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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大韓民国政府と中華人民共和国政府との原子力の平和的利用に関する協力のための協定

[場所] ソウル
[年月日] 1994年10月31日署名、1995年2月11日発効
[出典] http://www.mofat.go.kr/ko/division/jo_treaty_list.mof?ipage=&b_code=treaty_1&div_m_code=NN,条約1269号
[備考] 翻訳 金淑賢
[全文]

大韓民国政府と中華人民共和国政府(以下、「当事者」とする)は、両国間の既存の友好関係の持続と拡大を希望し、両国が原子力の平和的利用に付与している重要性を考慮して、国際原子力機関(以下、「機関」とする)の枠組のみならず、両国間においても協力を拡大・強化しようとする両国の意思を確認し、両国が機関の加盟国であることを考慮し、かつ両国が1968年7月1日、ロンドン、モスクワ及びワシントンで採択された核兵器不拡散条約(以下、「NPT」とする)の締約国であることも考慮して、原子力分野における両国間の協力がすべて平和的利用のためであるという両国の誓約を強調しつつ、次のように合意した。

第1条

当事者は平等と互恵に基づき、各国で施行されている適用可能な国内法令及び各当事者の国際的な義務と誓約に従って、原子力の平和的利用に関する協力を増進する。

第2条

この協定による当事者間の協力分野は次の事項を含む。

ア.原子力の平和的利用に関する基礎及び応用研究、開発

イ.原子力発電所と研究用原子炉の研究、設計、建設、稼動及び維持

ウ.原子力発電所と研究用原子炉で使用される核燃料の生産及び供給

エ.中・低準位放射性廃棄物の管理、貯蔵及び処分

オ.放射性同位元素の生産及び産業、農業、医学分野での利用

カ.核の安全、放射線防護及び環境防護

キ.核物質統制及び物理的防護

ク.両当事者が合意する他の協力分野

第3条

この協定第2条による協力は次の形態で実行される。

ア.科学技術人員の交換及び訓練

イ.科学技術情報及び資料の交換

ウ.シンポジウム及びセミナーの開催

エ.原料供給物質、低濃縮ウラニウム、物質、装備及び施設の提供

オ.技術諮問及び用役の提供

カ.相互に関心を持つ分野における共同研究

キ.科学分野の研究開発に関する特定の研究及び事業の推進のための共同実務作業組織の結成

ク.両当事者が合意する他の形態での協力

第4条

1.この協定による協力を容易にするため当事者は、適当な場合、当事者間または各々の管轄領域内で許可された主体間における、特定の協力計画と事業の条件、履行手続、財政関連合意事項及び他の適当な事項を定めた施行約定の締結を奨励する。そのような施行約定は各当事者の法令によって締結される。

2.この協定の目的上「主体」とは、個人、法人、組合、商社、協会、企業、事業団、公共または民間機関、団体、政府機関または政府企業を意味しており、この協定の当事者は含まれない。

第5条

1.情報移転は第4条で言及された特定の約定に依拠する。このような移転は次の原則に従う。

ア.一方の当事者の主体が情報交換以前または交換時、同情報の第3者への移転を禁止または制限することを事前に書面で通報しない場合、他方の当事者の主体は自国領土内の他主体から受け取った情報を移転することができる。

イ. 一方の当事者の主体が情報交換以前または交換時、同情報の第3者への移転を禁止または制限することを事前に書面で通報する場合、他方の当事者の主体は交換された情報または共同研究開発の結果から取得した情報を、上記の一方の当事者の事前の書面同意なしに公表したり、この協定に従って同情報を取得する資格のない第3者に移転しないことを保障する。

2.当事者は交換された情報の信頼性及び適用可能性の範囲を相互に通報するように協力者に促す。当事者がこの協定による情報の移転に関与したという事実は、同情報の正確性または適用可能性に対する各当事者の責任の根拠を構成しない。

第6条

1.この協定による協力は全てが平和的目的のみに遂行される。

2.この協定により取得された核物質、物質、装備、技術及び施設と副次的に回収または生成される特殊な分裂性物質は、核爆発装置の開発、製造またはいかなる軍事的目的のためにも使用されない。

3.この条第2項の履行を保障するために当事者は、両国各々の条件に従って、この協定により取得された核物質、物質、装備、技術、施設及び副次的に回収または生成される特殊分裂性物質に対し、各々の管轄領域内における安全措置の適用を機関に要請する。

4.「核物質」、「物質」、「装備」、「技術」、「施設」、及び「副次的に回収または生成された特殊分裂性物質」の定義はこの協定附属書の「ア」と「イ」で規定する。

第7条

1.当事者は、各々の管轄領域内でこの協定第6条で言及された品目が正当に認可された主体にのみ保有されるよう保障するため、全ての適切な予防措置を取る。

2.当事者は、各々も領土内でこの協定による核物質、物質、装備、技術、施設及び副次的に回収または生成される特殊分裂性物質の安全を保障するため、必要な措置を取る。

3.当事者は核物質に対して、附属書「ア」の(キ)「機関の勧告」で規定されている物理的防護レベルを適用する。

第8条

1.この協定の第6条で言及された品目は、両当事者間の事前協議を経た後の合意によってのみ第3国へ移転される。

2.当事者はいかなる移転の場合においても、第3国が最小限次の条件を遵守することを保障する。

ア.ただ平和的・非爆発目的にのみ使用すること。

イ.移転される品目に対して機関の安全措置を適用すること。

ウ.この協定当事者の事前同意なしに、他国家へ移転しないこと。

エ.この協定第7条で規定された適切な物理的防護措置を適用すること。

第9条

両当事者の代表は、この協定の運用を検討し、この協定の履行から発生する問題を論議するため、一方の当事者の要請により、会合をもって協議する。

第10条

当事者はこの協定の履行から発生する問題を互いに協議して、この協定、特に第5,6,7,8条の規定の遵守を保障するための、適切な措置を取る。両当事者間の合意を通じて、機関をこのような協議に参与するよう招請することができる。

第11条

一方の当事者が締約国である国際条約に従って、同当事者が負担する義務は、この協定によって影響されない。しかし、当事者はそのような義務がこの協定の正常な履行を妨害しないように努力する。

第12条

この協定は、協定発効に必要な両国の国内法上の手続が完了されたことを確認する外交公文の交換日から30日後に発効する。この協定は30年間有効であり、一方の当事者がこの協定の終了最短6ヶ月以前にこの協定を終了させる意思を他方の当事者に通報しない限り、5年ずつ自動的に延長される。

第13条

この協定は両当事者間の書面合意によっていつでも改正することができる。このような改正はこの協定第12条で規定された手続に従って発効する。

第14条

この協定が終了した場合においても、この協定第4条で言及された約定は一方の当事者が終了を通報しない限り有効である。いかなる場合でも、第5,6,7,8,10,11条の規定は、この協定による核物質、物質、装備、技術及び施設に引き続き適用される。

第15条

第6条で言及された附属書「ア」と「イ」はこの協定の不可分の一部を構成する。

以上の証拠として、下記の署名者は、各々の政府から正当に権限を委任されて、この協定に署名した。

1994年10月31日ソウルでひとしく正文である韓国語、中国語及び英語で各2部ずつ作成した。解釈上相違がある場会、英語の本文が優先される。

大韓民国政府のため

署名:韓昇洲(Han Sung−joo)(外務部長官)

中華人民共和国政府のため

署名:陳錦華(Chen Jinhua)(国家発展計画委員会主任)

附属書ア

定義

(ア)「核物質」は、機関憲章第20条で規定された「原料供給物質」と「特殊分裂性物質」を意味する。「原料供給物質」と「特殊分裂性物質」として見なされる物質の目録を改正する、機関憲章第20条に基づく機関理事会の全ての決定は、この協定の両当事者がそのような改正を受諾することを書面で通報すれば即座に、この協定下で効力を持つ。

(イ)「物質」は、附属書イの第2章で規定されたものを含め、原子炉で使用される非核物質を意味する。

(ウ)「装備」は、附属書イの第1章で規定されたものを含め、機械、設備、計器及び主要部品を意味する。

(エ)「技術」は、提供側の当事者が移転する前に、受入側の当事者との協議後、原子力の平和的利用を目的とする施設の設計、建設、稼動及び維持に重要なものとして指定した技術図面、原板と印刷物、記録、設計資料及び技術・稼動手続書を含む物理的な形をもつ技術的資料を意味する。ただし、出版パンフレット、定期刊行物または配布に対する制限なしで、国際的に通用することなど、一般人の利用可能な資料は除外する。

(オ)「施設」は、この附属書アの(ア)、(イ)、(エ)、及び(カ)で言及された核物質と副次的に回収また生成される特殊分裂性物質、物質及び装備を使用・混合・貯蔵する設備、建物及び構造物を意味する。

(カ)「副次的に回収または生成される特殊分裂性物質」は、この協定によって提供された核物質、物質、装備または施設を使用して、一段階以上を経て抽出される特殊分裂物質を意味する。

(キ)物理的保護と関連する「機関の勧告」は、「核物質の物理的保護」と名付けられたINFCIRC/225/Rev.3、またはこれを改正・代替する後続文書を意味する。物理的保護に関する勧告の改正は、両当事者がそのような改正受諾を書面で通報すれば即座に、この協定下で効力を持つ。

附属書イ

第1章

1.原子炉

制御された核分裂の連鎖反応を自ら維持する運転能力を有する原子炉。ただし、ゼロ出力炉は除外する。ここで、ゼロ出力炉は、設計上のプルトニウムの最大生産能力が年間100グラムを超過しない炉を指す。

2.原子炉圧力容器

上記第1項で規定された原子炉の炉心が入るように特別に設計または製作され、1次冷却材の運転圧力に耐えられる金属容器の完成品またはその重要な工場製作部品。

3.原子炉燃料の交換機

上記第1項で規定された原子炉に燃料を出し入れするために特別に設計され製作された操作装置であり、燃料装填運転の時に燃料交換が可能なもの、または通常核燃料の直接の観察あるいは燃料への接近が不可能な時など燃料非装填運転の時に、燃料交換を可能にする技術的に、高さの位置決定技術が使用できるもの。

4.原子炉制御封

上記第1項で規定された原子炉における核反応率制御のため、特別に設計または製作された封。

5.原子炉圧力管

50気圧以上の運転圧力で、上記第1項で規定された原子炉に核燃料及び1次冷却材を格納するように特別に設計または製作された管。

6.ジルコニウム管

年間500キログラム以上供給される管または、管集合体形のジルコニウム金属及び合金を、上記第1項で規定された原子炉で使用するため、特別に設計あるいは製作され、同時にハフニウムのジルコニウムに対する重量比率が1:500以下のもの。

7.1次冷却材用ポンプ

上記第1項で規定された原子炉で使用される1次冷却材を循環させるため、特別に設計または製作されたポンプ。

8.核燃料の制作設備

第2章

9.重水素及び重水

上記第1項で規定された原子炉で使用される重水素、及び重水対水素の比率が1:5,000を超過するすべての重水素化合物で、量的には12カ月内で重水素原子量が200キログラムを超過するもの。

10.原子力級の黒鉛

硼素換算5ppmよりも高い純度を持ち、1立方センチメートル当たり1,50グラムを超過する密度を持つ黒鉛で、量的には12カ月内で30メタトンを超過するもの。