データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大韓民国政府と中華人民共和国政府との税関分野の協力及び相互支援に関する協定

[場所] ソウル
[年月日] 1994年9月16日署名、1995年4月29日発効
[出典] http://www.mofat.go.kr/ko/division/jo_treaty_list.mof?ipage=&b_code=treaty_1&div_m_code=NN,条約1285号
[備考] 翻訳 金淑賢
[全文]

大韓民国政府と中華人民共和国政府(以下、「当事者」とする)は、関税犯罪の予防及び摘発のための措置において最大限の協力をするという両国の希望を確認し、関税犯罪の予防のための努力が両国の税関当局間の協力によって、より効果的になされうることを確信して、両国の税関当局間の友好協力関係が発展することを希望し、1953年12月5日の相互行政支援に関する税関協力委員会議の勧告を考慮して、次のように合意した。

第1条

定義

この協定の目的に沿って、

1.「税関当局」とは、大韓民国の場合には関税庁を、中華人民共和国の場合には、海関総署を意味する。

2.「関税法」とは、両国税関当局により施行される諸般法令を意味する。

3.「犯罪」とは、すべての関税法違反行為あるいは同未遂行為を意味する。

第2条

協定の範囲

両当事者は関連法令に従って、各国税関当局の権限範囲内でこの協定の規定により、

1.犯罪の予防・捜査及び抑制において相互に支援する。そのような支援は、税関当局が関税及び他の税金の算定において協力を要請する場合に提供されるものであり、人物の逮捕・拘留、または財産の押収・差し押さえ、あるいは関税・税金・罰金及び他の金銭の徴収は含まない。

2.要請のある場合、関税法の執行に要する情報の提供について相互に支援する。

3.新しい税関手続の研究・開発・試験及び人員の訓練と交流の分野における協力のため努力する。

4.関税制度・関税技法の向上及び関税行政と執行上の問題解決において調和と統一を期するため努力する。

第3条

秘密遵守の義務

1.この協定に従って、一方の当事者が受理した質疑・情報・文書・その他の交信は、これを提供した当事者の要請がある場合、機密として扱われる。そのような要請の事由は明示されなければならない。

2.この協定に従って、獲得された情報・文書・その他の交信はこれを提供した税関当局の書面同意なしに、この協定に明示されてない目的のために使用することはできない。

第4条

支援提供義務の免除

1.要請を受けた当事者は、要請に応じることが自国の主権・公共秩序・安全保障または他の重要な利益を害する可能性があったり、自国領域内での産業・商業・職業上の秘密を侵害する可能性があると判断する場合、支援の提供を全部または一部拒否し、一定の条件や要求の充足下でそのような要請に応じることを表明することができる。

2.要請を受けた当事者は支援要請に応じられない場合、要請をした当事者に遅滞なく支援を拒否した理由を通報する。

3.一方の税関当局自体が要請された場合にも、提供出来ない支援を他方の税関当局が要請する場合には、支援を要請する税関当局はこのような事実を要請書に明示する。そのような要請に応じるか否かは要請を受けた税関当局の裁量に属する。

第5条

支援要請の形式と内容

1.この協定による要請は英語で書面通報され、そのような要請の履行に必要な文書が添付される。緊急な状況の場合、口頭で要請することができるが、遅滞なく書面として確認されなければならない。

2.この条の1項による要請は次の情報を含む。

ア.要請した機関の名称

イ.要請が行われた事件手続の性格

ウ.要請の目的及び事由

エ.把握できる場合、要請と関連する当事者の姓名及び住所

オ.要請の内容及び関税法と関連する法的問題の概要

第6条

費用

この協定による要請の履行によって、要請を受けた当事者に発生する費用は、別に合意されない限り、要請を受けた当事者が負担する。

第7条

交信経路

支援は両税関当局の最高責任者が指名した公務員の間での直接の交信を通じて提供される。

第8条

情報交換

1.両当事者は自発的にまたは要請によって遅滞なく次の事項と関連する取得可能な情報を相互に通報する。

ア.他方の当事者の経済・公衆衛生及び安全または他の重要な利益の実質的な損害と関連する犯罪をもたらす行為

イ.犯罪の抑制に役に立つ施行技法、特に犯罪の撲滅に有用であることが判明した技術の支援

ウ.犯罪に使用される新しい手法

エ.新しい施行技法の適用から得られる観察結果及び発見事実

オ.旅客及び貨物の通関のための技法と改善された方法

2.両当事者は要請によって遅滞なく次の事項と関連する取得可能な情報を相互に通報する。

ア.一方の当事者の領土から他方の当事者の領土へと輸出された物品と同物品の通関に使用された税関手続

イ.当事者領土間の人物・物品・船舶・車輌及び航空機の移動

ウ.通関手続きの電算管理

エ.税関当局による関税・他の税金・料金及び賦課金の徴収。特に税関目的の商品の価格評価に役に立つ情報

オ.輸入と輸出の禁止及び制限の執行

カ.一方または双方の当事者によって締結された他の協定によって規制されない原産地規定の適用

第9条

運送手段・物品及び人物に対する特別監視

一方の当事者の税関当局は他方の当事者の税関当局の要請によって、権限と能力の範囲内で次の事項に対して特別監視を行う。

1.要請をした当事者の関税法に対する犯罪行為に使用されたと通知されたり、そのような疑いを持たれている特定の運送手段

2.要請をした当事者が自国領域へ大量に密輸入されたり、自国領域から大量に密輸出されたと疑う物品

3.要請をした当事者の関税法に対する犯罪行為に関連したと通知された人物または要請をした当事者によってそのような犯罪行為に関与したという疑いを持たれている人物

第10条

技術支援

両当事者の税関当局は次の事項を含む税関問題について技術支援を相互に提供する。

1.両税関当局の税関技法に対する理解増進のため、相互に有益な場合、税関公務員及び専門家の交流

2.税関公務員の専門技術開発における訓練及び支援

3.関税法及び税関手続と関連した専門的・科学的・技術的資料の交換

第11条

適用範囲

この協定は大韓民国の関税領域と中華人民共和国の関税領域に適用される。

第12条

発効及び終了

1.両当事者は外交覚書の交換を通じて、発効のために必要なすべての国内手続が完了したことを相互に通報する。この協定は最後の通報の受理日から30日後に発効する。

2.この協定は無期限に有効である。一方の当事者はいつでも外交経路を通じて他方の当事者に書面で通報することによって、この協定の終了を要求することができる。この協定は一方の当事者が終了の通報を受理した日から6ヶ月後に終了される。

以上の証拠として、下記の署名者は各々の政府から正当に権限を委任されて、この協定に署名した。

1994年9月16日ソウルでひとしく正文である韓国語、中国語及び英語で各2部ずつ作成した。解釈上に相違がある場合、英語の本文が優先される。

大韓民国政府のため

署名:李桓均(Lee Hwan−kyun)(関税庁長)

中華人民共和国政府のため

署名:Qian Guanlin(海関総署長)