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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 予防接種法施行規則の一部を改正する省令等の施行について

[場所] 
[年月日] 2014年3月28日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成26年3月28日)

(健感発0328第2号)

(各都道府県・各政令市・各特別区衛生主幹部(局)長あて厚生労働省健康局結核感染症課長通知)

(公印省略)

 予防接種法施行規則の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第27号)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第28号)及び風しんに関する特定感染症予防指針(平成26年厚生労働省告示第122号)が平成26年3月28日に公布され、平成26年4月1日から施行されるところである。今回の改正等の概要は、下記のとおりであるので、内容を十分御了知の上、関係機関等への周知を図るとともに、その実施に遺憾なきを期されたい。



   記

第1 予防接種法施行規則の一部を改正する省令の改正の概要

 1 改正の概要

  風しんについて、特に総合的に予防接種を推進する必要があることから、指針を定める疾病に風しんを追加するものであること。

  ただし、当該指針については、予防接種法(昭和23年法律第68号)第4条第3項の規定に基づき、第3の風しんに関する特定感染症予防指針と一体のものとして定めたところである。

 2 施行期日

  平成26年4月1日から施行するものとしたこと。


第2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令の改正の概要

 1 改正の概要

  風しんについて、特に総合的に予防のための施策を推進する必要があることから、指針を作成し、公表する疾病に風しんを追加するものであること。

 2 施行期日

  平成26年4月1日から施行するものとしたこと。


第3 風しんに関する特定感染症予防指針の概要

 1 概要

  (1) 前文

   ① 我が国においては、予防接種法の対象疾病に風しんを位置付け、当該予防接種を積極的に勧奨することにより、風しんの発生の予防及びまん延の防止に努めてきたところであるが、平成24年から平成25年に、20代から40代の成人男性等の間で、大都市を中心として風しんの流行が起こったこと、これらの流行が、風しんに対する免疫を持たない者(以下「感受性者」という。)の世代を中心として広がったことから、予防接種をはじめとした風しん対策の指針を定める必要があること。

   ② 本指針は、風しんの発生の予防及びまん延の防止並びに先天性風しん症候群の発生の予防及び先天性風しん症候群の児への適切な医療等の提供等を目的に、国、地方公共団体、医療関係者、教育関係者、保育関係者、事業者等が連携して取り組むべき施策の方向性を示したものであること。

  (2) 目標

早期に先天性風しん症候群の発生をなくすとともに、平成32年度までに風しんの排除を達成することを目標とすること。

  (3) 原因の究明

   ① 国及び都道府県等において、風しんについての情報の収集及び分析を進めるとともに、発生原因の特定のため、正確かつ迅速な発生動向調査を行うことが重要であること。

   ② 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条に基づく医師の届出により、全数報告を求めるものとすること。また、風しんを診断した医師の届出については、可能な限り24時間以内の報告を求めること。

   ③ 風しんについて、臨床診断で届出対象とするが、検査診断の結果についても報告を求めるものとすること。なお、風しんの患者数が減少してきた場合は、報告に当たり検査診断を必須のものとする予定であること。また、先天性風しん症候群について、風しん発生地域において妊娠初期検査で風しん抗体陰性又は低抗体価の妊婦から出生した新生児に対し、先天性風しん症候群を念頭に注意深い対応を行うとともに、可能な限り早期に診断する必要があること。

   ④ 国は、日本医師会等の関係団体を通じて、風しん及び先天性風しん症候群の診断、届出等について、医師に協力を求める必要があること。

   ⑤ 都道府県等は、地域で風しんの流行がない状態において、風しん患者が同一施設で集団発生した場合等に感染経路の把握等の調査を迅速に実施するよう努めることが必要であり、国は、当該調査の実務上の手順等を示した手引きの作成及び要請された人員派遣に応えられる人材養成を行うものとすること。また、国及び地方公共団体は、先天性風しん症候群の患者が発生した場合に医療関係者が保護者に対し適切な対応ができるよう必要な情報提供を行うものであること。

   ⑥ 都道府県等は、医師から検体が提出された場合は、都道府県等が設置する地方衛生研究所において、可能な限りウイルス遺伝子検査等を実施するとともに、その結果の記録を保存すること。検査の結果、風しんウイルスが検出された場合は、可能な限り、地方衛生研究所において風しんウイルスの遺伝子配列の解析を実施し、その結果を速やかに国立感染症研究所に報告又は公表すること。

  (4) 発生の予防及びまん延の防止

   ① 感染力が強い風しんの対策として、予防接種により感受性者が風しんへの免疫を獲得することが最も有効であること。一方で、無症状や軽症のものも一定程度存在し、国民の8割から9割程度が既に抗体を保有していることから、必要に応じ抗体検査を実施することが効果的かつ効率的であり、風しんの罹患歴や予防接種歴を確認できない者に対し、幅広く風しんの性質等を伝え、風しんの抗体検査や予防接種を行うよう働きかけることが必要であること。

   ② 本指針の目標をより効果的かつ効率的に達成するには、特に平成25年の流行時に風しんの伝播が多くみられた職場等や先天性風しん症候群の予防の観点から妊娠を希望する女性等に焦点を当てた感染及び予防対策が重要になると考えられること。

   ③ 国は、定期の予防接種の接種率が95パーセント以上となることを目標とし、その対象期間の初めの3月の間に、特に積極的な勧奨を行うものとし、市町村に対し、定期の予防接種の対象者への個別の通知等、確実な接種勧奨を行うよう依頼する必要があること。

   ④ 厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、就学時健診の機会を利用し、定期の予防接種の対象者の罹患歴及び予防接種歴を確認し、未罹患であり、かつ、風しん含有ワクチンの予防接種を2回接種していない者に接種勧奨を行うものとすること。

   ⑤ 国は、日本医師会等に協力を求め、予防接種を受けやすい環境作りを徹底する必要があること。

   ⑥ 先天性風しん症候群の発生を防止するため、妊娠を希望する女性及び抗体を保有しない妊婦の家族等のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要があること。また、厚生労働省は、当該推奨を行うために、日本医師会等に協力を求めること。

   ⑦ 幼少期に自然感染しておらず、かつ、風しんの定期の予防接種を受ける機会がなかった者や接種を受けていなかった者の割合が他の年齢層に比べて高い、昭和37年度から平成元年度に出生した男性及び昭和54年度から平成元年度に出生した女性のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要があること。また、厚生労働省は、当該推奨を行うために、関係省庁や事業者団体に協力を求めること。

   ⑧ 風しんに罹患すると重症化しやすい者や妊婦と接する機会が多い医療関係者、児童福祉施設の職員、学校の職員等に対する予防接種の推奨を行う必要があること。また、厚生労働省は、当該推奨を行うために、日本医師会等の関係団体や文部科学省に協力を求めること。

   ⑨ 海外の風しん流行地域で風しんに感染すると、国内に風しんウイルスを流入させる可能性があることから、海外に渡航する者等のうち、罹患歴又は予防接種歴が明らかでない者に対し、風しんの抗体検査や予防接種の推奨を行う必要があること。

   ⑩ 国民の予防接種に対する正しい知識の普及啓発のため、厚生労働省は、予防接種の重要性及び副反応、特に妊娠中の接種による胎児への影響等の情報に関し、リーフレット等の作成や関係団体を通じた情報提供、報道機関と連携した広報等により、国民に対して、積極的な情報提供を行う必要があること。また、厚生労働省は当該情報提供を行うために、関係省庁や関係団体に協力を求めること。

   ⑪ 平成25年にワクチンや検査キットの確保が困難になった事例に鑑み、国は、ワクチン及び試薬類の生産について、製造販売業者と連携を図るとともに、その流通について日本医師会、卸売販売業者及び地方公共団体の間の連携を促進するものとすること。なお、風しんの予防接種に用いるワクチンは、原則として麻しん風しん混合(MR)ワクチンを用いるものとすること。

  (5) 医療等の提供

   ① 先天性風しん症候群のような出生児が障害を有するおそれのある感染症については、妊婦への情報提供が特に重要であること。このため、国は、医師に対する情報提供を行うとともに、国民にも感染した際の初期症状や早期に採るべき対応等について、周知することが望ましいこと。

   ② 国は、医師が風しんの患者を適切に診断できるように、風しんの流行状況等について、積極的に情報提供し、流行が懸念される地域においては、日本医師会等の関係団体と連携し、注意喚起を行う必要があること。また、小児科医のみではなく、全ての医師が風しんを診断できるように、普及啓発を行うことが重要であること。

   ③ 国は、先天性風しん症候群と診断された児の症状に応じ、適切な医療を受けることができるよう、日本医師会等に対し、専門医療機関の紹介等の対応を依頼すること。また、地方自治体に対して、先天性風しん症候群と診断された児に対する医療及び保育等が適切に行われるよう、必要な情報提供を行い、症状に応じた支援制度を利用できるよう、積極的な情報提供及び制度のより適切な運用を依頼すること。

  (6) 研究開発の推進

   ① 風しんの特性に応じた発生の予防及びまん延の防止のための対策を実施し、良質かつ適切な医療を提供するためには、風しんに関する最新の知見を集積し、ワクチン、治療薬等の研究開発を促進していくことが重要であること。また、風しんの定期の予防接種を円滑に実施するため、定期の予防接種歴の確認を容易にするシステムの整備を推進していく必要があること。

   ② 現行の風しん含有ワクチンは効果及び安全性の高いワクチンの一つであるが、今後の使用状況等を考慮し、国は、必要に応じて研究開発を推進していくものとすること。また、これらの研究の成果を的確に評価する体制を整備し、情報公開を積極的に行うことが重要であること。

  (7) 国際的な連携

   ① 国は、世界保健機関をはじめとする関係国際機関との連携を強化し、情報交換等を積極的に行うことにより、世界的な風しんの発生動向の把握、風しん排除達成国の施策の研究等に努め、我が国の風しん対策の充実を図っていくことが重要であること。

   ② 世界保健機関においては、風しんの予防接種率が95パーセント以上となること、平成24年に開催された世界保健総会においては、平成32年までに世界6地域のうち5地域において風しんの排除の達成を目標に掲げていることから、我が国も本指針に基づき風しん対策の充実を図ることにより、その目標の達成に向けて取り組むこと。また、これらの取組により、国内で感染し、海外で発症する患者の発生を予防することにも寄与すること。

  (8) 評価及び推進体制と普及啓発の充実

   ① 国は、「風しん対策推進会議」を設置し、施策の実施状況を毎年、評価・公表し、必要に応じて、施策の見直しを含めた積極的な対応を講じる必要があること。

   ② 都道府県は、それぞれに風しん対策の会議を設置し、発生動向、予防接種の接種率及び副反応の発生事例等を把握し、地域における施策の進捗状況を評価すること。また、厚生労働省は、風しん対策の会議が定期の予防接種の実施状況を評価するために、当該会議が学校等から必要な情報を得られるよう文部科学省に協力を求めること。

   ③ 厚生労働省は、定期の予防接種の接種率及び学校の臨時休業の情報を把握するため、関係機関に情報提供を依頼すること。また、予防接種により生じた重篤な副反応の事例が速やかに国及び風しん対策の会議等に報告される仕組みを構築すること。

   ④ 風しん対策に関する普及啓発は、風しん及び先天性風しん症候群に関する正しい知識に加え、医療機関受診の際の検査や積極的疫学調査への協力の必要性等を周知することが重要であることから、厚生労働省は関係機関との連携を強化し、国民に対して適切な情報提供を行うよう努めること。

 2 施行期日

  平成26年4月1日