[文書名] 大韓民国政府と中華人民共和国政府との漁業に関する協定
大韓民国政府と中華人民共和国政府は、
1982年12月10日付「海洋法に関する国際連合条約」の関連規定に基づいて、共通関心事項である海洋生物資源の保存と合理的な利用を求めて、海上における正常な操業秩序を維持し、漁業分野での相互協力を強化・増進するために、友好的な交渉を通じて、次のように合意した。
第1条
この協定が適用される水域(以下、「協定水域」とする)は、大韓民国の排他的経済水域と中華人民共和国の排他的水域とする。
第2条
1.各締約当事者は、この協定と自国の関係法令の規定に基づいて、自国の排他的経済水域で、他方の締約当事者の国民及び漁船が漁業活動をすることを許可する。
2.各締約当事者の権限ある当局は、この協定の附属書1及び自国の関係法令の規定に従って、他方の締約当事者の国民及び漁船に対して、入漁許可証を発給する。
第3条
1.各締約当事者は、自国の排他的経済水域で他方の締約当事者の国民及び漁船に許容する漁獲可能魚種・漁獲割り当て量・操業期間・操業区域及び他の操業条件を毎年決定し、これを他方の締約当事者に通報する。
2.各締約当事者は、第1項で定めた事項を決定する際、自国の排他的経済水域内の海洋生物資源の状態、自国の漁獲能力、伝統的漁業活動、相互入漁の状況及び他の関連要素を考慮しなければならず、第13条の規定により設置される韓中漁業共同委員会の協議結果を尊重しなければならない。
第4条
1.一方の締約当事者の国民及び漁船は、他方の締約当事者の排他的経済水域で漁業活動を行う際、この協定と他方の締約当事者の関係法令の規定を遵守しなければならない。
2.各締約当事者は、自国の国民及び漁船が他方の締約当事者の排他的経済水域で漁業活動を行う際、他方の締約当事者の関係法令に規定された海洋生物資源の保存措置及び他の条件とこの協定の規定を守るよう必要な措置を取らなければならない。
3.各締約当事者は自国の関係法令に規定された海洋生物資源の保存措置と他の条件を他方の締約当事者に直ちに通報しなければならない。
第5条
1.各締約当事者は、自国の関係法令に規定された海洋生物資源の保存措置と他の条件を他方の締約当事者の国民及び漁船が守るよう、国際法に従って自国の排他的経済水域で必要な措置を取ることができる。
2.拿捕されたり、抑留された漁船及び乗務員は、適切な保証金や他の担保を提供した後には、直ちに釈放されなければならない。
3.一方の締約当事者は、他方の締約当事者の漁船及び乗務員を拿捕したり、抑留した場合には、取られた措置と、その後に科された処罰に関して、他方の締約当事者に適切な経路を通じて迅速に通報しなければならない。
第6条
第2条あるいは第5条の規定は、協定水域のうち、第7条・第8条及び第9条で指定した水域を除外した部分に対して適用される。
第7条
1.次の各点を順次直線で連結した線によって囲まれる水域(以下、「暫定措置水域」とする)に対しては、第2項及び第3項の規定を適用する。
ア.北緯37度00分、東経123度40分の点(A1)
イ.北緯36度22分30秒、東経123度10分52秒の点(A2)
ウ.北緯35度30分、東経122度11分54秒の点(A3)
エ.北緯35度30分、東経122度01分54秒の点(A4)
オ.北緯34度00分、東経122度01分54秒の点(A5)
カ.北緯34度00分、東経122度11分54秒の点(A6)
キ.北緯33度20分、東経122度41分の点(A7)
ク.北緯32度20分、東経123度45分の点(A8)
ケ.北緯32度11分、東経123度49分30秒の点(A9)
コ.北緯32度11分、東経125度25分の点(A10)
サ.北緯33度20分、東経124度08分の点、(A11)
シ.北緯34度00分、東経124度07分30秒の点、(A12)
ス.北緯35度00分、東経124度07分30秒の点、(A13)
セ.北緯35度30分、東経124度30分の点、(A14)
ソ.北緯36度45分、東経124度30分の点(A15)
タ.北緯37度00分、東経124度20分の点(A16)
チ.北緯37度00分、東経123度40分の点、(A17)
2.両締約当事者は、海洋生物資源の保存と合理的な利用のため、第13条の規定により設置された韓中漁業共同委員会の決定により、暫定措置水域において共同で保存措置及び量的管理措置を取らなければならない。
3.各締約当事者は、暫定措置水域で漁業活動をする自国の国民及び漁船に対して、管理及び他の必要な措置を取り、他方の締約当事者の国民及び漁船に対しては、管理及び他の措置は取らない。一方の締約当事者が、他方の締約当事者の国民及び漁船が、韓中漁業共同委員会の決定を違反をしていることを発見した場合、その事実に対して当該国民及び漁船の注意を喚起することができ、その事実及び関連状況を他方の締約当事者に通報することができる。他方の締約当事者はその通報を尊重しなければならず、必要な措置を取る場合、その結果を相手に通報する。
第8条
1.この協定が発効した日から4年間、次の(1)及び(2)の各点を順次直線で連結する線によって囲まれる水域(以下、「過渡水域」とする)に対しては、第2項あるいは第4項の規定を適用する。
(1)韓国側の過渡水域の座標
ア.北緯35度30分、東経124度30分の点(K1)
イ.北緯35度00分、東経124度07分30秒の点(K2)
ウ.北緯34度00分、東経124度00分30秒の点(K3)
エ.北緯33度20分、東経124度08分の点(K4)
オ.北緯32度11分、東経125度25分の点(K5)
カ.北緯32度11分、東経126度45分の点(K6)
キ.北緯32度40分、東経127度00分の点(K7)
ク.北緯32度24分30秒、東経126度17分の点(K8)
ケ.北緯32度29分、東経125度57分30秒の点(K9)
コ.北緯33度20分、東経125度28分の点(K100)
サ.北緯34度00分、東経124度35分の点(K111)
シ.北緯34度00分、東経124度35分の点(K12)
ス.北緯35度30分、東経124度48分の点(K13)
セ.北緯35度30分、東経124度30分の点(K14)
(2)中国側の過渡水域の座標
ア.北緯35度30分、東経121度55分の点(C1)
イ.北緯35度00分、東経121度30分の点(C2)
ウ.北緯34度00分、東経121度30分の点(C3)
エ.北緯33度20分、東経122度00分の点(C4)
オ.北緯31度50分、東経123度00分の点(C5)
カ.北緯31度50分、東経124度00分の点(C6)
キ.北緯32度20分、東経124度45分の点(C7)
ク.北緯33度20分、東経122度41分の点(C8)
ケ.北緯34度00分、東経122度11分54秒の点(C9)
コ.北緯34度00分、東経122度01分54秒の点(C10)
サ.北緯35度30分、東経122度01分54秒の点(C11)
シ.北緯35度30分、東経121度55分の点(C12)
2.各締約当事者は、過渡水域において、漸次に排他的経済水域制度を実施するために適切な措置を取らねばならず、他方の締約当事者側の過渡水域で操業をする自国の国民及び漁船の漁業活動を漸次に調整・減縮して、均衡を保つよう努力する。
3.各締約当事者は、過渡水域で、第7条第2項及び第3項と同一の保存及び管理措置を取らねばならず、また共同乗船・停船・海上臨検などを含む共同の監督臨検の措置を取ることができる。
4.両締約当事者は、各々他方の締約当事者側の過渡水域で操業する自国漁船に許可証を発給し、またその漁船の名簿を相互に交換する。
5.この協定が発効した日から4年が経過した後には、過渡水域に対して第2条、あるいは第5条の規定が適用される。
第9条
両締約当事者は、第7条第1項で指定された暫定措置水域の北端に位置する緯度線以北の一部水域と、第7条第1項に指定された暫定措置水域及び第8条第1項に指定された過渡水域以南の一部水域では、両締約当事者間で別の合意がない限り、現行の漁業活動を維持し、漁業に関する自国の法令を他方の締約当事者の国民と漁船に対して適用しない。
第10条
各締約当事者は航行及び操業の安全を確保して、海上での正常な操業秩序を維持し、海上事故を円滑に迅速に処理するために、自国の国民及び漁船に対して指導、及び他の必要な措置を取らなければならない。
第11条
1.一方の締約当事者の国民及び漁船が他方の締約当事者の沿岸で、海難や他の緊急事態に遭遇した場合、他方の締約当事者は、可能な限り救助及び保護を提供するとともに、これに関する状況を一方の締約当事者の関係当局に迅速に通報しなければならない。
2.一方の締約当事者の国民及び漁船は、悪天候や他の緊急事態によって避難する必要がある場合には、この協定の附属書2の規定に従って、他方の締約当事者の関係当局に連絡を取り、他方の締約当事者の港などに避難することができる。当該国民及び漁船は、他方の締約当事者の関係法令を遵守して、関係当局の指示に従わなければならない。
第12条
両締約当事者は、海洋生物資源の保存と合理的な利用に関する科学的研究(必要な資料の交換を含む)のため、協力を強化しなければならない。
第13条
1.両締約当事者は、この協定の実施をより容易にするために、韓中漁業共同委員会(以下、「委員会」とする)を設置する。委員会は、両締約当事者が各々任命する1人の代表及び若干名の委員から構成され、必要な場合、専門小委員会を設置することができる。
2.委員会の任務は次の通りである。
(1)以下の事項を協議して、両締約当事者の政府に勧告する。
ア.第3条の規定により、他方の締約当事者の国民及び漁船に許容する漁獲可能魚種・漁獲割り当て量など他の具体的な操業条件に関する事項
イ.操業秩序の維持に関する事項
ウ.海洋生物資源の状態と保存に関する事項
エ.両国間の漁業協力に関する事項
(2)必要な場合、この協定の附属書の改正に関して、両締約当事者の政府に勧告することができる。
(3)第7条及び第8条の規定に関する事項を協議して決定する。
(4)この協定の執行状況及びこの協定と関連する他の事項を検討する。
3.委員会のすべての勧告と決定は、両締約当事者の代表間の合意を通してのみなされる。
4.両締約当事者の政府は、第2項(1)の勧告を尊重し、第2項(3)の決定に従って、必要な措置を取らねばならない。
5.委員会は大韓民国と中華人民共和国で交互に毎年1回ずつ会議を開催する。必要な場合、両締約当事者の合意を経て、臨時会議を開催することができる。
第14条
この協定のいかなる規定も、海洋法上の諸般事案に対する各締約当事者の立場を阻害するものとして解釈されてはいけない。
第15条
この協定の附属書は、この協定の不可分の一部を構成する。
第16条
1.この協定は、両締約当事者が各々国内法上の手続を完了した後、これを通報する公文書を交換する日からその効力を発生する。
2.この協定は5年間有効であり、その後は第3項の規定に従い、終了するまでの間引き続き有効である。
3.一方の締約当事者は、他方の締約当事者に1年前に書面で通報することで、最初の5年間の満了の際、あるいはそれ以後いつでも、この協定を終了させることができる。
以上の証拠として以下の代表は各々の政府から正当に権限を委任されて、この協定に署名した。
2000年8月3日北京で署名して、ひとしく正文である韓国語及び中国語の各2部を作成した。
大韓民国政府のため、中華人民共和国政府のため
附属書1
各締約当事者は、この協定第2条第2項の規定により、入漁許可に関する以下の措置を取る。
1.各締約当事者の権限ある当局は、他方の締約当事者の権限ある当局から、この協定第3条に定めた決定を書面で通報された後、他方の締約当事者の権限ある当局に、他方の締約当事者の排他的経済水域で漁業活動をしようとする自国の国民と漁船に対する入漁許可証の発給を申請する。他方の締約当事者の権限ある当局は、許可証の発給の際、適切な料金を徴収することができる。
2.各締約当事者の権限ある当局は、入漁に関する手続規定(許可証の申請と発給、漁獲量に関する統計資料の提出、漁船の表示及び操業日誌の記載など)を他方の締約当事者の権限ある当局に書面で通報しなければならない。
3.許可を受けた漁船は、許可証を操舵室の見やすい場所に掲げ、他方の締約当事者が規定した漁船表示を明確に表示されなかればならない。
附属書2
この協定第11条第2項の規定は、以下の規定に従って実施する。
1.大韓民国政府が指定する連絡所は海洋警察署とする。中華人民共和国政府が指定する連絡所は、関連港湾を管轄する港監督機関とする。
2.具体的な連絡方法については、この協定第13条の規定によって設置される韓中漁業共同委員会で相互に通報する。
3.各締約当事者の漁船が他方の締約当事者が指定する連絡所に連絡する内容な次の通りである。
船舶名、呼び出し信号、現在位置(緯度、経度)、船籍港、総トン数、全長、船長の名前、船員の数、避難の理由、避難要請目的地、到着予定時刻及び通信連絡方法