーパネルから構成されるものとする。事務局長は、特定の事象及びその帰結を考慮して委員会の継続性確保するという観点から委員の任期を決定するものとする。事務局長は、個々の会期ごとに必要な専門知識並びに経験を考慮し且つ衡平な地理的配分の原則に適切に配慮して、緊急委員会の委員を選任するものとする。なお、緊急委員会の少なくとも一名の委員は、自国の領域で事象が発生した参加国が指名した専門家であることが望ましい。
3.事務局長は、自身の主導又は緊急委員会からの要請により、委員会に助言を行なう一名又はそれ以上の技術的専門家を任命することができる。
第四十九条 手続
1.事務局長は、発生している特定の事象に関連する専門知識及び経験分野を考慮して、第四十八条第二項に規定する者の中から専門家を選任し、緊急委員会の会合を召集するものとする。本条の適用上、緊急委員会の「会合」には、電話会議、テレビ会議又は電子通信を含めることができる。
2.事務局長は、議題及び事象に関する関連情報(参加国から提供された情報のほか、事務局長が提案する暫定的勧告も含まれる)を緊急委員会に提供するものとする。
3.緊急委員会は議長を選出する。また、各会合の後、議事録及び勧告に関する助言を含む成果の概要報告書を作成するものとする。
4.事務局長は、緊急委員会で見解を述べさせるため、自国の領域で事象が発生している参加国を会合に招請するものとする。そのために事務局長は、必要な通知期間を確保して事前に、当該参加国に緊急委員会会合の日程並びに議題を通告するものとする。但し、関係参加国は、自国の見解を提出するためであろうと、緊急委員会会合の延期を求めることはできない。
5.緊急委員会の見解は検討のため事務局長に提出され、事務局長は当該事項について終的な決定を行なうものとする。
6.事務局長は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の認定並びに終結、関係参加国によってとられたすべての保健上の措置、暫定的勧告及び勧告の修正、延長並びに解除を、緊急委員会の見解とともに、各参加国に伝達するものとする。また事務局長は、暫定的勧告及びその修正、延長並びに解除を参加国及び関係の国際機関を通じて輸送機関の運行者にも告知するものとする。さらに事務局長は、その後、前記の情報及び勧告を一般に公表するものとする。
7.自国の領域で事象が発生した参加国は、事務局長に対し、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の終結及び/又は暫定的勧告の解除を提案でき、且つ、その旨を緊急委員会に提出することができる。
第三章-再検討委員会
第五十条 任務及び構成
1.事務局長は再検討委員会を設置し、緊急委員会は次の任務を実施するものとする。
(a)本規則の修正に関し、事務局長に技術的な勧告を行なう。
(b)恒常的勧告及びその修正又は解除に関し、事務局長に技術的な助言を提供する。
(c)本規則の効果に関し事務局長が諮問した一切の事項について、事務局長に技術的な助言を提供する。
2.再検討委員会は、本条に別段規定する場合を除き、専門家の委員会としてWHOアドバイザリーパネル規則に従うものとする。
3.再検討委員会の委員は、IHR専門家名簿に登録されている者及び適当な場合には本機関の他のアドバイザリーパネルのメンバーから事務局長が選任するものとする。
4.事務局長は再検討委員会会合に招請する委員の数を確定し、会合の日程並びに議題を決定した上で、委員会を召集するものとする。
5.事務局長は、会期の作業期間内に限って再検討委員会の委員を任命するものとする。
6.事務局長は、衡平な地理的配分の原則、性別、専門家の出身国(先進国か開発途上国
か)、世界のあらゆる方面の科学的見解、方法論ならびに実戦経験の多様性、及び適切な学際的バランスを配慮して、再検討委員会の委員を選任するものとする。
第五十一条 任務の遂行
1.再検討委員会の決定は、出席し投票する委員の過半数により行なわれるものとする。
2.事務局長は、加盟国、国際連合並びにその専門機関の他、関連政府間組織又はWHOと公式に関係をもつ非政府組織(NGO)の代表を委員会の会期会合に招請するものとする。前記の代表は覚書を提出し、及び議長の同意を得て討議の主題について意見を表明することができるが、投票権は有しないものとする。
第五十二条 報告書
1.再検討委員会は、会期ごとに、委員会の見解及び助言を記載した報告書を作成するものとする。かかる報告書は、会期が終了する前に、再検討委員会によって承認されなけれ
ばならない。また、委員会の見解及び助言は本機関に委任を行なうものではなく、事務局長への助言として作成されるものである。報告書の文言は、委員会の同意なく修正することはできない。
2.再検討委員会の認定が全会一致でない場合には、いずれの委員も専門家としての独自の反対意見を個別又は合同の報告書に表明することができる。同報告書には何故異なる意見が生じたかの理由も記載され、委員会の報告書の一部となる。
3.再検討委員会の報告書は事務局長に提出され、事務局長は、検討及び行動のため、その見解と助言を保健総会又は執行理事会に伝達するものとする。
第五十三条 恒常的勧告のための手続
事務局長は、特定の公衆衛生リスクに関して恒常的勧告が必要かつ適当と考えるときは、再検討委員会の見解を諮問するものとする。第五十条乃至五十二条の関連条項のほか、次の規定が適用される。
(a)事務局長、又は事務局長を通じて参加国は、恒常的勧告案及びその修正若しくは解除案を再検討委員会に提出することができる。
(b)いずれの参加国も、再検討委員会による検討のため、関連情報を提出することができる。
(c)事務局長は、すべての参加国、政府間組織又はWHOと公式に関係をもつ非政府組織(NGO)に対し、再検討委員会が指定した恒常的勧告案の主題に関し自ら保有する情報を再検討委員会に提出するよう要請することができる。
(d)事務局長は、緊急委員会からの要請又は自身の主導により、再検討委員会に助言を行なう一名又はそれ以上の技術的専門家を任命することができる。但し、これら専門家は投票権を有しないものとする。
(e)恒常的勧告に関する再検討委員会の見解及び助言を含む報告書は、検討及び決定のため事務局長に提出するものとする。事務局長は、再検討委員会の見解と助言を保健総会に伝達するものとする。
(f)事務局長は、すべての恒常的勧告及び勧告の修正又は解除を、再検討委員会の見解とともに、各参加国に伝達するものとする。
(g)恒常的勧告は、検討のため、事務局長により次の保健総会に提出されるものとする。
第十編- 終規定
第五十四条 報告及び見直し
1.参加国及び事務局長は、保健総会が決定したところに従い、本規則の実施を保健総会に報告しなければならない。
2.保健総会は、本規則の効果を定期的に見直すものとする。そのために保健総会は、事務局長を通じて再検討委員会の助言を求めることができる。初の見直しは、本規則の発効後遅くとも五年以内に行なうものとする。
3.WHOは、附録第二の効果を見直し及び評価するための検討を定期的に行なうものとする。初の見直しは、本規則の発効後遅くとも一年以内に開始するものとする。かかる見直しの結果は、それが適当な場合には、検討のため保健総会に提出されるものとする。
第五十五条 修正
1.本規則に対する修正は、いずれかの参加国又は事務局長がこれを提案することができる。
かかる修正提案は、検討のため保健総会に提出されるものとする。
2.事務局長は、すべての修正提案の本文を、検討のために提出される保健総会の少なくとも四箇月前までに全参加国に伝達するものとする。
3.本条に従い保健総会により採択される本規則の修正は、WHO憲章第二十二条及び本規則の第五十九条乃至六十四条に規定されているものと同じ条件に基づき、且つ同じ権利義務の下で、すべての参加国に対して発効するものとする。
第五十六条 紛争の解決
1.本規則の解釈又は適用に関し二またはそれ以上の参加国間で紛争が生じた場合には、関係参加国は当該紛争を先ず交渉その他当事国が選択する周旋、仲介又は調停を含む平和的手段により解決しなければならない。また紛争当事国は、合意に到達しなかったからといって、引き続き解決を追求する責任を免れるものではない。
2.本条第一項に規定する手段によって紛争が解決されなかった場合には、関係参加国は当該紛争を事務局長に付託することができ、この場合、事務局長はそれを解決するためにあらゆる努力を行なうものとする。
3.参加国は、本規則の解釈若しくは適用に関する自国が当事者である一切の紛争、又は同じ義務を受諾した他のいずれかの参加国が当事者である特定の紛争について、仲裁を強制的なものとして受諾する旨を、書面によりいつでも事務局長に宣言することができる。仲裁は、仲裁請求が為されたときに有効な「二国間の紛争を仲裁するための常設仲裁裁判所選択規則」に従って行なわれるものとする。仲裁を強制的なものとして受諾することに同意した参加国は、仲裁の裁定を拘束的かつ終的なものとして受諾しなければならない。
事務局長は、適当な場合には、かかる付託について保健総会に通知するものとする。
4.本規則のいかなる規定も、自国が当事国である国際的な合意に基づき他の国際組織又は国際合意の下で設定された紛争解決枠組に訴える参加国の権利を妨げるものではない。
5.WHOと一又はそれ以上の参加国との間で本規則の解釈又は適用に関して紛争が生じた場合には、問題を保健総会に付託するものとする。
第五十七条 他の国際的合意との関係
1.参加諸国は、本規則と他の関連する国際的合意が両立しうるように解釈すべきであることを認識している。本規則の規定は、他の国際的合意に規定された参加国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
2.本条第一項に従うことを条件として、本規則のいずれの規定も、保健状況又は地理的、社会的若しくは経済的状況からもたらされる一定の利益を共有する参加国が、本規則の適用性を高めるために特別の条約又は取極を締結することを妨げるものではない。かかる条約又は取極には、とくに次の事項に関するものが含まれる。
(a)隣接する異なる国の領域間での、公衆衛生上の情報の直接かつ迅速な交換。
(b)国際沿岸交通及び関係国の管轄水域内の国際交通に適用される保健上の措置。
(c)共通の国境を有する異なる国の接続領域に適用される保健上の措置。
(d)特別に採用された輸送手段によって影響のある人又は人間の遺体を運ぶための取極。
及び、
(e)物品から疾病の原因となる因子を除去するために行なわれる、ねずみ族駆除、虫類駆除、消毒、除染その他の処置。
3.地域的な経済統合組織に加盟している参加国は、本規則に規定する義務を損なうことなく、当該組織において拘束力を有する共通規則を相互に適用しなければならない。
第五十八条 国際衛生協定及び規則
1.本規則は、第六十二条の規定及び後段に規定する除外例を条件とし、本規則によって拘束される諸国の間及びそれらの諸国とWHOとの間において、次の国際衛生協定及び規則の規程に代るものとする。
(a)千九百二十六年六月二十一日パリで署名された国際衛生条約。
(b)千九百三十三年四月十二日ハーグで署名された国際航空衛生条約。
(c)千九百三十四年十二月二十二日パリで署名された健全証書の廃止に関する国際取極。
(d)千九百三十四年十二月二十二日パリで署名された健全証書について領事査証の廃止に関する国際取極。
(e)千九百三十八年十月三十一日パリで署名された千九百二十六年六月二十一日の国際衛生条約を変更する条約。
(f)千九百四十四年十二月十五日ワシントンで署名のために開放された千九百二十六年六月二十一日の国際衛生条約を変更する千九百四十四年の国際衛生条約。
(g)千九百四十四年十二月十五日ワシントンで署名のために開放された千九百三十三年四月十二日の国際衛生条約を変更する千九百四十四年の国際航空衛生条約。
(h)ワシントンで署名された千九百四十四年の国際衛生条約を延長する千九百四十六年四月二十三日の議定書。
(i)ワシントンで署名された千九百四十四年の国際航空衛生条約を延長する千九百四十六年四月二十三日の議定書。
(j)千九百五十一年の国際衛生規則並びに千九百五十五年、千九百五十六年、千九百六十年、千九百六十三年及び千九百六十五年の追加規則。及び、
(k)千九百六十九年の国際衛生規則並びに千九百七十三年及び千九百八十一年の修正。
2.千九百二十四年十一月十四日ハバナで署名された、汎米衛生法典は、第二条、第九条、第十条、第十一条、第十六条から第五十三条まで、第六十一条及び第六十二条を除き、引き続き効力を有する。それらの諸条項については、本条第一項中の関連部分を適用する。
第五十九条 発効、拒絶又は留保のための期限
1.本規則又はその修正に対する拒絶又は留保のためWHO憲章第二十二条の執行上設けられる期間は、WHOが本規則又は本規則の修正を採択した旨事務局長が通告する日から十八箇月とする。かかる期間の満了後事務局長が受取る拒絶又は留保はいずれも効力を有しない。
2.本規則は、本条第一項に掲げる通告の日から二十四箇月後に効力を生ずるものとする。但し、次の場合はこの限りではない。
(a)国が第六十一条に従って本規則又はその修正を拒絶した場合。
(b)国が留保を付した場合。この場合、本規則は第六十二条の規定するところに従って発効するものとする。
(c)国が本条第一項に掲げる事務局長による通告の日以後にWHOに加盟し、まだ本規則の参加国でない場合。この場合、本規則は第六十条の規定するところに従って発効するものとする。及び、
(d)WHOの加盟国ではない国が本規則を受諾する場合。この場合、本規則は第六十四条第一項に従って発効するものとする。
3.本条第二項に規定する期限内に、国が自国の国内の制定法及び行政規定を本規則に完全に合致するよう調整できない場合には、その国は本条第一項に指定する期間内に残りの調整に関する宣言を事務局長に提出し、さらに当該参加国に対して本規則が発効してから十二箇月以内にそれを達成しなければならない。
第六十条WHOの新加盟国
第五十九条第一項に掲げる事務局長による通告の日以後にWHOに加盟する国で、まだ本規則の参加国でないものは、WHOの加盟国となり事務局長によって通告された日から十二箇月以内に、本規則についての拒絶又は留保を伝えることができる。拒絶されない限り、本規則は、この期間が満了した時、第六十二条並びに第六十三条の規定に従いその国に関して効力を生ずる。いずれの場合も、第五十九条第一項に掲げる通告の日から二十四時間より前に、本規則がその国に関して効力を生ずることはない。
第六十一条 拒絶
国が第五十九条第一項に規定する期間内に本規則又はその修正に対する拒絶を事務局長に通告した場合には、本規則又は関係の修正はその国に関して効力を生じないものとする。同国がすでに当事国となっている第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則はすべて、その国が関係している限り、引き続いて効力を有する。
第六十二条 留保
1.国は、本条に従って、本規則に留保を付すことができる。かかる留保は、本規則の趣旨及び目的に両立しないものではない。
2.本規則に対する留保は、第五十九条第一項及び第六十条に従って、また場合によっては第六十三条第一項又は第六十四条第一項に基づき、事務局長に通告しなければならな
い。WHOの加盟国でない国は、本規則の受諾を通告する時にすべての留保を事務局長に通告しなければならない。留保しようとする国は、留保の理由を事務局長に提出することが望ましい。
3.本規則の部分的拒絶は、一留保とみなされる。
4.事務局長は、第六十五条第二項に従って、本条第二項に基づき受理したすべての留保の通告を公表するものとする。事務局長は、
(a)もし本規則の発効前に留保が行なわれた場合には、本規則を拒絶しなかった加盟国に対し、当該留保に対して異議があれば六箇月以内に事務局長に通告するよう要請するものとする。
(b)もし本規則の発効後に留保が行なわれた場合には、参加国に対し、当該留保に対して異議があれば六箇月以内に事務局長に通告するよう要請するものとする。
留保に対して異議を唱えようとする国は、異議の理由を事務局長に提出することが望ましい。
5.その後、事務局長は、留保に対する受理した異議をすべての参加国に通告する。本条第四項に掲げる通告の日から六箇月が経過するまでに本条第四項に言及する諸国のうち三分の一が留保に対し異議を唱えない限り、その留保は受諾されたものとみなされ、本規則は留保を条件として当該留保国に対して発効する。
6.本条第四項に掲げる通告の日から六箇月が経過するまでに本条第四項に言及する諸国の三分の一以上が留保に対し異議を唱えた場合、事務局長は、事務局長による通告の日から三箇月以内に、留保を撤回する考えがあるか否かを当該留保国に打診する。
7.留保国は、留保した範囲内で、第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則のいずれかに基づき受諾した一切の義務を引き続き履行しなければならない。
8.留保国が本条第六項に掲げる事務局長による通告の日から三箇月以内に留保を撤回しない場合、事務局長は、留保国からの要請があれば再検討委員会に諮問する。再検討委員会は、第五十条に従い可及的速やかに、本規則の運用に対する留保の実際的影響について事務局長に助言するものとする。
9.事務局長は、留保及び該当する場合には再検討委員会の見解を、検討のため保健総会に提出するものとする。保健総会が本規則の趣旨及び目的と両立しないという理由で多数決により留保に反対する場合には、当該留保は受諾されず、本規則は第六十三条に従い留保が撤回されるまで当該留保国に対して効力を生じない。もし保健総会が留保を受諾した場合は、本規則は留保の範囲内で留保国に対して効力を生じるものとする。
第六十三条 拒絶及び留保の撤回
1.第六十一条の下で為された拒絶は、事務局長に通告することによって何時でも撤回することができる。この場合、本規則は同通告を事務局長が受領したときに当該国に関して
効力を生ずるものとする。但し、拒絶を撤回した時に当該国が留保を付した場合には、本規則は第六十二条の規定に従って効力を生ずる。いずれの場合も、第五十九条第一項に掲げる通告の日から二十四時間より前に、本規則が当該国に関して効力を生ずることはない。
2.全部又は一部の留保は、関係参加国が事務局長に通告することによって何時でも撤回することができる。この場合、当該撤回は同通告を事務局長が受領した日から有効となる。
第六十四条WHOの加盟国でない国
1.WHOに加盟していない国で、第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則の参加国、又は世界保健総会が本規則を採択した旨事務局長の通告を受けた国は、いずれも、事務局長に受諾を通告することによって、本規則の参加国となることができる。また、第六十二条の規定が適用されることを条件として、本受諾は本規則の発効の日に、又はその受諾が本規則の発効の日以後に通告された場合は事務局長が受諾通告を受領した日より三箇月後に、効力を生ずる。
2.本規則の参加国となったWHOの非加盟国は、いずれも事務局長宛てに通告することによって何時でも本規則への参加を撤回することができるが、この通告は事務局長がそれを受領したときから六箇月後に効力を生ずる。撤回した国は、その日から、第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則のうち以前に参加していたものの規程の適用を再開するものとする。
第六十五条 事務局長による通告
1.事務局長は、すべての加盟国並びに準加盟国及びその他第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則のいずれかの参加国に対し、世界保健総会による本規則の採択を、通告しなければならない。
2.事務局長は、また、本規則又はその修正の参加国となった他の国と同じく前記の国に対しても、第六十二条に基づいた保健総会の決定と同じく、第六十条から第六十四条までの各条項に基づき受領した通告を通報しなければならない。
第六十六条 正文
1.本規則のアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語の本文は、ひとしく正文とする。
2.事務局長は、すべての加盟国並びに準加盟国及びその他第五十八条に列挙する国際衛生協定又は規則の参加国にも、第五十九条第一項に掲げる通告とともに、本規則の認証謄本を送付するものとする。
3.本規則が発効したとき、事務局長は、国際連合憲章第百二条による登録のため、本規則の認証謄本を国際連合の事務総長に送付するものとする。