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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大韓民国政府と中華人民共和国政府との投資増進と相互保護に関する協定

[場所] 北京
[年月日] 1992年9月30日(1992年9月30日署名、1992年12月4日発効)
[出典] http://www.mofat.go.kr/ko/division/jo_treaty_list.mof?ipage=&b_code=treaty_1&div_m_code=NN,条約1108号.
[備考] 翻訳 金淑賢
[全文]

大韓民国政府と中華人民共和国政府(以下、「締約当事者」)は、両国間の経済協力を強化することを希望し、投資及び投資と関連する事業活動について各国が付与する好意的な待遇と保護を通じて、相手国の領域内で一方の当事者による投資に有利な条件を造成することを希望し、投資の促進と相互保護が両国間の経済と技術交流を促進させることを認識して、次のように合意した。

第1条

この協定の目的上、

<1>「投資」とは、一方の投資者が投資当時の相手国の関係法令に従って、

相手国の領域内で行った投資として使用されたすべての種類の資産を意味し、特に次のことを含むが、それに限らない。

〔1〕動産、不動産と抵当権・誘致権・質権・用益権などのようなすべての物権に関する財産権及びこれと類似した諸権利。

〔2〕持ち分・株・債券・会社の社債またはそれ以外の形での会社・企業または合作事業に参与する権利。

〔3〕金銭または投資と関連して経済的価値を持つすべての行為に対する請求権。

〔4〕著作権・商標権、特許権、産業デザイン、技術公正、ノウハウ、営業秘密、商号権などを含む知的所有権及び営業権。

〔5〕法律及び契約によって付与されるすべての権利及び自然資源の探査、抽出、開墾または開発のための権利、を含む法律に従う各種の免許及び許可。

資産が投資される形態の如何なる変更も当該資産の投資としての性格に影響を及ばさない。

2.「収益」とは、投資によって得た金額を意味し、特に利潤・利子・資本収益・配当・使用料または手数料などを含むがそれに限らない。投資から発生する収益と、再投資の場合に発生する収益は投資と同じ保護を享有する。

3.「投資者」とは、相手国の領域内で投資をする国家の国民または会社を意味する。

<1>「国民」とは、当事国の国籍を持っている自然人を意味する。

<2>「会社」とは、

ア.大韓民国に関与する有限責任の可否、法人格の可否及び金銭的な利益を目的にするかどうかの可否に関係なく法人・合作会社・会社及び協会を意味して、

イ.中華人民共和国に関与する企業・他の経済組織及び協会を意味する。当時国の関係法令により設立されて、当該国家の領域内での住所を持つ会社は当該国家の会社として見なす。

第2条

1.各締約当事者は自国の領域内で相手国の当事者による投資を、出来る限り促進し、自国の関係法令に従ってそのような投資が許可されるようにする。

2.当事国の投資者は相手国の領域内での投資許可及び投資許可と関連する事項について第3国の投資者に付与されているものより不利でない待遇を受ける。

3.投資及び投資と関連する事業活動が目的で、相手国に入国して滞留することを希望する当事国の国民は、事業活動のための免許と許可申請及び相手国内での入国・滞留及び居住申請に対して、相手国の関係法令に従って好意的な考慮を受ける。

第3条

1.当事国の投資者は相手国の領域内で投資・収益及び投資と関連する事業活動に対して、第3国の投資者に付与されているより不利でない待遇の保障を受ける。

2.当事国の投資者は相手国の領域内で投資・収益及び投資と関連する事業活動に対して、相手国の投資者に付与されているより不利でない待遇の保障を受ける。

3.この条の規定で、「投資と関連する事業活動」とは、特に次のことを含むが、それに限定しない。

ア、支社・代理店・事務所・工場及び他の事業活動の遂行のために適切な施設の維持

イ、設立または取得した会社の統制と経営

ウ、技術者・役人・弁護士及び他の職員を含む専門家の雇用と解雇

エ、契約の締結と履行

4.第1項の規定は一当事国が次のことによって付与出来る如何なる待遇、特恵または特権の恵沢を相手国の投資者に対しても付与するべきであることとして解釈されない。

ア、両国家中、一国が当事国であるか、または当事国に成りうる、どのような既存または未来の関税同盟・自由貿易地域・共同関税地域・通貨連盟・これと類似する国際協定または他の地域協力機構

イ、全てまたは主として課税に関する、如何なる国際協定または国際約定

第4条

当事国の投資者が相手国の領域内で自らの権利行使と防御のため法廷・行政審判所または行政機関を利用することで付与される待遇は相手国の投資者または第3国の投資者に付与される待遇より不利にしてはいけない。

第5条

1.当事国の投資者の投資と受益には相手国の領域内で持続的な保護と安全が付与される。

2.当事国の投資者の投資と収益は相手国の領域内では、非差別的な公共目的の場合を除いて国有化または収容されないし、国有化または収容と同じ効果を持つ措置(以下、「収容」)の対象にされない。収容は関係法令に従って行われるべきであり、補償されるべきである。

3.第2項に規定された補償は収容決定が発表されたか、または収容決定が知らされる直前の、投資の市場価値に基づいて計算される。市場価値が直ちに確認されない場合の補償は一般的に認定されている価値算定の原則に従って、そして投資された資本、減価償却、既に回数された資本及び他の関連要素などを考慮した公平な原則に基づいて、決定されるべきである。

以上の補償は遅滞なく行われるべきであり、受容日から支払い日まで適切な利潤の利子を含むべきであり、補償金額の決定日に適用される公式為替相場で実質的に換金されて、自由に送金されるべきである。

4.当事国の投資者は相手国の領域内で第1項及び第3項で規定された事項と関連して非差別的な待遇の保障を受ける。

5.影響を受ける投資者は収容を行った国家の法律に従って、その国家の管轄法廷、行政審判所または権限を持つ行政機関で第2項、第3項及び第4項に規定された措置及び補償金額と関連して裁判を受けるかまたは迅速な審査を請求する権利を持つ。

6.当時国のすべての領域内で施行されている法律によって設立される会社で相手国の投資者が持ち分を所有している場合、その会社の資産を前者が収容する場合には、この条の規定が適用される。

第6条

1.当事国の投資者は、武力衝突・国家非常状態または擾乱によって相手国の領域内での自分の投資が損失を受けた場合、原状回復・賠償・補償または他の解決に関して他方締約当事者が第3国の投資者に付与することより不利ではない待遇を受ける。

2.第1項を妨げず、当事国の投資者が同項に規定された如何なる状況下で相手国の領域内で次のような被害あるいは損失を受けた場合、徴発の期間中続けられた被害、損失または財産破壊の結果として生じた被害または損失に対して公正で適切な補償を受ける。(1)相手国の軍隊または当該国による財産徴発 (2)戦闘行為中に発生したことではないか、あるいは状況の必要性から判断して必要ではなかった相手国の軍隊または当該国による財産破壊

3.第1項及び第2項の補償にする支払いは直ちに行われるべきであり、補償金額の決定日から適用される公式為替相場に従って決定された為替で自由に送金できるべきである。

第7条

一締約当事者または同当事者が指定する機関が相手国の領域内での投資に対して提供した保証に従って自国の当事者に支払いをする場合、他方締約当事者は次の事項を認定する。

ア、法律による、あるいは同相手国での合法的な取引による、当事者から一締約当事者または同一方当事者が指定する機関からのすべての権利または請求権の移転

イ、一締約当事者または同一方当事者が指定する機関が代委によって投資者の権利を行使して、請求権を執行する資格を持ち、投資と関連する義務を負担すること

第8条

1.当事国の投資者は投資と関連して特に次のことを相手国の関係法令に従って、直ちにすべての自由兌換性通貨として同相手国の領域外に送金することを保障されており、そのような送金が次のことに限定されることはない。

ア、当事国投資者のすべての投資から発生する純利潤・配当金・使用料・技術支援及び技術用役の手数料・利子及び他の経常所得

イ、当事国の投資者が行った投資の売却や、全部あるいは一部の清算による収益金

ウ、最初資本及び投資増大に必要な補充金額

エ、投資と関連する債務の返済資金

オ、相手国の領域内での投資と関連して就業が許可された当事国国民の所得

カ、補償金

2.この協定の目的上、為替は送金日に適用される公式為替相場に従って定められる。

第9条

1.相手国の領域内での投資と関連した当事国の投資者と相手国の政府間のいかなる紛争も出来る限り紛争当事者間の協議を通じて友好的な方法で解決されるべきである。

2.当時国の当事者は相手国の領域内での自己の投資と関連して同相手国の法令による法的救済措置を、同相手国が自国の投資者または第3国投資者の投資に対して付与することより不利でない待遇に基づいて利用することができる。

3.第5条第3項に規定された報償金額に関する、当時国の投資者と相手国の政府または同相手国の法令に従って報償義務を持つその他の機関間の紛争が一方当事者が友好的な解決を要請した日から6ヶ月以内で解決出来ない場合、その紛争は同投資者の要請に従って、1965年3月18日ワシントンで作成された「国家と他方国家の国民間の投資紛争の解決に関する協約」(以下、「ワシントン協約」とする)を参考にして設立される調整委員会または仲裁委員会(以下、「仲裁委員会」とする)に回付される。

当事国の投資者と相手国の政府間のその他の問題に関するいかなる紛争も相互合意によって、上記に規定された仲裁委員会に回付される。当事国の国民または、会社が相手国の領域内で行政的または司法的な解決を求めている場合、その紛争は仲裁委員会に回付されない。

4.第3項に規定された仲裁委員会は3人の仲裁議員で構成される。各当事者は一当事者が他方当事者から、第3項で規定された紛争の仲裁を要請する通知を受けた日から60日以内に各1人の仲裁委員を任命し、そのように選定された2人の仲裁委員は以後90日以内に仲裁委員長である第3の仲裁委員の任命を承認して、第3の仲裁委員はどの一方国家の国民ではいけない。

5.第3の仲裁委員が第4項に規定された期間内に各当事者によって任命された仲裁委員間で承認されなかった場合、一当事者は両当事者によって事前に合意された第3者に対して両国と外交関係のある第3国の国民である第3の仲裁委員を任命する事を要請する。

6.仲裁手続はワシントン協約を参考にして仲裁委員会によって決定される。

7.仲裁委員会の決定は最終的で、拘束力を持つ。仲裁委員会の決定の執行は、その執行が行われる領域の所属国家で適用されている仲裁決定の執行に関する法令に従って行われる。仲裁委員会はその決定の根拠を明らかにするべきであり、一当事者が要請すれば、その理由を説明しなければならない。

8.各当事者は、自分が任命した仲裁委員と関連された費用と自分の仲裁手続参加による費用を負担する。仲裁委員長の職務遂行のための費用と仲裁委員会の他の費用は、関連当事者が均等に負担する。

9.ある事件が第3項に規定された仲裁委員会に回付される場合と、回付された以後にはその事案と関連するいかなる請求も両国間で提議されない。

10.この条の規定にもかかわらず、中華人民共和国がワシントン協約の当事国になる場合、

 中華人民共和国が「投資紛争解決のための国際本部(以下、本部とする)に対する留保通告を通じて、本部に回付されないようにした紛争以外のすべての紛争は、当事国の投資者、あるいは相手国の政府要請に従ってワシントン協約によって設立された本部に回付される。

第10条

1.この協定の解釈、または適用に関する締約当事者間の紛争は出来る限り協議、あるいは交渉を通じて解決する。

2.紛争の3ヶ月以内で解決出来ない場合には、一方締約当事者の要請によって仲裁裁判所に回付される。

3.仲裁裁判所は、各々に個別的な事案に対して、次のような方法で構成される。各締約当事者は、仲裁要請の受付後、2ヶ月以内に各々一人の裁判官を任命する。この二人の裁判官は、両締約当事者の同意を得て、仲裁裁判所の裁判長(以下、「裁判長」にする)として任命される、第3国の国民を選定する。裁判長は、二人の裁判官が任命された日から2ヶ月以内に任命される。

4.第3項に規定された期間内で、必要な任命が行われない場合、一締約当事者は、別に合意されない限り、国際司法裁判所長に第3の裁判官を任命するように要請出来る。同裁判所長が一方の国家の国民であったり、以上の機能を遂行出来ない場合には、副所長が必要な任命を行う。副所長が当事国の国民であったり、以上の機能を遂行出来ない場合には、当事国の国民ではない国際裁判所の副所長級の裁判官が任命を行う。

5.仲裁裁判所は、多数決によって決定を下す。そのような決定は、最終的で、拘束力を持つ。各締約当事者は、自分が任命した裁判官と関連する費用と自分の仲裁手続参加による費用を負担する。裁判長の費用と他費用は、両締約当事者が均等に負担する。仲裁裁判所は自体の手続を決定する。

第11条

 この協定は、当事国の当事者が相手国の領域内で行った以下に該当する投資と受益に対して適用される。

(1)大韓民国の投資者に対しては、1948年8月15日以後

(2)中華人民共和国の投資者に対しては、1949年10月1日以後

第12条

1.ある問題がこの協定及び両国が当事者である他の国際協定によって同時に規律される場合、この協定のいかなる内容も一方締約当事者、または相手国の領域内で投資を行った投資者が自分の事件に対してより有利な規定を選択することを妨害しない。

2.当事国が自国の法令、またはその他の特別規定、または契約によって相手国の投資者に付与する待遇がこの協定によって付与される待遇より有利な場合には、より有利な待遇が付与される。

第13条

 当事国の投資者が実質的な利益を持っている第3国の会社は、相手国の領域内で、同相手国と同第3国政府間の投資及び投資保護に関する国際協約がない場合には、次のような待遇が保障される。

<1>第2条第2項、第3条、第5条第1項及び、第4項及び第6項、第6条、第8条及び第11条に規定された事項と関連して、他の第3国の投資者が実質的な利益を持っている第3国の会社が同相手国の領域内で受ける待遇より不利ではない待遇、そして

<2>第2条第2項、第3条、第5条第1項及び、第4項及び第6項、第6条、第8条及び第11条に規定された事項と関連して、同相手国の投資者が実質的な利益を持っている第3国の会社が同相手国の領域内で受ける待遇より不利ではない待遇

第14条

1.この協定の履行を促進するため、両締約当事者は、両締約当事者の代表で構成される共同委員会を設置することに合意する。

2.共同委員会の機能は、特に次のことを含む。 

ア.この協定の履行及び、両国間の投資に関連する事項の検討

イ.外国投資の誘致に関する一方、あるいは両国の法律制度または政策発展と関連してこの協定の運営及び運営に関連する事項に対する協議

ウ.両国政府に対する適切な勧告

3.共同委員会は、一方の締約当事者の要請によりソウルと北京で交代に開催される。

第15条

1992年5月2日署名された「大韓貿易振興公社と中国国際商会間の投資増進と相互保護に関する協定」は、この協定の発効と同時に終了する。

第16条

1.この協定は、署名後各締約当事者が国内法的手続が完了したという通告を交換した日から30日目になる日に発効されて、5年間有効にできる。一方締約当事者が他方締約当事者に少なくともこの協定の終了1年前に、協定終了意思を書面として通報しない限り、この協定は自動的に1年間延長される。

2.この協定の終了日以前に取得された投資及び受益に関して、この協定の第1条と第14条の規定はこの協定の終了日から15年間続いて有効である。

3.この協定は、締約当事者の相互合意によって改正される。

以上の証拠として、正当に権限を委任された下記の署名者はこの協定に署名した。

1992年9月30日北京で、同等に正本の韓国語、中国語及び英語の2部ずつ作成した。解釈上で相違のある場合、英語本が優先する。

大韓民国政府のため、中華人民共和国政府のため

議定書

大韓民国政府と中華人民共和国政府間の投資増進と相互保護に関する協定(以下、「協定」にする)を署名することにおいて、下記の署名者はこの協定の不可分の一部を構成する次の規定に合意する。

1.この協定のいかなる規定も1883年3月20日パリで作成された「産業財産権の保護に関する国際協約」またはそれ以後の同協約の改正された規定、または一方が当事者であるかあるいは当事者になる既存、または今後の国際協定上の知的所有権と関連するいかなる権利や義務に影響を及ぼすこととして解釈されない。

2.この協定の第3条第2項及び第13条(2)の規定の目的上、当事国政府が、公共の目的・国家安保または国家経済の健全な発展のため必要不可欠な場合、相手国の投資者に自国の関係法令に従って、差別待遇を付与することは、「不利な待遇」として見なさず、公共の目的・国家安保または国家経済の健全な発展を理由として取られたそのような差別待遇が特定的に相手国の投資者、または相手国の投資者が持分を所有した合作会社を目標とすることはいけない。

3.この協定の第3条第2項の規定は、当事国の政府が自国の領域内で、外国投資者の活動に関して特別な手続を制定することを妨害しないが、そのような手続は前項で規定された権利の本質を害しないことが保障される。

4.第5条第4項に対して

ア.各締約当事者は、いかなる第3国の投資者に付与されるものより不利ではない待遇を他方の国家の投資者に付与する。

イ.各締約当事者は、自国の投資者に付与することより不利ではないように他方の国家の投資者に付与する待遇に対して、施行されている自国の法律に従って、制限的な例外措置を取ったり、あるいは維持する権利を留保する。

5.この協定第8条第2項の規定は、当事国が国際通貨基金の規定の締約国として持っている、または、持つことが出来る為替制限と関連する権利と義務に影響を及ぼさない。

6.第8条の規定の目的上、「遅滞なく」というのは、送金が送金手続の完了に通常的にかかる期間内で行われるべきであることを意味する。そのような期間は関連する送金申請のある日から始まり、第8条に規定された送金に対しては、6ヶ月を超過しない。

7.この協定の第13条の規定で使用された「実質的な利益」というのは、会社を統裁したり、会社に対する決定的な影響力の行使を可能にする程度の利益を意味する。

以上の証拠として、正当に権限を委任された下記の署名者はこの議定書に署名した。

1992年9月30日北京で、同等に正本の韓国語、中国語及び英語の各2部ずつ作成した。解釈上の相違のある場合、英語本が優先する。

大韓民国政府のために、中華人民共和国政府のために

{<1>は原文ではマル1}