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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国内の鳥類における鳥インフルエンザ(H5N1)発生時の調査等について

[場所] 
[年月日] 2006年12月27日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成18年12月27日)

(健感発第1227003号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)

 高病原性鳥インフルエンザが国内の鳥類で発生した場合の措置等については、これまでに「高病原性鳥インフルエンザ対策における留意点について」(平成16年2月27日付け医政経発第0227001号・健感発第0227001号・食安監発第0227002号厚生労働省医政局経済課長・健康局結核感染症課長・医薬食品局食品安全部監視安全課長通知)、「養鶏関係者の高病原性鳥インフルエンザ感染防御のための留意点について」(平成16年3月10日付け健感発第0310002号本職通知)、「国内における高病原性鳥インフルエンザの発生に伴う疫学調査について」(平成16年4月5日健感発第0405001号本職通知)、「高病原性鳥インフルエンザの国内発生時の措置について」(平成16年12月22日付け健感発第1222001号本職通知)、「家きん農場の従業員等に対する健康調査の実施について」(平成17年7月14日健感発第0714001号本職通知)、「H5N2亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルス感染家きんの防疫措置における抗インフルエンザウイルス薬の予防投与について」(平成17年7月29日健感発第0729002号本職通知)及び「養鶏関係者の高病原性鳥インフルエンザ感染防御のための留意点について」(平成18年1月10日健感発第0110001号本職通知)によることとしてきたところである。

 今般、高病原性鳥インフルエンザのうち鳥インフルエンザ(H5N1)に感染し、又は感染した疑いのある鳥類(以下「感染鳥類」という。)を認めた獣医師又は感染鳥類の所有者より、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第13条第1項の届出を受けた場合の同法第15条に基づく調査及び同法第29条に基づく措置等について、下記のとおり定めることとしたので、貴職におかれては、関係者への周知等、対応に遺漏なきよう特段の配慮をお願いする。

 また、鳥インフルエンザ(H5N1)以外のインフルエンザが発生した場合においては、その感染性及び病原性に応じて改めて対応を定めることとし、本通知の施行に伴い、上記通知については関係課と調整の上、これを廃止することとしたので、併せて了知願いたい。

 なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項に規定する技術的な助言である。


   記


第1 目的

 都道府県知事、保健所を設置する市の市長及び特別区長(以下「都道府県知事等」という。)が、鳥類で発生した鳥インフルエンザ(H5N1)のヒトへの感染を未然に防止する観点から、適切な感染予防方法の周知と調査等を行うために必要な対応等について示すものである。


第2 通常時の留意点等

1.家きん農場における感染予防

  家きん農場における感染予防に万全を期すため、以下のことに留意するよう、家きん農場の従業者等に周知すること。

 (1) 日頃より健康管理に留意し、作業中は専用の作業服、マスク、帽子、手袋及び長靴を着用するなどの通常の衛生対策を徹底するとともに、作業後は、うがいや手洗いを励行すること。また、発熱等の健康状態の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診すること。なお、受診の際に家きんとの接触の機会があったことを医師に伝えること。

 (2) 通常のインフルエンザに罹患している場合は、鳥インフルエンザとの混合感染を予防する観点からも、家きん農場での作業を避けること。

 (3) 鶏の異常死の有無等の観察に努め、鳥インフルエンザ(H5N1)が疑われるような異常が認められた際には、死亡鶏等への接触を避け、速やかに家畜保健衛生所に連絡し、対応を相談すること。

2.食鳥処理場における感染予防

 食鳥処理場における感染防御に万全を期すため、以下のことに留意するよう食鳥処理場の従業者等に周知すること。

 (1) 作業服、マスク及び手袋を着用するなどの通常の衛生対策に加えて、ゴーグルを装着するといった衛生対策を徹底すること。

 (2) 発熱等の健康状態の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診すること。なお、受診の際に家きんとの接触の機会があったことを医師に伝えること。

3.野鳥からの感染予防

 野鳥はどのような病原体を保有しているか分からないことから、以下のことに留意するよう死亡野鳥等を発見した者に周知すること。

 (1) 死亡野鳥に直接触れないようにすること。

  (2) 死亡野鳥に触れた場合は、うがいや手洗いを励行すること。また、発熱等の健康状態の異常が認められた場合には、速やかに医療機関を受診し、死亡野鳥との接触の機会があったことを医師に伝えること。


第3 発生が疑われた場合の留意点等

 家きん農場において、家きんの異常死の増加等により鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が疑われた場合の感染予防として、以下のことに留意するよう家きん農場の従業者等に周知すること。

 (1) 鳥インフルエンザ(H5N1)の感染の有無が確認されるまでの間は、可能な限り鶏舎への立ち入りを控えることとし、どうしても立ち入らなければならない場合には、適切な個人感染防護具(以下「PPE」という。)を着用するなど、必要な感染防御に努められたいこと。

 (2) 直ちに、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が疑われて以降当該家きん農場に立ち入った者の健康状態の確認を行われたいこと。


第4 発生時の調査等

1.積極的疫学調査

 関係部局と協力連携し、感染症法第15条に基づき周辺の鳥類等の感染状況、感染原因等の調査を行うこと。また、感染鳥類又はその排泄物等(以下「感染鳥類等」という。)に接触したすべての者(以下「接触者」という。)について、感染鳥類等との接触の状況に関する質問を行い、接触の状況に応じ、以下の必要な調査等を実施すること。

なお、質問又は調査が速やかに実施できるよう、接触者の連絡先等を確認しておくこと。

 (1) 感染鳥類等と直接接触し、その際に適切なPPEを着用していなかった者

  ア.健康調査の内容

   ① インフルエンザ様の症状の有無を確認すること。

   ② 感染鳥類等との直接接触後10日間(最終接触日を0日として10日目まで)は、保健所による指導のもと健康観察(1日2回の検温等)を行うよう要請すること。保健所においては可能な範囲で電話等により健康状態を聴取すること。また、この間は、公共の場所での活動を可能な限り自粛するよう要請するとともに、やむを得ず外出する際にはマスクの着用を指導すること。

    鳥インフルエンザ(H5N1)の感染を疑うような症状が発現した場合には、直ちに保健所に相談するよう要請すること。

   ③ 鳥インフルエンザ(H5N1)の感染を疑うような症状を呈した旨の相談を受けた保健所又は衛生部局は、必要と判断される場合には、速やかに医療機関への受診を勧奨し、医師による診断及び治療が適切に行われるよう配慮すること。

    なお、受診の際に感染鳥類等との接触の機会があったこと及びこれまでに実施した検査の結果を医師に伝えるように要請すること。

   ④ その他必要と認める検査を行うこと。

  イ.抗インフルエンザウイルス薬の投与

   感染鳥類等と直接接触し、その際に適切なPPEを着用していなかった者の明示の同意が得られた場合については、予防投与が行われるようにすること。

 (2) 適切なPPEを着用した上で、感染鳥類等と直接接触した者

  ア.健康調査の内容

   ① インフルエンザ様の症状の有無を確認すること。

   ② 感染鳥類等との接触の間及びその終了後10日間(最終接触日を0日として10日目まで)は、保健所による指導のもと健康観察を行い、この間に鳥インフルエンザ(H5N1)の感染を疑うような症状が発現した場合には、直ちに保健所に相談するよう要請すること。

   ③ 鳥インフルエンザ(H5N1)の感染を疑うような症状を呈した旨の相談を受けた保健所又は衛生部局は、必要と判断される場合には、速やかに医療機関への受診を勧奨し、医師による診断及び治療が適切に行われるよう配慮すること。

    なお、受診の際に感染鳥類等との接触の機会があったことを医師に伝えるように要請すること。

  イ.抗インフルエンザウイルス薬の投与

   適切なPPEを着用した上で、感染鳥類等と直接接触した者の明示の同意が得られた場合については、予防投与が行われることが望ましい。

 (3) 感染鳥類等との直接の接触はないが、発生場所の周辺地域に居住等をしている者

  ア.健康調査の内容

   鳥インフルエンザ(H5N1)の感染を疑うような症状を呈した旨の相談を受けた保健所又は衛生部局は、症状発現前10日間の鳥類等との接触状況について確認し、必要と判断される場合には、速やかに医療機関への受診を勧奨し、医師による診断及び治療が適切に行われるよう配慮すること。

  イ.抗インフルエンザウイルス薬の投与

   予防投与の必要はない。

2.感染予防のための指導

  都道府県知事等は感染鳥類等の防疫作業に従事する者に対して、以下のことを指導すること。

   ① 作業前後の健康状態を把握すること。

   ② 作業従事に当たっては、手洗いやうがいの励行や、適切なPPEの着用等、必要な感染防御手段を講ずるよう徹底すること。

   ③ 従事に当たっては体調に十分留意すること。


第5 患者(疑似症患者を含む。)が確認された場合の対応

 都道府県知事等は、第4による積極的疫学調査の結果、鳥インフルエンザ(H5N1)患者(疑似症患者を含む)が確認された場合については、「鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査の実施等について」(平成18年11月22日付け健感発第1122001号本職通知)に基づく対応をとること。


第6 適切な情報共有

1.関係部局との情報共有

 鳥類の異常死、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生に関する疫学的状況が判明するなど、関係部局が同疾病に関する情報を入手した場合には、速やかに情報提供を受けられるよう、日頃から関係部局等と緊密な連携を図ること。また、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が疑われる等の情報を入手した場合には、2.の規定により速やかに厚生労働省に報告するとともに、関係部局等に対しても情報提供を行われたいこと。

2.他の都道府県等、国等との情報共有

 都道府県知事等は、第4による積極的疫学調査に伴い得られる情報の重要性にかんがみ、調査の過程においても、鳥インフルエンザ(H5N1)の発生状況、動向等を含む調査結果について関係する都道府県知事等との間で共有するとともに、感染症法第15条第5項の規定に基づき、厚生労働大臣に報告を行うこと。

 また、鳥類における鳥インフルエンザ(H5N1)の発生が都道府県等の区域を越えて発生し、または発生するおそれがある場合には、厚生労働大臣は、感染症法第63条の2に規定に基づき、第4による積極的疫学調査の実施について必要な指示を行うものであること。


第7 接触者等に対する情報提供等

 都道府県知事等は、接触者等に対して、鳥インフルエンザ(H5N1)の鳥類における発生の状況、動向及び原因に関する適切な情報発信を行うとともに、マスクの着用、最寄りの保健所等への相談、医療機関での受診等についての必要な情報提供を行うこと。

 また、住民に対する正確な情報の提供に努めること。


第8 その他

 都道府県知事等は、第4による積極的疫学調査の実施に当たり、「鳥インフルエンザ(H5N1)に係る積極的疫学調査の実施等について」(平成18年11月22日付け健感発第1122001号本職通知)の別添の「接触者調査票」(添付1)及び「接触者に係る体温記録用紙」(添付2)を活用することが可能であること。