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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律について

[場所] 
[年月日] 2014年11月21日
[出典] 厚生労働省
[備考] 
[全文] 

(平成26年11月21日)

(健発1121第3号)

(各都道府県・各保健所設置市・各特別区衛生主管部(局)長あて厚生労働省健康局長通知)

(公印省略)

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第115号。以下「改正法」という。)については、本日、別紙のとおり公布されたところである。これらの改正の概要等は下記のとおりであるので、貴職におかれては、貴管内市町村(保健所を設置する市及び特別区を除く。)及び関係機関等へ周知を図るとともに、その実施に遺漏なきを期されたい。

 なお、本通知においては、改正法による改正後の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)を「法」と略称する。



   記


第一 改正の趣旨

 最近の海外における感染症の発生の状況、国際交流の進展、保健医療を取り巻く環境の変化等を踏まえ、感染症予防対策の推進を図るとともに感染症のまん延を防止するため、中東呼吸器症候群の二類感染症への追加、感染症に関する情報の収集に関する規定の整備、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症及び新感染症の患者等からの検体の採取等の制度の創設等の措置を講ずるものであること。


第二 概要

 1 定義等

  (1) 感染症の類型

   ア 二類感染症に中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)を追加すること。(法第6条第3項第5号関係)

   イ 二類感染症である鳥インフルエンザについて、病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型が新型インフルエンザ等感染症の病原体に変異するおそれが高いものの血清亜型として政令で定めるものであるものに限るものとすること。(法第6条第3項第6号関係)

  (2) 病原体等の類型

   ア 三種病原体等であるマイコバクテリウム属ツベルクローシス(別名結核菌)について、イソニコチン酸ヒドラジド、リファンピシンその他結核の治療に使用される薬剤として政令で定めるものに対し耐性を有するものに限るものとすること。(法第6条第22項第2号関係)

   イ 四種病原体等であるインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスについて、血清亜型が政令で定めるものであるものとすること。(法第6条第23項第1号関係)

  (3) 審議会からの意見聴取

   厚生労働大臣は、(1)のイの政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじめ、厚生科学審議会の意見を聴かなければならないものとすること。(法第6条第24項関係)

 2 感染症に関する情報の収集及び公表

  (1) 医師の届出

   医師の届出の対象に厚生労働省令で定める五類感染症を追加すること。(法第12条第1項第1号関係)

  (2) 獣医師等の届出

   獣医師等の届出の対象から、実験のために届出の対象である感染症に感染させられている場合を除くこと。(法第13条関係)

  (3) 感染症の発生の状況及び動向の把握

   ア 都道府県知事は、開設者の同意を得て、厚生労働省令で定める五類感染症の患者の検体又は当該感染症の病原体の提出を担当させる病院若しくは診療所又は衛生検査所を指定するものとすること。(法第14条の2第1項関係)

   イ アの指定を受けた病院若しくは診療所又は衛生検査所(以下「指定提出機関」という。)の管理者は、医師がアの厚生労働省令で定める五類感染症の患者を診断したとき、又は当該指定提出機関(衛生検査所に限る。)の職員が当該患者の検体若しくは当該感染症の病原体について検査を実施したときは、当該患者の検体又は当該感染症の病原体の一部を都道府県知事に提出しなければならないものとすること。(法第14条の2第2項関係)

   ウ 都道府県知事は、イにより提出を受けた検体又は感染症の病原体について検査を実施し、検査の結果等を厚生労働大臣に報告しなければならないものとすること。(法第14条の2第3項及び第4項関係)

   エ 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対しイにより提出を受けた検体又は感染症の病原体の一部の提出を求めることができるものとすること。(法第14条の2第5項関係)

   オ 指定提出機関は、30日以上の予告期間を設けて、アの指定を辞退することができるものとし、都道府県知事は、指定提出機関の管理者がイに違反したとき、又は指定提出機関がイの提出を担当するについて不適当であると認められるに至ったときは、アの指定を取り消すことができるものとすること。(法第14条の2第6項及び第7項関係)

  (4) 感染症の発生の状況、動向及び原因の調査

   ア 都道府県知事は、必要があると認めるときは、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするための必要な調査として当該職員に検体若しくは感染症の病原体を提出し、若しくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを求めさせることができるものとすること。(法第15条第3項関係)

   イ 都道府県知事は、アにより提出を受けた検体若しくは感染症の病原体又は当該職員に採取させた検体について検査を実施しなければならないものとすること。(法第15条第4項関係)

   ウ 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対しアにより提出を受けた検体若しくは感染症の病原体又は当該職員に採取させた検体の一部の提出を求めることができるものとすること。(法第15条第9項関係)

 3 就業制限その他の措置

  (1) 都道府県知事は、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は新感染症(以下「一類感染症等」という。)のまん延を防止するため必要があると認めるときは、一類感染症等の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者又は当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者(以下「一類感染症等の患者等」という。)又はその保護者に対し当該者の検体を提出し、若しくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを勧告することができるものとし、勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体を採取させることができるものとすること。(法第16条の3第1項及び第3項並びに第44条の7第1項及び第3項関係)

  (2) 厚生労働大臣は、一類感染症等のまん延を防止するため、緊急の必要があると認めるときは、一類感染症等の患者等又はその保護者に対し当該者の検体を提出し、若しくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを勧告することができるものとし、勧告を受けた者が当該勧告に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体を採取させることができるものとすること。(法第16条の3第2項及び第4項並びに第44条の7第2項及び第4項関係)

  (3) 都道府県知事又は厚生労働大臣は、それぞれ(1)又は(2)の勧告又は措置を実施する場合には、当該勧告又は措置を実施する理由等を書面により通知しなければならないものとすること。ただし、書面により通知しないで勧告又は措置を実施すべき差し迫った必要がある場合は、この限りでないものとすること。(法第16条の3第5項及び第11項並びに第44条の7第9項及び第10項関係)

  (4) 都道府県知事又は厚生労働大臣は、(3)のただし書の場合においては、当該勧告又は措置の後相当の期間内に、当該勧告を受け、又は当該措置を実施された者に対し、理由等を記載した書面を交付しなければならないものとすること。(法第16条の3第6項及び第11項並びに第44条の7第9項及び第10項関係)

  (5) 都道府県知事は、(1)により提出を受け、又は当該職員に採取させた検体について検査を実施し、当該検査の結果等を厚生労働大臣に報告しなければならないものとすること。(法第16条の3第7項及び第8項並びに第44条の7第5項及び第6項関係)

  (6) 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、(1)により提出を受け、又は当該職員に採取させた検体の一部の提出を求めることができるものとすること。(法第16条の3第9項及び第44条の7第7項関係)

  (7) 都道府県知事は、(1)の検体の提出若しくは採取の勧告をし、当該職員に検体の採取の措置を実施させ、又は(5)により検体の検査を実施するため特に必要があると認めるときは、他の都道府県知事又は厚生労働大臣に対し感染症試験研究等機関の職員の派遣その他の必要な協力を求めることができるものとすること。(法第16条の3第10項及び第44条の7第8項関係)

 4 消毒その他の措置

  (1) 都道府県知事は、一類感染症等の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、一類感染症等の患者等又は一類感染症等を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の検体又は感染症の病原体を所持している者(以下「一類感染症等検体等所持者」という。)に対し、当該検体又は感染症の病原体を提出すべきことを命ずることができるものとし、命令を受けた者が当該命令に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体又は感染症の病原体を無償で収去させることができるものとすること。(法第26条の3第1項及び第3項並びに第50条第1項関係)

  (2) 厚生労働大臣は、一類感染症等の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため緊急の必要があると認めるときは、一類感染症等検体等所持者に対し、当該検体又は感染症の病原体を提出すべきことを命ずることができるものとし、命令を受けた者が当該命令に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体又は感染症の病原体を無償で収去させることができるものとすること。(法第26条の3第2項及び第4項並びに第50条第7項関係)

  (3) 都道府県知事は、(1)により提出を受け、又は当該職員に収去させた検体又は感染症の病原体について検査を実施し、当該検査の結果等を厚生労働大臣に報告しなければならないものとすること。(法第26条の3第5項及び第6項並びに第50条第2項関係)

  (4) 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、(1)により提出を受け、又は当該職員に収去させた検体又は感染症の病原体の一部の提出を求めることができるものとすること。(法第26条の3第7項及び第50条第2項関係)

  (5) 都道府県知事は、(1)の検体若しくは感染症の病原体の提出の命令をし、当該職員に検体若しくは感染症の病原体の収去の措置を実施させ、又は(3)により検体若しくは感染症の病原体の検査を実施するため特に必要があると認めるときは、他の都道府県知事又は厚生労働大臣に対し感染症試験研究等機関の職員の派遣その他の必要な協力を求めることができるものとすること。(法第26条の3第8項及び第50条第2項関係)

  (6) 都道府県知事は、一類感染症等の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、一類感染症等を人に感染させるおそれがある動物又はその死体の所有者又は管理者(以下「動物等所有者等」という。)に対し、当該動物又はその死体の検体を提出し、又は当該職員による当該検体の採取に応ずべきことを命ずることができるものとし、命令を受けた者が当該命令に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体を採取させることができるものとすること。(法第26条の4第1項及び第3項並びに第50条第1項関係)

  (7) 厚生労働大臣は、一類感染症等の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため緊急の必要があると認めるときは、動物等所有者等に対し、当該動物又はその死体の検体を提出し、又は当該職員による当該検体の採取に応ずべきことを命ずることができるものとし、命令を受けた者が当該命令に従わないときは、当該職員に検査のため必要な最小限度において、当該検体を採取させることができるものとすること。(法第26条の4第2項及び第4項並びに第50条第7項関係)

  (8) 都道府県知事は、(6)により提出を受け、又は当該職員に採取させた検体について検査を実施し、当該検査の結果等を厚生労働大臣に報告しなければならないものとすること。(法第26条の4第5項及び第6項並びに第50条第3項関係)

  (9) 厚生労働大臣は、自ら検査を実施する必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、(6)により提出を受け、又は当該職員に採取させた検体の一部の提出を求めることができるものとすること。(法第26条の4第7項及び第50条第3項関係)

  (10) 都道府県知事は、(6)の検体の提出若しくは採取の命令をし、当該職員に検体の採取の措置を実施させ、又は(8)により検体の検査を実施するため特に必要があると認めるときは、他の都道府県知事又は厚生労働大臣に対し感染症試験研究等機関の職員の派遣その他の必要な協力を求めることができるものとすること。(法第26条の4第8項及び第50条第3項関係)

  (11) 都道府県知事又は厚生労働大臣は、それぞれ(1)若しくは(6)又は(2)若しくは(7)の措置を実施し、又は当該職員に実施させる場合には、その名あて人又はその保護者に対し、当該措置を実施する旨及びその理由等を書面により通知しなければならないものとすること。ただし、書面により通知しないで措置を実施すべき差し迫った必要がある場合には、この限りではないものとすること。(法第36条第1項及び第3項並びに第50条第9項関係)

  (12) 都道府県知事又は厚生労働大臣は、(11)のただし書の場合においては、当該措置を実施した後相当の期間内に、当該措置を実施した旨及びその理由等を記載した書面を当該措置の名あて人又はその保護者に交付しなければならないものとすること。(法第36条第2項及び第3項並びに第50条第9項関係)

 5 結核

  保健所長は、結核登録票に登録されている者について、結核の予防又は医療を効果的に実施するため必要があると認めるときは、病院、診療所、薬局等に対し、処方された薬剤を確実に服用する指導その他必要な指導の実施を依頼することができるものとすること。(法第53条の14第2項関係)

 6 費用負担

  感染症の発生の状況及び動向の把握、感染症の発生の状況、動向及び原因の調査、検体の採取等、検体の収去等に要する費用の支弁について、所要の規定の整備を行うこと。(法第58条第1号、第4号の2及び第4号の3関係)

7 事務の区分

  都道府県、保健所を設置する市又は特別区が処理することとされている2の(4)、3及び4の事務を地方自治法(昭和22年法律第67号)の第一号法定受託事務とすること。(法第65条の2関係)

8 罰則その他所要の規定の整備を行うこと。


第三 施行期日等

 1 施行期日

 改正法は、平成28年4月1日から施行することとすること。ただし、次の改正規定については各々に定める日から施行することとすること。(改正法附則第1条関係)

 (1) 第二の1の(3)及び第二の2の(2) 公布の日

 (2) 第二の1((2)のア及び(3)を除く。) 公布の日から起算して2月を経過した日

 (3) 第二の1の(2)のア、第二の2の(1)及び第二の5 公布の日から起算して6月を経過した日

 2 検討

 政府は、改正法の施行後5年を経過した場合において、改正法の規定による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。(改正法附則第2条関係)

3 経過措置等

 その他改正法の施行に関し、必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこととすること。(改正法附則第3条から第6条まで関係)

{別紙や省略}