[文書名] 性感染症に関する特定感染症予防指針の一部改正について
(平成24年1月19日)
(健感発0119第1号)
(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)
厚生科学審議会感染症分科会感染症部会エイズ・性感染症ワーキンググループにおける検討結果等を踏まえ、性感染症の発生動向、性感染症の検査、治療等に関する科学的知見など、性感染症を取り巻く環境の変化に対応するため、性感染症に関する特定感染症予防指針(平成12年厚生省告示第15号。以下「指針」という。)を別添のとおり改正し、平成24年1月19日より適用することとしたので、通知する。
なお、今般の改正の概要は下記のとおりであるので、性感染症予防の推進に当たっては、改正の趣旨を踏まえるとともに、管内の関係機関等に対する周知について、特段の配慮をお願いする。
記
(1) 改正の趣旨
性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒及び淋菌感染症(以下「性感染症」という。)については、指針に基づき、予防のための施策を総合的に推進しているところであるが、昨今の性感染症を取り巻く状況の変化を踏まえ、所要の見直しを行う。
(2) 主な改正事項
前文
○性器、口腔等を介した性的接触で感染することを追記する。
○性感染症に関する予防のための施策を連携して取り組む者に、教育関係者、当事者支援団体を含む非営利組織及び非政府組織等を追記する。
○性的接触を介して感染する可能性があり連携して対策をとる感染症の例示として、後天性免疫不全症候群のほかにB型肝炎を追加する。
第一 原因の究明
○国は、定点把握の性感染症の発生動向が実態を的確に反映したものとなるよう、指定届出機関の指定の基準についてより具体的に示すことを追記する。
第二 発生の予防及びまん延の防止
○性感染症の予防方法として予防接種を追記する。
○コンドームは、性感染症の原因となる性器及び口腔粘膜等の直接接触を妨げ、性感染症予防に対し確実かつ基本的な効果を有するが、その効果とともに、コンドームだけでは防ぐことができない性感染症があることや、正しい使い方等の具体的な情報の普及啓発に努めることを追記する。
○性器クラミジア感染症及び淋菌感染症の病原体検査において、尿を検体とするものを含むことを明記する。
○性器クラミジア感染症及び淋菌感染症における病原体検査、梅毒及び性器ヘルペスウイルス感染症における抗体検査について、「都道府県等の実情に応じて」としている部分を削除する。
○都道府県等は、検査の結果、受診者の感染が判明した場合は、当該受診者に当該性感染症のまん延防止に必要な事項について十分説明し支援するとともに、当該受診者を通じるなどして性的接触の相手方にも必要な情報提供等の支援を行うことを追記する。
○若年層に対する情報提供において適切な媒体を用いることを追記する。
○保健所等が行う学校における教育と連動した普及啓発において保護者等との連携について追記する。
○性感染症及び妊娠や母子への影響を性と生殖に関する健康問題としてとらえる配慮が重要であるほか、犯罪被害者支援や緊急避妊のための診療等の場においては、性感染症予防を含めた総合的な支援が求められることを追記する。
○尖圭コンジローマについては、子宮頸がんとともに、ワクチンによっても予防が有効であることから、ワクチンの効果等についての情報提供を行うことが重要であることを追記する。
第三 医療の提供
○医療の質の向上の観点から、以下の内容を追記する。
・国及び都道府県等は、学会等との連携により、様々な診療科を横断して性感染症の専門家養成のための教育及び研修機会の確保を図ることが重要であること。
・学会等の関係団体は、標準的な診断や治療の指針等について積極的に情報提供し、普及を図ることが重要であること。
○医療アクセスへの向上の観点から以下の内容を追記する。
・若年層等が性感染症に関して受診しやすい医療体制の整備などの環境づくりとともに、保健所等における検査から、受診及び治療に結び付けられる体制づくりを推進することが重要であること。
・検査や治療について民間団体等の協力により普及啓発を行うことが重要であること。
第四 研究開発の推進
○発生動向等に関する疫学研究の推進に当たって、病原体の分子疫学や薬剤耐性に関する研究を行うことを追記する。
○社会面と医学面における性の行動様式等に関する研究に感染リスクや感染の防止に関する意識・行動を含むことを追記する。
第五 国際的な連携
改正事項なし
第六 関係機関等との連携の強化
○保健所は普及啓発の拠点としての情報発信機能の強化を図ることを追記する。