[文書名] 後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の運用について
(平成24年1月19日)
(健疾発0119第1号)
(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局疾病対策課長通知)
日本のエイズ動向は、昭和60年のエイズ発生動向調査開始以降、新規HIV感染者及び新規エイズ患者(以下「患者等」という。)の増加傾向が続いており、今後とも、感染の予防及びまん延の防止を更に強力に進めていく必要がある。
また、「エイズ予防指針作業班」(班長:木村哲東京逓信病院長)報告書によると、現状の問題点として、①HIV抗体検査件数の減少と患者等報告数の増加、②個別施策層に対する施策が重点的、計画的に実施されていない、③各ブロックの現状に応じた医療提供体制の構築が、依然としてなされていない、④各種施策の効果についての分析・評価・検討が不十分である、⑤薬害被害者に対する恒久対策の推進等が指摘されているところである。
このような状況を踏まえ、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)第11条第1項の規定に基づき、平成24年1月19日厚生労働省告示第21号をもって、「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(平成18年3月2日厚生労働省告示第89号。以下「予防指針」という。)の改正がなされたところである。
今後は、改正後の予防指針に基づき、国、地方公共団体、医療関係者、患者団体を含む非営利組織又は非政府組織(以下「NGO等」という。)との連携を強化しつつ、人権や社会的背景に配慮し地域の実情を踏まえながら、感染の予防及びまん延の防止のための重点的かつ計画的なエイズ対策を推進されるよう特段の配慮をお願いする。
なお、改正後の予防指針の概要等は下記のとおりであるので十分に留意されたい。
また、本通知は平成24年1月19日から適用することとし、平成18年3月31日健疾発第0331001号「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針の運用について」は廃止する。
記
第1 予防指針の目的及び性格
1 目的
本予防指針は、原因の究明、発生の予防及びまん延の防止、普及啓発及び教育、検査・相談体制の充実、医療の提供、研究開発の推進、国際的な連携、人権の尊重、施策の評価及び関係機関との連携等、エイズ予防のための総合的な施策の推進を図るために作成されたものである。
2 性格
目的をもって作成された予防指針は、国、地方公共団体、医療関係者及びNGO等がともに連携してエイズ対策を進めていく行動指針である。
また、予防指針は、その有効性を維持確保するため、少なくとも5年ごとに再評価を加え、その結果を予防指針に反映させることとしている。
第2 改正後の予防指針の概要
1 前文に関する事項
(1) 日本における発生の動向については、地域的にも年齢的にも依然として広がりを見せており、特に20代から30代までの若年層や日本人男性の同性間の性的接触の感染事例が増加していることから、国、地方公共団体、医療関係者及びNGO等がともに連携して重点的かつ計画的に感染の予防及びまん延の防止のための施策を更に強力に進めていく必要がある。
(2) ①HIV・エイズに係る正しい知識の普及啓発及び教育、②保健所等における検査・相談体制の充実等による発生の予防及びまん延の防止、③患者等に対する人権を尊重した良質かつ適切な医療の提供について、特に重点的に施策を実施されたい。施策の実施に当たっては、実効性を高めるため、国、地方公共団体、医療関係者及びNGO等との連携体制の強化に取り組まれたい。
(3) 日本の既存の施策は全般的なものであり、特定の集団に対する感染拡大の抑制に必ずしも結びつかなかったため、個別施策層(感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、感染に関する正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるために施策の実施において特別な配慮を必要とする人々をいう。以下同じ。)に対する人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を追加的に実施されたい。
個別施策層としては、性に関する意思決定や行動選択に係る能力について形成過程にある青少年、言語的障壁や文化的障壁のある外国人及び性的指向の側面で配慮の必要なMSM(男性間で性行為を行う者をいう。以下同じ。)が挙げられる。また、性風俗産業の従事者及び利用者、薬物乱用者についても個別施策層として対応する必要がある。(4) 感染症法においては、感染症の予防と医療の提供を車の両輪のごとく位置付けるとともに、患者等の人権を尊重し、偏見や差別の解消を法制定の理念としているので、常にこれらの点を念頭において施策の推進に当たられたい。
2 原因の究明に関する事項
(1) HIV感染に関する情報を収集及び分析し、国民や医療関係者に対して広く情報を公開及び提供していくことは、HIV感染の予防及び良質かつ適切な医療の提供のための施策の推進にあたり、最も基本的かつ重要な事項であるので、国が実施するエイズ発生動向調査及び病状に変化を生じた事項に関する報告(任意報告)に対し、引き続き協力をお願いする。
また、国が研究班やNGO等と協力し実施する、個別施策層に対するエイズ発生動向調査を含むこれらの結果については、個人情報の保護に十分配慮しながら、都道府県等(都道府県、保健所を設置する市及び特別区をいう。以下同じ。)の施策の推進にあたり積極的に活用されたい。
(2) また、国際交流がますます盛んになってきたことから、国内だけでなく国外における感染状況の把握に努めるとともに、それを施策へ反映させていくことも重要である。
3 発生の予防及びまん延の防止に関する事項
(1) 日本における現在の最大の感染経路が性的接触であることから、国民に対して①正しい知識の普及啓発、②保健所等における検査・相談体制の充実を基本とし、予防対策を重点的かつ計画的に進めていくことが重要である。
(2) 保健所をこれらの対策の中核として位置付けるとともに、所管地域の発生動向を正確に把握できるよう、その機能が強化されることが重要である。
(3) HIV感染は性感染症の罹患と関係が深いことから、性感染症の予防対策と連携した施策の実施が必要である。
(4) 個別施策層(特に、青少年及びMSM)に対して、引き続き、人権や社会的背景に最大限配慮しその特性を踏まえた、きめ細かく効果的な施策を、NGO等と連携し実施することが重要である。特に、患者等や個別施策層に対し、対象者の実情に応じた、検査・相談の利用の機会に関する情報提供に努めるなど、検査を受けやすくするための特段の配慮が重要である。なお、薬物乱用者については、薬物乱用防止の取組等、関係施策との連携強化について検討することが重要である。
4 普及啓発及び教育に関する事項
(1) 普及啓発及び教育においては特に、科学的根拠に基づく正しい知識に加え、保健所等における検査・相談の利用に係る情報、医療機関を受診する上で必要な情報等を周知することが重要であり、近年の発生動向を踏まえ、対象者の実情に応じて正確な情報と知識を、分かりやすい内容と効果的な媒体により提供する取組を強化することで、個人個人の行動がHIVに感染する危険性の低い又は無いものに変化すること(以下「行動変容」という。)を促進させていく必要がある。また、感染の危険にさらされている者のみならず、それらを取巻く家庭、地域、学校、職場等へ向けたHIV・エイズに係る正しい知識の普及啓発及び教育についても効果的に取り組み、行動変容を起こしやすくするような環境を醸成していくことが必要である。また、HIV感染の最大の感染経路は性的接触であることから、性感染症の予防のための正しい知識の普及を図るとともに無防備な性行動を抑制する観点から、お互いの身体や心を思いやる心の醸成を図るとともに、豊かな人間関係を構築できるコミュニケーション能力の向上を図る取組が求められている。
(2) 普及啓発及び教育を行うに当たっては、地方公共団体は、国民一般を対象にHIV・エイズに係る正しい知識を提供することに加え、個別施策層等の対象となる層を設定し、行動変容を促すような普及啓発及び教育を進めていくことが重要である。このためには、対象者の年齢、行動段階等の実情に応じた内容とすることが必要である。
なお、HIV感染の予防において、MSM及び青少年に対する普及啓発及び教育は特に重要であり、MSMに対する普及啓発等においては、当事者やNGO等との連携により、対象者の実情に応じた取組を強化することが重要である。また、青少年に対する教育等を行う際には、学校、地域コミュニティ、青少年相互の連携・協力が重要であるとともに、青少年を取り巻く環境、青少年自身の性的指向や性に対する考え方等には多様性があるため、それぞれの特性に応じた教育等を行う必要がある。地方公共団体が行う普及啓発のうち、MSMや青少年に対しては、MSMに対する支援、普及啓発の拠点として厚生労働省が委託運営するコミュニティセンターや厚生労働省が文部科学省と連携して取り組んでいる「青少年エイズ対策事業」を活用及び参考とするなど積極的に対応されたい。あわせて、これらを実施するに当たっては、研究班が作成した各種マニュアル、ガイドライン等を参考とされたい。その際、都道府県においては、普及啓発の実施に当たり、市町村と相互に連携を図ることが求められる。
また、普及啓発資料の作成に当たっては、患者等、個別施策層の当事者及びNGO等の参加によって実効ある普及啓発に努められたい。
(3) 特に、地方公共団体は、地方の実情に応じた受検・受療行動につながる効果的な普及啓発及び教育を行うに当たっては、保健所、医療機関、教育機関、企業、NGO等との連携を図ることが重要である。
なお、都道府県等においては、都道府県等が設置する推進協議会等や都道府県等保健所運営協議会などの場を積極的に活用することが望ましい。
また、HIV・エイズに係る正しい知識の普及啓発や教育を行うに当たっては、地方公共団体は、要となる職員の育成に取り組む必要がある。育成に当たっては、国の委託事業等による研修を活用されたい。
5 検査・相談体制の充実
(1) 感染者が早期に検査を受検し、適切な相談及び医療機関への紹介を受けることは、感染症の予防及びまん延の防止のみならず、感染者個々人の発症又は重症化を防止する観点から極めて重要である。このため、都道府県等は、NGO等や必要に応じて医療機関とも連携し、地域の実情に応じて、利便性の高い場所と夜間・休日等の時間帯に配慮した検査や迅速検査を実施するとともに、検査・相談を受けることができる場所と時間帯等の周知を行うなど利用の拡大に努められたい。また、検査・相談体制の充実に当たっては、エイズ治療拠点病院の積極的な活用を図ることが望ましい。
(2) 感染症法に定める予防計画等に検査・相談体制に関する事項を盛り込むなど、毎年度検査相談体制に関する計画を定め、着実に進める必要がある。
(3) 検査・相談の機会を個人個人に対して行動変容を促す機会と位置付け、受検者のうち希望者に対しては、検査前に相談の機会を設け、必要かつ十分な情報に基づく意思決定の上で検査が行われることが必要であり、検査の結果が陽性であった者に対する相談及び早期治療・発症予防の機会を提供することが重要である。さらに、陰性であった者についても、行動変容を促す機会として積極的に対応することが望ましい。また、検査後においては、希望する者に対して、継続的な検査後の相談及び陽性者の支援のための相談等、相談体制の充実に向けた取組を強化することも重要である。
(4) 個別施策層に対する検査・相談については、人権や社会的背景に最大限配慮しつつ、NGO等と連携した取組を実施し、対象者の実情に応じた、利用の機会の拡大を促進する取組を強化することが重要である。
なお、個別施策層に対し効率的に検査を実施するという観点で、感染者等の数が全国水準より高いなどの地域にあっては、地域の実情を踏まえた定量的、定性的な施策目標等を設定し、検査を実施することが望ましい。
(5) 予防及び医療の提供に関する保健医療相談需要の多様化等に対応した相談窓口体制の強化が必要である。その際、心理的背景や社会的背景に十分配慮した専門的な相談としてのカウンセリングが必要である。そのためには、カウンセリング専門研修の受講による相談事業の質的向上、患者等及び個別施策層によるピア・カウンセリング(患者等や個別施策層の当事者による相互相談をいう。以下同じ。)の活用が必要かつ有効である。特に個別施策層に対しては、患者等やNGO等との連携等によるメンタルヘルスケアを重視した相談の質的向上等が重要である。
以上のことから、都道府県等にあっては、担当者の資質の向上を図りつつ、NGO等と連携し、地域の実情に応じた電話相談、派遣相談などの相談体制の強化に努められたい。
6 医療の提供に関する事項
(1) 総合的な医療提供体制の確保については、次のような点に留意が必要である。
ア 患者等に対する医療及び施策が更に充実するよう、国のHIV治療の中核的医療機関である独立行政法人国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター(以下「ACC」という。)、地方ブロック拠点病院、中核拠点病院、エイズ治療拠点病院の機能の強化を推進するとともに、地域の実情に応じて、中核拠点病院、エイズ治療拠点病院、地域の診療所等の機能分担による診療連携の充実や患者等を含む関連団体との連携を図ることにより、都道府県内における総合的な医療提供体制の整備を重点的かつ計画的に進めることが重要である。
イ ACCの支援を原則として受ける地方ブロック拠点病院が中核拠点病院を、中核拠点病院がエイズ治療拠点病院をそれぞれ支援するという、各種拠点病院の役割を明確にするとともに、ACC及び地方ブロック拠点病院の緊密な連携の下、中核拠点病院等を中心として都道府県内における総合的なエイズ医療体制の確保と診療の質の向上を図られたい。また、一般の医療機関においても診療機能に応じた患者主体の良質かつ適切な医療が居住地で安心して受けられる基盤作りが重要である。
このため、推進協議会等において、各種拠点病院における医療従事者への啓発や各種拠点病院間の診療連携の推進、各種拠点病院としての医療提供体制維持等、医療体制整備の進捗状況を評価できる仕組みを検討することも必要である。
ウ 中核拠点病院においては、エイズ診療に十分経験のある医師の確保やエイズ治療拠点病院に対する研修や医療情報の提供、地方ブロック拠点病院やエイズ治療拠点病院との緊密な連携を図ることが求められている。
エ 中核拠点病院以外のエイズ治療拠点病院におかれても、引き続き、エイズに関する総合的かつ高度な医療の提供、情報の収集と地域の他の医療機関への情報提供及び地域内の医療従事者に対する教育の実施に努められたい。
オ 高度化したHIV治療の実施や、合併症や併発症を有する患者への治療等のためには、専門医等の医療従事者が連携して診療に携わることが重要である。
このため、国が作成した、外来診療におけるチーム医療等についてのマニュアル等を参考に、良質かつ適切な医療を確保されたい。
また、一般医療機関での診療を促進するために地域内のあらゆる医療機関とそこに受診する患者等が、専門医等の意見を聞けるような連携体制を構築することが必要である。
カ この連携強化を図っていくには、患者等の精神的、心理的な側面も配慮した受診しやすい環境づくりとともに、専門的医療と地域での保健医療サービス及び福祉サービスとの連携、検査受検や感染の予防に関する啓発及び情報提供等を円滑に行っていくことが必要であり、これらの各種保健医療サービス及び福祉サービスとの連携を確保するための機能(コーディネーション)を強化するなど、総合的な診療体制の確保を目指すことが重要である。このため都道府県等は、中核拠点病院の設置する連絡協議会等と連携し、医師会、歯科医師会等の関係団体や患者団体の協力の下、中核拠点病院、エイズ治療拠点病院及び地域診療所等間の診療連携の充実を図ることが重要である。特に、患者等に対する歯科診療確保について、地方ブロック拠点病院及び中核拠点病院は、地域の実情に応じ相互の連携の下、各種拠点病院と診療に協力する歯科診療所との連携体制の構築を図り、患者等へ滞りなく歯科診療を提供することが重要である。
また、HIVに関する専門的な教育、研修を推進し、それらを受けた人材の活用も体制整備に必要である。
キ 患者等に対し効果的な治療を実施し、かつ、感染の拡大を抑制していくためには、医療従事者による十分な説明と同意(インフォームド・コンセント)が重要である。
ク 上記の医療提供体制の強化を図っていくため、患者等や医療機関が適時、適切に医療情報、診療情報の利用が可能となる情報提供体制の整備と普及が重要である。このため、個人情報の保護に万全を期した上で、インターネットやファクシミリによる医療情報提供体制の整備やHIV診療支援ネットワークシステム(A―net)等による診療の相互支援の促進を図ることが重要である。
ケ 患者等の療養期間の長期化に伴い、長期療養・在宅療養の患者等を積極的に支援する体制整備を推進していくことが重要であり、都道府県等にあっては、連絡協議会等において、地域の実情に応じて、各種拠点病院と地域医師会・歯科医師会等との連携を推進し、各種拠点病院と慢性期病院との連携体制の構築を図ることが重要である。
(2) 都道府県においては、HIV治療に関わる医療従事者の育成を図るため、研修計画を策定し、着実に実施されたい。国においては、中核拠点病院及びエイズ治療拠点病院のHIV治療の質の向上を図るため、地方ブロック拠点病院等による出張研修等により支援することとしており、これらの各種研修を積極的に活用されたい。
(3) 都道府県においては、個別施策層に対して良質かつ適切な医療を提供するため、その精神的・心理的側面、社会行動的側面等の特性を踏まえた対応が必要であり、その際、各種専門的な研修や具体的対応マニュアル等を活用されたい。また、都道府県は、地域の実情に応じて、各種拠点病院等における検査やHIV治療に関する相談の機会の拡充への取組の強化を図るべきである。特に外国人に対する医療への対応については、職業、国籍、感染経路等によって医療やサービス、情報の提供に支障が生じることのないよう、医療従事者に対する研修を実施するとともに、通訳や外国人に対応できる医療ソーシャルワーカーの確保による多言語での対応の充実が必要である。また、ボランティアやNGO等を活用し、カウンセリング体制の充実を図られたい。
(4) HIV治療の進歩に伴い、患者等が長期間障害を持ちながらも療養できるようになり、HIV感染者は身体障害者の認定が受けられることから、HIV感染者に対する日常生活支援のための保健医療サービスと福祉サービスとの連携強化がますます重要となってきているため、医療ソーシャルワークやピア・カウンセリング等の研修の機会を拡大し、医療機関や地域のNGO等と連携した生活相談支援のプログラムを推進することが重要である。
(5) 患者及びその家族等の日常生活を支援するという観点から、NGO等との連携体制や社会資源の活用、人権侵害への対応、心理的支援等における相談方法や相談窓口についての情報提供に努められたい。
7 研究開発の推進
国及び都道府県等においては、研究結果が感染の拡大の抑制やより良質かつ適切な医療の提供につながるような研究を行っていくべきである。国においては、各種治療指針等の作成のための研究を優先的に対応することとしているが、都道府県等においても、地域の実情に応じた調査研究を行うことが必要である。
なお、調査研究結果については、研究の性質に応じ、公開等を行い、幅広く患者等からの意見も参考とすべきである。
8 人権の尊重に関する事項
(1) 保健所、医療機関等の保健医療部門及び福祉施策部門等、就労斡旋・相談窓口、企業の採用担当窓口及び企業内においては、患者等に係る人権の尊重及び個人情報の保護を徹底することが重要であり、都道府県等にあっては、各種研修及び情報提供の場を活用し、関係機関への周知徹底を図られたい。
(2) 患者等及び個別施策層に対する偏見、差別の撤廃に関し、NGO等と連携し、機会あるごとに、医療現場、学校、企業、地域住民等への普及啓発に努められたい。また、具体的な偏見、差別の要因を撤廃するための普及啓発の努力を行うとともに、必要があれば、心理的支援としてのカウンセリングの機会が容易に得られるよう、相談方法や相談窓口についての情報提供に努められたい。
9 施策の評価及び関係機関との連携に関する事項
(1) 施策の評価については、次のような点に留意する必要がある。
ア 都道府県等は、感染症予防計画等の策定又は見直しを行う際には、①正しい知識の普及啓発、②保健所等における検査・相談体制の充実、③医療提供体制の確保等に関して、地域の実情に応じた施策目標等を設定することや、推進協議会等における意見等を踏まえ、実施状況等を複数年にわたり評価し、施策を柔軟に見直すなど、実効ある施策の推進に努められたい。
イ 感染者等の数が全国水準より高いなどの地域に対して、国は、必要に応じて技術的助言を行うこととしており、重点的に連絡調整すべき都道府県等に指定された都道府県等においては、国と十分に連携して積極的に施策を推進されたい。
ウ 国は、本予防指針を有効に機能させるため、これに基づいて実施される取組の進捗状況を年次報告書としてとりまとめるとともに、審議会等の場を活用し、患者等、医療機関、NGO、個別施策層等の関係者と定期的に意見の交換を図り、次年度の施策に結びつけることとしている。
なお、国は、国や都道府県等の各種主要施策の実施状況等をモニタリングするとともに進捗状況を定期的に情報提供し、必要な検討を行うこととしており、このため、都道府県等におかれては、必要な情報提供についてご協力をお願いしたい。
(2) 個別施策層を対象とする各種施策を実施する際には、NGO等と連携強化を図ることが効果的である。そのため、エイズ予防情報ネット(API―Net)において掲載しているNGO等の活動状況に係る情報提供を今後充実させていく予定であるので、これを活用されたい。
あわせて、都道府県等は、各種施策におけるNGO等との連携が有効なものとなるよう、その施策の内容を評価する体制を整備することが重要である。