データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] コロナウイルス病2019(COVID-19)に関するWHO−中国合同ミッション報告書

[場所] 
[年月日] 2020年2月16-24日
[出典] WHO神戸センター
[備考] 
[全文] 

I. ミッション

目標と目的

合同ミッションの全体的な目的は、現在進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19 *1*)のアウトブレイクに関する中華人民共和国(以下、中国)および国際社会の次の対応およびまだ流行していない地域における次の備えに資する情報を迅速に把握・周知することである。

この合同ミッションの主な目標は次のとおりである。

・中国で進展しているCOVID-19のアウトブレイクと進行中の封じ込め対策の内容と影響について理解を深めること。

・COVID-19の流行または輸入のリスクがある国で実施されているCOVID-19への対応と準備に関する知識を共有すること。

・中国および国際的なCOVID-19の封じ込めおよび対応の方法を調整するための推奨事項を作成すること。

・知識および対応や準備に関わるツールや活動における重大なギャップに対処するべく、合同プログラムの作業と研究開発の優先順位を策定すること。

メンバーと作業方法

共同ミッションは、WHOのDr Bruce Aylward と中国のDr Wannian Liang の主導のもと、中国、ドイツ、日本、韓国、ナイジェリア、ロシア、シンガポール、アメリカ合衆国、および世界保健機関(WHO)からなる25人の国内および国際専門家で構成された。全メンバーとその所属のリストは付録Aを参照。共同ミッションは、2020年2月16日から24日までの9日間にわたって実施した。作業スケジュールは、付録Bを参照。

合同ミッションは、国家予防管理タスクフォースを通じて中国での対応を主導あるいは関与しているすべての主要省庁の代表者による詳細なワークショップから始まったその後、一連の綿密な会議が、対応の管理、実施、評価を担当する国家レベルの機関、特に国家健康委員会と中国疾病管理予防センター(China CDC)との間で行われた。国および地域の対応戦略について、さまざまな疫学的および地方の状況における、フィールドでの実践と戦略の効果について直接的に知識を得るために、北京市および四川省(成都)、広東省(広州、深圳)および湖北省(武漢)を視察した。現地視察には、地域の集会所や診療所、国/地域の病院、COVID-19指定病院、輸送ハブ(航空、鉄道、道路)、ウェットマーケット(生鮮市場)、医薬品おおび個人防護具の在庫倉庫、研究機関、各省の衛生健康委員会、および現地の疾病管理センター(省および県のレベル)が含まれている。

これらの訪問中に、合同ミッションチームは省知事、市長、各レベルの緊急対策チーム、上級科学者、最前線の臨床、公衆衛生およびコミュニティの従事者、地区管理者と詳細な議論と協議をした。最後に合同ミッションは、調査結果を統合し、結論を出し、推奨行動を提案するためのワーキングセッションを行った。

合同ミッションはその目標を達成するために、COVID-19の段階(自然史)と重症度、さまざまな環境におけるCOVID-19ウイルスの伝播動態、また伝播レベルが高い(市中感染)、中等度

(クラスター感染)、および低い(散発的な症例または症例なし)地域における対応の効果などに関する、いくつかの重要なポイントに焦点を当てた。

本報告に含まれる調査結果は、合同ミッションによる、国家および地方政府による報告書のレビュー、国家および地方の専門家と緊急対策チームとの感染予防・制御措置に関する議論、ならびに現地視察を通じて行われた観察および考察に基づいている。図表は現地視察の際に収集した情報とデータを用い、関係者の同意を得て作成した。本報告に含まれる情報で、すでに学術誌に掲載されているものに関しては、文献情報の提供が可能である。

合同ミッションの最終報告書は、2020年2月28日に提出された。

Ⅱ.主な調査結果

主な調査結果は、ウイルス、アウトブレイク、伝播動態、疾患の進行と重症度、中国の対応と不足している知識の6つの章立てをして記述している。技術的な調査結果の詳細な説明は付録Cを参照。

ウイルス

2019年12月30日に、3つの気管支肺胞洗浄検体が原因不明肺炎(2002-2003年のSARSアウトブレイク後に策定されたサーベイランス用の定義)の患者から武漢金銀潭病院で採取された。これらの検体のリアルタイムPCR(RT-PCR)アッセイは、汎βコロナウイルス陽性であった。イルミナとナノポアのシーケンサーを使用してウイルスの全ゲノム配列が取得された。バイオインフォマティクス分析により、このウイルスにはコロナウイルスファミリーに典型的な特徴があり、ベータコロナウイルス2B系統に属していることが示された。COVID-19ウイルスの全ゲノム配列とβコロナウイルスの他の利用可能なゲノム配列を比較すると、最も近い関係にあるのがコウモリSARSのようなコロナウイルス株 BatCov RaTG13 であり、同一性96%であることを示した。ウイルスの単離は、ヒト気道上皮細胞、Ver* E6、Huh-7などのさまざまな細胞株で実施された。細胞変性効果(CPE)は細胞へのウイルス注入から96時間後にが観察された。典型的なクラウン様粒子は、ネガティブ染色下の透過型電子顕微鏡(TEM)で観察された。単離されたウイルスの細胞感染性は、回復期の患者から収集された血清で完全に中和される可能性が示唆された。このウイルス分離株を鼻腔内に付着したトランスジェニックヒトACE2マウスおよびアカゲザルは、間質性過形成を伴う多発性肺炎を誘発した。その後、COVID-19ウイルスはこれらの動物の肺および腸組織で検出および分離された。

2019年12月末から2020年2月中旬の間に発症した、さまざまな地域の患者から分離された104株のCOVID-19ウイルスの全ゲノム配列解析がなされ、有意な変異のない99.9%の相同性が示さた。(図1)

{図1は省略}

武漢の50歳の男性患者の死後検体は、肺、肝臓、心臓から採取された。組織学的検査により、細胞性線維粘液性滲出液による両側びまん性肺胞損傷が認められた。肺は、肺細胞の明らかな剥離と硝子膜形成を示し、急性呼吸促迫症候群(ARDS)を示した。肺組織は、細胞性および線維粘液性の滲出、肺細胞の剥離および肺浮腫も示した。リンパ球が優勢な間質性単核炎症性浸潤物が両方の肺に見られた。大核、両親媒性顆粒細胞質、顕著な核小体を特徴とする異型拡大肺細胞を伴う多核合胞体細胞が肺胞内で同定され、ウイルス性細胞変性様変化を示した。核内または細胞質内の明らかなウイルス封入体は確認されなかった。

アウトブレイク

2020年2月20日現在、中国においてCOVID-19症例の累積合計75,465件が、国家および省レベルの衛生健康委員会からなる国家報告システム(National Reporting System(NRS))を通じて報告された。新たに記録された検査確定例、死亡例、疑い症例および接触者について、NRSは日報を作成する。毎日午前3時に各省から日報が提供され、前日からの症例が報告される。

図2および図3に示されている流行曲線は、中国の国家感染症情報システム(National Infectious Disease Information System(IDIS))を使用して作成される。このシステムでは、各 COVID- 19 症例について、診断が確定すると直ちに担当医師が電子的に報告することになっている。それには無症状として報告されたケースも含まれ、データはリアルタイムで更新される。個々の症例報告様式は、毎日午前零時にダウンロードされる。武漢市、湖北省(武漢を除く)、中国(湖北省を除く)および中国全土における発症にもとづく疫学曲線をそれぞれ図2に示す。

{図2は省略}

図3は、2020年2月5日、12日、20日時点の検査確定例の、発症日と報告日別の流行曲線を示している。図2および図3は、流行が1月10日から22日までの間に急速に拡大し、1月23日

から1月27日までに報告症例がピークに達した後平坦になり、それ以後、2月1日に報告されたスパイクを除いて、着実に減少していることを示している。(注:武漢の主要な病院では、発熱外来の患者が、1月下旬のピークの1日平均500人から、2月中旬以降の1日平均50人に減少した。)

{図3は省略}

これらの流行曲線、公開された文献、および武漢(湖北省)、広東省(広州、深圳)、四川省

(成都)、北京での現地視察にもとづき、合同ミッションチームは、以下のような疫学的観察を行った。

人口統計学的特徴

2020年2月20日時点で報告された55,924例の検査確定例のうち、年齢の中央値は51歳(幅は生後2日〜100歳、IQR39〜63歳)で、大部分の症例(77.8%)30〜69歳の年齢の幅にある。報告された症例のうち、51.1%は男性、77.0%は湖北省在住、21.6%は農業従事者又は労働者である。

人獣共通の感染源

COVID-19は人獣共通感染ウイルスである。利用可能な全ゲノム配列による系統解析から、コウモリがCOVID-19ウイルスの自然宿主と思われるが、中間宿主(複数ありうる)はいまだに識別されていない。しかしながら、このアウトブレイクの人獣共通の感染源について理解するために、3つの重要な作業が中国ですでに始まっている。これらは、武漢で2019年12月中に発症した症例の早期調査華南海鮮卸売市場および他の近隣の市場からの環境サンプリング、そして華南市場で売られていた野生生物の出所と種類、市場閉鎖後の行方に関する詳細な情報収集である。

感染経路

COVID-19は、うつす側とうつされる側の間で無防備な濃厚接触がある中で、飛沫と媒介物を介して感染する。COVID-19の空中拡散(空気感染)は報告されておらず、入手可能な証拠に基づくとそれが感染の主たる原動力とは考えられないが、エアロゾルを発生させる特定の手技が医療施設で実施された場合にそれが起きることが想定できる。一部の患者から糞便排出が実証されており、限られた数の症例報告ではあるが、糞便中で生存可能なウイルスが同定されている。ただし、糞口経路はCOVID-19感染の原動力ではないようであり、COVID-19伝播における役割と重要性はまだわかっていない。ウイルスの排出に関しては、技術調査結果(付録C)を参照。

世帯内感染

中国では、COVID-19ウイルスのヒトーヒト感染の大部分が家族間で発生している。合同ミッションは、現在複数の省で進行中のクラスター調査やいくつかの世帯内感染例の調査の詳細な情報を入手した。広東省および四川省での1308例(報告された合計1836例のうち)を含む344のクラスターにおいて、ほとんどのクラスター(78%〜85%)が家族で発生している。世帯内感染の調査研究は現在進行中だが、広東省における進行中の予備研究からは、世帯内での二次伝播の割合は3〜10%であると推定している。

接触者追跡

中国には、COVID-19に関して感染者および接触者を識別するための非常に緻密な施策がある。例えば、武漢には、1チームあたり最低5人の疫学者を含む1800以上の疫学チームが1日に数万人の接触者を追跡している。接触者のフォローアップは骨の折れる作業であり、特定された濃厚接触者は高い割合で医療観察を受けることになる。その後、場所にもよるが接触者の1%〜5%が検査確定例となっている。以下の例を参照。


・ 2月17日の時点で、深圳市で特定された2842人の濃厚接触者のうち、2842人(100%)が追跡され、2240人(72%)が医学的観察を完了した。濃厚接触者のうち、88人(2.8%)がCOVID-19に感染していることがわかった。

・ 2月17日の時点で、四川省で特定された25493人の濃厚接触者のうち、25347人(99%)が追跡され、23178人(91%)が医学的観察を完了した。濃厚接触者のうち、0.9%が感染していることが判明した。

・ 2月20日の時点で、広東省で特定された9939人の濃厚接触者のうち、9939(100%)が追跡され、7765(78%)が医学的観察を完了した。濃厚接触者のうち、479(4.8%)がCOVID-19に感染していることが判明した。

発熱外来および定期的なILI/SARIサーベイランスでの検査

合同ミッションは、COVID-19が中国の各地域で、より広く、検知されずに拡散していないかを把握するために、ルーチンの呼吸器疾患サーベイランスシステムを活用してCOVID-19の検査を実施できないかについて体系的に調査した。例えば、インフルエンザ様疾患(ILI:influenza- like-illness)および重症急性呼吸器感染(SARI:severe acute respiratory infection)サーベイランスシステムにおけるCOVID-19ウイルスのRT-PCR検査および発熱外来のすべての患者の検査などが考えられる。

武漢では、2019年11月と12月、および2020年1月の最初の2週間に、ILI検体にCOVID-19検査(週20回)を実施したところ、2019年の検体では陽性結果は見られず、1月1週の検体では成人1例、1月2週では成人3例が陽性だった。検査された子どもらはすべてCOVID-19が陰性だったが、何例かはインフルエンザが陽性だった。1月1日から14日までの広東省では、15000を超えるILI/SARI検体のうち、COVID-19陽性が確認されたのは1例だけだった。北京のある病院では2019年1月28日から2020年2月13日までに収集された1910例の検体においてCOVID-19は見つからなかった。深圳のある病院では、0/40のILI検体がCOVID-19陽性だった。

(40例のうち陽性が0例だった。すなわち陽性が見つからなかった。)

広東省の発熱外来では、COVID-19ウイルス検体の陽性割合は、1月30日の0.47%をピークに、2月16日までに0.02%まで減少した。広東省全体では、約320,000の発熱外来のスクリーニング検体のうち0.14%がCOVID-19陽性だった。

感受性

COVID-19 は新たに同定された病原体であるため、ヒトにおいて既知の既存の免疫はない。中国でこれまでに観察された疫学的特性に基づいて、感染に対する感受性を高める危険因子があるかもしれないが、すべてのヒトに感受性があると想定されている。これについてはさらなる研究が必要であり、感染後の中和免疫があるかどうかを把握する必要もある。

伝播動態

図2および図3から推測されることと、合同ミッションを通じて国・地方・市町村レベルで得た観察に基づいて、これまでのCOVID-19の伝播動態を要約するとともに解釈する。あらゆるアウトブレイクの伝播動態は、本質的に状況に依存するということを強調しておく。その上で、COVID-19については、流行拡大期と制御後の時期において、4つの主要な伝播動態の形式が観察され、子どもへのについても分かったことがある。詳細は以下の通りである。

武漢での伝播

武漢で特定された初期の症例は、多くが華南卸売水産市場での訪問または勤務を報告したため、人獣共通感染源から感染したと考えられている。2月25日の時点で感染動物源はまだ特定されていない。

アウトブレイクの初期の時点において、武漢における包括的な制御手段が実践される前に、人から人への感染連鎖が成立した複数の症例があり、その後の地域におけるアウトブレイクの温床となった。伝播動態は大勢の人の動きと近似しており、武漢から湖北省および中国の他の地域に拡散した可能性が高く、これはR0が比較的高い2〜2.5であることを説明している。

2020年1月23日以降に課された武漢および近隣の市町村周辺の地域検疫は、感染者が域外に流出することを効果的に防いだ。

武漢以外の湖北省での伝播

武漢のすぐ隣の県(孝感、黄岡、荊州、鄂州)では伝播は武漢ほど苛烈ではない。他の県については、武漢との交通機関の接続および人間の移動の流れがが少ないため、伝播動態は国内の他の地域で観察されるものとより似ている。湖北省内では、制御手段(社会的距離の拡大を含む)の実施によって地域での伝播力が低下し、事例の報告件数が徐々に減少している。

湖北省以外の中国での伝播

武漢の交通ハブとしての地位と中国の新年(春節)の間の人々の動きを踏まえ、感染した人々はすぐに全国に広がり、特に武漢との交通量が最も多い都市に集中した。幾つかの持ち込まれた伝播は、その地域での限られたヒト-ヒト感染を起こした。

武漢/湖北省の経験を踏まえ、積極的な感染者と連絡先の特定、隔離と管理、強力な社会的距離の拡大を含めた包括的な一連の介入は、全国的な伝播の連鎖を断ち切るべく実施されている。これまでに記録された症例のほとんどは武漢/湖北省から持ち込まれたか、武漢/湖北に直接関係があった。市中感染は非常に限られている。地域で発生した症例のほとんどは集団感染で、上記で要約したように、その大部分は同一世帯内で発生した。

注目すべきことは、地域における伝播の多くがクラスター化したことで、そのため、介入がない時期には比較的高いR0(2-2.5)となり集中的な隔離と社会的距離の拡大の措置が取られた後には検査確定例が低くとどまったと考えられる。

特殊な環境や状況

医療現場の刑務所内およびその他の閉鎖環境で伝播の事例が発生していることを把握した。現時点では、これらの状況と集団の伝播に関わる役割は明確ではない。しかし、それらは全体的な疫学動態の主な原動力ではないようである。具体的には、次のことにを注記しておく。

 (a)医療現場および医療従事者における伝播

合同ミッションは、ミッション中に訪問したすべての場所での院内感染について議論した。2020年2月20日の時点で、2,055のCOVID-19検査確定症例が、中国全土の476の病院から医療従事者の間で報告された。これら医療従事者の大部分の症例(88%)は湖北省から報告された。

特筆すべきことに、40,000人以上の医療従事者が武漢での対応を支援するため中国の他の地域から配置された。個々の限られた院内感染のアウトブレイク(例えば、武漢で15人の医療従事者が関与した院内感染)があったものの、医療施設内および医療従事者間の感染は、中国のCOVID-19の主な伝播様式であると思われない。合同ミッションを通じて、これら医療従事者における感染のうち大部分が、この新興感染症に対する医療物資と経験がまだ少なかった、武漢のアウトブレイクの初期に特定されていたことが分かった。

さらに、医療従事者の調査では、多くが医療機関ではなく家庭内で感染した可能性が示唆された。湖北省以外では、医療従事者の感染例は比較的少ない(全部で2055の医療従事者の症例

のうち246が湖北省以外)。これらの限られた症例で曝露が調査され、ほとんどの曝露は世帯内の確定例に関連付けられたと報告された。

合同ミッションチームは、中国が医療従事者における感染予防を最も重視していることを確認した。医療従事者のサーベイランスにより、アウトブレイクの初期に医療従事者をより高いリスクにさらした要因を特定した。この情報をもとに医療従事者を守るための政策が改善されている。

 (b)閉鎖環境での伝播

刑務所(湖北省、山東省、浙江、中国)、病院(上記)、および高齢者施設でのCOVID-19伝播が報告されている。これらの状況での人々接近した距離と濃厚接触、また環境汚染の可能性は重要な要因であり、伝播を増幅しうる。これらの状況での伝播は、さらなる研究が必要である。

子ども

18歳以下の個人に関するデータは、この年齢層(報告されたすべての症例の2.4%)は比較的低

い発症率であることを示唆している。武漢では、2019年の11月と12月および2020年1月の最初の2週に採取されたILIサンプルを検査した結果、子どもの陽性例はなかった。入手可能なデータに基づき、子どもにおける伝播の程度や伝播における子供の役割、また子どもは比較的が感染しにくいのか、あるいは異なる臨床像を示すのか(例えば、一般的に軽症を呈するなど)、などについて判断することは不可能である。合同ミッションは、感染した子どもは、主に大人で構成される世帯の接触の追跡を通じて特定されていることを知った。注目すべきは、合同ミッションチームが取材した中では、子どもから大人に感染した症例の報告がなかったことである。

兆候、症状、病気の進行と重症度

COVID-19の症状は特異的ではなく、症状のないもの(無症候性)から重症の肺炎、死亡まで幅広い。2020年2月20日時点での55924の検査確定例に基づく、典型的な兆候と症状には以下が含まれる:発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、疲労(38.1%)、喀痰(33.4%)、息切れ

(18.6%)、咽頭痛(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛または関節痛(14.8%)、悪寒

(11.4%)、悪心または嘔吐(5.0%)、鼻詰まり(4.8%)、下痢(3.7%)、および喀血

(0.9%)、結膜充血(0.8%)。

COVID-19の感染者は、感染後平均5-6日で軽度の呼吸器症状や発熱(平均潜伏期間5-6日、1

〜14日の範囲)を含む兆候や症状を一般的に示す。

COVID-19ウイルスに感染したほとんどの人は、軽症で回復する。肺炎以外と肺炎の症例を含む、検査確定例の約80%は、軽症から中等症である。13.8%が重症(呼吸困難、頻呼吸≥30/分、血中酸素飽和度≤93%、PaO2/FiO2比<300、および/または24〜48時間以内に肺野の50%を超える浸潤)、6.1%が重篤(呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器不全/障害)。無症候性感染の報告もあるが、感染が発覚/報告された日に無症候である比較的まれな症例の多くはその後発症している。実際の無症候性感染の割合は不明であるが、比較的まれであり、伝播の主な因子ではない。

重症化および死亡のリスクが最も高いのは、60歳以上で、高血圧、糖尿病、心血管疾患、慢性呼吸器疾患および癌のような基礎疾患をもつ人達である。子どもの病気は比較的まれかつ軽度で、

19 歳未満の年齢層の報告は全症例の約2.4%である。19歳未満の人々のごく一部が重症

(2.5%)または重篤(0.2%)であった。

2月20日の時点で、55,924の検査確定例のうち2114人が死亡した(致死率*2*  ]3.8%)(注:少なくとも一部は、肺疾患を含む症例定義を用いて特定されている)。全体的な致死率は、場所と伝播強度によって異なる(武漢での5.8%に対して、中国の他の地域では0.7%)。中国では、全体的な致死率はアウトブレイクの初期段階でより高く(1月1日から10日の発症症例は17.3%)、時間の経過とともに減少して、2月1日以降に発症した患者では、0.7%になった(図4)。合同ミッションは、アウトブレイクの経過中に治療の標準化がなされたことに注目した。


致死率は年齢とともに増加し、80歳以上で最も高い値を示す(致死率21.9%)。致死率は、女性と比較して男性で高い(4.7%対2.8%)。職業ごとに見ると、退職者であると報告した患者で最も高く、8.9%だった。基礎疾患がないと報告した患者の致死率が1.4%であったのに対し、基礎疾患のある患者ではより高く、心血管疾患の人は13.2%、糖尿病は9.2%、高血圧は8.4%、慢性呼吸器疾患は8.0%、癌は7.6%であった。

{図4は省略}

疾患の進行に関するデータは、限られた入院患者の報告例から得られたデータである(図5)。

得られた情報からは、発症から検査確定までに要した期間は全国平均1月初旬は12日(範囲8

〜18日)であったが、2月初旬には3日間(範囲1〜7日)まで減少し、武漢では当初15日間

(範囲10〜21日)であったのが、5日間(範囲3〜9日)まで減少した。このことで、症例の早期発見、隔離、治療が可能になった。

{図5は省略}

利用可能な予備データを用いて、軽症例の発症から臨床的回復までの中央時間は約2週間であり、重症例、重篤例では3〜6週間であることがわかった。予備データはまた、発症から低酸素血症など重症化するまでの期間は1週間であることを示した。死亡した患者のうち、発症から死亡までの範囲は2〜8週間であった。

回復する患者の数が増えてきている。2月20日時点で、18264人(24%)が回復している。心強いことに、2月20日の広東CDCからの報告では、広東省で確認された125人の重症例のうち、33人(26.4%)が回復して退院、58人(46.4%)が改善、軽症/中等症(軽症の肺炎を含む)へと再分類されている。これまでに報告された重症例の中で13.4%が死亡した。感染者と接触者の早期発見により早期治療が可能になる。

中国の対応

武漢で原因不明の肺炎症例のクラスター発生を検知してすぐに、中国共産党中央委員会と国務院が国家緊急対応を開始した。疾病対策中央指導グループならびに国務院における感染予防・制御の合同機構が立ち上げられた。習近平書記長は自ら感染予防・制御の業務を指揮および展開し、

COVID-19のアウトブレイクにおける感染予防・制御をあらゆるレベルでの政府の最優先事項とすることを要請した。李克強首相は、疫病対策中央指導グループを率いて武漢に赴き、全国の関連部局および省(自治区および市町村)の感染予防・制御の業務について点検と調整を行った。孫春蘭副首相は武漢で最前線に立ち、アウトブレイク最前線における感染予防・制御の活動を主導、調整した。武漢や湖北の他の主要地域においては、初期段階から現在の全国的な流行に至るまで、感染予防・制御策が迅速に実施されている。

一連の活動は3つの主要なフェーズで実施されており、2つの重要なイベントがそれらのフェーズを定義している。最初のイベントとして2020年1月20日に、COVID-19がクラスB感染症および国境検疫感染症として法定報告書に位置づけられ、初期の部分的な管理から法律に基づく総合的多角的対応の適用に移行したことを示した。2番目のイベントは、2020年2月8日に国務院が「企業の秩序ある生産・操業再開に関する通知」を発行したことであり、中国の国家的防疫活動が全体的な感染予防・制御の段階に入ったとともに、通常の社会的・経済的活動が回復段階に入ったことを示した。

第一段階

アウトブレイクの初期段階では、主たる戦略として武漢や湖北省の重点地域からの患者を流出させないこと、他の省からの患者を流入させないことに注力した。全体的な狙いは、感染源を制御し感染を阻止してさらなる拡散を防ぐことだった。

対応メカニズムは、感染予防・管理策に多部門が共同で参画する形で始動した。ウェットマーケットは閉鎖され、人獣共通の感染源を特定する努力がなされた。流行に関する情報が1月3日にWHOに通知され、COVID-19ウイルスの全ゲノム配列が1月10日WHOと共有された。COVID-19の診断と治療、サーベイランス疫学的調査、濃厚接触者の管理、臨床検査のプロトコルが策定され、適切なサーベイランス活動と疫学的調査が行われた。診断検査キットが開発され、野生動物と生鮮市場は厳格な監督と管理措置のもとに置かれた。


第二段階

アウトブレイクの第二段階における主な戦略は、流行の強度を減らし、患者の増加を遅らせることだった。武漢や湖北省の他の重点地域では、患者の積極的治療、死者の減少、流出防止に焦点が絞られた。他の省では、患者の流入防止、感染拡大の抑制、合同感染予防・管理策の実践に重点が置かれた。全国的に、野生生物市場は閉鎖され、野生生物の飼育施設は隔離された。

1月20日の時点でCOVID-19はクラスB感染症および国境検疫感染症の届出義務対象に含まれていた。届出は、体温チェック、健康状態の申告および、法律にもとづいて輸送拠点に設置されたCOVID-19の検疫によって行われた。1月23日に武漢は厳しい交通規制を実施した。診断、治療、および感染予防・制御のプロトコルが改善され、患者の隔離と治療が強化された。

すべての患者が確実に治療され、濃厚接触者が隔離され、医学的観察下に置かれるように対策が講じられた。その他の実施措置としては、春節の休暇の延長、交通規制、人々の移動を減らすための乗り物の定員規制が含まれており、多くの人が集まる活動も中止された。流行状況と感染予防・制御策に関する情報は定期的に公開された。一般向けのリスクコミュニケーションと保健教育が強化された。医薬品の配分が調整され、病院が新設され、予備の病床の使用とともに関連施設を再利用することですべての患者を治療できるようになった。社会を円滑に運営するために生活必需品と価格の安定供給を維持する努力がなされた。

第三段階

アウトブレイクの第三段階では、症例のクラスターを減らすこと、流行を徹底的に制御することに焦点を当てるとともに、感染予防と制御、持続可能な経済的および社会的発展、指揮の統合、ガイダンスの標準化、科学的根拠に基づいた政策実施の間の均衡を図ることに重きを置いた。武漢や湖北省の他の重点地域では、患者の治療と伝播の遮断に重点が置かれ、すべての患者の検査、入院、治療に関連する措置を十分に実施するための具体的な手順が重視された。国と各省のさまざまな地域に対して、個別に調整された感染予防・管理策を用いたリスクに準じた感染予防・管理アプローチが採用された。疫学調査、症例管理、リスクの高い公共の場流行予防の各分野で関連する対策が強化された。

ビッグデータや人工知能(AI)といった新しいテクノロジーを利用して、接触者追跡と優先的な対応が求められる人々の管理が強化された。「健康保険の支払い・オフサイト決済・金銭的補償」についての健康保険関連法令が公布された。すべての省が武漢と湖北省の重点地域を支援し、流行の拡大を迅速に抑制し、適時適切な医療の提供に努めた。

就学前の準備が改善され、労働作業は段階的かつ徐々に再開された。帰国した労働者に対しては、健康と福祉に関する行政サービスが、対象を絞った「ワンストップ」方式で提供された。

通常の社会的活動は段階的に復旧しつつある。公衆衛生のリテラシーとスキルを向上させるための疾患予防に関する知識が普及してきている。また、診断、治療、ワクチンの開発、疾病の全容の把握、ウイルス発生源の特定のために、緊急科学研究の包括的プログラムが実施されている。

不足している知識

COVID-19のアウトブレイクの発生以来、中国においてウイルスと本疾患をより深く理解するための幅広い試みがなされている。新しいウイルスについて、短期間でこれほど多くの知見が得られたことは驚くべきことである。一方で新しい疾患のすべてに当てはまることであるものの、アウトブレイクの発生からまだ7週間しか経過しておらず、決定的な知見の不足が課題として残っている。付録Dは、多くの分野における重要な未解決事項を要約したものであり、感染源、ウイルスの発生機序と毒性、感染力、感染と病状の進行のリスクファクター、サーベイランス、診断、重症および重篤患者の臨床管理、感染予防・制御策の有効性などを含んでいる。これらの知識の不足を適時に解消していくことは、制御戦略を強化するために不可欠である。


Ⅲ評価

合同ミッションは、中国での活動およびより広い世界での対応から得た知見から4つの主要な結

論を導き出した。推奨事項は、世界と中国で進行中の対応活動に資する5つの主要領域に提供されている。

中国の対応と次のステップ

1. 未知のウイルスに直面し、中国は、その歴史の中でおそらく最も壮大で迅速かつ積極的な感染症の封じ込めに取り組んだ。この封じ込めの努力を支えた戦略は、当初は中国全土での体温観察、マスクの着用および手洗いといった国家的なアプローチであった。しかし、アウトブレイクが進行して知見が得られるとともに、最適な対策実践のための、科学的根拠とリスクに基づいたアプローチが取られた。省、郡、さらにはコミュニティの状況、対応能力、および各地での新規コロナウイルス伝播の性質に応じて具体的な封じ込め策が調整された。

戦略の基本原則は立ち上げ以来一貫しているが、新型コロナウイルス、COVID-19病、COVID-19の封じ込めに関する新しい知見を、わかり次第迅速に組み込むべく、特定の側面については常に改良を重ねてきた。中国の科学者と公衆衛生の専門家は、原因ウイルスの単

離、診断ツールの確立、感染経路や潜伏期間などの主要な要素の判断を、極めて迅速に行い、それによって対応への貴重な時間的余裕を得て、中国の戦略に極めて重要な科学的基盤が提供された。

戦略は、すべての設定や状況において妥協を許さず厳格に実践された。主要業務評価指標の改善に絶えず焦点を合わせ、感染者の検出、隔離、早期治療のスピードアップに注力した。このような封じ込め策の実践は、ルーチンの医療ケアと医療指導のオンラインプラットフォームへの移行から、農村部での対策実施を5Gプラットフォームを用いて支援することまで、さまざまな最新技術を積極的に活用することで可能になった。

2. 中国によるこれらの封じ込め策の幅広くかつ厳格な展開は、中国国民によるこの共通の脅威に直面する中での集団行動への深いコミットメントなくしては達成できなかった。このことは、コミュニティレベルでは、最も脆弱な集団やコミュニティへの省や都市の支援に見られる強い連帯に反映されている。自身の地域におけるアウトブレイクの発生にもかかわらず、知事や市長は、湖北省と武漢市に何千もの医療従事者と多量の必須個人防護具を送り続けてきた。

個人レベルでは、中国の人々が勇気と確信をもってこのアウトブレイクに対応した。彼ら

は、集会の停止、1か月にわたる自宅待機勧告と旅行の禁止など、極めて厳重な封じ込め措置を受け入れ、遵守した。中国全土にわたる集中的な9日間の現地視察を通して行われた、現地コミュニティの指導者や最前線の医療従事者から代表的科学者や知事、市長までのさまざまな関係者との率直な議論を通して、合同ミッションは、COVID-19対応へのそれぞれの関係者の誠実さと献身を深く受け止めた。

3. この新しい呼吸器病原体の急速な広がりを封じ込めるための中国の大胆なアプローチは、急速にエスカレートし致命的となり得た流行の顛末を変えた。先遣チームの作業の初日、確かな統計で、中国では、2478人のCOVID-19の新規確定例が報告されている。2週間後のミッション最終日、新規確定例の報告は409人であった。中国全土でのCOVID-19の減少は、事実である。

発熱外来への来院数の急激な減少、治癒した患者の退院に伴う治療ベッドの開放、臨床試験への新患の募集が困難となっていることなど、複数のデータソースがこの結論を裏付けている。省全体での粗罹患率の比較に基づいて、合同ミッションは、中国で真摯に取り組まれた全政府的、全社会的アプローチは、中国における数十万件のCOVID-19症例を回避または少なくとも遅らせたと推定する。さらに、中国においてCOVID-19の感染力の減少が達成されたことは、グローバルコミュニティを守り、国際的な広がりに対する強力な防衛の橋頭保を築く重要な役割を果たした。しかし、今回のアウトブレイクの封じ込めは、人的、また物的に中国とその国民多大な犠牲をもたらした。

中国のCOVID-19対策実施の規模と影響は目覚ましいものであったが、公衆衛生上の危機対応能力には改善すべき分野が浮き彫りになった。これには、早期の警告に即応すること、隔離と治療の能力を大幅に拡大すること、すべての設定で最前線の医療従事者の保護を最適化すること、優先して取り組むべき知識とツールの不足についての協働を強化すること、ま

た、重要なデータと進歩を国際的により明確に伝えることへのあらゆる障害を克服することが含まれる。

4. 中国は、残存するCOVID-19感染の連鎖の封じ込めに取り組みながらも、すでに経済を強化し、学校を再開し、社会を正常な状態に戻すべく取り組んでいる。封じ込め戦略の主要な要素の向上に伴って、新しいCOVID-19症例やクラスター発生に即応する必要性への明確な認識と備えとともに、科学的根拠に基づきリスクに配慮した段階的アプローチが適切に取られている。

症例数が減少しているにもかかわらず、視察した中国のすべての省、市、コミュニティは、急性期病床と公衆衛生対応能力への投資を緊急に拡大しており、その継続が重要である。中国ではまだ5万人のCOVID-19患者が治療中であるが、合同ミッションは、中国がこの危機の間に迅速に築き上げた確かなな知識、経験、能力を理解している。従って合同ミッションは、ほとんどの省と市町村が、極めて迅速な感染者特定、主要な封じ込め策の即時の再稼

働、最高責任者による直接指揮、幅広いコミュニティ参画によって支えられる、より個別調整された持続可能なアプローチを通じてCOVID-19の再流行にすぐに対処できるという中国の推定を支持する。

中国がより正常なレベルの社会的および経済的活動の再開に取り組む中、世界は、中国におけるCOVID-19の急速に変化し減少するリスクを認識し、肯定的に対応することが不可欠である。中国が迅速に世界との関係性、生産力、経済的アウトプットを完全に回復することは、中国はもとより、世界にとっても極めて重要である。世界は、COVID-19対応における中国の経験と、その経験が世界の対応にもたらす有形財(調査、検査、治療など対応に具体的に必要とされるあらゆる物品)へのアクセスを緊急に必要としている。中国以外での

COVID-19アウトブレイクが深刻化する中、COVID-19に関する国際保健規則(IHR)緊急委員会の勧告を超えて中国への渡航および/または貿易に関する制限をすることについては、見直しを続けることが一層喫緊の課題である。


世界の対応と次のステップ

1. COVID-19ウイルスは、非常に伝染性が高く、急速に広がり、あらゆる環境で健康、経済、社会に多大な影響を与える可能性が考えられる新しい病原体である。それはSARSではなく、インフルエンザでもない。よく知られた病原体のみに基づいてシナリオと戦略を構築すると、COVID-19ウイルスの伝播を遅らせ、病気を減らし、命を救うために考えられるすべての対策を実践できないリスクが生じる。

COVID-19はSARSではなく、インフルエンザでもない。これは、独自の特徴を持つ新しいウイルスである。たとえば、COVID-19の臨床像はSARSと異なり、小児における伝播はインフルエンザと比べると限定的なようだ。限られたデータに基づいてはいるものの、中国のさまざまな環境におけるヒトーヒト感染の連鎖を断ち切るべく厳密に適用された非薬物的公衆衛生対策が示した明らかな有効性に、これらの違いが寄与した可能性がある。COVID-19ウイルスは、高い感染力、一部の高リスク集団における相当な致死率、膨大な社会的経済的混乱を引き起こす能力などを併せ持つ、他に類をみないヒトコロナウイルスである。対策の計画を立てる上では世界中の人々がこのウイルスに感染しやすいと想定する必要がある。現時点ではCOVID-19ウイルスの動物起源が不明であるため、過去に流行があった地域での再興のリスクも常に考慮する必要がある。

このコロナウイルスの新奇な性質、また、絶えず進歩するこのウイルスについての知見は、備えと対応の計画を迅速に改訂、変更する、極めて機敏な対応能力を要求する。中国では新知見に基づいた計画の迅速な改定、変更が継続して行われており、14億の人口を擁する国でこれが実践されたことは非凡である。

2. 複数の環境でCOVID-19ウイルスの感染を封じ込めるために、中国が非薬物的対策を、妥協なく厳格に用いたことは、世界の対応に極めて重要な教訓を与えた。中国におけるこの独特で前例のない公衆衛生対策は、市中感染が広がっていた湖北省と、家族クラスターが流行を引き起こしたと思われる、湖北省からの輸入症例からアウトブレイクが起こった省の両方で状況を逆転させた。

中国全体でアウトブレイクのタイミングは比較的類似しているが、感染の連鎖は、中国北部と南部の大都市から僻地のコミュニティまで、幅広い環境で成立した。しかしながら、中国における迅速な戦略の修正と個別調整は、さまざまな環境において、封じ込め対策が適用、正常運用できることを実証した。

中国の経験は、COVID-19への備えと対策の計画が、現地リスクを徹底的に評価し、リスクに応じて個別化された封じ込め戦略を活用することに重きを置くことの有効性を支持する。それによって、症例のない地域、散発例を認める地域、クラスター感染を認める地域、市中感染を認める地域のすべてにおいてアウトブレイクに対処できる。このような戦略は、社会経済的影響を最小限に抑えながら持続可能なアプローチを確実にするために不可欠である。

3. 世界の多くの地域では中国で用いられたCOVID-19の封じ込め対策をで実践するための心がまえも物資の準備もまだできていない。これらはヒトにおける感染の連鎖を阻止又は最小化することが現時点で証明されている唯一の対策である。これらの対策の基本は、感染者を迅速に検知するための極めて積極的なサーベイランス、迅速な診断と患者の隔離、濃厚接触者の厳密な追跡と検疫、そして大多数の人々がこれらの対策を理解し受け入れることである。

このような手段をもって成功につながる質の高い実践を達成するには、最高責任者による非常のかつ前例のない意思決定の早さ、公衆衛生システムによる運用の徹底、社会の関与が必要となる。制御されていない地域レベルの伝播によって引き起こされうる被害を考えると、このようなアプローチは、命を救い、治療法とワクチン開発の試験を要する数週間〜数か月の確保を保証する。さらに、中国以外の新たな感染者の大部分は、現在、中・高所得国で発生していることから、保健医療体制がより脆弱で対処能力が低い低所得国を守るための第二の防衛線を達成するには、非薬物的対策により、伝播を遅延させる厳格な介入が不可欠である。

これらの対策を完全に適用することで得られる時間は、たとえ数日・数週間であっても、最終的にCOVID-19の罹患や死亡を減らす、貴重なものである。このことは、中国で行われた迅速な科学研究事業を通じて、疾病の発見からわずか7週間で得られた膨大な知識と対策に用いられるアプローチとツールからも明らかである。

4. 世界全体の備えを緊急に強化し、最終的にこのウイルスを止めるための特化したツールを迅速に開発するため、COVID-19の封じ込め対策を厳格に適用することで得られる時間をより効果的に使うべきである。

COVID-19は驚異的なスピードで広がっている。いかなる状況や環境であっても、COVID-19のアウトブレイクは非常に深刻な結果をもたらす。現在、非薬物的介入であっても伝播を減少させ、さらには阻止しうるという強力な証拠がある。懸念すべきこととして、世界的および国家的な準備計画では非薬物的介入については曖昧になっていることが多い。しかしながら、COVID-19の罹患と死亡を減らそうとすれば、短期的な準備計画には、質の高い、非薬物的公衆衛生対策の大規模な実施が含まれていなければならない。これらの対策には、迅速な症例の検出と隔離、厳密な濃厚接触者追跡と監視/検疫、住民や地域社会の直接的なかかわりが組み込まれていなければならない。

膨大な数のCOVID-19の研究、科学研究プロジェクト、製品の研究開発が中国および世界中で進行している。これらは必須の事業であり、奨励され、支援されるべきである。しかしながら、このような多数のプロジェクトと製品開発には優先順位が必要である。優先順位がないと、社会や業界の関心、資源、連携が集約できず、開発にかかる週・月単位の貴重な時間の節約ができなくなる危険がある。すでに進展はあるものの、COVID-19の状況の緊急性に鑑みれば、診断、治療、ワクチンの分野の研究には、さらに大胆な優先順位付けをすべきである。

同様に、COVID-19の起源、病気の自然史、ウイルスの伝播動態に関して実施が提案される膨大な研究の一覧がある。しかしながら、患者対応と人命救助の緊急性から、政策立案者がこのような包括的研究一覧を検討、実施するのは難しい。この状況は、対策において緊急性の高い公衆衛生・臨床ニーズに基づいて、採用する研究のバランスを取ることで対処できる。また、研究は、対応活動と患者管理の向上に直結するような知識の不足に取り組むという観点で優先付けすることもできる。この観点から優先付けが示唆されるものとして、世帯や施設およびコミュニティーにおける伝播のリスクファクターの特定、既存のサーベイランスシステムを用いたウイルスの簡便なサンプリング、年齢層別の血清疫学調査、臨床症例シリーズの分析、およびクラスター調査が挙げられる。


Ⅳ 主な推奨事項

中国に対して

1. 各地域で評価されたリスクに応じ、経済活動の再開、移動制限の解除、学校の再開に伴う、COVID-19の新しい患者やクラスターが発生する実際のリスクを認識しつつ、適切なレベルの緊急対応プロトコルを維持する。

2. まずは労働者と移民労働者の帰還からはじめ、最終的に学校の再開やその他の措置が解除されるまで、移動と集会に関する現行の制限の段階的解除を注意深く監視すること。

3. 万が一、再燃や再興がみられたときに、直ちに封じ込め活動を始動できるように持続的な能力を確保するため、緊急事態管理メカニズム、CDCなどの公衆衛生機関、医療機関、コミュニティー参画メカニズムの即応体制をさらに強化する。

4. 特に世帯および医療施設に関する研究、年齢層別の血清疫学調査、動物と人間の接点の厳密な調査など、対応活動および危機管理の判断にすぐに役立つ研究を優先する。有望な迅速診断や血清検査、抗ウイルス薬やワクチン候補の治験、中国を含む多国間合同臨床試験などを加速する集中的研究プログラムを立ち上げる。

5. COVID-19に関する経験を最も有する国として、世界の対応に資するべく、疫学データ、臨床情報を体系的かつリアルタイムに共有する。

COVID-19の輸入症例および/またはアウトブレイクのある国に対して

1. 非薬物的公衆衛生対策を用いてCOVID-19を封じ込めるために必要な、全政府的、全社会的アプローチを確実にする、最高レベルの国家対応管理プロトコルを直ちに始動する。。

2. 積極的かつ徹底的な症例発見、即時の検査と隔離、綿密な接触者追跡、および濃密接触者の厳密な隔離を優先する。

3. COVID-19の重大性および拡散防止における一般の人の役割について普及啓発する。

4. すべての非定型肺炎患者の検査、一部の上気道疾患および/または最近の暴露歴がある患者のスクリーニング、既存のサーベイランスシステム(例えばインフルエンザ様疾患やSARIのシステム)にCOVID-19ウイルスの検査を追加することによって、COVID-19の感染の連鎖を検知するサーベイランスを直ちに拡大する。

5. 必要に応じて感染の連鎖を断ち切るさらなる厳しい対策(例:大規模集会の中止、学校や職場の閉鎖)が展開できるよう、多分野合同でシナリオの計画とシミュレーションを実施す

る。

未感染国に対して

1. COVID-19アウトブレイクを早期に封じ込めるために不可欠な全政府的、全社会的アプローチを開始する、最高レベルの緊急対応メカニズムを直ちに始動できるよう準備する。

2. COVID-19に対する非薬物的対策の有効性に関する新しい知見を踏まえ、国の準備計画を迅速に評価する。国の備えと対応、収容施設に、迅速な症例検知、大規模な患者隔離と人工呼吸器等の呼吸補助設備、厳格な接触者の追跡と管理の観点を組み込む。

3. 拡散を抑えるには迅速な症例検知が必要なため、COVID-19のサーベイランスを直ちに強化する。すべての非定型肺炎患者にCOVID-19ウイルス検査を検討するとともに、既存のインフルエンザサーベイランスシステムに検査を追加することを検討する。

4. すべての医療施設、とりわけCOVID-19の保健医療システムへの入口となる救急部門や外来診療所において感染予防・制御策の厳密な適用をすぐに始める。

5. COVID-19に対する一般の人理解を迅速に評価し、それに合わせて国全体の健康増進に用いる資料と活動を最適化、臨床チャンピオン(Clinical champions: 臨床の視点をもったコミュニケーター、ご意見番)にメディアとのコミュニケーションを促す。

一般の人々に対して

1. COVID-19は懸念すべき新規の疾患であるが、アウトブレイクは適切な対応で対処でき患者の大部分が回復することを認識する。

2. 頻繁に手洗いをし、くしゃみや咳をするときは常に口と鼻を覆うという、COVID-19の最も重要な予防策を直ちに取り入れ、厳密に実践し始める。

3. 病気に関する新たな情報は日々蓄積されており、戦略と対応活動は絶えず更新されるため、

COVID-19およびその兆候や症状(発熱、空咳)について新しい情報を継続的に得る。

4. より厳格な「社会的距離」(社会的生活の中で人と人との距離をとることなど)対策や、リスクの高い高齢者の支援などを含むさまざまな方法で、COVID-19への対応を積極的に支援するよう備える。

国際社会に対して

1. COVID-19に代表される国家間で共通の脅威に対処するには、国家間の真の連帯と協力が不可欠であることを認識し、それを実践すること。。

2. 国際保健規則の要求事項に基づき、接触者の追跡を容易にし、国をまたぐ封じ込め策に役立てるべく、輸入症例の詳細情報を含む迅速な情報共有を行う。

3. COVID-19の流行国におけるリスクが急速に変化することを認識し、国際渡航や貿易を著しく妨げる、あらゆる「追加の保健措置」を再評価するべく、アウトブレイクの動向と制御能力を継続的に監視する。

{付録削除}


C. 明らかになった技術的知見の詳細

対策の管理、症例と接触者の管理、リスクコミュニケーションとコミュニティエンゲージメント

中国における対応体制は既存の緊急計画に従って急速に整備され、最高指揮者から現場まで一律に適用された。これは、政府の4つのレベル(国、県、郡/郡)で同じように構成(複製)された。

組織構造と対応メカニズム

国レベルでの対応活動の始動:アウトブレイクが宣言された直後にCOVID-19の予防と制御のメカニズムが始動され、対応活動を調整するために9つのワーキンググループ(WG)が設置された:a)調整WG b)感染予防と制御 WG c)治療 WG d)研究 WG e)パブリックコミュニケーション WG f)外交 WG g)医療資材サポート WG h)生命維持装置 WG i )社会秩序の維持 WG。各ワーキンググループには閣僚レベルのリーダーが置かれた。緊急事態対応法および公衆衛生上の緊急事態への緊急対応並びに感染予防と制御のための規制が、新設または更新されることによって対応活動の方針を導いた。

省における対応活動の始動:各省は、アウトブレイクに対処するために同様の体制を整備した。対応活動は、国、省、県、郡/地区、およびコミュニティのレベルで構成される。1月29日までに、中国全土のすべての省が主要な公衆衛生上の緊急事態に対して最高レベルの対応活動を立ち上げた。

対応戦略

明確な戦略が策定され、目標は十分に明確にされるとともに対応組織全体に伝達された。この戦略は、各時点における疫学的状況と対策を実施する地域の状況との両方に鑑みて、それぞれのアウトブレイクに対して迅速に改訂・修正された。

疫学的状況は、地域を4つのエリアに整理するために用いられる。

 ・ 患者のいない地域における戦略は、「流入を厳しく防止すること」を主眼とする。これには、輸送ハブでの地域検疫の実施、体温の変化の監視、トリアージ取り決めの強化、発熱外来の活用、そして通常の経済的・社会的活動の確保が含まれる。

 ・ 散発的な症例がある地域における戦略は「流入を減らすこと、伝播を止めること、適切な治療を提供すること」に注力する。

 ・ クラスター感染がある地域の戦略は「伝播を止めること、流出を防止すること、治療を強化すること」に焦点を当てる。

 ・ 市中感染がある地域では、最も厳格な感染予防・制御の戦略が実施される。地域の人々の出入りが停止され、公衆衛生および医療措置が包括的に強化される。

中国で実施されている主な感染制御措置

中国で実施されている主な感染制御措置は以下の通り、図6A-6Dに示されている。国家レベルの対応と省レベルおよび地方自治体レベルでの対応の例を示す。

監視と報告:1月20日にはCOVID-19は感染症が発生したという法定報告に含まれており、診断、監視、報告を強化する計画が策定された。

入境時検疫強化:税関局は、全国の空港・港において公衆衛生上の緊急事態の緊急計画を始動した。都市への出入国のための健康状態申告カードの仕組みを再始動し、入国および出国客の体温について厳密に監視した。

治療:重症又は重篤な患者に対して、「4つの集中原則」が実行された。患者、医療専門家、リソース、治療を特化したセンターに集約した。すべての都市および地区は、重症患者の死亡率を最小限に抑えるために、関連する病院と調整して指定病院の数を増やし、医療スタッフを派遣し、相談のための専門家グループを設置した。中国全土から医療資源が動員されて、武漢の患者の治療を支援した。

疫学調査と濃厚接触者の管理:感染源を特定し、接触者追跡などの標的に集中した制御対策を実施するために、患者、クラスター、接触者に対して強力な疫学的調査が実施されている。

社会的距離拡大:国家レベルでは2020年に国務院が春節の祝日を延長し、全国でスポーツイベント、映画、劇場、学校や大学などの活動を積極的に中止または延期した。

企業と組織は活動の再開を遅らせた。運輸部門では、全国のサービスエリアおよび駅の乗客の出入口に、数千の地域検疫所を設置している。湖北省は、地下鉄、フェリー、長距離旅客輸送を含む都市公共交通機関の停止など、最も厳しい交通規制措置策をとった。すべての市民は人前でマスクをしなければならない。家庭をサポートする仕組みが置かれた。

これらのすべての措置によって、対人交流が著しく減少する。

資金調達および物質的な支援:健康保険の支払いだけでなく、医療資材のアクセシビリティーと価格の適正さを改善するとともに、個人防護具を提供し、影響を受けた人々に基本的生活物資を確保する作業が省によって引き継がれた。

緊急資源のサポート:政府は生産を回復し、生産能力を拡大した。また、現在すでに生産能力を超え始めている主要な企業を組織化し、地元企業の輸入の拡大を支援し、国境を越えた電子商取引プラットフォームと企業を活用して医療資材の輸入供給能力向上を支援した。

{図6・A,B,C,Dは省略}

リスクコミュニケーション(情報公開、一般およびメディアコミュニケーション)

国際・地域間協力と情報共有:2020年1月3日より毎日、中国における状況をWHOに報告している。新しいウイルスの完全なゲノム配列は、病原体が1月7日に同定された直後にWHOと国際社会とに共有された。1月10日、香港、マカオ、台湾の技術専門家と世界保健機関(WHO)のチームを含む専門家グループが武漢を訪問するよう招待された。COVID-19のPCR検出用核酸プライマーとプローブのセットは1月21日にリリースされた。

日報の更新:国家保健委員会は流行の状況を毎日発表し、新たな問題に対応するために毎日記者会見を開いている。政府はまた、国民の懸念に対処するために、COVID-19に関する科学的知識を共有すべく、専門家を頻繁に招待している。

心理的ケア:患者と一般の人々に心理的ケアが提供されている。すべてのレベルの政府組織、NGO、社会のあらゆるセクターによって、緊急心理危機介入のためのガイドラインと公的な心理的自立とカウンセリングのためのガイドラインを作成した。メンタルヘルスサービスのホットラインも一般向けに設置された。

ITプラットフォーム:中国はCOVID-19への備えと対応のために技術、ビッグデータ、AIの使用を活用している。認可された信頼できる情報、医療指導、オンラインサービスへのアクセス、教育ツールとリモートワークのツールの提供は、中国全土で展開され使用されている。これらのサービスは、医療サービスへのアクセス性を高め、誤った情報を減らし、フェイクニュースの影響を最小限に抑えた。

社会動員とコミュニティの関与

市民社会組織(コミュニティセンターと保健所)が、予防・対応活動を支援するために動員されている。コミュニティは、感染予防・制御策を概ね受け入れ、自主的隔離の管理と公共のコンプライアンスの強化に全面的に参加している。コミュニティーボランティアは、自主的隔離を支援し、家庭で孤立した住民が実用的な生活困難を解決するのを助けるために組織されている。ホームベースの支援を通じて人口の移動を制限するための措置が講じられた。これまで湖北省以外の30の省では、武漢から来た500万人以上の人々を登録し管理してきた。

臨床症例管理と感染予防・制御

COVID-19の主な徴候および症状は、発熱、空咳、疲労、喀痰、息切れ、筋肉痛または関節痛、咽頭痛、頭痛を含む。吐き気や嘔吐は、患者のごく一部で報告されている(5%)。2月14日、中国CDCは、44672の検査確定例の臨床的特徴、予後、臨床検査および放射線所見について説明した。20歳未満はわずか965(2.2%)で、記録された死亡は1人(0.1%)だった。患者のほとんど(77.8%)は30~69歳だった。80歳以上の患者の致死率は14.8%であった。致死率は、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高血圧および癌を含む併存疾患を有する人最も高かった。

インフルエンザA(H1N)pdm09とは対照的に,妊婦は高い重症化リスクを示さなかった。147人の妊婦(64人が確定例、82人が疑い例、1人は無症候性)の調査では、8%が重症、1%が重篤だった。

重症例は、頻呼吸(30呼吸/分以上)または安静時の酸素飽和度が93%、またはPaO2/FIO2が300mmHg以下の状態と定義される。重篤例は機械的人工換気を必要とする呼吸不全、ショックまたは集中治療を必要とするその他の臓器不全と定義される。重症および重篤例の約4分の1で機械的人工換気が必要となるが、残りの75%は酸素投与のみが必要である。

中国では、早期発見、早期隔離、早期診断、早期治療の原則をとっている。疑い例を早期発見することは封じ込めにとって重要であり、多くの施設、コミュニティ、交通機関(空港、駅)および病院への入り口での体温スクリーニングと質問を通じて行われる。SARSのアウトブレイク以降、多くの病院で発熱外来が設立、維持されている。当初中国では、症例定義に従って臨床検査をすることが求められていた。この定義には湖北省もしくは他の確定例との疫学的リンクが含まれていたが、最近になってより裁量範囲の広い臨床検査計画となり、臨床医は低い疑い指標の例にも検査ができるようになった。

疑い例は常圧の個室で隔離され、サージカルマスクを着用する(感染源の管理のため)。中国のスタッフは、帽子、目の保護具、n95マスク、ガウン、手袋を着用する(1回限りの使用)。武漢では、ほとんどの疑い例が、常圧の隔離病棟に集められる必要がある。スタッフは個人保護具を継続的に着用し、病棟を出るときにのみ交換する。

PCRテストの結果は検査と同日に通知される。陽性の場合、患者は指定病院に移送される(ある都市では陰圧救急車に隔離される)。軽症は無症候性を含むすべての陽性患者は入院することになる。指定病院は周知されており、地区/郡ごとに少なくとも1つは戦略的に配置されている。陽性患者は性別によって分けられる。検査陰性の患者は、臨床ニーズに基づいて管理される。すべての患者は鑑別診断のため respiratory multiplex(呼吸器感染症をまとめて検査する)で評価される。これによって、COVID-19の検査陰性が感染の否定反映していることに確かさを加える。

武漢には45の指定病院があり、そのうち6病院は重病患者、39病院は重症患者および/または65歳以上の患者のために指定されている。さらに、軽症患者向けに、体育館と展示場をリフォームした10の仮設病院がある。武漢では、他にも医療サージ(医療機関収容力および対応能力を超える緊急事態)対策として、病床数2600の新しい2つの仮設病院と、患者収容能力を増すための多くの応急仮設病院の設置に着手している。武漢の患者収容能力は50,000を超えている。

患者は、中国国家衛生健康委員会(NHC)が発表した国家臨床ガイドライン(第6版)に従って治療を受ける。予後を改善することが証明された(または推奨される)特定の抗ウイルス剤や免疫調整剤はない。すべての患者は定期的に酸素飽和度を観察する。ガイドラインには臨床カテゴリー別(軽症、中等症、重症および重篤)の支持療法とともに、33の治験薬の役割(クロロキン、リン酸塩、ロピナビル/リトナビル、アルファインターフェロン、リバビリン、アルビドールなど)記載されている。重症患者の挿管/侵襲的換気とECMOの適用は、生存率を向上させることができる。合同ミッションチームは、ある病院で4人の患者にECMOが使用され、1人が死亡、3人が改善したことを知らされた。ECMOは明らかに大量のリソースを消費するが、あらゆる医療提供体制においてメリットを慎重に検討する必要があるだろう。漢方薬(TCM)も広く使用されており、その効果を十分に評価する必要がある。

COVID-19の患者に対する訪問者(お見舞いなど)は許可されていない。スタッフは、つなぎ服、マスク、アイカバー、および手袋を使用し、病棟を離れるときにのみ個人保護具を取り外すことになっている。

患者は、臨床的回復(3日以上熱がない状態、症状の消失、画像検査の改善)に加えて24時間間隔で2回のPCR検査陰性を確認した後に退院する。退院に際して、家族や社会との接触を最小限に抑え、マスクを着用するよう求められる。数週間以内に臨床試験の結果がでることが予定されており、治療選択肢が拡大するかもしれない。

高齢者ケア、特に個人の予防と老人施設への感染拡大予防についてのガイドラインがある。

ビデオ会議によるトレーニングプログラムは全国的に展開され、スタッフにベストプラクティスを周知するとともに確実な個人保護具の適切使用を呼び掛けているる。優れた臨床知見と現場のノウハウを広く共有するべく、臨床チャンピオン(Clinical champions:臨床の視点をもったコミュニケーター、ご意見番)の育成が行われている。

通常の医療活動の維持は、病院のゾーニングによって維持されている。(例:医療施設の清潔/不潔の区分け)


臨床検査、診断およびウイルス学

COVID-19感染症を起こすこウイルスは、1月7日に初めて臨床検体から分離された。ウ、信頼性が高く感度の高い一連の診断ツールが、ウイルスが同定されて数週間で開発および展開されたことは注目に値する。1月16日に、COVID-19の最初のRT-PCRアッセイが湖北省に配布された。リアルタイムPCRキットは、1月19日にすべての州に配布され、1月21日に香港特別行政区およびマカオ特別行政区に提供された。2020年1月12日に、中国CDCは、ウイルスの塩基配列とPCRプライマーおよびプローブに関する情報をWHOおよび国際社会と共有した。製品開発と新しいウイルス研究を促進するべく、COVID-19ウイルスの塩基配列が中国によってGISAIDデータベースにアップロードされた。

2月23日までに、10のCOVID-19検出用キットがNMPAによって中国で承認された。これには

6つのRT-PCRキット、1つの等温増幅キット、1つのウイルス塩基配列決定製品、2つの金コロイド抗体検出キットが含まれる。他にもいくつかの検査が緊急時の承認プロセスによって取り込まれている。現在、PCRテストキットに関して少なくとも6つの地域の業者がおりNMPAによって承認されている。全体として業者が生産する能力を有しており、週当たり165000回の検査を普及させている。

検体はCOVID-19のPCR検査のため、上気道(鼻咽頭および口腔咽頭)又は下気道(喀痰、気管吸引液、または気管支肺胞洗浄液)から採取される。

COVID-19ウイルスは、呼吸器、糞便、血液検体で検出されている。2月20日の広州CDCの予備データによると、まずウイルスは症状発生の1-2日前に上気道検体から検出され、中程度の場合は7〜12日間、重症の場合は最大2週間生存する。発症後5日目から最大30%の患者の糞便でウイルスのRNAが検出されており、その後中等度の症例では最大4-5週間観察される。しかし、これが感染性のウイルスの存在と相関するかどうかは明らかではない。生ウイルスが便から培養される場合もあるが、糞口感染の役割はまだよくわかっていない。COVID-19は、ヒト気道上皮細胞、VeroE6およびHuh-7細胞株を使用して臨床検体から単離されている。

血清学的診断は急速に開発されつつあるが、まだ広く使用されていない。合同ミッションのメンバーは、中国CDC、広州再生医療・広東衛生研究所(Guangzhou Regenerative Medicine and Health Guangdong Laboratory )で地元の研究チームと面会し、化学発光を利用する迅速試験プラットフォームを用いた、IgM、IgGおよびIgM+IgGの試験の開発について報告を受けた。ELISAアッセイも開発中である。

研究開発

中国政府は、ウイルスゲノミクス、抗ウイルス薬、伝統的漢方薬、臨床試験、ワクチン、診断法、動物モデルに関する一連の主要研究の緊急プログラムを開始した。これらの研究には重要な基礎研究と被験者を用いる研究が含まれる。この報告書の目的でもあるが、ヒトを対象とした研究は研究倫理審査委員会(IRB)の承認とインフォームドコンセントを経たものに限定される。他の形態の被験者調査はこのレポートの疫学の章に含まれている。アウトブレイク下でなされた的を絞った手堅い研究は、病気を予防、診断、治療するための最も効果的な方法を明らかにすることで多くの命を救う可能性を秘めている。

COVID-19ウイルスは、コウモリSARSのようなコロナウイルスに対して96%、パンゴリンSARSのようなコロナウイルスに対して86%-92%のゲノム同一性を持っているため、(コウモリが)COVID-19の動物源である可能性が高いといえる。これは、武漢の華南水産市場から採取された多数のRT-PCR陽性となった環境サンプルによって裏付けられた。

COVID-19の直接検出のための少なくとも8つの核酸ベースの方法と2つの金コロイド抗体検出キットがNMPAによって中国で承認されている。他のいくつかの検査の承認も近づいている。これらおよび将来の血清学的検査の感度と特異度を比較することが重要である。現在市販されているマルチプレックス呼吸器系ウイルスパネルに、この検査を組み込むことができれば、現場環境で十分に機能する迅速かつ正確なb>臨床現場即時検査(ポイントオブケアテスト)の開発が特に有用となる。これにより、感染患者の早期発見と隔離、さらには接触者の特定が著しく向上する。迅速なIgMおよびIgG抗体検査も、早期診断を促進する重要な方法である。標準的な血清学的検査はレトロスペクティブな診断に使うことができ、血清調査の観点からCOVID-19感染のすべての範囲をよりよく理解するのに役立つ。

さまざまな種類のrepurposed drugs(別の目的で用いられている既存の薬剤を本疾患の治療に用いる)および治験薬が明らかになってきている。NMPAが承認した薬物ライブラリーおよびその他の化学ライブラリーをスクリーニングすることによって、新規薬剤が特定されてきている。レムデシビル、クロロキン、ファビピラビル、クロロキン、回復期血漿、中国伝統医療、およびその他の介入を含む数百の臨床試験が計画もしくは実施されている。これらの研究のなかで最重要なものを迅速に完了することが、本当に効果的な治療法を特定するために重要である。ただし、治験薬を評価するには、現実的な適性基準と患者の適切な層別化を備えた、十分な検出力のある無作為化比較試験が必要である。中国内外で研究を担う人々の間に一定の調整がなされることが重要である。

この強い感染性を持つ呼吸器ウイルスに対して、安全で効果的なワクチンを開発することは重要な流行制御策である。組換えタンパク質、mRNA、DNA、不活化全ウイルス、および組換えアデノウイルスのワクチンが開発されており、一部は動物実験に入っている。不活化全ウイルスを用いた麻疹ワクチンで疾患が悪化したという過去の経験や、SARSコロナウイルスワクチンを用いた動物実験での同様の報告を考慮すると、コロナウイルス感染の分野において、ワクチンの安全性は最大の懸念事項である。これらのワクチン候補は、適切な臨床試験に遅滞なく移行することが重要である。

ウイルス伝播、病因、抗ウイルス療法、ワクチン、免疫応答の経路を研究するための理想的な動物モデルはまだ見つかっていない。ACE2トランスジェニックマウスモデルおよびMacaca

Rhesusモデルは、すでに研究所で使用されている。どのモデルが人間の感染を正確に模倣できるかを体系的に扱うことが必要である。


スク、手指衛生製品、その他の個人防護具の消費が世界的に急増している。マスク、手指衛生、人と距離をおくといった非薬物的感染制御策は相対的に重要であるが、その効果を定量化するためのさらなる研究が必要である。

これまでに複数の明らかなCOVID-19の家族内感染が認められている。感受性や臨床経過に影響を与える、遺伝因子を含む宿主因子があるかどうかは不明である。COVID-19にはさまざまな臨床経過があり、その経過についての正確な説明は実用可能でない。さらに、COVID-19の長期的影響は不明である。診断時からCOVID-19患者を登録し、観察コホート研究(適切なコントロールを使用)を組むことによって、COVID-19の臨床的、ウイルス学的、および免疫学的特性に関する詳細な情報を得ることができる。

表1に、短期から長期までの目標を持つ優先研究領域をまとめる。

表1短期、中期、長期目標ごとの優先研究領域

短期目標 中期目標 長期目標
診断:RNAアッセイ、抗体抗原アッセイ、臨床現場即時検査 診断:マルチプレックス診断プラットフォーム 診断:予後予測マーカー
治療:レムデシビル、ファビピラビル、クロロキン、回復期血漿、中国伝統医療 治療:免疫グロブリン療法 治療:革新的アプローチ(CRISPR-CAS、RNA干渉、cell-basedの薬剤スクリーニング、ライブラリースクリーニングによる治療ターゲットの特定)
ワクチン:動物モデルの作成 ワクチン:mRNAとウイルスベクターの候補 ワクチン:不活化ワクチン、サブユニットワクチンの候補


D. 不足している知識

感染制御を実施する上で解決すべき重要課題と知識の不足は以下である。

感染源

 ・ 感染源となった動物および自然宿主

 ・ ヒトへの感染が起こった際のヒトと動物との接触

 ・ ウイルスへの曝露状況を特定できなかった早期の症例

ウイルスの発症機序と病原性の進化

感染動態

・ 感染経路:

 - 医療現場以外でのエアロゾル感染

 - 糞口感染

・ 異なる生物学的検体の、臨床経過のさまざまな時期におけるウイルス排出(上下気道、唾液、糞便、尿など)

 - 発症前および無症状の症例

 - 有症状期間

 - 有症状期間終了後/回復期

感染のリスク因子

・ 感染の行動学的および社会経済学的リスク因子

 - 家庭/施設・組織

 - 地域

・ 無症候性感染のリスク因子

・ 院内感染のリスク因子

 - 医療従事者

 - 患者

サーベイランスとモニタリング

・ 以下の既存データを通じた地域での感染状況の観察

 - インフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランス

 - 重症呼吸器感染症(SARI)のサーベイランス

・ アウトブレイクの動向と介入の動態

 - 流行のさまざまな段階での基本再生産数

 - 流行と季節との関連

検査と診断

・ 異なる種類の核酸検査(PCR法,核酸増幅法(NAAT)、迅速検査)、抗体検査および抗原検査の感度と特異度

・ 感染後の抗体価および抗体の持続期間

・ 以下の集団における血清有病率

  - 医療従事者

  - 般集団

  - 小児

重症および重篤患者の臨床管理

・ 重篤患者の臨床管理における体外式膜型人工肺(ECMO)の意義

・ 重篤患者における人工呼吸器管理のベストプラクティス

・ 重症および重篤患者の臨床管理におけるステロイドの役割の再評価

・ 良好な臨床管理と予後を規定する因子の同定

・ 中国伝統医療の有効性の判断

・ その他、治験中の治療選択肢の有効性の判断(例:免疫グロブリン療法(IVIg),回復期血漿)

感染予防・制御策

・ 科学的根拠に基づいた感染制御戦略の意思決定と調整を提供する主要な疫学的指標

・ さまざまな医療現場における感染予防・制御策の有効性

・ 出入国時のスクリーニングの有効性

・ 公衆衛生学的制御策の有効性と社会経済的影響

 - 移動の制限

 - 社会的距離拡大

 - 学校や職場の閉鎖

 - 一般集団でのマスク着用* 強制隔離

 - 積極的なサーベイランスを伴う任意隔離

E. 対策の実施および技術面での推奨事項

対策実施およびプログラムに関する推奨事項

 ・ アウトブレイクのさまざまな段階に基づいたリスクと対応能力を再評価する。感染対応のさまざまな段階において異なる手段を承認する。対応のさまざまな段階を評価する。感染対応と社会の発展のバランスをとる。

 ・ 政府の強いリーダーシップによって推進される、最新の科学的エビデンスに基づいた、効率的かつ柔軟な多部門合同の対応メカニズムを開始する。

技術面での推奨事項

疫学および感染

・ ILI、SARI、または肺炎のサーベイランスシステムを含む既存の呼吸器疾患サーベイランスシステムを通じて、国内全土のサーベイランスを強化し続ける。

・ 医療従事者を対象とした、世帯内感染の研究、小児を含む年齢別に層別化された血清疫学的調査、症例対照研究、クラスター調査、血清学的研究を含む早期の調査を優先する。

重症度

・ 患者管理、疾患の経過および、重症化や良好な予後をもたらす因子に関する情報共有を継続する。

・ 以下のような、疾患の重症度に関連する可能性のある要因を検討・分析する。

 - 軽症例、重症例、致死例における疾患の経過のよりよい理解のための自然史研究

 - 適切な標準治療を確立するための、易感染層(例:基礎疾患のある人,高齢者,妊婦および小児)における診療記録のレビュー

 - 良好な予後につながる因子の評価(例:早期診断、早期治療)

臨床ケア、感染予防・制御

・ 感染が疑われる未検査の患者は常圧の個室に隔離されるべきである。検査陽性例のコホーティング(一か所に複数人数を集めること)は許容される。

・ 医師およびすべての医療従事者は、COVID-19への高いレベルの注意を維持する必要がある

・ 感染が確認された国においては、臨床ケアと感染予防・制御のトレーニングを標準化し、地域の(例:地区レベル)専門家の育成に合わせて調整する。

・ COVID-19検査陰性を補填する他の病原性ウイルスの同時検査を確実にする。

・ アウトブレイク中にも通常および必須の医療サービスを確実に維持する。

・ 高齢者を含む最も脆弱な集団で、感染予防のためのプロセスが整っていることを確認する。

・ 臨床ケアを提供し、以下を含む感染予防・制御のニーズを満たす準備を確実に行う。

  a. 呼吸補助への必要性が予測される物品(例:パルスオキシメーター、酸素、必要であれば侵襲的な呼吸補助)

  b. COVID-19に対応した、臨床ケアと感染予防・制御についての国内ガイドライン

  c. 疾病理解と医療従事者における個人防護具の使用についての国内で標準化されたトレーニング

  d. コミュニティー・エンゲージメントe. 個人防護具と薬剤の備蓄

  f. 早期発見のプロトコル;トリアージ、体温測定スクリーニング、待合室でのトリアージ(パルスオキシメーター)

  g. 指定医療機関および患者搬送を含む治療プロトコル

  h. 国内ガイドラインに基づいた、インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンの接種強化

  i. 臨床検査

  j. 迅速対応チーム(RRT)

臨床検査とウイルス学

・ ウイルスの進化を評価するために、異なる時間と場所で分離されたCOVID-19ウイルスの全ゲノム解析を続ける。

・ COVID-19患者または感染した動物モデルの生検/剖検検体を使用して病因研究を実施する

・ 利用可能な核酸PCR診断を評価する。

・ 迅速診断/臨床現場即時診断(point-of-care diagnostics)および血清学的分析を早急に開発・評価する。

・ COVID-19から回復した患者の糞便中のCOVID-19RNA陽性結果を解釈するため、さらなる研究を実施する。

・ COVID-19ウイルスとウイルスの追跡可能性の理解を深めるために、特にバイオセーフティと情報共有の観点から国際協力を強化する。

・ 「サイトカインストーム」の発生を予測するため、マルチプレックスアッセイを介して炎症性サイトカインのモニタリングを検討する。

研究開発

・ 新たな流行やや類似の既存流行の再興を防ぐために、自然宿主や中間宿主を含む感染源となる動物を特定するための努力が必要となる。

・ 臨床検査のための統一された基準と、試験の評価に使用できるバイオレポジトリを通じて、COVID-19の検出のための既存および将来の診断検査を一貫して評価する努力がなされるべきである。

・ 研究ポートフォリオを監督し、最も有望な研究(ワクチン、治療、病因解析のための研究)が適切にサポートされ最初に行われるのを保証するべく、中国での集中型研究プログラムの設立を検討する。医療現場の臨床家の研究による負担を軽減するため、専属のプログラムスタッフが臨床研究に従事する。

・ 進行中および将来の多施設国際試験に中国国内の1つ以上の施設を含めることを検討する。中国の研究者は国際試験に積極的に関与すべきである。

・ 動物モデルの追加の開発を継続し、ヒトで感染やウイルス伝播を可能な限り厳密に模倣するためにあらゆる努力を払う。

・ 一般的に使われる個人防護具の中でどれが最もCOVID-19の拡散を制御するのに効果的かを判定する研究を実施する。


{*1* 本報告の中国語版では、COVID-19のことを、中華人民共和国で最も広く使われている呼称である新型コロナウイルス肺炎あるいはその略であるNCPと表記している。}

{*2* 流行の初期に粗致死率を報告することの難しさを合同ミッションは承知している。}