[文書名] 感染症対策特別促進事業実施要綱の一部改正について〔感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律〕
(平成22年3月24日)
(健発0324第38号)
(各都道府県知事・各保健所設置市長・各特別区長あて厚生労働省健康局長通知)
標記について、今般、実施要綱の一部を別紙新旧対照表のとおり改正し、平成22年4月1日から適用することとしたので通知する。
なお、本事業の実施にあたっては、事業が円滑に実施されるよう貴管内における関係機関等への周知について特段の御配慮をお願いする。
{別紙は省略}
別添4
肝炎対策事業実施要綱
1 目的
我が国の肝炎ウイルスキャリアはB型、C型合わせて220万人から340万人程度存在すると推定されており、長期間の経過の後に肝硬変や肝細胞がんを引き起こす危険が指摘されていることから、地域におけるC型肝炎診療の充実及び向上のため、医療提供体制の確保や患者への情報提供を行う。
また、シンポジウム等を開催し、B型・C型肝炎ウイルスの普及啓発を行うことにより、国民に対して、感染予防、早期発見及び早期治療の推進を図るとともに、地域の実情に応じた肝炎患者・家族等に対する支援対策を実施し、肝炎患者の生活の安定に資することを目的とする。
2 実施主体
この事業の実施主体は、都道府県、保健所設置市及び特別区(以下、「都道府県等」という。)とする。
ただし、3に記載した事業の(6)~(10)については都道府県とする。
3 事業内容
(1) 肝炎対策協議会の設置
都道府県等は、医師会、肝炎に関する専門医、関係市区町村や保健所等の関係者によって構成される肝炎対策協議会を設置するものとする。ただし、既に地域において同様の組織がある場合には、これを活用して差し支えない。また、保健所設置市及び特別区においては都道府県と常時連携体制を取るものとする。
同協議会においては、各都道府県等の実情に応じてC型肝炎に関する以下の事項等について必要な検討を行うものとする。
ア 検診等を通じてB型肝炎ウイルス(以下「HBV」という。)及びC型肝炎ウイルス(以下「HCV」という。)に感染している可能性が極めて高いと判定された者に対する保健師等による相談及び診療指導
イ HBV及びHCV検診の結果、医療機関への受診を勧奨された者の受診状況や治療状況等の把握
ウ HBV及びHCV検診を受けていないハイリスク・グループに検診を勧奨する方策
エ HBV及びHCV持続感染者が、継続的なかかりつけ医への受診等の健康管理を十分に受けていない場合の改善方策
オ 身近な医療圏において病状に応じた適切な肝炎診療が行われるよう、かかりつけ医と専門医療機関との連携の強化
カ 慢性肝炎・肝硬変や肝がんに対する高度専門的又は集学的な治療を提供可能な医療機関の確保
キ 肝炎診療にかかわる医療機関情報の収集と提供
ク 肝炎診療にかかわる人材の育成
ケ 各施策についての検討を基にした目標等の設定
コ 事業実施の評価
(2) 肝炎診療従事者研修の実施
都道府県等は、肝炎対策協議会の検討内容を踏まえつつ、地域での適切な肝炎への医療提供体制が確保されることを目的として、かかりつけ医等の肝炎診療従事者に対して、肝炎概論、肝炎患者への日常的な診療内容、専門医への紹介を要する症状・所見、専門医との連携の在り方その他肝炎に関する必要な事項について研修を実施するものとする。
(3) 肝炎診療支援リーフレットの作成・配布
都道府県等は、肝炎対策協議会の検討内容を踏まえつつ、肝炎に関する適切な情報提供を目的として以下を作成し、各対象へ配布する。
ア 肝炎患者やその家族を対象とした、肝炎について適切な理解を得ることができるためのリーフレット
イ 医療機関を対象とした、肝炎患者への日常的な診療内容、専門医へ紹介すべき状態、専門医との連携の在り方などを記載した適切な肝炎診療が実現されるためのリーフレット
(4) シンポジウム等の開催
都道府県等は、専門医を講師として招き、地域住民に対して、感染予防や治療に関する最新情報を分かりやすく伝えることや社会的及び精神的な面における相談、肝炎ウイルスに関する意見交換等を行うシンポジウム等を開催するなど、肝炎に関する正しい知識等を普及させるための事業を行うものとする。
(5) ポスター・リーフレットの作成・配布による普及啓発
都道府県等は、肝炎ウイルスにおける正しい知識の普及と肝炎ウイルス検査勧奨等地域の実情に合わせた情報提供を行うためにポスター・リーフレット等を作成し、シンポジウム等で配布するものとする。
(6) 新聞広告、電車等の中吊り広告の掲載による普及啓発
都道府県は、新聞広告や電車等中吊りポスターにより正しい知識の普及啓発や保健所等での肝炎ウイルス検査の受診勧奨を行うものとする。
(7) 肝炎患者等支援対策事業
都道府県は、肝炎患者の生活の安定に資するため、地域の実情に応じた肝炎患者や家族等に対する支援対策事業を実施するものとする。
[事業例]
・ 地域の患者、家族及び患者支援団体等の要望にこたえるための『患者サロン』の開設
・ 肝炎患者又は元患者であった者を講師とした、肝疾患相談センター相談員の資質向上を図るための講習会の開催
・ 同じ経験を有する患者・家族が相談に応じ、お互いに支え合うこと(ピアサポート)ができるよう、肝炎患者等を対象としたピアサポーターを育成するための研修の実施
(8) 肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会の設置
都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、かかりつけ医と専門医との連携の在り方等の検討を行い、適切な肝炎治療が行われるよう、地域医療の連携を図るものとする。
(9) 肝疾患相談センターの設置
都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、肝疾患相談センターを設置するものとする。また、同センターには相談員(医師、看護師等)を設置し、患者、キャリア及び家族等からの相談等に対応するほか、肝炎に関する情報の収集等を行うものとする。
(10) 肝炎専門医療従事者の研修事業
都道府県は、都道府県が指定する肝疾患診療連携拠点病院において、地域での適切な肝炎への医療提供体制が確保されることを目的とした医療従事者(医師、看護師、薬剤師等)に対する原因ウイルスの相違、患者の病態に応じた診療における留意点等その他肝炎に関して必要な事項についての研修を実施するものとする。
4 事業実施上の留意事項
(1) 都道府県等は、地域の実情や患者等の意向等を踏まえ、医師会等の関係団体、関係学会、関係行政機関等と連携を図りつつ、患者等の利便性を十分配慮した事業の実施に努めるものとする。
(2) 事業の実施上知り得た事実、特に個人が特定される情報については、関係法令に従い、適正かつ慎重に取り扱うとともに、その保護に十分配慮するよう、関係者に対して指導するものとする。
(3) 地域住民及び医療関係者に対し、広報誌等を通じて事業の周知を図るものとする。
5 経費の負担
都道府県等がこの実施要綱に基づき実施する事業に要する経費については、厚生労働大臣が別に定める「感染症予防事業費等国庫負担(補助)金交付要綱」に基づいて、予算の範囲内で国庫補助を行うものとする。
なお、3の(8)から(10)に掲げる事業において、肝疾患診療連携拠点病院が独立行政法人又は国立大学法人立の医療機関である場合は、当該法人へ直接国庫補助を行うものとする。
別添5
肝炎治療特別促進事業実施要綱
1 目的
国内最大級の感染症であるB型ウイルス性肝炎及びC型ウイルス性肝炎は、インターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療によって、その後の肝硬変、肝がんといった重篤な病態を防ぐことが可能な疾患である。しかしながら、このインターフェロン治療については月額の医療費が高額となること、また、核酸アナログ製剤治療については長期間に及ぶ治療によって累積の医療費が高額となることから、早期治療の促進のため、このインターフェロン治療及び核酸アナログ製剤治療に係る医療費を助成し、患者の医療機関へのアクセスを改善することにより、将来の肝硬変、肝がんの予防及び肝炎ウイルスの感染防止、ひいては国民の健康の保持、増進を図ることを目的とする。
2 実施主体
実施主体は、都道府県とする。
3 対象医療
この事業の対象となる医療は、B型ウイルス性肝炎及びC型ウイルス性肝炎の根治を目的として行うインターフェロン治療並びにB型ウイルス性肝炎に対して行われる核酸アナログ製剤治療で、保険適用となっているものとする。
当該治療を行うために必要となる初診料、再診料、検査料、入院料等については助成の対象とするが、当該治療と無関係な治療は助成の対象としないものとする。
4 対象患者
3に掲げる対象医療を必要とする患者であって、医療保険各法(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に規定する医療保険各法をいう。以下同じ。)の規定による被保険者又は被扶養者並びに高齢者の医療の確保に関する法律の規定による被保険者のうち、保険医療機関等(健康保険法(大正11年法律第70号)に規定する保険医療機関又は保険薬局をいう。以下同じ。)において当該疾患に関する医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に関する給付を受けている者とする。
ただし、他の法令等の規定により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付が行われる者は除くものとする。
5 助成期間
助成の期間は、原則として同一患者について1か年を限度とする。
6 実施方法
(1) 事業の実施は、原則として各都道府県が3に定める対象医療を適切に行うことができる保険医療機関等に対し、当該事業に必要な費用に相当する金額を交付することにより行うものとする。
(2) 前項の金額は、次のアに規定する額からイに規定する対象患者が負担する額を控除した額とする。
ア 医療保険各法の規定による医療又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に要する費用の額の算定方法の例により算定した当該治療に要する費用の額の合計額から医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律の規定による医療に関する給付に関し保険者が負担すべき額を控除した額
イ 1か月につき別表に定める額を限度とする額
7 認定
都道府県知事は、医療機関が発行する医師の診断書を基に、対象患者の認定を行うものとする。認定を行うに当たっては、事業の適正かつ円滑な実施を図るため、肝炎の専門家等から構成される認定協議会を設けるものとする。
なお、診断書は、3に定める対象医療を適切に行うことができるものとして、都道府県が指定した保険医療機関が発行することが望ましい。
8 関係者の留意事項
患者等に与える精神的影響を考慮して、助成事業によって知り得た事実の取扱いについて慎重に配慮するよう留意するとともに、特に個人が特定されうるものに係る情報(個人情報)の取扱いについては、その保護に十分に配慮するよう、関係者に対してもその旨指導するものとする。
9 国の補助
国は、都道府県がこの事業のために支出した費用に対し、その2分の1を補助するものとする。
(別表)
肝炎治療特別促進事業における自己負担限度額表
階層区分 | 自己負担限度額(月額) | |
甲 | 世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円以上の場合 | 20,000円 |
乙 | 世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円未満の場合 | 10,000円 |