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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 感染症対策特別促進事業について

[場所] 
[年月日] 2008年3月31日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成20年3月31日)

(健発第0331001号)

(各都道府県知事・各政令市長・各特別区長あて厚生労働省健康局長通知)

 感染症対策については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成10年法律第114号)に基づき、感染症の発生予防及びそのまん延防止を図るため、感染症に関する正しい知識の普及、感染症に関する情報の収集、感染症の予防に関する人材の養成及び資質の向上等を図るとともに、感染症の患者が適切な医療を受けることができる体制をより充実させる必要がある。

 このような観点から、平成18年度より感染症対策特別促進事業を実施してきたところであるが、今般、感染症対策の更なる充実を図るため、新たに別添「感染症指定医療機関職員等院内感染防止実地研修事業」、「動物由来感染症予防体制整備事業」、「特定感染症対策事業(性感染症・インフルエンザ)」、「結核対策事業」、「新型インフルエンザ対策事業」、「肝炎対策事業」及び「肝炎治療特別促進事業」実施要綱を定めたので通知する。

 ついては、本事業が円滑に実施されるよう貴管内における関係機関等への周知方について特段の御配慮をお願いする。

 なお、この通知は平成20年4月1日から適用することとし、「感染症対策特別促進事業の実施について」(平成18年6月12日付け健発第0612003号厚生労働省健康局長通知)は、平成20年3月31日限りをもって廃止する。


別添1

感染症予防体制整備事業実施要綱

1 目的

 感染症予防のための体制整備や正しい知識の普及等を推進することにより、感染症の発生の予防及びまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

2 実施主体

 この事業の実施主体は、都道府県、政令市及び特別区とする。

3 対象事業

 (1) 感染症指定医療機関職員等院内感染防止研修事業

  新たな感染症の発生に備え、感染症指定医療機関等の医療従事者に対し、院内における感染の拡大防止のための実地研修等を行い、院内感染防止対策の充実・強化を図る。

  ア 研修対象者

    感染症指定医療機関等の医療従事者

  イ 事業内容

   (ア) 管内の感染症指定医療機関等における院内感染防止対策の充実・強化を図るため、感染症に関する情報提供体制を確立し、情報の共有化を図る。

   (イ) 感染症指定医療機関等の医療従事者を対象とした院内感染防止に関する研修計画を策定する。

   (ウ) 厚生労働省が主催する感染症の院内感染防止のための研修会へ職員を派遣し、その内容を管内の感染症指定医療機関等の医療従事者に対して伝達する講習を行う。

 (2) 動物由来感染症予防体制整備事業

  感染症の多くは、人の感染症のうち病原体が動物に由来する感染症(以下「動物由来感染症」という。)である。以下の事業を選択して実施することにより、動物由来感染症の予防体制の整備を行う。

  ア 事業内容

   (ア) 研修・普及啓発

    都道府県等は、医療関係者及び地域住民に対し、動物由来感染症に関する正しい知識を普及し、動物由来感染症の予防、迅速な診断及び治療等に寄与するため、研修会の開催及びポスターの作成等による普及啓発を行う。

   (イ) 動物由来感染症に関する情報収集、分析及び提供体制の整備

    a 情報関連体制整備検討会の設置

     本事業の適切な運用を図るため、都道府県等は、獣医学、医学等の専門家5名程度から成る検討会(以下「情報関連体制整備検討会」という。)を設置し、情報収集の手段並びに情報の分析及び提供に関する事業計画の立案を行う。

    b 動物由来感染症疫学情報の収集

     都道府県等は、管下の動物の飼育、管理又は棲息状況等を勘案して、調査点及び時期等を定め、管内の動物管理センター等の関係機関及び地域の獣医師会等の協力の下、発生状況及び動向、抗体保有状況等疫学情報を収集する。

     また、必要に応じ、抗体保有状況等調査の結果が陽性となった動物の所有者等又は動物由来感染症と診断された患者が所有する動物等の調査結果等についての情報収集を行い、行政機関、医療機関及び獣医療機関間で情報を共有することにより相互の連携体制を確立する。

   (ウ) 情報提供

    都道府県等は、情報関連体制整備検討会での検討結果を踏まえ、医療機関及び獣医療機関が、迅速かつ適切に動物由来感染症による健康危害防止対策を講じられるよう、調査結果を医療機関、獣医療機関等に情報提供し、併せて保健所、動物管理センター等の行政機関を活用することにより、地域の住民及び動物等取扱業者に情報提供を行う。

   (エ) 対応計画の策定及び連携体制の整備

    a 対応体制整備検討会の設置

     動物由来感染症の発生予防とともに発生時の適切かつ迅速な対応に資するため、都道府県等は、獣医学、医学等の専門家5名程度から成る検討会(以下「対応体制整備検討会」という。)を設置し、事前に地域の実情に合わせた必要な対応について検討を行う。

    b 発生時対応計画等の策定

     都道府県等は、対応体制整備検討会の検討結果に基づき、発生時対応計画、マニュアル等を作成し、動物由来感染症対策に関係する部門(感染症対策担当部門、環境衛生対策担当部門、動物対策担当部門等)及び関係機関(保健所、動物管理センター等、地方衛生研究所、地方医師会、医療機関、地方獣医師会、獣医療機関、大学等)間で共有し、連携体制を整備する。

  イ 事業実施上の留意事項

   (ア) 研修及び普及啓発について

都道府県等は、感染症に関する有識者の意見を踏まえつつ、研修会等の企画立案を行う。

   (イ) 動物由来感染症に関する情報収集、分析及び提供体制の整備について

    a 情報収集項目の選定

     対象とする感染症及びその感染源となり得る動物等について情報関連体制整備検討会で選定する。

    b 情報の収集手段及び協力機関の選定

     情報の収集のための協力機関(保健所、動物管理センター等、地方衛生研究所、地方医師会、医療機関、地方獣医師会、獣医療機関、大学等)を設け、情報収集方法を選定する。

    c 情報の分析

     都道府県等は、収集された情報について、月別、年別、地域別等多角的な集計を行い、そのデータを基に検討会で専門家による分析を行うこと。ただし、緊急的な対応が必要な場合は、この限りでない。

   (ウ) 対応計画の策定及び連携体制の整備について

    関係機関等は、平時より情報交換等を行うことにより連携体制の強化を図る。

   (エ) 検討会について

    都道府県等が、(2)ア(イ)及び(2)ア(エ)の両事業を実施する場合にあっては、(2)ア(イ)a「情報関連体制整備検討会」及び(2)ア(エ)b「対応体制整備検討会」を「動物由来感染症対策検討会」等の名称により共用の検討会として設置しても差し支えない。

 (3) 特定感染症対策事業(性感染症・インフルエンザ)

  特定感染症対策として、総合的に予防のための施策を推進する必要がある性感染症及びインフルエンザに関する対策を推進するため、これらの特定感染症に関する正しい知識の普及啓発等を図る。

  ア 事業内容

   (ア) 事業所等への出張講習会

    都道府県等は、産婦人科の医師又は泌尿器科の医師を事業所等へ講師として派遣し、性感染症に関する正しい知識の普及を行う。

    また、インフルエンザの予防等正しい知識の普及啓発を行うためのポスター、リーフレットを作成及び配付し、発生の予防及びそのまん延の防止を図る。

   (イ) ポスター、リーフレット等の作成・配付による普及啓発

    都道府県等は、性感染症に関する正しい知識の普及、性感染症検査への受診勧奨等地域の実情に合わせた情報提供を行うためにポスター、リーフレット等を作成し、「性の健康週間」等の時期に合わせて配付するものとする。

  イ 事業実施上の留意事項

   地域住民及び医療関係者に対し、広報誌等を通じて広く事業の周知を図るものとする。

 (4) 結核患者早期発見促進事業

  結核新登録患者のうち大きな割合を占める80歳以上の高齢者等に対し、普及啓発や研修等の実施により結核に対する理解を深め、結核患者の早期発見につなげることで、結核対策の推進を図る。

  ア 事業内容

   (ア) ポスター、リーフレット等の作成・配布による普及啓発

    都道府県等は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第53条の2に基づく定期健康診断(以下「定期健康診断」という。)の周知や受診案内、高齢者が結核り患率の高い層であることを含めた結核に関する正しい知識の普及等、結核患者の早期発見につながる内容のポスター、リーフレット等を作成し、80歳以上の高齢者及びその同居者や当該高齢者に頻繁に接する者(通所介護等の事業所・施設の職員等)へ効果的に伝わる場所において配付するものとする。

    ※定期健康診断対象者へ個別勧奨するための郵便費用は除く

   (イ) 結核患者早期発見に資する研修会等の実施

    都道府県等は、80歳以上の高齢者及びその同居者や当該高齢者に頻繁に接する者(通所介護等の事業所・施設の職員等)に対し、結核に関する研修会等を実施することにより、定期健康診断の受診や必要に応じて医療機関の受診を促し、結核患者の早期発見を図るものとする。

  イ 事業実施上の留意事項

都道府県等は、「高齢者における結核発病患者の早期発見対策について」(平成30年4月27日健感発0427第1号)及び「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第53条の2に基づく定期の健康診断に係る受診案内について」(平成30年9月3日健感発0903第1号)の内容を考慮の上、当該事業を実施すること。

4 経費の負担

 都道府県、政令市及び特別区がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生労働大臣が別に定める「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。



別添2

結核対策特別促進事業実施要綱

1 目的

 この事業は、結核に関する特定感染症予防指針による結核に係る定期の健康診断及び予防接種法による結核に係る予防接種の着実な実施を図りつつ、地域住民等の自主的な協力と地域の実情に応じた重点的な結核対策事業の実施のもとに、効率的・効果的な予防措置を講ずることにより、結核対策の推進に資することを目的とする。

2 事業の実施主体

 この事業の実施主体は、都道府県、政令市及び特別区とする。

3 事業内容

 都道府県、政令市及び特別区が、特に政策を必要とする地域において行う次の結核対策事業を対象とする。

 (1) 指定地域結核発病防止対策促進事業

  ①高齢者等に対する結核予防総合事業

  ②大都市における結核の治療率向上(DOTS)事業

  ③DOTS事業による確実な治療の推進を図るとともに、治療終了後の自立に向けた支援を併せて行うための連携体制の構築を図るための事業

 (2) 先駆的、モデル的事業

 (3) 結核対策上、特に重要な事業

4 補助対象事業の選定

 補助対象事業は、次のような条件を勘案して選定する。

 (1) 結核のり患率・有病率が他の地域に比べて高い地域を有する等、特に結核予防を必要とする事情があること。

 (2) 都道府県、政令市及び特別区において、地域住民の結核予防の推進等に積極的に取り組んでいること。

 (3) 当該事業が、現在まで取り組んできた事業についての綿密な評価により策定されたものであり、結核予防対策の有効かつ的確な推進が期待されると見込まれること。

 (4) 地域における結核の現状及び問題点の十分な分析を踏まえ、事業計画が作成されていること。

 (5) 保健所等、地域結核対策推進の現場との綿密な提携のもとに事業計画が作成されていること。

5 経費の負担

 都道府県、政令市及び特別区がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生労働大臣が別に定める「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。



別添3

 新型インフルエンザ対策事業実施要綱

1 目的

 本事業は、都道府県において、新型インフルエンザの発生に備え、必要な対策を検討する協議会等の開催や正しい情報の共有のための住民に対する説明会を実施し、対策の推進を図る。

 また、新型インフルエンザ発生時に対応する関係機関の連携を図るため、必要な訓練・研修を実施し、体制の充実・強化を図ることを目的とする。

 さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第28条の規定に基づき、特定接種の登録対象となる事業者について、登録の円滑な実施を図ることを目的とする。

2 実施主体

 この事業の実施主体は、都道府県とする。

3 事業内容

 (1) 新型インフルエンザ対策協議会

  都道府県等において関係者(医療機関、関係市町村、保健所等)によって構成される対策協議会を設置し、初動体制の構築、医療体制の確保など、地域の実情に応じた対策を講じ、新型インフルエンザの流行に備え、万全の準備を図る。

 (2) 新型インフルエンザ関係機関従事者訓練・研修事業

  関係機関(自治体、保健所、医療機関等)の従事者を対象に、新型インフルエンザ発生時の適切な医療の提供やパンデミック時の迅速な対応を実践するための訓練・研修を実施する。

 (3) 新型インフルエンザ対策普及啓発事業

  個人や一般家庭、事業者などの地域住民が新型インフルエンザ発生時に迅速な対応ができるよう、必要な知識の普及や感染予防に関する情報を提供するための説明会を開催し、地域が一体となった対策が講じられるよう普及啓発を図る。

 (4) 特定接種に係る事業者登録円滑事業

  「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」、「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」、別に定める「特定接種の登録要領」等に基づき、医療の提供の業務又は国民生活及び国民経済の安定に寄与する業務を行う事業者に対して登録の周知を行うとともに、登録内容の確認、照会、集計等を行う。

4 事業実施上の留意事項

 (1) 都道府県は、新型インフルエンザ対策協議会を実施するに当たり、地域の実情等を踏まえ、医師会等の関係団体、関係学会、関係行政機関等と連携を図り、新型インフルエンザのまん延防止のための企画立案を行う。

 (2) 訓練・研修を実施するに当たっては、二次医療圏ごとに、医師会等の医療関係機関と連携し、広く医療機関に参加を呼びかけ、新型インフルエンザ発生時の迅速な医療提供に繋がるよう努める。

 (3) 説明会の開催に当たっては、地域住民に対し、新型インフルエンザの正しい知識を普及し、発生時における初動対応などの周知を図ることができるよう、企画を行う。

 (4) 特定接種に係る事業者登録を実施するに当たっては、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第9項第1号に基づく第1号法定受託事務であることを踏まえつつ、関係行政機関等と十分な連携を図ること。

5 経費の負担

 都道府県がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生労働大臣が別に定める「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。



別添4

肝炎患者等支援対策事業実施要綱

1 目的

 我が国の肝炎ウイルスキャリアはB型、C型合わせて220万人から340万人程度存在すると推定されており、長期間の経過の後に肝硬変や肝細胞がんを引き起こす危険が指摘されていることから、医療提供体制の確保や患者等への情報提供を行い、地域における肝炎診療の充実及び向上を図る。

 また、シンポジウム等を開催し、B型・C型肝炎に関する普及啓発を行うことにより、国民に対して、感染予防、早期発見及び早期治療の推進を図るとともに、地域の実情に応じた肝炎患者・家族等に対する支援対策を実施し、肝炎患者の生活の安定に資することを目的とする。

2 実施主体

 この事業の実施主体は、都道府県、政令市(地域保健法(昭和22年法律第101号)第5条の政令で定める市をいう)、特別区、社会福祉法人(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第22条に規定する社会福祉法人をいう。)、特例民法法人又は公益法人(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)第2条第3号に規定する公益法人をいう。以下同じ。)及び特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人をいう。以下同じ。)とする。

 ただし、3に記載した事業の(1)~(6)については都道府県、政令市及び特別区(以下、「都道府県等」という。)とし、(7)~(15)については都道府県とし、(16)については、都道府県、社会福祉法人等(社会福祉法人、特例民法法人又は公益法人及び特定非営利活動法人をいう。以下同じ。)とする。

3 事業内容

 (1) 肝炎対策協議会の設置

  都道府県等は、医師会、肝炎に関する専門医、関係市区町村、保健所、肝炎ウイルスの感染者及び肝炎患者並びにそれらの家族又は遺族(例:患者会を代表する者等)等の関係者によって構成される肝炎対策協議会を設置するものとする。ただし、既に地域において同様の組織がある場合には、これを活用して差し支えない。また、保健所設置市及び特別区においては都道府県と常時連携体制を取るものとする。

  同協議会においては、各都道府県等の実情に応じて肝炎に関する以下の事項等について必要な検討を行うものとする。

  ア 検診等を通じてB型肝炎ウイルス(以下「HBV」という。)及びC型肝炎ウイルス(以下「HCV」という。)に感染している可能性が極めて高いと判定された者に対する保健師等による相談及び診療指導

  イ HBV及びHCV検診の結果、医療機関への受診を勧奨された者の受診状況や治療状況等の把握

  ウ HBV及びHCV検診を受けていないハイリスク・グループに検診を勧奨する方策

  エ HBV及びHCV持続感染者が、継続的なかかりつけ医への受診等の健康管理を十分に受けていない場合の改善方策

  オ 身近な医療圏において病状に応じた適切な肝炎診療が行われるよう、かかりつけ医と専門医療機関との連携の強化

  カ 慢性肝炎・肝硬変や肝がんに対する高度専門的又は集学的な治療を提供可能な医療機関の確保

  キ 肝炎診療にかかわる医療機関情報の収集と提供

  ク 肝炎診療にかかわる人材の育成

  ケ 各施策についての検討を基にした目標等の設定

  コ 事業実施の評価

 (2) 肝炎診療従事者研修の実施

  都道府県等は、肝炎対策協議会の検討内容を踏まえつつ、地域での適切な肝炎への医療提供体制が確保されることを目的として、かかりつけ医等の肝炎診療従事者に対して、肝炎概論、肝炎患者への日常的な診療内容、専門医への紹介を要する症状・所見、専門医との連携の在り方その他肝炎に関する必要な事項について研修を実施するものとする。

 (3) 肝炎診療支援リーフレットの作成・配布

  都道府県等は、肝炎対策協議会の検討内容を踏まえつつ、肝炎に関する適切な情報提供を目的として以下を作成し、各対象へ配布する。

  ア 肝炎患者やその家族等を対象とした、肝炎について適切な理解を得ることができるためのリーフレット

  イ 医療機関を対象とした、肝炎患者への日常的な診療内容、専門医へ紹介すべき状態、専門医との連携の在り方などを記載した適切な肝炎診療が実現されるためのリーフレット

 (4) シンポジウム等の開催

  都道府県等は、専門医等を講師として招き、地域住民に対して、感染予防や治療に関する最新情報を分かりやすく伝えることや社会的及び精神的な面における相談、肝炎ウイルスに関する意見交換等を行うシンポジウム等を開催するなど、肝炎に関する正しい知識等を普及させるための事業を行うものとする。

 (5) ポスター・リーフレットの作成・配布による普及啓発

  都道府県等は、肝炎ウイルスに関する正しい知識の普及と肝炎ウイルス検査勧奨等地域の実情に合わせた情報提供を行うためにポスター・リーフレット等を作成し、シンポジウム等で配布するものとする。

 (6) 肝炎患者等に対する支援の実施

  都道府県等は、肝炎患者の生活の安定に資するため、地域の実情に応じた肝炎患者や家族等に対する支援対策事業を実施するものとする。

   [事業例]

   ・ 地域の患者、家族及び患者支援団体等の要望にこたえるための『患者サロン』の開設

   ・ 肝炎患者又は元患者であった者を講師とした、肝疾患相談センター相談員の資質向上を図るための講習会の開催

   ・ 同じ経験を有する患者・家族等が相談に応じ、お互いに支え合うこと(ピアサポート)ができるよう、肝炎患者等を対象としたピアサポーターを育成するための研修の実施

 (7) 新聞広告、電車の中吊り等による普及啓発

  都道府県は、新聞広告や電車の中吊りポスター等により、正しい知識の普及啓発や保健所等での肝炎ウイルス検査の受検勧奨を行うものとする。

 (8) 地域肝炎治療コーディネーターの養成

  都道府県は、市町村の保健師、地域医療機関の看護師、職域の健康管理担当者等を対象として、肝炎ウイルス検査結果により要治療となった者等が、個々の病態に応じた適切な肝炎医療を受けられるよう、肝炎ウイルス検査後のフォローアップや受診勧奨等の支援を地域や職域において中心となって進める人材を養成するものとする。

 (9) 地域の相談体制の整備

  都道府県は、肝炎専門医療機関に相談員(地域肝炎治療コーディネーター研修修了者等)を配置して、肝炎患者等が身近な医療機関において広く相談を受けられることができる体制を整備するものとする。

 (10) 肝炎患者支援手帳の作成・配布

  都道府県は、肝炎患者等に対する情報提供や、拠点病院、専門医療機関及びかかりつけ医の連携等に資するため、肝炎の病態、治療方法、肝炎治療に関する制度等の情報を記載した携帯可能な手帳(冊子)を作成・配布するものとする。

 (11) 肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会の設置

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、かかりつけ医と専門医との連携の在り方等の検討を行い、適切な肝炎治療が行われるよう、地域医療の連携を図るものとする。

 (12) 肝疾患相談センターの設置

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、肝疾患相談センターを設置するものとする。同センターには相談員(医師、看護師等)を設置し、患者、キャリア及び家族等からの相談等に対応するほか、肝炎に関する情報の収集等を行うものとする。また、保健師や栄養士を配置し、食事や運動等の日常生活に関する生活指導や情報提供を行うものとする。

 (13) 肝炎専門医療従事者の研修事業

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、地域での適切な肝炎への医療提供体制が確保されることを目的とした医療従事者(医師、看護師、薬剤師等)に対する原因ウイルスの相違、患者の病態に応じた診療における留意点等その他肝炎に関して必要な事項についての研修を実施するものとする。

 (14) 一般医療従事者の研修事業

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、医療現場における肝炎患者の早期発見を促進し、肝炎患者を適切な医療に繋げることを目的に、日常的に肝炎治療に携わっていない医療従事者を対象に、肝炎に関する基礎的な研修を実施するものとする。

 (15) 市民公開講座や肝臓病教室の開催

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、地域住民を対象とした市民公開講座や肝炎患者を対象とした肝臓病教室を開催することにより、肝炎の病状や最新の治療法、日常生活の留意点などの必要な知識を分かりやすく伝えるとともに、肝疾患診療連携拠点病院や肝疾患相談センターの周知を図るものとする。

 (16) 肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業の実施

  都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、また、社会福祉法人等は、当該法人の相談窓口において、就労に関する専門家(社会保険労務士、産業カウンセラー、キャリア・コンサルタント等)を配置するなどして、肝炎患者の就労の継続等に関する支援に対応できる体制を整備し、その効果を検証するものとする。

4 事業実施上の留意事項

 (1) 都道府県等は、地域の実情や患者等の意向等を踏まえ、医師会等の関係団体、関係学会、関係行政機関等と連携を図りつつ、患者等の利便性に十分配慮した事業の実施に努めるものとする。

 (2) 事業の実施上知り得た事実、特に個人が特定される情報については、関係法令に従い、適正かつ慎重に取り扱うとともに、その保護に十分配慮するよう、関係者に対して指導するものとする。

 (3) 地域住民及び医療関係者に対し、広報誌等を通じて事業の周知を図るものとする。

5 経費の負担

 都道府県等及び社会福祉法人等が、この実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生労働大臣が別に定める「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。

 なお、3の(11)から(16)に掲げる事業において、肝疾患診療連携拠点病院が独立行政法人又は国立大学法人立の医療機関である場合は、当該法人へ直接国庫補助を行うものとする。



別添5

肝炎治療特別促進事業実施要綱

1 目的

 国内最大級の感染症であるB型ウイルス性肝炎及びC型ウイルス性肝炎は、インターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療によって、その後の肝硬変、肝がんといった重篤な病態を防ぐことが可能な疾患である。しかしながら、このインターフェロン治療については月額の医療費が高額となること、また、核酸アナログ製剤治療については長期間に及ぶ治療によって累積の医療費が高額となることから、早期治療の促進のため、このインターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療に係る医療費を助成し、患者の医療機関へのアクセスを改善することにより、将来の肝硬変、肝がんの予防及び肝炎ウイルスの感染防止、ひいては国民の健康の保持、増進を図ることを目的とする。

2 実施主体

 実施主体は、都道府県とする。

3 対象医療

 この事業の対象となる医療は、B型ウイルス性肝炎及びC型ウイルス性肝炎の根治を目的として行うインターフェロン治療並びにB型ウイルス性肝炎に対して行われる核酸アナログ製剤治療で、保険適用となっているものとする。

 当該治療を行うために必要となる初診料、再診料、検査料、入院料等については助成の対象とするが、当該治療と無関係な治療は助成の対象としないものとする。

4 対象患者

 3に掲げる対象医療を必要とする患者であって、医療保険各法(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に規定する医療保険各法をいう。以下同じ。)の規定による被保険者又は被扶養者並びに高齢者の医療の確保に関する法律の規定による被保険者のうち、保険医療機関等(健康保険法(大正11年法律第70号)に規定する保険医療機関又は保険薬局をいう。以下同じ。)において当該疾患に関する医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に関する給付を受けている者とする。

 ただし、他の法令等の規定により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付が行われる者は除くものとする。

5 助成期間

 助成の期間は、原則として同一患者について1か年を限度とする。

 6 実施方法

 (1) 事業の実施は、原則として各都道府県が3に定める対象医療を適切に行うことができる保険医療機関等に対し、当該事業に必要な費用に相当する金額を交付することにより行うものとする。

 (2) 前項の金額は、次のアに規定する額からイに規定する対象患者が負担する額を控除した額とする。

  ア 医療保険各法の規定による医療又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に要する費用の額の算定方法の例により算定した当該治療に要する費用の額の合計額から医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に関する給付に関し保険者が負担すべき額を控除した額

  イ 1か月につき別表に定める額を限度とする額

7 認定

 都道府県知事は、医療機関が発行する医師の診断書を基に、対象患者の認定を行うものとする。認定を行うに当たっては、事業の適正かつ円滑な実施を図るため、肝炎の専門家等から構成される認定協議会を設けるものとする。

 なお、診断書は、3に定める対象医療を適切に行うことができるものとして、都道府県が指定した保険医療機関が発行することが望ましい。

8 関係者の留意事項

 患者等に与える精神的影響を考慮して、助成事業によって知り得た事実の取扱いについて慎重に配慮するよう留意するとともに、特に個人が特定されうるものに係る情報(個人情報)の取扱いについては、その保護に十分に配慮するよう、関係者に対してもその旨指導するものとする。

9 国の補助

 国は、都道府県がこの事業のために支出した費用に対し、その2分の1を補助するものとする。


(別表)


階層区分 自己負担限度額(月額)
 甲  世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円以上の場合  20,000円
 乙  世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円未満の場合  10,000円