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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] Withコロナに向けた政策の考え方

[場所] 
[年月日] 2022年9月8日
[出典] 首相官邸
[備考] 新型コロナウイルス感染症対策本部決定
[全文] 

〇 新型コロナウイルス対策については、ウイルスの特性の変化やワクチン接種の進捗に応じて、これまでも感染者全員入院からの転換、国民の行動制限や経済活動の制限の見直しを行うなど、状況に応じた政策を展開してきた。

〇 この中で、オミクロン株については、若者の重症化リスクは低く、大部分の人は感染しても軽症で入院を要することはない。一方で、高齢者のリスクは引き続き高い。また、感染の中心が飲食の場から高齢者施設、学校、保育所等の施設や家庭内感染へと変わってきた。これらを踏まえ、新たな行動制限を行わず、重症化リスクのある高齢者等を守ることに重点を置いて、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る方針とした。

〇 また、保健医療体制の構築については、約5万の病床・ベッド数の全面的稼働、発熱外来の拡充(約4万か所)といった対応能力の大幅な拡充、入院対象者の適切な調整等に取り組むとともに、オミクロン株の特性を踏まえた療養環境を支援するための発熱外来自己検査体制の整備、高齢者施設の医療支援、治療薬の活用促進などの対応を行ってきた。ワクチンの接種についても、3回目・4回目接種を着実に進めてきた。これらの対応により、新型コロナウイルス感染症そのものの重症化は抑制することができた。

〇 新型コロナウイルスは今後も変異を繰り返し、収束までにはさらに大規模な感染拡大が生ずることも懸念されるが、

・6回の感染拡大を経る中で、日常生活や経済活動における感染防止の取組み、科学的知見の積み重ね、医療体制をはじめとする政府・自治体の取組みなど、我が国全体として対応力が強化されており、今回(令和4年夏)の感染拡大についても、新たな行動制限を行うことなく、感染者の減少傾向が確認できていること

・今後、オミクロン株対応の新たなワクチン接種も開始すること

・諸外国においては、社会・経済活動の正常化の動きが進んでいること

などを踏まえた適切な対応が求められている。

〇 このようなことから、今般、別紙のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の措置について、高齢者・重症化リスクのある者への保健医療の重点化と患者の療養期間の見直しを行うなど、新型コロナウイルス対策の新たな段階に移行する。これにより、今後、今回を上回る感染拡大が生じても、一般医療や救急医療等を含む我が国の保健医療システムを機能させながら、社会経済活動を維持できるようにする。

〇 その上で、今後の世界的な感染の動向を踏まえながら、ウイルス学的な見地やリスク評価も含めて、さらにWithコロナ(新型コロナウイルスとの併存)における感染対策のあり方について引き続き検討していく。


別紙

Withコロナに向けた新たな段階への移行

基本的考え方

〇 感染症法上の措置について、高齢者・重症化リスクのある者に対する適切な医療の提供を中心とする考え方に転換し、新型コロナウイルスへの対応と社会経済活動の両立をより強固なものとした、Withコロナに向けた新たな段階に移行する。

 移行に当たっては、再度、大規模な感染拡大が生じうることも想定し、国民ひとりひとりの自主的な感染予防行動の徹底をお願いするとともに、高齢者等重症化リスクの高い者を守るとともに、通常医療を確保するため、保健医療体制の強化・重点化を進めていく。

〇 オミクロン株については、若者の重症化リスクは低く、大部分の人は感染しても軽症で入院することはなく、一方で、高齢者の重症化リスクは引き続き高い。このようなウイルスの特性を踏まえて行う全数届出の見直しについては、全国一律に導入することが基本である。移行に当たっては、発生届の対象外となる若い軽症者等が安心して自宅療養をできるようにするために必要な環境整備を進めてきた。

〇 こうした環境整備の目途がたつとともに、全国的に感染者の減少傾向が確認できたことから、Withコロナに向けた新たな段階への移行を進める。


1. 前提としての保健医療体制の強化

(1)新型コロナ病床の確保、診療・検査医療機関(発熱外来)の取組は継続

(2)高齢者施設等における医療支援の強化(施設従事者への定期的な検査、施設内療養に対する支援体制の強化、経口薬の確保)

(3)全国民(※)を対象としたオミクロン株対応ワクチンの接種促進(後述)

  ※初回接種(1・2回目接種)を完了した12歳以上の全ての者

(4)抗原定性検査キットのOTC化(8月31日よりインターネット販売開始)(5)健康フォローアップセンターの全都道府県での整備・体制強化


2. 療養の考え方の転換・全数届出の見直し

(1)新型コロナウイルスへの感染が疑われる方の療養の考え方

{図は省略}

(2)全数届出の見直し

① 患者の発生届出の対象を、(a)65歳以上の者、(b)入院を要する者、(c)重症化リスクがあり、新型コロナウイルス感染症治療薬の投与又は新たに酸素投与が必要と医師が判断する者、(d)妊婦、の4類型に限定して、発生届の提出を求めることとする。

② 療養の考え方の転換及び全数届出の見直しに当たっては、発生届の対象外となる若い軽症者等が安心して自宅療養をできるようにするため、

(a)抗原定性検査キットのOTC化(インターネット等での販売を解禁)

(b)発生届の対象とならない方が体調悪化時等に連絡・相談できる健康フォローアップセンターの全都道府県での整備・体制強化

(c)発生届の対象外の方々にも、必要に応じて、宿泊療養や配食等の支援

が可能になるようにすること等、必要な環境整備を整える。

③ ①により、若い軽症者等の詳細な患者データはとれなくなるが、感染者数はHER-SYSの追加機能による医療機関の患者数及び健康フォローアップセンターからの登録者数により全数把握*1*を継続する。

④ 全数届出の見直しは、全国一律での移行が基本となるが、移行のための環境整備が必要となるため、全国知事会や医療関係者の強い要望を受けて、発熱外来や保健所業務が相当にひっ迫する地域については、緊急避難措置として、自治体の判断で前倒しを可能とした。*2*

 並行して、健康フォローアップセンターの全都道府県での整備・体制強化を進めるとともに、全国で簡易に感染者の総数を把握するためのシステム改修等、②③の環境整備を進めてきたが、準備の目途がたったことから、9月26日から、全数届出の見直しを全国一律で適用*3*する。

⑤ 全国一律での適用に当たっては、

 ・発生届の有無に関わらず、引き続き、患者には外出自粛要請を行うこと

 ・宿泊療養や配食等は、引き続き、届出の有無に関わらず、希望する患者

に対して実施可能であり、緊急包括支援交付金の対象であること

 ・宿泊療養や配食等の支援の対象者の管理等についてHER-SYSの既存の機能の活用が可能であること

とし、各都道府県の実情を踏まえた円滑な移行を図る*4*。(移行に当たっては、先行して届出を限定している都道府県の事例なども踏まえ、これらに関する運用について速やかに厚生労働省から自治体にお示ししていく。)

⑥ 医療費等への公費支援のあり方については、・今回の見直し時においては変更しない。・自宅療養者の外出自粛の在り方、治療薬の普及などの状況を踏まえつつ、他の疾病との公平を確保する観点から、重症化リスクの低い患者をはじめとする外来医療費や宿泊療養・配食等の公費支援(予算補助)の在り方について、引き続き検討する。

{*1* 新型コロナウイルスの感染動向については、当面、感染者数の総数により把握する全数把握を継続するとともに、定点観測方式の手法の研究を進める。}

{*2* この措置については、8月24日の全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部「新たな新型コロナ対策公表について」において「全国知事会からの累次の要請に応え、医療・保健の現場が命や健康、生活・社会を守る本来機能を発揮するための画期的方針であり、総理の英断を高く評価し、深く感謝申し上げる。」とされている。}

{*3* 重症化のおそれが高いなど、懸念すべき変異株が生じた場合には、対応を見直すことがあり得る。}

{*4* 発生届の対象外の者に係る療養証明書は発行しない。届出対象者については、証明が必要な場合には、MyHER-SYSの証明、医療機関で実施されたPCR検査等の結果がわかる書類、診療明細書等で対応する。}


3. 社会経済活動との両立

(1)全国民を対象としたオミクロン株対応ワクチンの接種促進

 ・10月半ばを目途として、初回接種(1・2回目接種)を完了した12歳以上の全ての者に対する接種を開始することを想定して準備

 ・輸入等の一部前倒しにより、順次国内配送可能となるワクチンを活用して、重症化リスクの高い等の理由で行われている4回目接種の対象者への接種を9月半ば過ぎに前倒しして開始

 ・4回目接種の一定の完了が見込まれた自治体においては、配送ワクチンの範囲内で、その他の初回接種が終了した者(社会機能を維持するために必要な事業の従事者や年代別など)の接種へ移行

 ・新型ワクチンについても引き続き、特例臨時接種として接種を勧奨(全額公費負担)

(2)陽性者の自宅療養期間(現在:有症状10日間、無症状7日間)

① 全数届出の見直しは行うが、引き続き、法律(感染症法44条の3)に基づき、陽性者に対する外出自粛要請を行う。

② 新たな段階への移行に向けて、科学的エビデンス、欧米のルール(米国5日間、英国5日間、仏国7日間(ワクチン接種者の場合で一定の条件を満たせば5日間)、専門家等の意見も踏まえ、自宅療養期間を短縮する。(9月7日適用)

 有症状者

  発症から10日間→7日間(現に入院している場合等は10日間)

 無症状者検体採取から7日間

  → 検査キットによる検査で5日間経過後に解除(検査を受けない場合は7日間)

 * 有症状の場合には10日間、無症状の場合には7日間は引き続き、自身による検温、高齢者等重症化リスクのある者との接触や感染リスクの高い行動を控えるよう要請する。

③ 陽性者について、症状軽快から24時間経過又は無症状の場合には、自主的な感染予防行動※を徹底することを前提に、食料品といった生活必需品の買い出しなど必要最小限の外出を許容する。(9月7日適用)

 ※外出時・人と接する時は必ずマスク着用、人との接触は短時間、移動に公共交通機関は利用しない。

(以上)