データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2010年度「中国の国防」白書(全文)

[場所] 北京
[年月日] 2011年3月
[出典] 中華人民共和国国務院報道弁公室
[備考] 
[全文]

目次

前書き

一、安全情勢

二、国防政策

三、人民解放軍の現代化建設

四、武装力の運用

五、国防動員と国防予備兵力の建設

六、軍事面の法制

七、国防科学技術産業

八、国防費

九、軍事的な相互信頼の醸成

十、軍備抑制と軍縮

前書き

 21世紀の初めの10年間に、国際社会は開放と協力の中で発展をとげ、危機と変革の中で前進してきた。ともに発展のチャンスを享受しあい、さまざまな挑戦にともに対応することは、すでに各国の広はんな共通認識となっている。力を合わせて困難を克服し、互恵・ウィンウィンの関係を築き上げることは、人類がともに繁栄し、発展を実現するために、必ず通らなければならない道である。

 中国は、すでに新しい歴史の起点に立っており、中国と世界の前途と運命は、今まで以上に密接不可分な関係にある。共同のチャンスと挑戦に向き合う上で、中国は、相互信頼、互恵、平等、協力の新しい安全観を堅持し、中国国民の根本的な利益と世界の人びとの共同の利益、そして中国の発展と世界の発展を結びつけている。また、中国の安全と世界の平和を結びつけ、中国みずからの平和的発展によって、持続的な平和と共同繁栄、調和のとれた世界の建設を推し進めていくことに努めている。

 21世紀の次の10年間には、中国が国を発展させるための重要な戦略的チャンスを引き続きとらえ、科学的発展観を深く貫き通し、平和的な発展の道への歩みを堅持し、独立自主の平和的外交政策と防御的国防政策を実施し、経済建設と国防建設を統一して企画し、小康社会(ややゆとりのある社会)を全面的に建設する過程で、富国と強兵を同時に実現させることにしている。

一、安全情勢

 現在、国際情勢には、新たな深刻かつ複雑な変化が現れている。経済のグローバル化、世界の多極化、社会の情報化の流れは不可逆であり、平和・発展・協力という時代の流れを阻むことはできない。しかし、国際戦略における競争や矛盾も発展してきており、グローバルな挑戦がさらに突出し、安全への脅威の総合性、複雑性、多変性は日増しに顕在化している。

 世界は、総合的な平和、安定という基本的な態勢を保っている。国際社会が手を携えて、国際金融危機に対応することで、初歩的な成果が現れた。各国は、発展戦略とモデルの調整を急いでおり、全力をあげて新たな経済成長スポットを創出し、科学技術のイノベーションは、新たなブレークスルーをもたらし、経済のグローバル化に新しい発展がみられるようになった。世界の力関係には新たな態勢が現れ、新興大国と発展途上国の経済の実力、国際的地位と影響力は、いちじるしく増強してきており、世界の多極化の見通しは、さらに明確になってきた。国際的なシステムの改革は、大勢の赴くところとなり、世界的な経済・金融対策メカニズムの構築がちくじ推し進められ、20ヵ国・地域(G20)の役割を増強している。また、国連などの国際政治や安全システムの改革が注目されている。国際関係には大きな調整がみられ、国と国の間における経済の相互依存は深まり、直面する共通の挑戦が多くなり、交流、協調、協力は大国関係の主流となっている。平和を擁護し、戦争を制約する要素がたえず増加し、人類の前途と運命は全体的に見て光明に満ちている。

 国際安全の情勢はより複雑になってきている。国際的秩序、総合的国力、地政学的政治などをめぐる国際戦略の競争は、日増しに激しくなってきており、先進国と発展途上国、従来の大国と新興大国の間の矛盾が時には顕在化し、局地的な衝突や地域的なホットスポットが次々と現れている。一部の国は、政治、経済、民族、宗教などの矛盾による動揺にしばしば巻き込まれており、世界はまだ平和であるとはいえない。また、世界的な金融危機を引き起こした根深い矛盾と構造の問題は、いまだ解決されておらず、世界経済の回復の不安定さ、アンバランスさが突出している。テロリズム、経済安全、気候変動、核拡散、情報安全、自然災害、公共衛生安全、多国籍犯罪などグローバルな挑戦は、各国の安全に対する脅威として日増しに拡大してきている。伝統的安全の脅威と非伝統的安全の脅威が混在し、国内の安全問題と国際安全問題が相互に作用し合っており、伝統的な安全観とそのメカニズムでは、当面の世界におけるさまざまな安全面での脅威と挑戦に、効果的に対応することは難しくなっている。

 世界の軍事面での競争も依然として激しくなっている。主要国は安全と軍事の戦略調整を急いでおり、軍事改革の足取りを速め、軍事面でのハイテク・新技術の開発に力を入れている。一部の大国は、宇宙空間、インターネットや極地における戦略を作成しており、「通常即応グローバルストライク」(PGS)という手段を発展させ、ミサイル迎撃システムの整備を加速させ、コンピューターネットワーク作戦の能力を増強させ、新たな戦略的要害の高地を占有することに努めている。一部の発展途上国は、軍隊強化の勢いを保ち、軍隊の近代化を推し進めている。国際的な軍備抑制のプロセスはいくらか推進されたが、大量破壊兵器の拡散防止情勢は錯綜し、複雑な様相を呈しており、国際的な拡散防止のメカニズムの維持と強化は任重くして、道遠しである。 アジア・太平洋地域の安全情勢は全般的に安定している。アジアは率先して経済回復を実現し、全般的に発展の態勢をさらに強固にしている。アジア各国は、経済のグローバル化と地域経済一体化のチャンスをとらえ、経済の発展と地域の安定を促進させることに尽力し、利益共同体と運命共同体であるという意識を強めている。マルチラテラリズム(多国間主義)と開放的なリージョナリズム(地域主義)を堅持し、域内、域外の国との二国間または多国間協力を積極的に発展させ、地域的な特色の備わった経済と安全協力システムの構築に努めている。上海協力機構(SCO)は、地域の安定と発展を促進する上での影響力を増強し、東南アジア諸国連合(アセアン)共同体の構築もちくじ推し進められている。中国とアセアンとの協力、アセアンと中日韓との協力、中日韓などの協力は、たえず深化し、アジア・太平洋経済協力会議(APEC)は、ひきつづき発展をとげている。

 アジア・太平洋地域の安全情勢の複雑性、多変性が顕在化してきている。地域のホットスポットは長年解決されておらず、朝鮮半島の情勢はしばしば緊迫し、アフガニスタンの安全情勢は依然として厳しく、一部の国の政局が動揺している。民族と宗教の矛盾が突出し、領土と海洋権益をめぐる紛争が時にはエスカレートし、テロリズム、分裂主義、極端主義の活動がはびこっている。アジア・太平洋地域の戦略的枠組は、大幅な調整が考えられており、関連する大国は、戦略的資金投入を増加させている。アメリカは、アジア・太平洋地域における軍事同盟システムを強化し、地域の安全問題への介入を強めている。

 中国は依然として、発展の重要な戦略的チャンスの中にあり、安全環境は総じて有利である。世界的金融危機の衝撃に効果的に対応し、経済の、安定した比較的迅速な発展を保ち、国の安全と社会の安定を積極的に維持し、総合的な国力は新たな段階へと引き上げられている。従来の大国と新興大国との協調、協力を強化し、周辺諸国との善隣友好と実務的協力を深め、広はんな発展途上国との互恵協力を拡大させ、ともにグローバルな挑戦に対応する中で、独自の役割を発揮していく。中国政府は、新しい情勢のもとで、両岸関係の平和的な発展の方針・政策を制定、実施しており、台湾海峡情勢の平和安定の維持を促進し、両岸関係は重要かつ積極的な進展をとげた。両岸双方は「台湾独立」に反対し、「九二共通認識」という基盤を踏まえて、双方の政治的な相互信頼の増強を堅持し、話し合いを行い、両岸の直接的な双方向の「三通(通商、通航、通信)」を全面的に実現させ、経済や金融面での協力を推進するなど、一連の取り決めで合意した。両岸関係の平和的な発展は、両岸の同胞の利益と念願にかなったもので、国際社会においてもあまねく歓迎されている。

 中国が直面する安全面での挑戦は、これまでにも増して多次元、かつ複雑になってきている。中国は広い国土と海域を持ち、また今は、小康社会を全面的に建設するカギとなる時期にあるため、国の安全を守る任務は重い。「台湾独立」分裂勢力およびその分裂活動は、依然として両岸関係の平和的発展の最大の障壁と脅威になっている。両岸関係の発展はさまざまな複雑な要素による制約を受けている。「東トルキスタン」「チベット独立」分裂勢力は、国の安全と社会の安定に大きな危害をもたらしている。国の領土主権、海洋権益を守るための圧力が増大し、テロリズムの脅威が現実的に存在し、エネルギー資源、金融、情報、自然災害など非伝統的な安全問題が増えている。また、外部からの不信感、妨害やけん制が増えている。アメリカは、中米の三つの共同コミュニケの原則に違反し、台湾に武器を売却し続けており、中米関係と両岸関係の平和的発展がひどく損なわれている。 

 めまぐるしく変わる複雑な安全情勢に直面してはいるが、中国は、平和、発展、協力の旗じるしを高く掲げ、総合的な安全、協調的安全、共同安全の理念を堅持し、相互信頼・互恵・平等・協力の新しい安全観を堅持し、全面的に国の政治、経済、軍事、社会、情報など各方面の安全を守り、世界の各国とともに、平和と安定、平等と相互信頼、協力・ウィンウィンの国際的な安全環境をつくることに努めている。

二、国防政策

 中国は防御的な国防政策を実施している。中国の武装力は、憲法と法律に基づき、対外的には侵略に抵抗し、祖国を守り、国内においては、社会の大局的な安定を維持し、国民が平和的な環境で働くことを守る、という神聖な責務を担っている。国の安全と発展の利益に見合った強固な国防と強大な軍隊の建設は、中国の現代化建設のための戦略的な任務であり、中国の各民族の人びとの共同の事業でもある。

 中国の発展の道、根本的な任務、対外政策と歴史、文化の伝統は、中国が必然的に、防御的な国防政策を実行することを決定づけている。中国は、平和的発展の道を確固として歩み、対内的には社会主義の調和のとれた社会の構築に力を注ぎ、対外的には、恒久平和、共同繁栄の調和のとれた世界の構築を推し進めている。中国は、改革開放と社会主義現代化建設を揺るぐことなく推し進め、平和な国際環境を必要とし、自らの発展をめざすとともに、自らの発展を通じて世界の平和を擁護することに努めている。また、中国は、独立自主の平和的外交政策を断固として遂行し、平和共存5原則(領土・主権の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存の5原則)の堅持を基礎として、すべての国との友好的な協力関係を発展させている。中国は、揺るぐことなく中華民族の優れた文化の伝統と「和を以て貴しとなす」という平和の理念に従い、非軍事的手段で紛争を解決し、戦争に慎重に対処し、戦略的には、後に発して人を制す、という姿勢をとっている。現在であろうと将来であろうと、また、どこまで発展しようとも、中国は永遠に覇を唱えることはなく、軍事拡張を行うことはない。

 両岸の統一は、中華民族が偉大な復興に向かう中での歴史的必然である。海峡両岸の中国人にはともに、両岸の敵対の歴史を終わらせる責任があり、同胞同士が干戈を交えることをできるかぎり回避することに努めている。両岸双方は、積極的に未来に目を向け、条件をつくり出すことに力を注ぎ、平等な話し合いを通じて、歴史が残した問題と両岸関係の発展過程における新たな問題をちくじ解決していく。また、両岸双方は、国がいまだ統一されていないという特殊な状況下における政治関係の発展について実際に見合った模索をすることも可能である。適時に軍事問題について接触と交流を行い、軍事安全における相互信頼システムの構築を模索し、台湾海峡の情勢を安定させ、軍事安全の懸念を減らすための措置をともにとることに役立つようにする。両岸は、一つの中国という原則を基礎として話し合いを行い、敵対状態を正式に終結させ、平和的な合意に達するべきである。

 新しい時期の中国の国防政策の目標と任務の主な内容は次の通りである。

 ――国の主権、安全、発展の利益を擁護する。侵略に対する防御と抵抗、領土、内海、領海、領空の安全を守り、国の海洋権益を守り、宇宙、電磁空間、インターネット空間における国の安全利益を守る。「台湾独立」に反対し、断固としてそれを食い止め、「東トルキスタン」「チベット独立」などの分裂勢力を取り締まり、国の主権と領土保全を守る。国の発展戦略と安全戦略に従い、それに奉仕し、国が発展する重要な戦略的チャンスを維持する。新しい時代における積極的な防御の軍事戦略方針を貫徹させ、独立自主と全人民の自衛という原則を堅持する。また、武装力の建設と辺境警備、領海防衛、防空のための建設を強化し、国の戦略能力建設の強化をはかる。中国は終始、核兵器先制不使用の政策を遂行し、自衛防御の核戦略を堅持し、いかなる国とも核軍備競争を行なわない。

 ――社会の調和と安定を擁護する。中国の武装力は、誠心誠意、国民に奉仕するためにあることを主旨とし、国の経済社会の建設に積極的に参加し、それを支援し、法律に基づき、国の安全と社会の安定を守っている。人材、装備、技術、インフラ施設などの面における有利な条件を生かし、地方のインフラ施設と重点プロジェクトの建設、貧困扶助や困難救済、民生の改善、生態環境の整備などに貢献している。非戦時軍事行動の準備を科学的に組織し、直面する非伝統的な安全脅威に対する戦略的備えを整え、専門的な応急機能の建設を強化し、反テロ・安定維持、応急救援、安全警戒任務の能力を向上させる。また、災害救援などの緊急かつ危険な重い任務を断固完遂し、民衆の生命と財産の安全を守っている。社会の大局的な安定を擁護することを、重要な任務とし、敵対勢力による国の転覆破壊活動や各種暴力テロ活動を断固として取り締まる。政府擁護・人民愛護という栄えある伝統を発揚し、国の政策と法規を遵守し、軍隊と政府、軍隊と人民の団結を強固なものにする。

 ――国防と軍隊の現代化を推し進める。2020年までに、機械化を基本的に実現し、また、情報化を建設することにおいて、大きな進展をなしとげる、という目標に着目し、機械化を基礎とし、情報化を主導として、情報技術の成果を広い範囲で運用し、機械化と情報化の複合的な発展と有機的な融合を推し進める。軍事闘争への準備を拡大、深化させ、現代化建設の全体的な発展をけん引し、促す。情報化の条件下での合同戦闘理論の研究を深化させ、ハイテク技術兵器・装備整備の推進、新しいタイプの戦闘力の発展、情報化という条件下での合同戦闘システムの構築に力を注ぐ。機械化の条件下での軍事訓練から情報化の条件下での軍事訓練への転換をより深く推進させる。人材戦略プロジェクトの実施に拍車をかけ、現代的な後方勤務の全面的な建設を強化する。情報化の条件下における局地戦争で勝利する能力を中核とする、多様化した軍事任務を完成させる能力を向上させ、新世紀における新しい段階での軍隊の歴史的使命を全面的に履行する。経済建設と国防建設を統一的に企画し、軍隊と民間の融合的な発展を実行し、軍隊と民間が結びつき、軍需産業を民間経済に融合させた兵器装備科学研究生産システム、軍隊の人材育成システムと軍隊の保障システムを構築する。国防と軍隊の改革の深化を積極的かつ適切に推し進め、戦略の統一的な企画と管理を強化し、国防と軍隊の建設の科学的な発展を推し進めることに努める。

 ――世界の安定と平和を擁護する。相互信頼、互恵、平等、協力といった新しい安全観を堅持し、平和的方式によって地域のホットな問題と国際紛争の解決を主張し、ほしいままに武力を行使することや武力によって脅威を与え合うこと、侵略・拡張に反対し、覇権主義や強権政治に反対する。平和共存5原則に基づいて対外軍事交流を展開し、非同盟、非対抗、第三者に矛先を向けることのない軍事協力関係を発展させ、公平で有効な集団安全メカニズムと軍事相互信頼メカニズムの構築を推し進める。オープンで実務的かつ協力的な理念を堅持し、国際安全における協力を深化させ、主要な国および周辺諸国との戦略的な協力と折衝を強化する。また、発展途上国との軍事交流と軍事協力を強化し、国連の平和維持活動や海上護衛、国際反テロ協力、災害救援活動に参加する。公正で合理的、また全面的でバランスのとれた原則に基づき、効果的な軍縮と軍備抑制を実現し、地球規模での戦略的安定を擁護することをサポートする。

三、人民解放軍の現代化建設

 新中国が成立してから60余年らい、人民解放軍の現代化建設は大きな成果をあげており、すでに過去の単一の兵種から多兵種によって構成される一定の現代化レベルを備えた、情報化へ邁進する強大な軍隊となった。近年らい、人民解放軍は、革命化・現代化・正規化を統一する原則に基づいて軍隊の全面的な建設に力を入れており、中国の特色ある軍事変革を前へと推し進めている。

軍隊の現代化発展への道のり

 新中国の成立後、人民解放軍は現代化の優れた革命的軍隊を建設するという全般的方針と全般的任務を確立した。海軍、空軍およびその他の技術兵種を建設し、機械化の兵器・装備と自衛のための核兵器を発展させ、正規化の軍事制度と大学・学校教育のシステムを確立し、思想と政治の活動を強化し、軍隊の指揮、編制、訓練、制度などの面における一連の変革を実現し、軍隊建設の初級段階から現代軍事科学技術を備えたハイレベルの段階へと転換し始めた。

 改革開放の歴史的条件の下で、人民解放軍は中国の特色ある軍隊精鋭化の道を歩んできた。軍隊建設の指導思想は、臨戦状態から平和期における建設へと戦略的な転換を実行し、国の建設の大局に従い、また奉仕するという前提の下で、現代化を中心とする軍隊の建設を計画的に、段取りを追って進めている。精鋭化・統合化・高効率化の原則に基づいて大きな調整と改革を行い、軍隊の人数を減らし、質を高め、現代における戦争の条件下での軍隊の自衛能力を増強させることに努めている。

 世界の軍事発展の新たな趨勢に適応し、人民解放軍は「政治的に合格し、軍事面でしっかりし、作風が優れ、規律が厳格で、有力な保障がある」という全般的要求に基づいて部隊を全面的に建設する。中国の特色ある軍事変革を軍隊の現代化を進める上での必須の道とし、科学技術による軍隊強化の戦略を実施し、人数や規模を重視することから質や効率を重視することへ、また、人力密集型から科学技術密集型への転換をちくじ実現した。三段階に分けての発展戦略を制定し、機械化を基礎とし、情報化を主導とする飛躍的な発展の道を歩み出した。軍事闘争への準備によって現代化の建設をけん引し、情報化の条件の下での防衛作戦能力を高めている。

 国の安全に必要な新たな発展と変化に直面し、人民解放軍はより高い起点から現代化を推し進めている。情報化の条件下における、局地戦争で勝利するという要求に適応し、新しいタイプの戦闘力の建設を強化し、情報化を主導とした機械化と情報化の複合的発展に力を入れ、情報システムを基礎とするシステム化された戦闘能力を向上させ、火力、機動力、防護力、保障力、情報力の全体的な向上を実現する。

陸軍、海軍、空軍と第二砲兵の建設

 陸軍は機動戦、立体的な攻防の戦略的要請に応じて、改革・革新と建設への取り組みを強化し、部隊全体の体制転換を推し進めている。新しいタイプの戦闘能力の建設を強化し、部隊の編成構造を最適化し、情報化の条件の下での軍事訓練を強化し、主戦装備のデジタル化のグレードアップ・改造、新しいタイプの兵器のプラットホーム編成の変換を加速し、長距離機動や総合的な突貫攻撃の能力が著しく高められた。陸軍機動戦闘部隊は18の集団軍と一部の独立合成戦闘師団(旅団)を含む。集団軍は師団、旅団に編成され、それぞれ瀋陽、北京、蘭州、済南、南京、広州、成都の7つの軍区の管轄下に置かれている。 陸軍兵種の建設は大きな進展をとげた。装甲兵はデジタル化部隊の建設を強化し、モータリゼーション部隊から機械化部隊へ転換する歩みを加速し、重型、軽型、水陸両用、パラシュート部隊の突貫攻撃の作戦システムが引き続き完備されている。砲兵は情報化の程度が比較的高い兵器・装備と新型弾薬を開発し、戦役・戦術の縦深への火力攻撃システムを形成し、一定の偵察、コントロール、攻撃、評価を一体化したピンポイント作戦能力を備えている。

 防空兵は新型レーダー、指揮情報システムと中高空の地対空ミサイルの発展を加速させ、新しいタイプの弾薬・火砲を結合する火力迎撃システムを形成し、比較的強い地対空作戦能力を備えている。陸軍航空兵は支援保障型から主戦突撃型への転化を加速して推進し、作戦能力をさらに最適化し、任務の需要によってモジュール化編成を実行し、武装、輸送と勤務ヘリコプターの性能を改良し、火力突撃、戦場での投下・輸送と支援・保障能力はいちじるしく向上した。工兵は平時と戦時を結びつけ、すばやく反応する多能化、一体化された新しいタイプの作戦・保障能力の構築を加速させ、災害救援の応急のための専門能力の建設を強化し、総合的な作戦・保障能力と非戦時軍事行動任務の遂行能力がさらに向上した。対化学戦部隊は平時と戦時、軍隊と民衆、軍・兵種を結びつけた、核兵器・化学兵器・生物兵器が一体化した建設を推し進め、全時空、全地域の核兵器・化学兵器・生物兵器の防護・保障能力を形成した。

 海軍は近海防衛戦略の要請に基づき、総合作戦能力の現代化レベルの向上を重んじ、戦略的抑止力・反撃力を強化し、遠洋における協力と非伝統的な安全上の脅威に対応する能力を発展させている。正規システムの基礎的な訓練に重点を置き、複雑な電磁環境の下での実戦的訓練を強化し、作戦能力がさらに向上した。艦艇編隊の遠洋訓練を組織し、非戦時軍事行動の訓練モデルを確立している。計画に基づいて一部の新しいタイプの潜水艦、護衛艦、航空機と大型の保障のための艦船を補充している。総合保障基地の建設を強化し、兵力の配置と一致し、兵器・装備の発展と協調した海岸基地の保障システムを基本的に形成している。海上の後方勤務保障プラットホームの建設を加速し、部隊に大型の1万トンクラスの病院船および救急艇、救急ヘリコプターを装備させることで海上の保障能力をさらに向上させることになった。海上における長期間任務を遂行する後方勤務保障の方法を模索している。海軍は北海艦隊、東中国海艦隊、南中国海艦隊を管轄している。艦隊の傘下には艦隊航空兵、保障基地、艦艇支隊、水上警備区、航空兵師団、陸戦旅団などの部隊がある。

 空軍は攻防兼備の戦略的要請に基づき、現代化の体制転換の建設を計画的に推し進めている。空軍の発展戦略と人材の発展戦略を充実させ、完全なものにし、情報化の条件の下での空軍の作戦と体制転換の問題の研究を深めている。空中での攻撃、防空反ミサイルと戦略投下・輸送を重点とする作戦力システムの建設を強化し、指導・指揮のシステムを健全かつ完全なものにし、情報化、ネットワーク化、基地化の支援保障システムを確立している。複雑な電磁環境下におけるシステム対抗訓練を深く展開し、戦術的背景を持つ一連の演習・訓練と戦役の集団訓練を行っている。首都を中心とし、辺境・沿海の境界沿いを重点とする日常の戦争への備えのための防空活動を強化し、国の重要なイベントの空中安全保障、災害救援、国際救援、応急空中輸送などの非戦時軍事行動任務を組織し完成させている。早期警戒機、第3世代の作戦航空機などの先進的な兵器・装備をちくじ装備している。空軍は瀋陽、北京、蘭州、済南、南京、広州、成都の7つの軍区空軍と1つのパラシュート兵軍団を管轄している。軍区空軍は航空兵師団、地対空ミサイル師団(旅団、連隊)、高射砲旅団(連隊)、レーダー旅団(連隊)、電子対抗連隊(大隊)などを管轄し、航空兵師団の傘下には航空兵連隊と駐屯地飛行場・ステーションがある。

 第二砲兵は精鋭で、戦力があるという原則に基づき、部隊の現代化建設を推し進め、迅速な反応、防御の効果的な突破、ピンポイント攻撃、総合的な破壊と生存防衛の能力を高めている。戦略的抑止力と防衛作戦能力がちくじ向上している。戦略ミサイル部隊の特色ある軍事訓練システムを構築し、基地訓練、シミュレーション訓練、ネットワーク訓練の条件を完全なものにし、地区にまたがる駐屯合同訓練を展開し、複雑な電磁環境における対抗的訓練を深めている。いくつかの重点学科の実験室、専門実験室と基礎教学実験室を確立し、ミサイルの自動化テストシステム、戦役戦術の指揮・コントロールシステム、戦略ミサイル訓練のシミュレーションシステム、作戦陣地人員生存保障システムを成功裏に開発した。安全システムの建設を強化し、安全制度を厳格に実行し、ミサイル・兵器の装備、作戦陣地などの重点的要所の安全を確保し、核兵器の管理において、終始良好な安全記録を保っている。数十年の建設や発展を経て、第二砲兵はすでに核兵器・通常兵器を兼ね備えた戦略力になった。

情報化の建設を加速する

 人民解放軍は情報化された軍隊を建設し、情報化戦争で勝利するという戦略目標をしっかりと把握して、トータルに設計し、段階を追って実施し、システム作戦能力の形成と向上を制約する突出した問題の解決に力を入れ、部隊の情報化の条件下での作戦能力がいちじるしく向上した。

 情報インフラ施設の建設は飛躍的な発展を実現させた。国防通信光ファイバーの総距離数は十数年前と比べ大幅に増え、光ファイバー通信を主とし、衛星、短波通信を補完とする新世代の情報伝送ネットワークが構築された。 偵察情報、指揮・コントロールと戦場環境情報システムの建設はめざましい進歩をとげ、後方勤務と装備保障業務の情報システムは広く応用されている。指揮・コントロールシステム、作戦力と保障システムは初歩的に相互連結を実現し、命令送達、情報仕分けと指揮・指導はより迅速かつ高効率になっている。

 情報化建設の戦略計画と指導管理は強化され、法規・標準と政策・制度はさらに完備された。業務の集団訓練、遠隔教育などの多種類の形式を通じて、情報化知識を普及させ、技能トレーニングを展開している。合同作戦の指揮を行う人材、情報化建設の管理を行う人材、情報技術の専門的な人材、新しい装備の操作とメンテナンスを行う人材陣の建設は目に見える成果を上げ、情報化建設の必要に適応した高い資質を備えた新しいタイプの軍事に関連する人材陣がちくじ増加している。

合同作戦システムを構築する

 人民解放軍は合同作戦システムの建設を軍隊の現代化建設と軍事闘争準備の重点内容とすることを堅持し、情報システムに基づいた体系的な作戦能力を高めている。

 作戦理論の研究を深める。新世代の合同戦役、合同作戦の指揮条令および関係保障条令を公布、施行し、合同戦役学科に関する一連の専門著作と訓練教材を編集し、合同作戦理論システムと合同戦役訓練の方法・システムを基本的に形成した。

 作戦力の建設を強化する。軍隊の情報化建設の必要に適応し、指導・指揮体制の改革を行い、それを完全なものにし、作戦力の編成構造を調整かつ最適化し、新しいタイプの作戦力と保障力を充実させ、陸上部隊、海上編隊と空中編隊の建設に重点を置き、軍・兵種の建設と体制転換を積極的に推し進め、モジュール化の編成と合成化の使用レベルをちくじ高め、精鋭化・合同化・多能化・高効率化した作戦力システムの構築に力を入れている。

 作戦指揮のシステムを完全なものにする。権威化・精鋭化・敏捷化・高効率化の要求に基づき、健全なシステムと合理的な編成、平時と戦時を一体化させ三軍が協力すること、メカニズムが完備された順調かつ高効率な合同作戦指揮システムなどの構築を加速している。

 総合的な保障能力を高める。体系的な保障、精密・正確な保障、集約的な保障の要求に基づき、総合作戦と保障基地の建設を強化し、戦場の配置を最適化し、指揮・コントロール、偵察情報、通信、測量・製図・方向誘導、気象・水文・陣地工事と後方倉庫、軍事交通、装備のメンテナンス施設を完全なものにし、兵器・装備の発展に適応し、部隊の攻防作戦任務の遂行の需要を満たす戦場支援保障能力を初歩的に形成した。合同保障メカニズムを健全にし、総合保障情報化のレベルを高め、戦略・戦役・戦術の保障が結びついた総合支援保障システムを基本的に確立した。

軍事訓練の転換を推し進める

 人民解放軍は軍事訓練を部隊の戦闘力を形成または向上させる基本的な道すじとすることを堅持し、訓練の改革を全面的に深め、機械化の条件下での軍事訓練から情報化の条件下での軍事訓練への転換を積極的に推し進めている。

 軍事訓練の内容を改革する。新しい『軍事訓練と審査大綱』に基づき訓練を組織し実施し、指導機関の指揮の訓練、指揮の情報システムと情報化した兵器・装備の操作訓練を強化し、情報化知識の学習に力を入れている。使命・課題の訓練を強化し、海洋、宇宙と電磁空間の安全を保つ研究と訓練を推し進め、非戦時軍事行動の訓練を、目標を定めて展開している。電子対抗装備の技術性能と戦術運用の特徴を研究し、妨害対抗の訓練、電子対抗の訓練を強化し、複雑な電磁環境のもとでの訓練を行っている。

 軍事訓練の方式と方法を革新する。上級が下級をけん引し、戦略の訓練をもって戦役の訓練を指導し、合同戦役の訓練をもって軍種戦役の訓練を導く。また、戦役指揮の訓練をもって部隊の訓練を促すことを堅持し、各レベルの訓練の有機的な結びつきを促進している。指揮情報システムをよりどころとし、各種類の作戦ユニットの合同訓練、各種類の作戦要素の集成訓練と全システム、全要素の合同訓練を行っている。編成の合同訓練、対抗的な訓練を深め、複雑な電磁環境、複雑で未知な地形、複雑な気候条件の下での訓練を重点的に行い、戦役クラスの指導機関の師団(旅団)編制全体の地区に跨る演習を展開し、訓練と審査の評価への取り組みを強化し、実戦の要求、戦時編成と作戦のプロセスに基づき訓練を行う。

 軍事訓練の手段を改善する。合同訓練に必要となる大型の総合訓練基地の建設を加速させ、合同戦術訓練基地の複雑な電磁環境の建設を重点とする情報化の改造を加速させ、シミュレーション訓練の器材とシステムを開発し、軍事訓練の情報ネットワークを完全なものにする。

 訓練の管理と改革を深化させる。訓練の指導管理体制を最適化し、訓練の法規を完全なものにし、訓練の責任制を着実に遂行する。訓練の審査を改革し、ユニットと個人の訓練の標準を細分化し、計量化の分析と評価を強化し、軍事訓練の全過程、全要素の精細な管理を実施している。

政治活動を革新する

 人民解放軍は革新の精神で政治活動を推し進め、政治活動を新たな情勢に適応させ、新たな発展を実現させている。2010年8月に新しく改正、公布された『中国人民解放軍政治工作条例』では、軍隊の政治活動は、思想面、政治面、組織面において、軍隊が終始、党の絶対的指導の下での人民の軍隊であることを確保しており、また、国防と軍隊の建設の科学的な発展を確保し、新世紀の新たな段階における軍隊の歴史的な使命の効果的な遂行を確保することを明確に打ち出した。

 軍隊全体が時代とともに発展をとげ、使命・任務、将校・兵士の実情に合わせて、政治活動を改善また革新し、政治活動の科学性を強化している。思想の教育、世論の誘導、文化の影響などの方式を通じて、「党に忠誠であり、人民を愛し、国に奉仕し、使命のために献身し、栄誉を尊ぶ」という現代の革命軍人の核心的な価値観を育んでいる。新しい情勢が部隊の建設にもたらす新しい状況と将校・兵士の思想にもたらす新たな変化を検討し、政治活動の目標性と実効性を高めている。軍隊全体の部隊と大学・学校の政治活動ネットワークを構築し、国境警備・海上防衛部隊にデジタル映画の放映設備を提供し、広報教育のネット化と情報伝送のオンライン化を実現した。

 2009年3月に『非戦時軍事行動の政治活動強化についての意見』を印刷、配布し、非戦時軍事行動の中での政治活動の特色と法則を的確に把握し、任務と実情に照らし合わせた活動を展開し、政治活動のサービス保障分野と機能を開拓している。2009年10月に印刷、配布された『新たな情勢の下での軍隊の心理ケア活動強化に関する意見』は、心理査定、心理訓練と心理危機への関与などの心理カウンセリング活動の展開を要求し、5年内に旅団・連隊クラスの部隊には少なくとも1人の専属心理ケアカウンセラーを置き、中隊クラスの部隊には3人以上の心理ケア面のスタッフを置くことを規定した。

人材戦略プロジェクトを実施する

 人民解放軍は人材戦略プロジェクトを大いに推進し、多くの新しいタイプのハイレベルの軍事人材の養成に努めている。思想政治資質の向上を根本とし、能力のモデルチェンジの推進を主な内容とし、合同戦闘の指揮を行う人材、情報化建設の管理を行う人材、情報技術面の専門的な人材、新装備の操作・メンテナンス面での人材の育成に重点を置くことを堅持し、指揮将校、参謀、科学者、技術専門家、士官の養成に力を入れている。

 幹部に関する政策制度の調整や改革に取り組んでいる。2009年1月に『軍隊幹部の選抜・任用作業の手続に関する規定(試行)』が公布され、さらに民主化を拡大し、手続を規範化し、監督を強化し、選抜・任用の科学性、正確性、信頼度を高めるよう要求している。参謀将校、専門技術将校の考査・評価に関する実施方法と一般的に使用される考査・評価基準を公布し、専門的技術人材に関する政策制度の調整や改革のための包括的プランを制定した。

 合同戦闘の指揮を行う人材とハイレベルの科学技術革新人材の養成を重要視している。合同戦闘についての基礎知識のテキストを編集して、配布し、軍隊全体の合同戦闘に関する講座を開いている。優秀な指揮将校と参謀人材を選出、表彰し、発展の潜在力がある優れた参謀と大隊・中隊の主要幹部の養成に重点を置いている。合同戦闘指揮人材の養成に努め、軍事修士学位を目指す大学院生の養成パターンを改革している。

 『軍隊におけるハイレベルの科学技術革新人材プロジェクトの実施に関する弁法』を公布、施行しており、科学技術の革新能力を向上させるために、科学技術のリーダーとなる人材と科学分野のエリート人材の育成に向けて2年ごとに200人を選出し、育成対象としている。

 士官の選抜・養成制度を整備している。ハイレベルの専門技術士官の編制を増やし、専門技術士官向けの技能資格制度を実施し、ハイレベルの士官を選出するために専門家による評価制度を確立し、士官の育成・管理システムを完備している。

現代的後方勤務を全面的に構築する

 人民解放軍は現代的後方勤務の全面的構築を推し進め、保障体制の一体化、保障方式の社会化、保障手段の情報化、後方勤務管理の科学化のテンポを速め、多様化した軍事任務の完成を保障する後方勤務の能力を向上させている。

 後方勤務の諸改革を深めている。職能の調整、関係の正常化、構造の最適化、利益の向上に重点を置き、済南軍区における三軍の後方勤務保障の一体化を中核とする合同運行メカニズムを完備している。生活保障の社会化を引き続き推進し、段階に分けて汎用物資の備蓄、装備のメンテナンスにおける軍民一体化など、その他の保障の社会化を実施している。既存の後方勤務装備のグレードアップ、次世代の後方勤務装備の発展に関するフィージビリティー・スタディーとカギとなる技術の予備的研究を加速させ、軍人の保障カードシステムを普及させ、後方勤務の戦略的倉庫、戦争に備える物資のパッケージ、軍事交通輸送の実態のモニタリングを中心とする軍事物流情報システムを構築している。後方勤務の規則や制度を見直し、供給・消耗・管理を一体化させる基準制度システムを健全化し、重要な建設プロジェクトや改革プロジェクトに対する会計検査と監督に力を入れ、財政経済の管理、物資の買付、医療、住宅、保険などにかかわる政策や制度の改革を推し進めている。

 重要な活動に対する後方勤務を厳密に組織し手配する。新中国成立60周年の国慶節閲兵式のための後方勤務保障に入念に取り組み、アデン湾とソマリア沖での護衛任務、中国と外国の合同軍事演習、上海万博の安全保障、国内外の救援活動などにおいて有力な保障を提供してきた。また、部隊が青海省玉樹震災救援活動や甘粛省舟曲土石流災害救援活動などに参加するためにしっかりとした後方勤務保障を与えた。

 部隊の供給・保障レベルを高めている。公務事業費、地域による補助金、末端部門における手当、専門職部門における手当などの基準を見直し、新しい食料規定量基準と兵舎基準を公布、実施した。軍隊の医療面において、合理的に処方が行われる医薬品リストの品種を拡充し、将校・兵士の療養待遇を実行に移し、メンタルヘルスケア面のサービスを充実させている。末端後方勤務の3年間の総合的整備計画を完成し、旅団・連隊部隊、国境警備・海上防衛部隊、「小散遠直単位」(部隊において人員が少ない部門、広域に分散した部門、機関から遠く離れた部門および連隊以上の機関直属の中隊とそれに相当する部門を指す)の飲用水や暖房、主食・副食品の供給などの差し迫った問題を効果的に解決した。2009年末には、07式の新軍服への切り換えを行った。

ハイテク兵器装備の整備を強化する

 人民解放軍はハイテク装備の発展を加速させ、既存の装備の改造と管理を強化し、兵器装備の機械化・情報化の複合的発展を推し進めている。 兵器装備の質と構造を改善している。第二世代を主体とし、第三世代を中心とする兵器装備システムがおおむね構築されている。陸軍はヘリコプター、突撃装甲車、防空・制圧兵器を中心とする陸上戦闘装備システムを構築し、海軍は新しいタイプの潜水艦、水上艦艇、海上攻撃機を中心とする海上戦闘装備システムを、空軍は新しいタイプの戦闘機、地対空ミサイル兵器システムを中心とする制空戦闘装備システムを構築し、第二砲兵は中・長距離地対地ミサイルを中心とする地対地ミサイル装備システムを構築している。

 装備の管理レベルとメンテナンス・保障能力を向上させている。現代的管理手段を押し広め、装備管理の規範化・精細化レベルを高めている。大学・学校や科学研究機構、メーカーの役割を発揮させ、新しいタイプの装備に係わる人材の育成に力を入れている。軍需産業における科学研究機構やメーカーと協調し、ハイテク装備のメンテナンス・保障能力を高めるようにし、軍隊と民間が一体化した装備メンテナンス・保障システムを構築し、多種機能の検査・測定、機動的緊急援助・応急補修、長距離技術支援のできる装備の総合的メンテナンス能力を構築している。ここ数年来の災害救援、反テロ演習訓練、一連の実戦訓練・演習は兵器装備の整備・管理の成果を検証し、地区にまたがる長距離の、機動性のある活動、遠海区域における護衛、複雑な戦場環境の下での装備保障能力が目に見えて増強されたことを示している。

 兵器装備の長期発展計画を策定する。情報技術の融合性、システム化、集積化、一体化という特色や法則を科学的に把握し、兵器プラットホームと総合的電子情報システム装備との有機的な融合、複合的な発展を促している。先進的で成熟した技術と設備を生かし、選択的かつ重点的な編制により、シリーズ化した既存装備に対するインテグレーションと改造を行い、総合的性能を向上させ、兵器装備の整備の効果を高めている。

四、武装力の運用

 中国の武装力は時代の発展と安全情勢の変化に適応し、さまざまな安全に対する脅威に積極的に対応でき、国の安全と発展の利益に有力な支えを提供し、世界の平和を維持し共同の発展を促すうえで重要な役割を果たしている。

国境警備、海上防衛、防空面の安全を守る

 中国の国境警備・海上防衛の仕事は軍隊・地方がそれぞれ分担し、それぞれが責任をもつという防衛管理体制を実施している。軍隊は主に国境や沿海、海上の防衛や警戒を行い、外部からの侵入、蚕食、挑発および越境破壊などの活動を警戒、防衛、制止し、取り締まっている。公安国境警備部隊は主に国境や沿海地域、海上の治安管理および国境通関所において出入国審査を行い、国境や沿海地域の密出入国、麻薬密売、密輸などの不法犯罪を防止し、取り締まり、国境や沿海地域の反テロと突発的事件処理作業に取り組んでいる。海上監視、漁業監督、海事、検疫検査、税関などの部門はそれ相応の権利保護・法律執行と管理の任務を担当している。国は国境警備・海上防衛委員会を設けており、国務院、中央軍事委員会の指導の下で全国の国境警備・海上防衛活動をバランスよく推し進めている。各軍区と国境・沿海地域の省、市、県という三つのクラスの行政区には国境警備・海上防衛委員会が置かれており、同管轄区の国境警備・海上防衛活動を統一的に協調させている。

 近年、人民解放軍国境警備・海上防衛部隊は国境警備を強固にし、善隣友好を維持し、安定を確保し、発展を促すという要求に基づいて、国の関連法律・規定や隣国と結んだ協定・協議を施行し、戦争に備えるための職務をしっかりと遂行している。さまざまな侵入、蚕食、越境破壊活動を厳しく防ぎ、国境警備・海上防衛に関する政策や法規に違反する行為と国境線の現状を変えようとする行為を適時に阻止し、国境や沿海地域と管轄海域の安全・安定を効果的に確保している。公安国境警備部隊は国境警備、安定確保のための反テロ活動を着実に行っており、国境通関所における検査と海上の管理・コントロールに力を入れ、密出入国、麻薬密売、密輸などの犯罪を厳しく取り締まっている。2009年以来、3万7000件にのぼるさまざまな案件を処理し、不法銃器3845丁を押収した。

 国は、軍隊・警察・民間による合同防衛や合同管理、合同整備を国境警備・海上防衛と国境建設の有力な支えとしている。ここ数年来、軍隊を主体とし、各国境警備・海上防衛関係部門が互いに協力し合い、国境や沿海地域の民兵予備役と人民大衆が幅広く参加するシステムをたえず完備し、指揮情報システムに重点を置いた、情報インフラを支えとする国境警備・海上防衛の情報化の建設を推し進め、国境警備・海上防衛のインフラ整備に力を入れている。国境地域を管理し、海域をコントロールする能力のレベルを向上させ、国境地域または沿海地域経済の建設と社会の安定を促した。

 防空安全は国の全般的安全を構成する重要な要素である。人民解放軍空軍は国の防空安全を守る主力であり、陸軍、海軍、武装警察部隊は中央軍事委員会の指示に従い、防空任務の一部を担っている。空軍は中央軍事委員会の意思に基づいて防空任務を担当するさまざまな防空力に対して統一的指揮を行っている。国の防空システムは年間を通じて警戒状態にあり、空中動態を把握し、空中飛行の秩序を維持し、空中戦闘哨戒を実施し、空中における突発的事件の処理を行い、国の領空の主権を断固として守り、国の領空の安全を確保する。

社会の安定を維持する

 中国の武装力は法律に基づいて社会の秩序を維持するための活動に参加しており、主として、地方党委員会や政府の統一的指導の下で、公安部門に協力して正常な社会秩序を守り、人民大衆が安心して暮らせることを保証している。 武装警察部隊は国が突発的な公共事件を処理する際の中心であり突撃力でもある。2009年以来、人質誘拐事件などのゆゆしき暴力犯罪事件24件を処理し、逮捕行動201件に参加し、建国60周年祝賀式典、上海万博、広州アジア競技大会の安全確保任務をりっぱに遂行した。

 2010年11月に中央軍事委員会は『突発的事件を処理する際の軍隊による応急指揮についての規定』を批准し、公布した。軍隊が社会の安定を維持し、その他のさまざまな突発的事件を処理する際の組織・指揮、力の行使、総合保障、軍隊と地方との協力などについて明確な規定を定めた。

国の建設と災害救援に参加

 国の建設事業と災害救援に参加することは、憲法と法律が中国の武装力に与えた重要な任務である。 人民解放軍と武装警察部隊は西部大開発への参加や支援を中心とする国の建設への支援に積極的に参加している。この2年間に、延べ1600余万の労働日数を費やし、130万台の機械車両を出動させ、交通や水道・電気、通信、エネルギーのインフラ整備にかかわる重点プロジェクト600余項目に参加した。農村における貧困扶助連絡スポット3500余カ所を設置し、節水灌漑、人や家畜の飲用水、道路、水道・電気などの小型公共プロジェクト8000項目以上の建設を支援した。西部地域に駐屯する部隊は樹木1100万本を植林し、大規模な植林、空からの播種による緑化、荒れ山、荒れた河原周辺の緑化が320万ムー(1ムーは0.067ヘクタール)に達した。軍隊の医療・衛生システムは、一対一の形で西部の貧困地域の県クラス病院130カ所を支援し、医療チームを延べ351回派遣し、器械・設備110台(件)を寄贈した。また、四川省、陝西省、甘粛省の震災地において学校8カ所とリハビリセンター1カ所の設立援助のために寄付を行った。

 中国の武装力は災害救援の突撃力である。2009年1月に、中国は軍隊を主体とする洪水災害救援応急部隊、震災緊急救援隊、核・生物・化学環境下の応急救援隊、空中緊急輸送隊、交通応急救援隊、海上応急捜索救援隊、応急機動通信保障隊、医療防疫救援隊など8つの国レベルの専門の応急隊をつくり、兵力規模は5万人にのぼる。2009年7月に、武装警察の水利・電力部隊、交通部隊の3万1000人が国の応急救援陣に組み入れられた。各軍区は関係する省(自治区、直轄市)と協力して省クラスの専門の応急隊をつくった。

 この2年間に、軍隊と武装警察部隊は延べ兵力184万5000人、各種タイプの車両(機械)79万台、航空機とヘリコプター181機を出動させた。また、民兵予備役643万人を動員し、洪水・冠水、地震、干ばつ、台風、森林火災などの災害救援に何度も参加し、174万2000人の被災者を救助し、避難させ、30万3000トンの物資を緊急輸送し、3742キロにわたる河川を浚せつし、4443の井戸を掘削し、728キロにおよぶ堤防を補強し、50万4000トンの生活用水を輸送した。

国連平和維持活動(PKO)に参加

 中国は責任のある大国として、国連の平和維持活動をサポートし、それに積極的に参加し、世界の平和維持に積極的な貢献をした。

 1990年、中国人民解放軍は国連の中東平和維持任務区域(中東国際平和協力業務が行われるべき地域)に5人の軍事監視員を派遣し、国連平和維持活動に初めて参加した。1992年、国連カンボジア平和維持任務区域に400人からなる工兵大隊を派遣し、編制された部隊を初めて派遣した。2001年に国防部平和維持事務弁公室を設立した。2002年、国連待機制度(UNSAS)のレベル1に登録した。2009年、国防部平和維持センターを設置した。2010年12月現在、計19項目の国連平和維持活動に参加し、平和維持活動のために延べ1万7390人の将兵を派遣し、9人の将兵が任務遂行中に殉職した。

 中国の平和維持部隊は苦しみをおそれず、強い戦闘力と仕事への献身精神という優れた気風を発揚し、責任をきちんと果たす持ち前の精神力を発揮して活動に励み、8700余キロにわたる道路、270の橋を新築または修復し、地雷と各種不発弾8900余発を撤去し、物資60余万トンを輸送し、総輸送距離数は930余万キロに達し、延べ7万9000人の患者を診療し、国連から与えられたさまざまな平和維持任務をとどこおりなく完遂した。

 2010年12月現在、中国人民解放軍の1955人の将兵が国連の9カ所のPKO担当地域で任務を遂行している。中国は国連安全保障理事会常任理事国の中で、平和維持要員の派遣数が最も多い国となっている。そのうち、軍事監視員と参謀将校は94人、国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)として赴いた工兵分隊は175人、医療分隊は43人、国連リベリア・ミッション(UNMIL)として赴いた工兵分隊は275人、輸送分隊は240人、医療分隊は43人、国連レバノン駐在暫定部隊(UNIFIL)として赴いた工兵分隊は275人、医療分隊は60人、国連スーダン・ミッション(UNMIS)として赴いた工兵分隊は275人、輸送分隊は100人、医療分隊は60人、国連・アフリカ連合ダルフール派遣団(UNAMID)として赴いた工兵分隊は315人である。

アデン湾・ソマリア沖での航行の護衛を実施する

 国連安全保障理事会の関連決議によって、2008年12月26日に中国政府は海軍艦艇編隊をアデン湾・ソマリア沖に派遣し、航行護衛任務を遂行している。主な任務は、アデン湾、ソマリア沖を航行している中国船舶および乗組員の安全を守るほか、国連世界食糧計画(WFP)など、人道物資を輸送する国際機関の船舶の安全を守り、また、できるだけ、この海域を航行する外国の船舶の安全を確保することである。2010年12月現在、海軍は計7回、延べ18隻の艦艇、ヘリコプター16機、特殊部隊490人を派遣し、航行の護衛をおこなっている。中国海軍の護衛活動は主として航行の護送、区域パトロール、船舶に同行しての護衛などのやり方で、前後して中国船舶と外国船舶3139隻の安全を確保し、そのうち、海賊に襲われた船舶29隻を救出し、9隻の船舶のその後の護衛にあたった。

 中国は航行護衛国際協力の強化に対して積極的、開放的な態度を保っている。中国海軍の護衛編隊は関係諸国、組織と情報の共有や情報の交流における常態化メカニズムを確立し、欧州連合(EU)やその他の多くの国の海軍、北大西洋条約機構(NATO)、ロシア、韓国、オランダ、日本などの護衛艦艇と司令官の艦艇搭乗相互訪問を24回行い、ロシアと合同護衛活動を行い、韓国の護衛艦艇と海上での合同演習・訓練を行い、オランダとは、将校を互いに派遣し合い、艦艇搭乗の視察活動を展開した。中国は国連ソマリア沖海賊対策に関するコンタクトグループ会合および「情報の共有と衝突の回避(SHADE)」という航行護衛活動の協力についての国際会議などの国際メカニズムに積極的に参与している。

中国と外国との合同演習・訓練

 人民解放軍と外国軍隊との合同演習・訓練は、非同盟、非対抗、第三者に矛先を向けることのない方針と戦略的互恵、平等的な参与、対等に実施する、という原則を堅持している。2010年12月現在、人民解放軍はすでに外国軍隊と44回の合同演習・訓練を行い、相互信頼、相互協力の促進、有益な経験の参考、軍隊現代化建設の強化のうえで積極的な役割を発揮した。

 上海協力機構の枠組み中での合同反テロ軍事演習には、メカニズム化の発展がみられる。2002年に、中国はキルギスと、外国との初の合同反テロ軍事実戦演習を行った。2003年、上海協力機構の加盟国と共同で、中国と外国による初の多国間合同反テロ軍事演習を行った。2006年には、タジキスタンと合同反テロ軍事演習を行った。また、2005年、2007年、2009年、2010年には、ロシアなどの上海協力機構の加盟国と「平和の使命」合同反テロ軍事演習を行った。 海上での合同演習・訓練が常態化している。2003年に、中国とパキスタンは中国と外国との間では初となる海上での捜索・救援についての演習・訓練を行った。中国は、外国の海軍艦艇との相互訪問と結びつけて、これまでにはすでにインド、フランス、イギリス、オーストラリア、タイ、アメリカ、ロシア、日本、ニュージーランド、ベトナムなどの国の海軍と捜索・救援、通信、編隊、潜水、護衛活動などの項目についての二国間や多国間の海上演習・訓練を行った。2007年、2009年に、中国海軍艦艇は前後してパキスタン海軍主催の海上における多国間合同軍事演習に参加した。2007年には、中国海軍艦艇がシンガポールに赴き、西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)の多国間海上合同演習を行った。2010年、中国はタイと、外国との初の海兵隊合同訓練を行った。

 陸上での合同訓練が幅広く展開されている。2007年に、中国はタイと外国との初の陸軍合同訓練を行った。近年らい、パキスタン、インド、シンガポール、モンゴル、ルーマニア、タイなどの国と反テロ、安全保障、平和維持、山岳作戦、水陸両用作戦などの科目についての合同訓練を行い、混成、合同訓練実施の新たなモデルを模索した。2009年に、衛生勤務分隊を初めてアフリカへ派遣し、ガボンと衛生勤務合同行動を行い、医療面での育成訓練と救援演習を展開し、現地の人びとに医療救助を提供した。2010年に、医療隊をペルーに派遣し、人道主義の医療救援合同作業を行い、突発事件の応急医療救援の演習・訓練を共同で展開し、緊急人道主義危機に対応する能力を高めた。

国際災害救援

 政府に組織された国際災害救援の行動に参加し、国際人道主義の義務を履行することは、中国武装力が当然引き受けるべき責務である。近年らい、中国の武装力は中国政府の関係部門に積極的に協力して、被災国に救援物資を提供し、専門スタッフを派遣して国際災害救援の行動に参加した。

 2002年に、アフガニスタンに救援物資を提供していらい、人民解放軍は、すでに国際緊急人道主義の援助任務を28回遂行し、合わせて22の被災国に総額9億5000万元以上のテント、毛布、医薬品、医療器械、食品、発電機などの救援物資を供与した。2001年に、北京軍区工兵連隊の将兵、武装警察総病院の医療・看護人員と中国地震局の専門家で構成された中国国際救援隊は、国際災害緊急救援行動への参与を始め、現在までに、すでに被災国へ8回赴き、救援任務を実施した。2010年1月、中国国際救援隊と人民解放軍医療防疫救護隊はハイチへ赴き、被災地の救援に参加し、人員の捜索・救助、緊急救護、衛生防疫などの任務を遂行し、現地の負傷者・患者を合わせて6500人救援し治療した。2010年9月に、中国国際救援隊と人民解放軍医療救援隊、ヘリコプター救援隊はパキスタンへ赴き、人道主義の救援任務に取り組み、現地の負傷者・患者を延べ3万4000人救援して治療し、ヘリコプターで物資60トンを送り届けた。

 中国武装力は国際災害救援の交流と協力に積極的に参与し、関係諸国、関係する国際機構とのコミュニケーションと協調を密接にし、地域災害救援のメカニズムの整備と人員の育成をおこなっている。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの軍隊と人道主義救援と災害減少のための検討作業を行い、アセアン地域フォーラム(ARF)武装部隊による国際災害救援の法律・規約を整備するためのセミナーを開催し、アセアンと中日韓の軍隊による国際災害救援についてのセミナーを開催した。

五、国防動員と国防予備兵力の建設

 中国は、平時と戦時を結びつけ、軍隊と民間を結びつけ、軍需産業を民間産業と融合させる方針を堅持し、国防動員と国防予備兵力の建設を強化し、国防動員能力の向上と国防における実力を増強させている。

国防動員組織の指導体制

 憲法および関連の法律に基づいて、全国人民代表大会常務委員会は、全国総動員あるいは局部的動員を決定する。国家主席は、全国人民代表大会常務委員会の決定に基づき、動員令を発布する。国務院、中央軍事委員会はともに全国の国防動員の仕事を指導し、国防動員の方針、政策と法規を制定し、全国人民代表大会常務委員会の決定と国家主席が発布した動員令に基づき、国防動員の実施を組織する。国家の主権、統一、領土保全と安全が、直接的な脅威を受けた場合はただちに対応措置をとり、その際、国務院、中央軍事委員会は、応急措置の必要性に応じて必要な国防動員措置をとり、同時に全国人民代表大会常務委員会に報告することができる。 地方人民政府は、国防動員の仕事の方針、政策と法律・法規を貫徹、実行し、当該行政区域での国防動員の実施を組織する。県クラス以上の人民政府の関連部門と軍隊の関連部門は、それぞれの職責の範囲内で、関連ある国防動員の仕事の責任を負い、職責に基づいて国防動員計画と国防動員実施予備案を遂行する。

 国、軍区と県クラス以上の地方人民政府は、いずれも国防動員委員会を設立する。国の国防動員委員会は、国務院、中央軍事委員会の指導のもとで、全国の国防動員活動の組織、指導、協調の責任を負い、主任と副主任は、国務院と中央軍事委員会の指導者が兼任し、委員は、国務院の関連ある各部・委員会と軍隊各総部に関係のある指導者によって構成される。主要な任務は、積極的な防御軍事戦略方針を貫徹し、国の国防動員の仕事を組織し、実施することである。国防動員活動における経済と軍事、軍隊と政府、人力と物力の関係の協調をはかる。各軍区と県クラス以上の地方人民政府の国防動員委員会は、それぞれの地域の国防動員活動の組織、指導、協調に責任を負っている。国防動員委員会は、事務機構を設置し、そのクラスの国防動員委員会の日常的な仕事を担っている。現在、国の国防動員委員会は、人民の武装動員、国民経済の動員、人民防空、交通面での戦争への備えと国防教育などの事務機構を設立し、軍区と地方の各クラスの国防動員委員会はそれ相応の事務機構を設立する。 2010年2月、全国人民代表大会常務委員会で審議された『中華人民共和国国防動員法』が採択され、国防動員の平時の準備と戦時における実施の基本的内容が規範化され、国民と組織の国防動員の仕事の中での義務、権利が規定され、国防動員の基本制度を完備した。

国防動員能力の建設

 中国が、国防動員建設を強化する根本的な目標は、国防安全の必要性と互いに適応しあい、経済社会の発展と互いに協調しあう、突発事件への応急メカニズムと結びついた国防動員システムを確立し、それを健全なものにし、国防動員能力を増強することにある。数年らい、国は、統一的な指導、全人民の参与、長期にわたる準備、重点的建設、統一的に計画し各方面に配慮した秩序のある高効率の原則を遵守し、国防動員の建設を経済社会の発展に組み入れ、動員を加速させ、平時から戦時への転換をさせ、保障を持続させ、総合的な防御能力をちくじ向上させることに努めている。

 人民の武装動員の建設は新たな進展をとげた。戦時の部隊動員計画と保障計画を完ぺきなものにし、現役部隊時の員数をそろえて編成する仕事を実行し、予備役部隊の建設を強化する。民兵は、戦時に担うことになるかもしれない任務に基づき、非戦時軍事行動における任務の必要性を結びつけて完遂し、動員メカニズムの建設を加速させる。2010年8月に新たに改正された『中華人民共和国予備役将校法』は、国が国防動員の実施を決定した後に、予備役将校を召集する権限、手続、やり方に対する新しい規定をうち出している。

 国民経済動員の建設が着実に推し進められている。重要なインフラ施設を建設する中で、国防の要求も重視し、重要な技術と製品に関する軍需産業と民間経済の相互融合の度合いをたえず高めている。重点業種と中堅企業をよりどころとし、重要な製品と技術を結びつける国民経済動員の中心部分の建設配置が初歩的に確立された。重点地域、重点業種、重点的な技術・製品の潜在力調査では、重要な進展がみられ、国防の需要に立脚し、経済建設のために奉仕し、応急と戦時対応を結びつけた戦略的物資貯蔵構造をさらに最適化した。

 人民の防空建設の歩みを加速させている。長期の準備、重点的建設、平時と戦時を結びつけるという方針を貫徹し、情報化の条件のもとでの、空襲に対する戦時への準備をりっぱに推し進める。軍隊と政府の合同会議と軍隊と地方との合同公務制度を完備し、県クラス以上の各レベル人民政府の人民防空機構の設置を最適化し、人民防空機関の準軍事化の建設を推進している。合同防空と区域防空の要求に基づいて、各クラスの人民防空指揮所の建設に力を入れる。人民防空システムの防災機能を完ぺきなものにし、防空と防災を結びつける作業メカニズムを健全化する。重要な経済目標の防衛の仕事を展開し、重要な経済面の防衛目標を選定し、応急緊急措置と応急補修についての案を制定する。人民防空プロジェクトの建設を都市のトータルな企画に組み入れ、法律に基づいて、民用建築物の防空地下室を修築し、都市建設の中で、人民防空・防御の要求を結実させ、人民防空と都市建設の協調的な発展を促進している。各省・自治区・直轄市で、防空防災についての広報教育と技能育成訓練を幅広く展開し、防空防災知識や自らの身を守り、互いに助け合う技能や人びとを緊急疎開させる方法などを普及させる。

 国防交通動員の建設をしっかりと秩序立てて行う。交通面における戦時への備えの建設を、国の交通システム建設に組み入れ、戦略的なルートの保障能力、戦略的な投下・輸送保障能力、交通面の緊急輸送、応急補修能力を向上させる。軍隊と民間を融合する一連の発展項目を重点として推進し、これにより国防交通の戦時への備えとしての活動のトータルなレベルの向上を率先して促している。関連する業種をよりどころとし、編成、システム化した交通専門保障隊をつくり、戦略的なルートに沿って、交通業種保障隊列の建設を強化する。交通重点目標保障案と部隊の戦時への備えのための輸送保障案の制定または改正を行い、軍事関連の輸送施設と国の交通運輸施設を同時に企画し、同時に建設することを実現するように努めている。

予備役部隊の建設

 予備役部隊は現役の軍人を中堅とし、予備役の将兵を基礎とし、軍隊の統一された体制・編制で編成された武装力であり、軍隊と地方の党委員会、政府の二重指導制を実施している。予備役部隊の各クラスの軍隊・政府の主要責任者、部門の主要指導者、一部の公務員と中堅となる専門技術者は、現役軍人がその任にあたる。予備役将校は、主に条件に符合した退役軍人、地方幹部、人民武装部隊の幹部、民兵幹部、民間の軍事専門技術に関係する人たちの中から選び配置される。予備役兵士は、主に条件に符合した退役兵士、訓練を受けた基幹民兵、民間の軍事専門業種と対応しうる人たちの中から選ばれ編成される。

 ここ数年来、予備役部隊に関する様々な建設と改革には、新たな進歩がみられる。地域の編成組織形態を完ぺきにし、ハイテク技術業種をよりどころとしたシステム化と編成化した、人員と装備を結びつけ、広域の共同編成や区域にまたがる抜き取りによる編成など、多岐にわたる編成形態を模索している。戦時に担うことになるかもしれない任務に基づき、予備役部隊の軍事訓練と考査大綱を改正し、完ぺきなものにし、現役部隊との連携訓練、合同訓練を強化し、基地化、シミュレーション化、コンピューターネットワーク作戦訓練の展開をしている。予備役将兵は一般的には、毎年240時間の軍事・政治訓練を受けている。予備役部隊は、平時には緊急対応ができ、戦時には応戦できるという目標を中心に建設し、数量や規模を重視することから質や効率を重視することへの転換、直接戦闘に参加することから支援・保障作戦を主とすることへの転換を加速させ、また、一般兵員の補充から技術兵員の補充を主とすることへと転換し、それによって現役部隊の有力な助けとなり、国防予備兵力としての力となるよう努める。

民兵の建設

 民兵は、中国の武装力の重要な構成部分であり、人民解放軍の予備兵力である。ここ数年来、民兵の建設において調整、改革を深化させ、構造の配置の調整、訓練の改革と装備の建設などの面において、新たな進展が見られた。現在、全国の基幹民兵数は800万人である。

 国境警備・海上防衛戦闘部隊、軍・兵種の各種勤務保障部隊、応急部隊の建設を重点的に強化し、農村から都市と重要な交通ルート沿線へ、一般地域から重要な方向と重点地域へ、在来の業種からハイテク業種へ広げていくことに力を入れ、民兵の構造、配置をさらに合理的なものにしていく。新しい『民兵の軍事訓練と考査大綱』の要求に基づき、軍事訓練の改革を推進し、現役部隊との合同訓練や合同演習を行い、各クラスの民兵訓練基地のシステム建設を強化し、重点分隊の訓練に力を入れ、民兵の応急時には緊急対応し、戦時には応戦する能力が目に見えて増強された。防空戦と緊急・安定維持の装備確保のための建設を強化し、新型の防空兵器や装備を配備し、既存兵器の技術のグレードアップと改造を行い、兵器・装備の完全率、組合せ率がいちじるしく向上した。

 民兵は反テロ・安定維持、災害救援、国境の防衛・警備、治安の共同防衛などの活動に積極的に参加し、多様化した軍事任務を完成させる中で、特色のある優位性を発揮している。毎年9万人以上の民兵が、橋梁、トンネル、鉄道線路などの警備に参加し、20万人以上の民兵が軍隊・警察・民兵による共同防衛パトロールに参加している。また、90万人以上の民兵が、甚大自然災害の緊急救援活動に参加し、200万人近くの民兵が都市と農村の社会治安の総合的維持・管理活動に参加している。

六、軍事面の法制

 中国の武装力は憲法と法律を遵守し、法律に則って軍隊を治めるという方針を貫徹し、軍事法制の整備を強化し、国防と軍隊建設を法制化の軌道に沿って前進させることを保障し、促している。

軍事法規システムの整備

 一部の重要な軍事法律・法規の制定と改正を行う。この2年間に、全国人民代表大会常務委員会は『中華人民共和国人民武装警察法』『中華人民共和国国防動員法』と新たに改正された『中華人民共和国予備役将校法』を審議、採択した。中国共産党中央と中央軍事委員会の新たに改正された『中国人民解放軍政治工作条例』を批准し、発布した。中央軍事委員会の新たに改正された『中国人民解放軍内務条令』『中国人民解放軍規律条令』『中国人民解放軍隊列条令』と新しい司令部工作条例を発布し、実施した。中央軍事委員会の批准を経て、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部は新たに改正された『軍隊基層建設要綱』を発布、実施し、総政治部は『中国人民解放軍思想政治教育大綱』を発布、実施した。国務院と中央軍事委員会は共同で『軍服管理条例』『武器装備品質管理条例』と新たに改正された『中国人民解放軍現役兵士服役条例』を発布し、施行した。各総部、軍・兵種、軍区と武装警察部隊は、一連の軍事規則を公布し、実施した。2010年12月までに、全国人民代表大会およびその常務委員会は、国防と軍事面に関する法律および関連法律問題についての決定を17件制定し、国務院、中央軍事委員会は共同で軍事行政法規97件を制定した。また、中央軍事委員会は軍事法規を224件制定し、各総部、軍・兵種、軍区と武装警察部隊は軍事規則3000件以上を制定した。

 軍事に関する法律・法規・規則の整理と編集作業を展開する。全国人民代表大会常務委員会の配置により、2008年中央軍事委員会法制機構は各総部、軍・兵種と武装警察部隊の法制部門を組織し、国防、軍事方面の法律の整理作業を展開した。2009年には、5回目の軍事法規および軍事規則の整理・編集作業が行われ、2008年末までに発布された現行の軍事法規(規範文書を含む)921件、軍事規則(規範文書を含む)7984件、廃止された軍事法規(規範文書を含む)65件、廃止された軍事規則(規範文書を含む)1214件の整理を行った。また『中華人民共和国軍事法規集(2004-2008)』『中国人民解放軍軍事規則集(2004-2008)』『中国人民武装警察部隊軍事規則集(2004-2008)』を編集し、出版した。

法律・法規の実施

 人民解放軍と武装警察部隊は法律に基づいて兵を用い、法律に基づいて行動を行うことを堅持している。災害救援に参加する部隊は、『中華人民共和国突発事件対応法』、『中華人民共和国防震減災法』、『軍隊の災害救援についての条例』などの法律・法規を厳格に執行している。安定維持・突発事件対処の任務を執行している武装警察部隊は、『中華人民共和国人民武装警察法』などの法律・法規を厳格に執行している。アデン湾、ソマリア沖に派遣され、航行護衛と海上の訓練を行っている海軍艦艇編隊は、『海洋法に関する国際連合条約』などの国際条約と中国の関係法律・法規を厳格に守っている。中国と外国の合同軍事演習に参加する部隊は、二国間や多国間条約の法律の枠組みの中で行動することを堅持し、法律に基づいて演習にかかわる法律問題を解決している。

 新たに改正された合同条令を貫徹し実施し、新合同条令の学習を教育訓練、各種のトレーニングと検査・考課に組み入れている。条令と条例に基づき活動を指導して展開し、部隊の戦時への備え、訓練、活動と生活秩序を全面的に規範化している。条令執行への取り組みを強化し、警備・監督査察のメカニズムを健全にし、規律違反事件を調査・処理している。安全のための法規・制度を実行し、安全の防備メカニズムを完ぺきなものにし、安全のための教育・訓練を行っている。

 ここ2年らい、軍隊は地方の関係部門と共同で『中華人民共和国人民防空法』、『中華人民共和国軍事施設保護法』、『軍服管理条例』などの法律・法規の執行検査活動を展開している。各クラス人民政府の兵役機関および徴兵活動に係わる人は『中華人民共和国兵役法』、『徴兵工作条例』などの法律・法規に基づき、徴兵活動の監督・検査活動をりっぱに行っている。軍隊の軍事訓練、装備の買付、規律の検査・監察、会計監査などの部門は、法律・法規に規定された職責と権限に基づいて、特定項目の法律執行検査活動を展開している。

軍事面の司法

 軍隊の政治・法律活動に対する党の組織・指導を堅持し、強化し、軍事司法活動のシステムを完ぺきなものにしている。2007年に、中央軍事委員会は『軍隊の政治・法律活動をいっそう強化することについての意見』を印刷して配布し、連隊以上の部門に政治法律委員会を設立することを規定した。2008年に、総政治部は『軍隊各クラスの政治法律委員会の活動規則』を制定した。

 予防を主とし、総合的に治め、建設を重点に置くという方針を貫徹し、犯罪予防の総合的対策を強化している。2009年に、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部は共同で『新たな情勢の下で軍隊の職務犯罪予防をいっそう強化することについての意見』と『規律検査部門、軍事検察機関が事故の調査・処理に参与することについての暫定規定』を共同で印刷し配布した。さまざまな不法犯罪活動を法律によって懲罰する中で、軍隊の各クラス防衛部門、軍事裁判所、軍事検察院は機能の役割を充分に発揮し、司法の公正を断固として守っている。

 国の司法改革の全般的配置に基づき、軍事司法制度の改革を推し進めている。人民解放軍軍事法院(裁判所)は『解放軍軍事法院の「人民法院量刑指導意見(試行)」に関する実施細則』を制定し、寛大と厳格を合わせた刑事政策を実行している。民事裁判の役割を模索しながら、訴訟と裁判以外の紛争処理を結びつけた紛争解決メカニズムを健全化させている。『軍事法院の訴訟に関わる投書・陳情処理事件についての終結弁法』を制定し、上告の再審査の透明度と信頼度を高めている。総政治部は『下級軍事検察院によって立件、調査された案件は上級軍事検察院によって審査され、逮捕を決定することに関する通達』を制定した。人民解放軍軍事検察院は関連実施方法を制定し、軍隊の職務犯罪事案の審査・逮捕決定の手続の改革を推し進めている。

法律サービスと法制の広報教育

 軍隊の各クラス司法・行政部門およびその他の関係部門は部隊が多様化した軍事任務を執行する需要に基づき、専門かつ高効率の法律保障を即時に提供している。災害救援任務の執行、アデン湾、ソマリア沖での航行護衛や、中国と外国の重要な合同演習に参加する部隊に法律顧問を配置した。法律サービスを行う分隊を何度も組織し、反テロ・安定維持任務を執行する部隊の法律問題の処理を助け、部隊と関係のある法律マニュアルを編集し印刷した。

 さまざまな形態の法律を末端に送達する活動を展開し、活動範囲は軍全体の3分の2以上の旅団・連隊クラスの部門をカバーし、末端の将兵に対して法律コンサルティングなどのサービスを提供している。地方の司法・行政部門や法律サービス機構との連係を強化し、将兵の法律に関する問題を解決する協業メカニズムを完ぺきなものにし、法律に関する問題の解決ルートを切り開いている。2009年に、軍隊の弁護士は刑事上の弁護700余件を担当し、さまざまな民事経済事件2300余件を代理処理した。

 法律サービス陣の建設を強化し、法律サービス組織を健全なものにした。現在、軍全体には法律顧問処268カ所が設立され、旅団・連隊クラスの部門には法律コンサルティングステーションが1600余カ所設立された。大隊・中隊は法律コンサルティンググループをあまねく設立している。軍全体では、合わせて軍隊弁護士1342人、法律コンサルタント2万5000人を有している。

 軍隊に関する権利擁護メカニズムを完備し、国防の利益と軍人・軍人家族の合法的な権益を守っている。全国の31の省(自治区、直轄市)ではすでに地方の党委員会によって統一的に指導され、司法機関が主体となり、政府の関係部門が共同で参与し、軍隊と地方が調和した軍隊に関する権利擁護活動の長期的かつ効果的なメカニズムが構築され、軍隊に関するかなり完ぺきな形の権利擁護機構が形成されている。2000年いらい、軍隊に関する各クラスの権利擁護機構は、延べ76万人の軍人・軍人家族に対する法律コンサルティングを提供し、延べ12万人の投書を受理し、来訪を接待し、軍隊に関するさまざまなトラブル計9万8000件を処理し、人民法院は軍隊に関する案件計3万4000件を審理した。

 第5次5カ年法律知識普及教育活動と結びつけて、法制の広報と教育の展開に力を入れ、将兵の法律資質を高めている。人民解放軍と武装警察部隊は法制の広報・教育を部隊の教育・訓練大綱と幹部の育成訓練考課評定のシステムに組み入れ、将兵を組織して、憲法と関連する法律・法規を学習させている。方法と手段を引き続き革新し、法制の広報・教育を時代に適合させ、吸引力と影響力を増強させた。

七、国防科学技術産業

 中国は軍民結合、軍需産業を民間経済に融合させた兵器装備科学研究生産システムを確立し、また、完ぺきなものにし、改革と発展を推し進め、科学研究と生産能力を高め、先進的な国防科学技術産業を構築することに努めている。

国防科学技術産業の改革と発展

 軍需産業経済の発展パターンを積極的に転換する。構造調整、産業の最適化・グレードアップと省エネ・排出減少を推し進め、世界金融危機に効果的に対応する。軍需産業能力の監督・管理に関する法規・制度システムを確立して健全にし、軍需産業能力と軍需産業のカギとなる設備・施設の監督・管理の質とレベルを高め、軍需産業経済の安定的かつ急速な発展を実現させる。

 軍需産業の企業・事業体が民間産業の能力と社会資本を利用して兵器装備の科学研究と生産を展開することを規範化し、指導する。2010年に、国家工業・情報化部、総装備部は『兵器・装備の科学研究・生産許可の管理条例』に基づき、『兵器・装備の科学研究・生産許可の実施方法』を公布、実施し、各種の経済主体が兵器装備の科学研究と生産任務の競争に参加することをいっそう規範化した。現在、兵器装備の科学研究と生産の許可を取得した民間産業企業はすでに許可された部門全体の3分の2を占めている。『国防科学技術産業社会投資分野の指導目録』を印刷、配布し、軍需産業企業の投資主体の多元化を推し進めている。

兵器装備の科学研究と生産能力を高める

 先進的な軍需産業の核心的な能力を建設する。国防科学技術産業は第十一次五カ年計画に盛り込まれた建設目標を全面的に完成し、ハイレベルの一連の科学研究プラットホームと新型装備の生産ラインを構築し、研究・開発、設計・エミュレーション、加工・製造、実験・テストなどの手段の近代化の度合いを高め、兵器装備の科学研究と生産任務の完成を保障し、規格・サイズの保障と基礎の強化が互いに促進し合い、協調的に発展することをおおむね実現した。

 自主的なイノベーション能力を強化する。軍需産業の企業・事業体、基礎的な科学研究機構と大学を奨励、サポートし、国防科学技術のイノベーション活動を展開させ、研究・開発の応用と基礎的な研究を強化し、新たな原理、新たな技術、新たな製造工程の模索、革新と応用の推進を加速し、先進的な工業技術に力を入れて発展させ、デジタル化、情報化技術の応用に大いに力を入れて推進させ、兵器・装備の科学研究と開発、生産の技術レベルとイノベーション能力を高めている。自主的なイノベーションを奨励する政策と評価制度を確立して健全にし、イノベーションの環境を構築し、イノベーションの人材陣を最適化し、科学技術革新の積極性と自発性を刺激する。また、国防科学技術産業における知的財産権の創造、運用と保護を大いに重視している。2009年には、数十項目の成果が国家技術発明賞と国家科学技術進歩賞を獲得した。

 兵器装備の科学研究と生産の基礎的な能力を強化する。国防科学技術の基礎的なプラットホームの建設、運行と管理を強化し、国防科学技術実験室と国防科学技術産業先進技術研究応用センターの、国防の基礎的な研究と応用的な研究の中における重要な役割を発揮させる。品質向上活動の長期的かつ効果的なメカニズムを確立し、品質の監督を強化し、製品品質の全般的レベルが着実に高められている。標準化、計量などの軍需産業技術のインフラ建設に力を入れ、兵器装備の科学研究生産の基礎的な保障能力を高めている。

軍需産業技術を平和的に利用する

 国のハイテク産業発展の重点と方向性をめぐり、軍需産業技術の普及・転化を加速させる。カギとなる技術が直面する難関と産業化のボトルネックを突破し、航空・宇宙飛行、電子情報、特殊技術装備、新エネルギーと高効率の動力、省エネ・環境保全などの分野で、戦略的な新興産業と軍需産業の特色あるハイテク技術産業を発展させ、新たな経済の成長スポットを育成し、国の産業振興とハイテク産業構造の調整を促進する。

 原子力エネルギー、宇宙空間技術の平和的な利用と開発を重視する。原子力エネルギーを積極的に発展させる産業政策の制定と公布は、原子力発電、原子燃料サイクル、原子技術応用産業の急速な発展を強力に促進した。航空宇宙製品の輸出が積極的な進展をとげた。中国はベネズエラのために通信衛星を開発し、それを成功裏に打ち上げ、関係国と通信衛星分野での協力における取り決めや契約に調印した。

国際交流と協力に参加する

 国防科学技術産業は平等、互恵・ウィンウィンの原則に従い、対外協力を行っている。友好国家との防衛技術の協力関係を発展させ、一部の友好国と政府間の軍需産業技術連合委員会のメカニズムを確立する。軍需産業の企業・事業体が国際交流と協力に参加するよう奨励、サポートし、一部の国と共同開発、共同生産、人材を共同で育成する方式で軍需産業技術の協力を展開している。

 中国政府は、担っている国際的義務、国際的承諾、国連安保理に関連する制裁・決議を厳格に履行し、国際慣行の準則に基づき、政府、グループ会社と輸出企業の3つのレベルの拡散防止メカニズムを確立して健全にし、慎重な態度で軍用品および関係技術の輸出に対応する。受け入れ国の正当な自衛能力の向上に役立ち、関係地域および世界の平和・安全・安定を損なわず、受け入れ国の内政に干渉しないなどの原則を踏まえて、軍用品の輸出企業に対して特許経営制度を実行し、軍用品の輸出製品に対して許可証管理を実行し、国の拡散防止の政策・法律を厳格に執行する。

 中国政府は原子力エネルギー分野での国際協力を重視し、すでに23の国と政府間原子力エネルギーの平和的利用における協力に関する協定を結び、先進的な原子力エネルギー技術を導入し、発展途上国に対してその能力にふさわしい支援を提供している。2009年4月、国際原子力機関(IAEA)と北京で「21世紀の原子力エネルギーに関する閣僚級会合」を成功裏に開催した。

 中国は宇宙空間を平和的に利用する原則に基づき、それぞれロシア、フランス、ブラジル、ウクライナ、アメリカ、欧州宇宙機関(ESA)などと宇宙空間技術、宇宙空間応用および宇宙空間科学分野で二国間の協力と交流を展開した。国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)とアジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)の関係活動をサポートし、宇宙空間技術を利用し地球の科学研究、防災・減災、遠い宇宙空間への探測、宇宙空間の破片の減少・緩和と防護などにおいての多国間の協力に積極的に参加している。

八、国防費

 中国は国防建設と経済建設の調和的発展の方針を堅持する。国防の需要と国民経済の発展レベルに基づき、国防費の規模を合理的に確定し、法律に則って国防費を管理し、使用する。

 国の経済社会の発展に伴い、中国の国防費は、適度にまた、理にかなった形で増加している。2008年と2009年の中国のGDPはそれぞれ31兆4045億人民元と34兆903億人民元であった。国の財政支出はそれぞれ、6兆2592.66億人民元と7兆6299.93億人民元であり、前年よりそれぞれ25.7%、21.9%増えた。2008年と2009年の中国の年度国防費は、それぞれ4178.76億人民元、4951.10億人民元であり、前年よりそれぞれ17.5%、18.5%増えた。ここ数年らい、中国の年度国防費のGDPに占める割合は安定しているが、国の財政支出に占める割合はわずかに低下している。

 中国の国防費は、主に兵員の生活費、訓練の維持費と装備費の3項目から成り立っており、それぞれが大体3分の1ずつを占めている。兵員の生活費は、将校、文官幹部、兵士、招聘任用されている現役ではない人員の給与・手当、住居、保険、食事、衣服などの費用に充てられる。訓練維持費は、部隊の訓練、大学・学校教育および各項目のプロジェクト施設の建設と維持、その他の日常的かつ消耗的な支出に充てられる。装備費は、兵器・装備の研究開発、実験、買付、メンテナンス、輸送、備蓄などに充てられる。国防費の保障範囲は、現役部隊、予備役部隊、民兵を含むと同時に、一部の退役軍人、軍人の配偶者の生活および子女の教育、国と地域の経済建設への支援など社会的な支出も含まれる。

表1:2009年中国国防費の支出(単位:億人民元)

 現役部隊予備役部隊民兵合計合計に占める比率(%)
兵員の生活費1670.6314.65 1685.2834.04
訓練の維持1521.7119.65128.591669.9533.73
装備費1574.2614.317.301595.8732.23
合計4766.6048.61135.894951.10100.00

 この2年来、増加している国防費は、主に次の3つの方面に使われている。(一)部隊の保障条件を改善する。国の経済社会の発展と国民の生活レベルの向上に適応し、軍人の給与・手当基準の調整を行い、教育トレーニング、給水・電気・暖房設備などの経費の基準を引き続き引き上げている。また、末端の後方勤務の総合的な組み合わせの整備を展開し、国境警備・海上防衛部隊、辺境、または条件の厳しい地域に駐屯する部隊の勤務・訓練と生活条件を改善する。(二)多様化した軍事任務を完成する。非戦時軍事行動における能力建設への資本投入を増やし、震災救援、アデン湾やソマリア沖での護衛航行、水害への緊急救援、国際救援などの活動を保障している。(三)中国の特色ある軍事変革を推し進める。買付価格、メンテナンスコストの高騰の勢いを受けて、ハイテク兵器装備および関連建設経費を適度に増やす。

 2010年、世界金融危機の深刻な影響は、まだ払拭されておらず、さまざまな不確定要素が多く、中国の財政収支が緊迫するという矛盾が依然として続いている。国家財政は重点的に「三農」(農業、農村、農民)、教育、科学技術、医療衛生、社会保障など民生支出を確保することを基礎とした上で、需要に基づき国防支出を適度に増加させていく。2010年の国防予算は、5321.15億人民元で、2009年に比べて7.5%増加しており、国防費の増加幅は、やや低下している。

 中国は、国防費に対して厳格な財政配分制度を実行している。毎年の国防予算は、すべて国の予算草案に組み込まれ、全国人民代表大会によって審査、批准される。国と軍隊の会計監査機構は、国防予算および執行状況に対して会計監査と監督を行う。ここ数年来、中国政府は国防費を科学的かつ綿密に管理することを強化しており、財政経済管理制度を改革、刷新し、資産管理の改革を促し、予算執行に対する監督と管理を強化している。また、指導幹部の経済責任に対する会計監査と経費や物資の使用に関する専門の会計監査を組織し、国防費支出の透明度と規範性を高め、国防費の正確かつ有効な使用を確保している。

九、軍事的な相互信頼の醸成

 軍事的な相互信頼は、国の安全と発展、地域平和と安定を守る有効な手立てである。中国は政治面での相互信頼の増強を基礎として、共同の安全を促進させることを目標とし、平等な話し合い、互いの核心的利益と重要な安全に対する関心を尊重し、第三国に向けられず、他国の安全や安定などを損なわず、またそれに脅威を与えることもしない、という原則を遵守し、平等、互恵、有効な軍事的相互信頼メカニズムの構築を推進している。

戦略的協議と対話

 ここ数年来、中国は関係諸国と安全、防衛分野における広はんな戦略的協議と対話を展開しており、相互理解と信頼を深め、意思疎通と協調を深めている。中国はすでに22の国と防衛安全協議と対話のメカニズムを構築している。

 中国とロシアは、戦略的協力パートナーシップを全面的に深化させ、発展させていく。中国、ロシア両国の軍隊は、1997年に戦略的協議メカニズムを構築した。2010年には、両国軍隊の総参謀部は、第13回戦略的協議を開き、双方は国際戦略の情勢、北東アジア、中央アジア、南アジアおよび両国軍隊の協力などの問題について、多くの共通認識を得た。

 中国とアメリカの両国は、拡散防止、反テロと二国間の軍事安全協力などの面についての協議を行っている。1997年に中国とアメリカの両国は、国防部・省間の防衛協議メカニズムを構築した。2009年6月と2010年12月に両国は第10回、第11回国防部・省間防衛協議を開催し、双方が関心を持つテーマについての対話が行われた。2009年の2月と12月に中国とアメリカは、第5回、第6回国防部・省間の会談を行った。 中国は周辺諸国との防衛安全協議を重視している。モンゴル、日本、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、シンガポール、インド、パキスタンなど周辺諸国との防衛安全協議と政策対話メカニズムを構築している。定期的に異なるクラスの協議・対話を行い、主にアジア・太平洋の安全情勢、双方の軍事関係、地域のホットスポットなどの問題について模索し、相互理解を促進し、善隣友好を強固にし、互いの信頼と協力関係を深め、地域の平和と安定を守る上で積極的な役割を果たしている。

 中国はその他の国とも広はんな戦略的協議と対話を展開している。2009年9月には、中国、ドイツ両国の軍隊による第4回防衛戦略協議が開催され、10月には中国、オーストラリア両国軍隊による第12回防衛戦略協議が開催された。2009年3月と2010年6月には、中国とニュージーランドとの第2回、第3回戦略対話が行われ、2010年2月には中国、イギリス両国軍隊の防衛戦略協議が開かれた。同年11月には、中国と南アフリカの間で第4回防衛委員会会議が開かれた。また中国はエジプトと防衛(協力)委員会会議メカニズムを構築し、トルコとはハイレベルの軍事協力対話会議メカニズムを、アラブ首長国連邦とは防衛協議メカニズムを構築し、中国と中東諸国との防衛交流の分野を開拓した。

国境地域における信頼醸成措置の構築

 中国は一貫して善隣関係と隣国をパートナーとする周辺外交の方針を堅持し、周辺諸国と国境地域での信頼醸成措置の構築を重視し、国境地域に駐屯する軍隊の友好的な交流を強化し、危険な軍事活動を積極的に予防し、国境地域の平和と安定を守る。

 1993年9月と1996年11月に、中国とインドは前後して『中印国境実際支配線地区における平和・安寧維持に関する協定』『中印国境実際支配線地区の軍事分野における信頼醸成措置に関する協定』を締結し、2005年4月には『中印国境実際支配線地区の軍事分野における信頼醸成措置の実施方法に関する議定書』を締結し、1996年の信頼醸成措置協定の関連条項の具体的な実施方法について合意に達した。

 1996年4月に中国とカザフスタン、キルギス、ロシア、タジキスタンは『国境地区の軍事分野の信頼強化に関する協定』に調印した。また1997年4月には、中国と上述の国との間で『国境地区における軍事力相互削減に関する協定』を締結し、7600余キロに及ぶ、中国・カザフスタン、中国・キルギス、中国・ロシア、中国・タジキスタンの国境一帯の一定の縦深における戦闘部隊と兵器装備の削減を行い、毎年相互に視察活動を組織し、国境地域における信頼醸成措置の実施状況を監督し、また詳細な調査を行うことになった。1998年12月に中国とブータンは、『中国・ブータン国境地区における平和・安寧維持に関する協定』を締結した。

 人民解放軍国境警備部隊は、軍事分野における国境信頼醸成協定を忠実に履行している。20世紀90年代以来、中国国防部は、それぞれ朝鮮、ロシア、モンゴル、カザフスタン、キルギス、ミャンマー、ベトナムなどの国の関連部門と『国境警備協力取り決め』を締結し、総部、軍区(省軍区)と国境警備部隊という三つのレベルの会談メカニズムを構築し、国境に関する情報をただちに通報するようにし、重要な国境事務を協議し、処理している。人民解放軍国境警備部隊は、国境沿いに60ヵ所以上の国境地域の会談・会見所を建設し、毎年、隣国と会談や会見を数千回行っている。ここ数年らい、ロシア、タジキスタン、モンゴル、パキスタンなどの国と国境地域で二国間または多国間の国境地域における封鎖・コントロール、反テロのための合同軍事訓練と合同軍事演習を行い、合同パトロールや合同検査などの活動を行っている。

 中国政府と多くの陸地続きの隣国は、国境管理制度協定を締結し、ともに国境地域の秩序を守り、国境を越える河川の保護と利用、国境地域における連絡制度の構築、国境に関する事務処理の協議など、協力措置について明確にしている。国境問題特別代表会合制度を構築し、外交的手段を通さずに解決できる国境問題に関する事務に対して、責任をもって隣国と協議する。中国の国境問題特別代表者は、政府によって任命され、国境警備部隊の指導者が担当し、現地の軍事機関、外事部門の指導の下で仕事をする。国境問題特別代表者は定期的に国境関連の情報交換を行い、さまざまな国境での事件の予防と処理を行い、国境通関所の管理、国境に跨がる輸送、漁業協力、環境保護、災害予防などに呼応して適宜処理を行う。

海上安全における対話と協力

 中国は積極的に国際的な海上安全における対話と協力に参与し、『国連憲章』『国連海洋法条約』およびその他の公認された国際関係の原則を遵守し、共同安全と共同発展の追求を堅持する。また、沿海国の主権と権益を尊重し、海上の伝統的な安全面における脅威と非伝統的な安全面における脅威に協力して対応することを堅持し、平和のためのさまざまな道すじと手段を模索し、海上の安全を守ることに努めている。

 1998年に、中国とアメリカは海上軍事安全協議メカニズムを構築し、海上軍事安全問題に関する話し合いを進めている。これまでに、8度の年度会談を行い、13度の活動グループ会議と2度の専門的な会議が行われ、海上活動における安全の促進、海上での想定外の事件の防止、また、その他の相互信頼醸成措置の建設に対して、積極的な役割を果たしている。2009年8月に、中国とアメリカの海上軍事安全協議メカニズムに関する専門会議が開催され、2010年10月には、中国とアメリカの海上軍事安全協議メカニズムに関する年度会談が開かれた。

 2005年10月、中国とベトナムは『中越海軍北部湾(トンキン湾)合同パトロール協議』を締結した。両国の海軍は、北部湾合同パトロール弁公室を設立し、10度の合同パトロールと5度の年度会談を行った。2009年2月には、中国と韓国の海軍・空軍の戦闘部隊間のホットラインが正式に開通した。2008年以来、中国と日本は、海上連絡メカニズムの構築について、多くの活動協議を行った。中国の海軍は、西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)の各種活動に積極的に参加し、アセアン地域フォーラム(ARF)とアジア・太平洋地域安全保障協力理事会(CSCAP)の海上安全に関するシンポジウムに参加している。 ここ2年らい、中国海軍は、延べ10余回20余隻の艦船を派遣し、30以上の国を訪問し、また中国に20以上の国の30余隻の艦船が来訪した。

地域安全協力

 アジア・太平洋地域では多層的な、複合型の地域安全協力の枠組みが形成されており、さまざまな安全協力メカニズムがいっそうの発展をとげた。中国はアジア・太平洋地域の安全保障対話と安全保障メカニズムの構築に積極的に参加し、アジア・太平洋地域諸国の政治上の相互信頼と安全協力を強化し、軍事上の相互信頼の確立を推し進め、地域の平和と安定を維持している。

 2009年以来、上海協力機構は安全分野の協力において引き続き良好な発展の勢いを保っている。加盟諸国は前後して『反テロリズム条約』『国際情報安全保障協力に関する政府間協定』『犯罪取締まり協力に関する政府間協定』などの文書に調印し、安全保障協力の確固たる法的基盤を打ち固めた。国際大型イベントの安全保障協力メカニズムを完備させ、2010年にモスクワで行われた世界反ファシズム戦争勝利65周年記念式典、上海万博、広州アジア競技大会などがスムーズに行われることを確保した。反テロ合同演習のシステム化した発展、「平和の使命」反テロ合同軍事演習、「ノラーク反テロ-2009」、「サラトフ反テロ-2010」という法律執行・安全保障部門による反テロ演習を行い、地域のテロリズム、分裂主義、極端主義の勢力を大いに震い上がらせた。加盟国の安全保障会議事務局長、検察総長、最高法院(裁判所)院長、国防相、公安相・内務相およびその他の法律執行・安全保障部門の指導者が定期的に会談を行い、司法、防衛、法律執行・安全保障などの分野における協力を深めた。

 中国はアセアン地域フォーラム(ARF)、中国・アセアン、アセアン・中日韓の枠組み内での多国間安全保障会議に積極的に参加している。2004年には、中国の提唱により、ARF安全保障政策会議(ASPC)が発足し、同フォーラムの国防当局の参加者のレベルが最も高い対話メカニズムとなっている。2010年5月に、中国は第7回ARF安全保障政策会議で、非伝統的安全保障協力についての研究に取り組み、協力を着実に進めることなどを提案した。2010年10月に、第1回拡大アセアン国防相会議に参加し、地域安全保障面での対話と協力を強化する提案と主張を行った。ここ数年来、中国・アセアンの防衛・安全保障対話、アセアン・中日韓武装部隊の非伝統的安全保障協力フォーラム、アセアン地域の武装部隊による国際災害救援の法律規約整備シンポジウムなどを何度も主催した。

 2007年以来、中国はハイレベルの国防当局者をシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に毎年派遣し、中国の国防政策と地域安全保障協力に関する主張を表明している。

対外軍事交流

 中国は全方位の対外軍事関係を発展させ、各国の軍隊との交流や協力を着実に進め、相互信頼・互恵の軍事的安全環境を整えるよう努めている。この2年間に、人民解放軍のハイレベル軍事代表団が40余りの国を訪問し、60余りの国の国防相、参謀総長が中国を訪問した。

 中国とロシア両国の軍隊は戦略的相互信頼と実務的な協力をたえず深めている。両国軍隊は、ハイレベルの相互訪問を頻繁に行い、『弾道ミサイルと宇宙航空運搬ロケットの打ち上げの相互通報についての協定』に調印し、人材育成、国境警備、大学・学校、防空兵などの交流と協力を展開している。中国とアメリカ両国の軍隊の関係は紆余曲折を経たが、双方は効果的対話と交流を維持してきた。両国軍隊は防衛協議や海上軍事安全協議、軍事に関する保存文書などのメカニズムについての交流を計画的に行った。中国とヨーロッパの軍事関係が継続して前進をとげている。中部ヨーロッパ・東ヨーロッパ諸国との伝統的友好関係を強固にし、西ヨーロッパ諸国との交流を着実に進め、北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)との軍事関係の発展を模索している。

 周辺諸国との軍事関係を強化している。朝鮮、韓国の軍隊との友好的往来をくりひろげ、中日防衛交流を重視し、中国とパキスタンの両国軍隊の全面的交流と協力を深め、中国とインドの両国軍隊の関係の発展に力を入れ、アセアン諸国の軍隊との友好的往来に努め、オーストラリア、ニュージーランドなどの国との軍事交流を促している。

 アフリカ、西アジア、ラテンアメリカ、南太平洋などの地域の発展途上国との軍事交流を発展させている。軍隊のハイレベルの相互訪問を促進し、中年・青年将校の交流をくりひろげ、協力分野をたえず模索し、拡大している。初めて「平和の箱舟」号病院船を派遣してジブチ、ケニア、タンザニア、セイシェルなどのアフリカの国を訪問させ、人道的医療活動を行った。初めてアフリカの英語圏諸国の軍事学院・学校の院長・校長セミナー、アフリカのフランス語圏諸国の軍病院の院長セミナー、アフリカのポルトガル語圏諸国の中高級将校セミナーを開き、ラテンアメリカ、カリブ、南太平洋の国々のハイレベル将校セミナーを継続的に開いている。

 2008年に国防部スポークスマン制度をスタートさせて以来、前後して震災救援、海上護衛、国際人道的救援などをテーマとする記者会見を7度行い、重要な情報をただちに発表している。公共外交の取り組みを強め、何度も国内外のメディアを組織して戦闘部隊を見学、取材させている。国防部のウェイブサイトなどを通じて、国防と軍隊の建設に関する状況を適時提供している。 2009年の中国人民解放軍海軍・空軍成立60周年の際には、「調和のとれた海洋」をテーマとする多国間海軍の活動が行われ、空軍による「平和・発展国際フォーラム」が開催された。

十、軍備抑制と軍縮

 中国は国際軍備抑制、軍縮、拡散防止への努力を重視し、また積極的に参加し、国連およびその他の関連する国際機構と多角的なメカニズムの役割を充分に発揮させるよう主張し、既存の多角的な軍備抑制、軍縮、拡散防止体系を強固にし、さらに強化し、各国の安全に対する正当かつ合理的な関心を尊重して配慮し、世界の戦略的バランスと安定を守っている。

核軍縮

 中国は一貫して核兵器の全面禁止と完全廃棄を主張している。中国は、最大の核兵器庫を擁する国は核軍縮に対して特殊な、優先的責任を負っており、査察でき、不可逆な、また法律の拘束力を備えた方法に則って、引き続き大幅な核兵器庫の削減を行い、全面的かつ徹底的な核軍縮を最終的に実現するために必要な条件をつくり出すべきだと考えている。条件が成熟した時に、他の核兵器保有国も多国間の核軍縮会談プロセスに参加すべきである。全面的かつ徹底的な核軍縮を最終的に実現するために、国際社会は、また、確実に実行可能な、段階に分かれた長期的な計画を適時制定すべきで、その中には「包括的核兵器禁止条約」の締結も含まれている。

 中国政府は、核兵器を包括的かつ徹底的に禁止または廃棄する前に、すべての核兵器保有国は、先に核兵器を使用することを基礎とする核威嚇政策を放棄すべきであり、非核兵器保有国と非核地帯に対して、無条件に、核兵器を使用しないかまたは核兵器の使用をもって威嚇しないことを明確に約束し、また関連する国際法律文書についての会談を行うと同時に、核兵器保有国の間でも「核兵器相互先制不使用条約」に関する会談を行い、それを締結するよう主張している。

 中国は建設的な姿勢で『核兵器不拡散条約(NPT)』の審議プロセスに参加し、締約国とともに2010年第8回の審議大会で取得した積極的な成果を真剣に実行することを願っている。中国は『包括的核実験禁止条約(CTBT)』の早期発効を支持し、ジュネーブ軍縮交渉会議が「核兵器またはその他の核爆発装置に用いる分裂物質生産禁止条約」について迅速に交渉を始めることを支持している。

 中国は国連安全保障理事会の常任理事国と『核兵器不拡散条約(NPT)』を締結する核兵器国として、いついかなる時も、核軍縮の義務を回避することなく、公開、透明、責任を負う核政策を実行している。中国は一貫して、いかなる時、いかなる情況の下でも、先に核兵器を使用しないという政策を厳守し、非核兵器保有国と非核地帯に対しては、無条件で核兵器を使用しないか、または核兵器の使用をもって威嚇しないことを明確に約束した。中国が他国に核兵器を配置したことはなく、核兵器の発展面においては終始、自制の態度をとっており、いかなる形の核軍備競争に、今までもまたこれからも参加することはなく、みずからの核戦力を国の安全需要のための最低のレベルとして維持することを継続する。

 中国は「核実験の一時中止」の約束を引き続き守っており、『包括的核実験禁止条約(CTBT)』機構準備委員会の活動に積極的に参加し、国内の条約履行の準備過程を着実に推し進めている。中国は12ヵ所の国際監視測定システム観測ステーションと実験室の建設を担当している。現在、すでに6ヵ所の地震観測ステーション、3ヵ所の放射性核物質観測ステーション、北京放射性核物質実験室と中国国家データセンターの建設を完了し、超低周波不可聴音観測ステーション1ヵ所を建設中である。

 中国は一貫して非核兵器保有国が非核地帯を設立する努力を支持している。中国はすでに署名開放されたすべての非核地帯条約の関係議定書に署名し、またそれを批准しており、すでにアセアンと『東南アジア非核地帯条約』に関する問題で合意し、中央アジア諸国が合意した『中央アジア非核地帯条約』および議定書を支持している。また、中東非核地帯の設置を支持している。

 中国は、世界ミサイル防衛計画は世界の戦略的バランスと安定を損ない、国際および地域の安全にとってもマイナスとなり、核軍縮のプロセスに消極的な影響を与えると考えている。中国は、すべての国が海外で戦略的なミサイル迎撃能力と潜在力を備えたミサイル迎撃システムの配置や関連国際協力の展開をすべきでないと主張している。

拡散防止

 中国は大規模殺傷兵器とその運搬手段の拡散に断固として反対し、終始、責任を持って拡散防止の取り組みに参加している。中国は以下のような考えを持っている。根本的に拡散を防止するために、相互信頼関係を築き、協力関係にある世界と地域の安全環境の構築に力を注ぎ、大規模殺傷兵器の拡散の内的要因を取り除いていかなければならない。また、政治と外交の手段で拡散防止の問題を処理することを堅持すべきである。次に国際拡散防止メカニズムの権威性、有効性と普遍性を適切に擁護し、強化すべきである。そして、国際拡散防止の努力の公正性と非差別性を確保すべきであり、拡散防止と科学技術の平和利用との関係をバランスをとって処理し、ダブルスタンダードを取り除かなくてはならない。中国は拡散防止分野におけるすべての国際条約と関連する国際機構に参加しており、国連の拡散防止においてしかるべき役割を発揮することを支持し、安全保障理事会の関連の決定を真剣に実施している。

 中国は、対話・協議によって朝鮮半島の核問題を解決することを主張し、六ヵ国協議の推進により各国が関心を寄せている問題をバランスよく解決し、朝鮮半島の非核化を実現し、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定を維持することに尽力している。中国は終始、大局と将来に目を向け、和解と協議の促進に取り組み、各国が接触・対話を通じて六ヵ国協議の早期再開のための条件をつくり出せるよう力を入れていく。

 中国は対話と交渉によってイラン核問題を平和的に解決し、中東地域の平和と安定を守るよう主張している。中国は一貫して、平和のための交渉を促し、関係国に対しての根回しを積極的に行う。中国はイランの核問題をめぐる、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツの6カ国外相会議と政治局長会議に何度も参加し、建設的な姿勢で国連安全保障理事会と国際原子力機関 (IAEA)のイラン核問題審議の進展に参加した。

 2009年いらい、中国は前後してアメリカ、ロシア、イギリス、ドイツ、ブラジル、カナダ、パキスタン、韓国、欧州連合(EU)、オーストラリア、イスラエルなどの国と軍備抑制と拡散防止の折衝を行い、多国間輸出規制メカニズムとの対話と交流も引き続き強化している。「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」と対話を展開し、またその技術専門家の対外連合会に参加した。中国はアセアン地域フォーラム(ARF)の枠組みの下で、関係国間における拡散防止と軍縮会議でのミーティングを共同で開催し、生物安全と生物テロ対策問題の討論に参加している。

 中国は拡散防止のための輸出管制を高度に重視し、現在はすでに、核、生物、化学、ミサイルなどの関連するセンシティブな物資と技術およびすべての軍用品をカバーする完全な輸出管制法規システムを確立してきた。中国の輸出管制法規は国際通用の許可証管理制度、最終ユーザーと最終用途証明制度、リスト抑制方法、全面的抑制原則などのやり方を広く採用している。2009年に、商務部は『両用品及び技術輸出汎用許可管理弁法』を制定し、輸出許可証管理のシステムをさらに完ぺきなものにした。

 中国は核安全の問題を重視し、核テロリズムに反対し、効果的な核安全の措置をとり、良好な核安全の記録を保っている。中国は核安全の国際義務を厳格に履行し、国際の核安全における協力に積極的に参加し、関係国と協力し中国で核安全のモデルセンターを設立する予定である。

生物兵器と化学兵器の禁止

 中国は『化学兵器禁止条約(CWC)』に規定された諸義務を真剣に履行し、中央から地方までの各クラスの条約履行機構を設置した。各種の年度発表、新たに発見された日本が中国領内に遺棄した化学兵器の後続発表および年度国家防護方案を期限通りに、かつ完全に提出し、化学兵器禁止機構(OPCW)の現場査察を240回以上受け入れた。中国は化学兵器禁止機構との協力を積極的に展開し、化学兵器禁止機構とともに化学兵器禁止機構オブザーバーの養成コースおよび防護・支援の養成コースを何度も開設し、またその機構を通じてアフリカの締約国に援助を提供した。日本が中国領内に遺棄した化学兵器処理の進展を促進するため、中国は日本と協力して150回以上にわたる現場調査、発掘、回収と鑑別作業を行い、5万件近くの遺棄化学兵器を回収し、また2010年10月から南京で日本の遺棄化学兵器の廃棄を開始した。中国は日本に対して、投入を拡大し、遺棄した化学兵器の処理プロセスを加速するよう促している。

 中国は『生物兵器禁止条約(BWC)』の有効性を強化するための多角的な努力を支持し、同条約を全面的かつ厳格に履行することに努め、比較的整った条約履行のための法律システムを確立し、国の条約履行連絡スポットを設立した。毎年、同条約の履行支援ユニット(ISU)に信頼醸成措置の発表資料を期限通りに提出し、締約国の年次例会と専門家グループ会議および関係するシンポジウムに参加し、生物安全と伝染病発生状況の監視測定・コントロールに力を入れ、生物分野における国際的交流と協力を展開している。

宇宙空間における軍備競争の防止

 中国政府は宇宙空間における兵器化と軍備競争に反対し、一貫して宇宙空間の平和的利用を主張しており、国際社会が交渉を行って宇宙空間に関する国際法律文書を締結することは、宇宙空間の兵器化と軍備競争を防止する最適な道すじであると考えている。 2008年2月、中国とロシアは共同でジュネーブ軍縮会議(CD)に「宇宙空間における兵器配置、宇宙空間の物体に対する武力行使または武力行使の威嚇を防止する条約」草案を提出した。2009年8月、中国とロシアはともに作業文書を提出し、この条約草案に対してのジュネーブ軍縮会議の各方面からの問題と論評に答えた。中国は、各方がこの草案についての早期会談を行い、宇宙空間に関する新たな条約を締結することを願っている。

通常兵器の軍備抑制

 中国は『特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW) 』(特定通常兵器条約)および関連議定書の諸義務を真剣に履行し、要求に従ってこの条約に付属された『地雷議定書』の年度条約履行報告を提出し、クラスター爆弾問題に関する政府専門家グループ会談に積極的に参加している。2010年4月、同条約に付属された『爆発性戦争残存物に関する議定書』を批准した。

 2009年いらい、中国は国際人道主義の地雷除去への援助に引き続き積極的に参加している。アフガニスタン、イラク、スーダンの地雷除去技術者の訓練を行った。エジプト、アフガニスタン、イラク、スーダンとスリランカに無償で地雷除去機材を贈与し、ペルー、エチオピアの「地雷による被害者」への支援を提供した。 中国は軽火器と小型兵器の不法貿易を取り締まるための国際的な取り組みをサポートし、それに積極的に参与している。国連の軽火器と小型兵器に関する『行動綱領(アクション・プログラム)』と『不法な軽火器と小型兵器を識別、追及する国際文書』を実行に移した。また、中国は、「武器貿易条約(ATT)」問題に関する国連オープンエンド作業部会(OEWG)と「武器貿易条約」大会の初回の準備委員会に参加し、2010年には、第4回の軽火器・小型兵器に関する国連の隔年会議に参加し、国としての報告を提出した。

国防費の透明性と通常兵器譲渡登録

 中国は軍事の透明性の問題を重視し、世界各国との軍事的相互信頼を深めるための努力を払っている。中国は2007年から国連の国防費透明性制度に参加した。中国は「国連通常兵器登録」の役割を重視し、同「登録」に7種類の通常兵器の輸出入データを引き続き提出している。