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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 肝炎治療特別促進事業の実務上の取扱い

[場所] 
[年月日] 2008年3月31日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成20年3月31日)

(健疾発第0331003号)

(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局疾病対策課長通知)

 肝炎治療特別促進事業については、平成20年3月31日健発第0331001号厚生労働省健康局長通知「感染症対策特別促進事業について」の別添7「肝炎治療特別促進事業実施要綱」により示されているところであるが、この実施については次の事項に留意し、本事業が円滑に実施されるようお願いする。

1.医療給付の申請について

 「感染症対策特別促進事業について」(平成20年3月31日健発第0331001号厚生労働省健康局長通知)の別添5「肝炎治療特別促進事業実施要綱」(以下「実施要綱」という。)の3に定める医療の給付を受けようとする者(以下「申請者」という。)は、別紙様式例1―1から1―4による肝炎治療受給者証交付申請書(以下「交付申請書」という。)に、別紙様式例2―1から2―7による肝炎治療受給者証の交付申請に係る医師の診断書、申請者の氏名が記載された被保険者証等の写し、申請者及び申請者と同一の世帯に属するすべての者について記載のある住民票の写し並びに申請者及び申請者と同一の世帯に属する者の地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による市町村民税(同法の規定による特別区民税を含む。)の課税年額を証明する書類を添えて、申請者が居住する都道府県知事に申請するものとする。

 ただし、例外的に助成期間の延長が必要となる受給者については、一定の要件を満たす必要があるため、あらかじめ、当該受給者から別紙様式例1―5から1―6による有効期間延長申請書を提出させるものとする。また、副作用等の要因により受給者証の有効期間延長が必要となる受給者については、当該受給者から別紙様式例1―7による有効期間延長申請書を提出させるものとする。

 なお、核酸アナログ製剤治療については、医師が治療継続が必要と認める場合、更新の申請を行うことができるものとする。更新の申請に係る申請書類の提出については、郵送によることも可能とする。

2.対象患者の認定について

 都道府県知事は、実施要綱の7に定める認定を行う際には、認定協議会(以下「協議会」という。)に意見を求め、別添1及び別添2に定める対象患者の認定基準(以下「認定基準」という。)により適正に認定するものとする。

3.自己負担限度額階層区分の認定について

 自己負担限度額階層区分については、申請者が属する住民票上の世帯のすべての構成員に係る市町村民税課税年額を合算し、その額に応じて認定するものとする。

 ただし、申請者及びその配偶者と相互に地方税法上及び医療保険上の扶養関係にない者(配偶者以外の者に限る。)については、申請者からの申請(別紙様式例3)に基づき、当該世帯における市町村民税課税年額の合算対象から除外することを認めることができるものとする。

 なお、平成24年度以降分の市町村民税課税年額の算定にあたっては、「控除廃止の影響を受ける制度等(厚生労働省健康局所管の制度に限る。)に係る取扱いについて」(平成23年12月21日健発1221第8号厚生労働省健康局長通知)により計算を行うものとする。

4.肝炎治療受給者証の交付等について

 (1) 肝炎治療受給者証

  都道府県知事は、対象患者を認定したときは、速やかに当該患者に対し、別紙様式例4―1から4―4による肝炎治療受給者証(以下「受給者証」という。)を交付するものとする。

 (2) 交付申請書等の取扱い

  都道府県知事は、交付申請書を受理したときは受理した日(以下「受理日」という。)から速やかに当該申請に対し、その可否を決定し、否とした場合には具体的な理由を付してその結果を申請者に通知するものとする。

 (3) 肝炎治療受給者証の有効期間

受給者証の有効期間は1年以内で、治療予定期間に即した期間とし、原則として交付申請書の受理日の属する月の初日から起算するものとする。

5.対象患者が負担すべき額について

 (1) 実施要綱の6の(2)のアにより対象患者が保険医療機関等(健康保険法(大正11年法律第70号)に規定する保険医療機関又は保険薬局をいう。以下同じ。)に支払うべき額が、実施要綱の6の(2)のイに定める額(以下「自己負担限度額」という。)に満たない場合は、その全額を負担すべきものとする。

 (2) 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定による被保険者については、同法上の患者負担額の範囲内で、実施要綱の6の(2)のイに定める額を限度とする一部負担が生じるものとする。

6.自己負担限度月額管理の取扱い

 (1) 都道府県知事は、受給者に対し、別紙様式例5による肝炎治療自己負担限度月額管理票(以下「管理票」という。)を交付するものとする。

 (2) 管理票の交付を受けた受給者は、肝炎治療を受ける際に受給者証とともに管理票を保険医療機関等に提示するものとする。

 (3) 管理票を提示された保険医療機関等は、受給者から自己負担額を徴収した際に、徴収した自己負担額及び当月中にその受給者が肝炎インターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療について、支払った自己負担の累積額を管理票に記載するものとする。当該月の自己負担の累積額が自己負担限度月額に達した場合は、管理票の所定欄にその旨を記載するものとする。

  なお、当該自己負担限度月額は、インターフェロン治療と核酸アナログ製剤治療を併用する者の場合であっても、両治療に係る自己負担の合算額に対する1人当たりの限度月額として取り扱うものであること。

 (4) 受給者から、当該月の自己負担の累積額が自己負担限度月額に達した旨の記載のある管理票の提出を受けた保険医療機関等は、当該月において自己負担額を徴収しないものとする。

7.都道府県外へ転出した場合の取扱いについて

 受給者証を所持する患者(以下「受給者」という。)が、都道府県外へ転出し、転出先においても引き続き当該受給者証の交付を受けようとする場合には、転出日の属する月の翌月末日までに、転出前に交付されていた受給者証の写し等を添えて転出先の都道府県知事に届け出るものとする。転出先の都道府県は、当該届出を受理した旨を転出元の都道府県に伝達するとともに、転出日以降、費用を負担するものとする。

 なお、この場合における受給者証の有効期間は、転出前に交付されていた受給者証の有効期間の終期までとする。

8.対象医療及び認定基準等の周知等について

 都道府県知事は、本事業の適正な運用を確保するために保険医療機関等に対して本事業の対象医療及び認定基準等の周知に努めなければならない。

 また、都道府県は、保険医療機関等に対して定期的な指導・助言を行うよう努めるとともに、適正な治療が実施されていない保険医療機関等に対して、本事業における適正化の推進に必要な措置を講じるものとする。

9.その他

 都道府県知事は、必要に応じて、本事業のより効果的な運用に資するための情報収集等を行うことができるものとする。



(別添1)

認定基準

1.B型慢性肝疾患

 (1) インターフェロン治療について

  HBe抗原陽性でかつHBV―DNA陽性のB型慢性活動性肝炎でインターフェロン治療を行う予定、又はインターフェロン治療実施中の者のうち、肝がんの合併のないもの(ただし、ペグインターフェロン製剤を用いる治療に限っては、HBe抗原陰性のB型慢性活動性肝炎も対象とする。)

 ※ 上記において2回目の助成を受けることができるのは、これまでにペグインターフェロン製剤による治療を受けたことがない者が同製剤による治療を受ける場合とする。

 (2) 核酸アナログ製剤治療について

 B型肝炎ウイルスの増殖を伴い肝機能の異常が確認されたB型慢性肝疾患で核酸アナログ製剤治療を行う予定、又は核酸アナログ製剤治療実施中の者

2.C型慢性肝疾患

 (1) インターフェロン単剤治療並びにインターフェロン及びリバビリン併用治療について

 HCV―RNA陽性のC型慢性肝炎及びC型代償性肝硬変でインターフェロン治療を行う予定、又はインターフェロン治療実施中の者のうち、肝がんの合併のないもの。ただし、3剤併用療法(ペグインターフェロン、リバビリン及びプロテアーゼ阻害剤)を受けたことがあるものについては、副作用等の事由により十分量の24週治療が行われなかった場合に限る。

 ※ 上記において2回目の助成を受けることができるのは、以下の①、②のいずれにも該当しない場合とする。

  ① これまでの治療において、十分量のペグインターフェロン及びリバビリン併用療法による48週投与を行ったが、36週目までにHCV―RNAが陰性化しなかったケース

  ② これまでの治療において、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法による72週投与が行われたケース

 (2) ペグインターフェロン、リバビリン及びプロテアーゼ阻害剤3剤併用療法について

  HCV―RNA陽性のC型慢性肝炎で、ペグインターフェロン、リバビリン及びプロテアーゼ阻害剤による3剤併用療法を行う予定、又は実施中の者のうち、肝がんの合併のないもの。

  ※1 上記については、2.(1)に係る治療歴の有無を問わない。

  2 上記については、原則1回のみの助成とする。ただし、テラプレビルを含む3剤併用療法の治療歴のある者については、担当医によりシメプレビルを用いた再治療を行うことが適切であると判断される場合、改めて助成の対象とすることができる。

  ※3 テラプレビルを含む3剤併用療法については、日本皮膚科学会皮膚科専門医(日本皮膚科学会が認定する専門医主研修施設又は研修施設に勤務する者に限る。)と連携し、日本肝臓学会肝臓専門医が常勤する医療機関での実施に限り助成対象とする。



(別添2)

助成期間の延長に係る取扱い

1.例外的に助成期間の延長を認める場合は、下記によるものとする。ただし、少量長期投与については、対象としない。

 (1) C型慢性肝炎セログループ1型かつ高ウイルス量症例に対する、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法の実施に当たり、一定の条件を満たし、医師が72週投与(48週プラス24週)が必要と判断する場合に、6か月を限度とする期間延長を認めること。

 (2) C型慢性肝炎セログループ1型症例に対する、シメプレビルを含む3剤併用療法の実施に当たり、一定の条件を満たし、医師がペグインターフェロン及びリバビリンを更に24週投与することが適切と判断する場合に、6か月を限度とする期間延長を認めること。

  ※ この場合、ペグインターフェロン及びリバビリンの総投与期間は48週を超えないこと。

 (3) 副作用による休薬等、本人に帰責性のない事由による治療休止期間がある場合、上記の(1)または(2)とは別に、最大2か月を限度とする期間延長を認めること。ただし、再治療(再投与)については、対象としない。

  注)シメプレビルの添付文書中、用法・用量に関連する使用上の注意において、『副作用や治療効果不十分等により本剤を中止した場合には、本剤の投与を再開しないこと』との記載がある。

2.上記1の「一定の条件」を満たす場合は、下記によるものとする。

 1 (1)について

  ① これまでの治療において、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法48週を行い、36週目までにHCV―RNAが陰性化したが再燃した者で、今回の治療において、「HCV―RNAが36週までに陰性化した症例」に該当する場合。

  ② ①に該当しない者であり、今回の治療において、「投与開始後12週後にHCV―RNA量が前値(※)の1/100以下に低下するが、HCV―RNAが陽性(Real time PCR)で、36週までに陰性化した症例」に該当する場合。

 1 (2)について

  ① これまでの24週以上のインターフェロン治療[(ペグ)インターフェロン製剤単独、リバビリンとの併用療法及び他のプロテアーゼ阻害剤を含む3剤併用療法]でHCV―RNAが一度も陰性化しなかった者。

  ② または、インターフェロン治療の開始12週後にHCV―RNAが前値(※)の1/100以下に低下せず、治療が24週未満で中止となった者。

   ※ 前値:治療開始約半年前~直前までのHCV―RNA定量値。

   参考)平成22年3月現在、ペグインターフェロン製剤添付文書中、重要な基本的注意において、『48週を超えて投与をした場合の有効性・安全性は確立していない。』旨の記載がある。

{別紙資料は省略}