データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中国の軍事戦略

[場所] 
[年月日] 2015年5月
[出典] 中華人民共和国国務院報道弁公室
[備考] 
[全文]

前書き

 現在の世界はかつてない激動に直面しており、現代中国は改革と発展の肝心な段階にある。中国人民は中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために奮闘しており、世界各国と手を携えて平和を守り、ともに発展をはかり、繁栄を共有することを望んでいる。

 中国と世界の運命は緊密に関係しており、世界の繁栄・安定は中国のチャンスであり、中国の平和的発展は世界のチャンスでもある。中国は終始変わることなく平和的発展の道を歩み、独立自主の平和外交政策と防御的国防政策を励行し、さまざまな形の覇権主義と強権政治に反対し、永遠に覇をとなえず、永遠に軍事拡張を行わない。中国の軍隊は一貫して世界の平和を守る確固とした力である。

 国防の強化と強大な軍隊の建設は、中国の現代化建設の戦略的任務であり、国家が平和に発展するための安全面の保障でもある。軍事戦略は軍事力の建設・運用を計画し指導するための全般的方策であり、国の戦略目標に従い、奉仕しなければならない。新たな歴史的起点に立って、中国の軍隊は国の安全環境の新たな変化に適応し、新たな情勢下における中国共産党の軍強化目標の実現を中心に据え、新たな情勢下における積極的防御という軍事戦略方針を貫徹し、国防と軍隊の現代化を加速し、国家の主権、安全、発展の利益を断固として守り、「二つの百周年」(中国共産党創立百周年と新中国成立百周年)の奮闘目標と中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために堅固な保障を提供していく。

一、国の安全情勢

 今の時代は、世界の多極化、経済のグローバル化、社会の情報化がさらに進み、国際社会は日増しに相互依存・相互影響の運命共同体になっており、平和・発展・協力・ウィンウィンは押しとどめることができない時代の流れになっている。

 国際情勢は深く変化しており、世界の力関係、グローバルガバナンスシステムの構造、アジア太平洋地域の地政学的戦略構造と国際経済・科学技術・軍事競争の枠組みに歴史的な変化が生じている。平和を擁護する力が上昇し、戦争を制約する要素が増えており、予想できる将来において、世界大戦が発生する可能性はなく、全体として平和な態勢が保たれるだろう。しかし、覇権主義・強権政治・新干渉主義などが新たに頭をもたげ、さまざまな国際勢力の権力・権益の再分配をめぐる闘争は激しさを増し、テロリズムの活動が日増しに活発化し、民族・宗教の矛盾、国境・領土紛争などのホットスポットは複雑に転変し、小規模な戦争や衝突、危機の頻発は相変わらず一部地域の常態であり、世界は依然として現実的及び潜在的な局地戦争の脅威に直面し続けるだろう。

  中国の発展は依然として大いに力を発揮できる重要な戦略的チャンスの時期にあり、外部環境は総体としてわれわれに有利である。国の総合国力、核心的競争力、リスクへの対応能力が著しく増強し、国際的な地位と国際的な影響力は著しく向上し、人民の生活は著しく改善され、社会の大局は安定を保っている。発展途上国の一つとして、中国は依然として多元的で複雑な安全上の脅威に直面しており、遭遇する外部の抵抗力と挑戦は徐々に増えており、生存のための安全保障と発展のための安全保障、伝統的脅威と非伝統的脅威が相互にからまりあうなかで、国家の統一を守り、領土を保全し、発展の利益を守ることはきわめて困難で重い任務である。

 世界の経済と戦略的重点が急速にアジア太平洋地域に移るにつれて、アメリカはアジア太平洋の「リバランス」戦略を引き続き推し進め、その地域における軍事的存在と軍事同盟システムを強化している。日本は積極的に戦後体制からの脱却をはかり、大幅に軍事安全保障政策を調整し、国家の発展方向は同地域の国々から強く注目されている。一部の海上隣国は中国の領土主権と海洋権益に関わる問題で挑発的な挙動をとり、違法に「占拠」した中国の島礁で軍事的存在を強化している。いくつかの域外国も南中国海の事務に極力介入し、ごく一部の国は中国に対して海と空からの頻繁な接近偵察を維持しており、海上における権益保護の闘争は長期にわたって存在するだろう。いくつかの陸上における領土紛争が依然として存在し、朝鮮半島と東北アジア地域の情勢には数多くの不安定・不確定要素が存在している。地域のテロリズム・分裂主義・過激主義の活動は猛威を振るい、これも中国周辺の安全と安定に悪影響を及ぼしている。

 台湾問題は国家の統一と長期的発展にかかわっており、国家の統一は中華民族が偉大な復興に向かうための歴史的必然である。ここ数年来、両岸関係は平和的発展の良好な勢いを保っているが、台湾海峡の情勢の安定を妨げる根本原因はまだ取り除かれておらず、「台湾独立」の分裂勢力及びその分裂活動は依然として両岸関係の平和的発展にとって最大の脅威となっている。国家の政治的安全と社会的安定を守ることはきわめて困難で重い任務であり、「東トルキスタン」「チベット独立」などの分裂勢力の危害は深刻で、特に「東トルキスタン」暴力テロリズムの脅威はいちだんとエスカレートし、反中国勢力は「色の革命」をでっちあげようとはかり、国家の安全と社会の安定はより多くの挑戦に直面している。国家利益が絶え間なく広がるにつれ、国際情勢と地域情勢の動揺、テロリズム、海賊活動、重大な自然災害と疾病などがみな国家の安全に対する脅威となり、海外エネルギー資源、戦略ルートの安全、及び海外での機構・人員・資産の安全など、海外利益の安全保障問題が顕在化してきた。

 世界の新たな軍事革命はさらに深化発展し、兵器・装備の長距離ピンポイント化、スマート化、ステルス化、無人化の趨勢が明らかで、宇宙空間とサイバー空間は各方面の戦略競争における新たな攻略ポイントとなり、戦争の形態は急速に情報化戦争へと移行している。世界の主要国は国家の安全戦略と防衛政策を積極的に調整し、軍事のモデルチェンジ推進を加速し、軍事力のシステムを再構築している。軍事技術と戦争形態の革命的な変化は、国際政治・軍事構造に重大な影響を生じ、中国の軍事安全保障に対して新たな厳しい挑戦をもたらしている。

二、軍隊の使命と戦略任務

 中国の国家戦略目標は、中国共産党創立百周年を迎えるまでに小康社会を全面的に築き上げ、新中国成立百周年を迎えるまでに富強・民主・文明・調和の社会主義現代化国家を築き上げるという奮闘目標を実現することであり、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現することである。中国の夢は強国の夢であり、軍隊にとっては強軍の夢である。軍隊を強くしてこそ国を守ることができ、国を強くするには軍隊を強くしなければならない。新たな歴史的時期に、中国の軍隊は新たな情勢下における中国共産党の強軍目標を大綱とし、揺るぐことなく軍隊に対する党の絶対的指導を堅持し、終始戦闘力を唯一の根本基準とし、栄えある伝統と優れた作風を大いに発揚し、党の指揮に従い、戦争に勝利できる、優れた作風の人民の軍隊を建設する。

 新たな時代条件の下で、中国の国家安全保障の内包と外延は歴史上いかなる時よりも豊富になり、時空領域は歴史上いかなる時よりも広大になり、国内外の要素は歴史上いかなる時よりも複雑になっており、必ず総合的国家安全保障観を堅持しなければならず、内部の安全保障と外部の安全保障、国土の安全保障と国民の安全保障、伝統的安全保障と非伝統的安全保障、生存のための安全保障と発展のための安全保障、自国の安全保障と共同の安全保障を統一的に計画按配しなければならない。

 国家の戦略目標を実現し、総合的な国家安全保障観を貫徹するために、軍事戦略の革新と発展、軍隊の使命・任務の効果的な履行に対して新たな需要が打ち出された。国家の安全と発展の利益を守る新たな要請に応じて、軍事力と武装手段を運用して有利な戦略態勢を築くことをより重視し、平和的発展を実現するために堅固で力強い安全保障を提供しなければならない。国家の安全情勢の発展の新たな要請に応じて、戦略指導と作戦思想を絶えず革新し、戦争ができ、戦争に勝利できることを保障しなければならない。世界の新軍事革命の新たな要請に応じて、新しいタイプの安全保障分野に対する挑戦を高度に注目、対応し、軍事競争戦略の主導権を握るよう努めなければならない。国家の戦略的利益の発展の新たな要請に応じて、地域的及び国際的な安全保障協力に積極的に参与し、海外での利益と安全を効果的に守らなければならない。国の改革の全面的深化の新たな要請に応じて、軍民の融合的発展の道を歩むことを堅持し、国家の経済社会建設を積極的に支援し、社会の大局の安定を断固として擁護し、軍隊を終始党の執政地位を強化する中核の力、及び中国の特色ある社会主義を建設するための信頼できる力としなければならない。

 中国の軍隊は新しい歴史的時期の軍の使命を効果的に履行し、中国共産党の指導と中国の特色ある社会主義制度を断固として守り、国家の主権、安全、発展の利益を断固として守り、国家の発展の重要な戦略的チャンス期を断固として守り、地域と世界の平和を断固として守り、小康社会の全面的な構築と中華民族の偉大な復興のために力強い保障を提供する。

 中国の軍隊は主に次の戦略的任務を担う。各種の突発事件と軍事的脅威に対処し、国家の領土・領空・領海の主権と安全を効果的に守る。祖国の統一を断固として守る。新しいタイプの分野の安全と利益を守る。海外での利益と安全を守る。戦略的抑止を維持し、核反撃の行動を組織する。地域的及び国際的な安全保障協力に参加し、地域と世界の平和を守る。反浸透・反分裂・反テロの闘争を強化し、国家の政治的安全と社会の安定を守る。災害救援・権益保護・安全警備・国の経済社会建設支援などの任務を担う。

三、積極的防御の戦略方針

 積極的防御の戦略思想は中国共産党の軍事戦略思想の基本点である。長期にわたる革命戦争の実践の中で、人民の軍隊は積極的防御のまとまった戦略思想を形成し、戦略上の防御と戦場の戦闘における攻撃の統一を堅持し、防御・自衛・「後発制人」(攻撃を受けてから反撃する)の原則を堅持し、「人われを犯さずばわれ人を犯さず。人もしわれを犯さばわれ必ず人を犯す」ということを堅持してきた。

 新中国の成立後、中央軍事委員会は積極的防御の軍事戦略方針を確立し、かつ国の安全情勢の発展変化に依拠して、積極的防御の軍事戦略方針の内容に対して何度も調整を行ってきた。1993年に新しい時期の軍事戦略方針を制定し、現代技術、特にハイテク技術の条件下での局地戦争に勝利することを軍事闘争準備の重点とした。2004年、新しい時期の軍事戦略方針をより充実させ、完全なものにし、軍事闘争準備の重点をさらに調整して、情報化の条件下での局地戦争に勝利することとした。

 中国の社会主義の性質と国家の根本的利益、及び平和的発展の道を歩むという客観的要請は、中国が揺るぐことなく積極的防御の戦略思想を堅持し、同時にこの思想の内包を絶えず豊かにし発展させなければならないことを決定づけている。国家の安全保障と発展戦略を踏まえ、新しい歴史的時期の情勢・任務・要請に応じて、積極的防御の軍事戦略方針の実施を堅持し、時代とともに前進して軍事戦略の指導を強化し、戦略的視野をさらに広げ、戦略的思惟を更新し、指導の重心を前方に移し、戦争への準備と戦争の阻止、権益保護と安定維持、抑止と実戦、戦争行動と平和時の軍事力の運用を全体的に計画し、深遠な経略を重視し、有利な態勢を作って、危機を総合的にコントロールし、断固として戦争を抑制し、戦争に勝利しなければならない。

 新たな情勢下における積極的防御の軍事戦略方針を実行し、軍事闘争準備の重点を調整した。戦争形態の変化と国家の安全情勢に基づいて、軍事闘争準備の重点を情報化の条件下での局地戦争に勝利することに置き、海上軍事闘争と軍事闘争準備を際立たせ、重大な危機を効果的にコントロールし、連鎖反応に適切に対応し、国家領土の主権、統一、安全を断固として防衛する。

 新たな情勢下における積極的防御の軍事戦略方針を実行し、基本的作戦思想を革新した。各方向の安全に対する脅威と軍隊能力建設の実際に基づいて、機動的、自主的に戦う原則を堅持し、あなたはあなたの戦い方があるだろう、私は私の戦い方をするということで、各軍・兵種の一体化した作戦力を運用して、情報主導、要所集中攻撃、連携勝利の体系的作戦を実施する。

 新たな情勢下における積極的防御の軍事戦略方針を実行し、軍事戦略配置を最適化した。中国の地政学的戦略環境を踏まえ、安全に対する脅威と軍隊の戦略任務に直面して、全局を総合的に計画し分区ごとに責任を負い、互いに呼応し、互いに一体化した戦略部署と軍事的布陣を構築した。宇宙空間・サイバー空間などの新たなタイプの安全保障分野における脅威に対応し、共同の安全を守る。海外での利益にかかわる地域の国際的な安全保障協力を強化し、海外での利益と安全を守る。

 新たな情勢下における積極的防御の軍事戦略方針を実行し、次の原則を堅持する。国家の戦略目標に服従、奉仕し、総合的な国家安全保障観を貫徹し、軍事闘争準備を強化し、危機を予防し、戦争を抑制し、戦争に勝利する。国家の平和的発展に有利な戦略態勢を築き、防御的国防政策を堅持し、政治・軍事・経済・外交などの分野での闘争と密接に連携することを堅持し、国家が直面する可能性のある総合的な安全への脅威に積極的に対応する。権益保護と安定維持のバランスを保ち、権益保護と安定維持の二大局を統一的に計画按配し、国家の領土主権と海洋権益を守り、周辺の安全と安定を守る。軍事闘争戦略の主動性を勝ち取るよう努め、各方向各分野の軍事闘争を積極的に計画し、チャンスを生かして軍隊の建設・改革・発展を加速させる。機動的な戦略・戦術を運用し、共同作戦の総合的効果を発揮し、優位の力を集中し、戦法・手段を総合的に運用する。最も複雑困難な情況への対応に立脚し、ボトムラインシンキングを堅持し、各項の準備活動をしっかりと行い、適切に対応し余裕を持って対処することを確実に保障する。人民の軍隊特有の政治的優位を十分に発揮し、軍隊に対する党の絶対的指導を堅持し、戦闘精神の育成を重視し、部隊の組織性と規律性を厳格にし、部隊を純潔にし強化し、軍隊と政府、軍隊と人民の関係を密接にし、軍隊の士気を鼓舞する。人民戦争の全体的な威力を発揮し、人民戦争を敵を打ち負かし勝利を収める重要な切り札とし、人民戦争の内容と方式・方法を開拓し、戦争動員において人力動員を主とすることから科学技術動員を主とすることへの転換を推進する。軍事安全保障協力の可能性を積極的に切り開き、大国・周辺諸国・発展途上国との軍事関係を深め、地域の安全保障と地域協力の枠組みを構築するよう促す。

四、軍事力の建設と発展

 新たな情勢下における軍事戦略方針を貫徹するには、新たな情勢下における中国共産党の強軍目標の実現を中心に据えなければならず、国家の核心的安全保障の需要を導きとし、情報化軍隊の建設、情報化戦争に勝利することに着眼し、国防と軍隊の改革を全面的に深化し、中国の特色ある現代的軍事力システムの構築に努め、安全に対する数多くの脅威に対処し、多様化した軍事ミッションを遂行する軍隊の能力を絶えず高める。

軍・兵種と武装警察部隊の発展

 陸軍は、機動作戦・立体攻防の戦略的要請に照らし、地域防衛型から全域機動型への転換を積極的に推し進め、小型化・多機能化・モジュール化の発展プロセスを加速し、異なる地域の異なる任務の需要に応じて、作戦力の分類建設を組織し、共同作戦の要請に適応する作戦力のシステムを構築し、高精度作戦・立体作戦・全域作戦・多機能作戦・持続作戦の能力を向上させている。

 海軍は、近海防御・遠海護衛の戦略的要請に照らし、逐次近海防御型から近海防御・遠海護衛の結合型への転換を実現し、統合・多機能・高効率の海上作戦力のシステムを構築し、戦略的抑止と反撃、海上機動作戦、海上共同作戦、総合防御作戦、総合保障能力を向上させている。

 空軍は、空天一体(空軍と宇宙開発の統合)・攻防兼備の戦略的要請に照らし、国土防空型から攻防兼備型への転換を実現し、情報化作戦の需要に応じた空天防御力のシステムを構築し、戦略的早期警戒・空中攻撃・防空ミサイル防衛・情報対抗・空挺作戦・戦略的投下輸送・総合保障能力を向上させている。

 第二砲兵は、精鋭有効、核兵器・通常兵器兼備の戦略的要請に照らし、情報化へのモデルチェンジを加速し、テクノロジーの進歩に依拠して兵器・装備の自主的なイノベーションを推し進め、ミサイル兵器の安全性・信頼性・有効性を高め、核兵器・通常兵器兼備の軍事力システムを完全なものにし、戦略的抑止・核反撃と中長距離のピンポイント攻撃能力を向上させている。

 武装警察部隊は多機能一体化、効果的な安定維持の戦略的要請に照らし、職務執行・安全保障、突発事件処理・安定維持、テロ対策・突撃、災害救援、応急保障、空中支援の力を発展させ、職務執行・突発事件処理、テロ対策・安定維持を主とする軍事力のシステムを完全なものにし、情報化の条件下での職務執行・突発事件処理能力を核心とする多様な任務の完遂能力を向上させている。

重大な安全保障分野における力の発展

 海洋は国家の長期的安定と持続可能な発展にかかわる。大陸を重視し海洋を軽視する伝統的な考え方を打ち破り、海洋の経略、海洋権益の保護を高度に重視しなければならない。国家の安全と発展の利益に適った現代的な海上軍事力のシステムを建設し、国家主権と海洋の権益を守り、戦略的交通路と海外での利益と安全を守り、海洋における国際協力に参与し、海洋強国を建設するための戦略的支えを提供する。

 宇宙空間は国際間の戦略競争の攻略ポイントである。関係国の宇宙力と宇宙手段の発展によって、宇宙兵器化がしだいにその一端を見せ始めている。中国は一貫して宇宙空間の平和利用を主張し、宇宙兵器化と宇宙軍備競争に反対し、国際宇宙協力に積極的に参与している。宇宙の情勢をつぶさに追跡、把握し、宇宙空間の安全に対する脅威と挑戦に対処し、宇宙資産の安全を守り、国家の経済建設と社会発展に奉仕し、宇宙空間の安全を守っている。

 サイバー空間は経済社会発展の新しい支柱であり、国の安全保障の新分野である。サイバー空間における国際間の戦略競争は日増しに激化しており、多くの国がサイバー空間における軍事力を発展させている。中国はハッカー攻撃の最大の被害国の一つであり、ネットワークインフラの安全は厳しい脅威に直面しており、軍事安全保障に対するサイバー空間の影響はしだいに上昇している。サイバー戦力の建設を加速し、サイバー空間のシチュエーション・アウェアネス(SA)、ネットワーク防御力、国家のサイバー闘争をサポートする力、国際協力への参与力を高め、サイバー空間の重大な危機を抑制コントロールし、国家のネットワークと情報のセキュリティーを保障し、国家の安全と社会の安定を守っている。

 核戦力は国家の主権と安全を守る戦略的基礎である。中国は終始一貫して核の先制使用はしないという政策を厳守し、自衛防御の核戦略を堅持し、非核保有国と非核地帯に対しては、無条件に、核兵器を使用しないかまたは核兵器の使用をもって威嚇することはせず、いかなる国とも核軍備競争をせず、みずからの核戦力を国の安全維持に要する最低レベルに維持する。核戦力のシステムを建設し完全なものにし、戦略的早期警戒、指揮コントロール、ミサイルの突破・防御、快速反応と生存防護の能力を高め、他国の中国に対する核兵器使用、または核兵器使用をもって威嚇することを抑止する。

軍事力の建設措置

 思想政治建設を強化する。終始一貫、思想政治建設を軍隊の諸建設の首位に置き、新しい情勢下での軍隊の政治活動を強化、改善し、社会主義の核心的価値観を発揚し実践し、現代の革命軍人の核心的価値観を引き続き育成し、栄えある伝統と優れた作風を発揚し、軍隊に対する党の絶対的指導など一連の根本原則と制度を堅持し、各級の党組織の創造力、凝集力、戦闘力を強化し、魂のある、能力のある、気骨のある、人徳のある新世代の革命軍人の育成に力を入れ、軍隊がいかなる時、いかなる状況下でも党中央、中央軍事委員会の指揮に断固として従い、人民軍隊の性質と根本理念を永遠に保つことを保障する。

 現代的な後方勤務の構築を推し進める。後方勤務の政策・制度と後方勤務の保障力の改革を深化し、戦略的後方勤務の布陣を最適化し、保障のモデルを革新し、新型の保障手段を発展させ、軍備物資の備蓄を充実させ、後方勤務情報システムを統合建設し、法規基準体系を整備し、供給保障を念入りに組織し、現代化戦争に勝利することを保障する後方勤務、部隊の現代化建設に奉仕する後方勤務、情報化へモデルチェンジした後方勤務を建設する。

 先進的兵器・装備を発展させる。情報主導、システム建設を堅持し、自主的革新と持続的発展を堅持し、統一的計画と重点を突出させることを堅持し、兵器・装備のグレードアップを加速し、情報化戦争に適応し使命の要請を履行する兵器・装備のシステムを構築する。

 新しいタイプの軍事人材の育成をしっかりと行う。人材戦略プロジェクトの実施に力を入れ、軍事人的資源の制度を整備し、軍隊の学院・大学の改革を深化し、軍隊の学院・大学の教育、部隊の訓練・実践、軍事職業教育の三位一体の新しいタイプの軍事人材育成のシステムを充実させ、より多くの優れた人材を吸収し、情報化戦争の需要に適った人材陣を養成する。

 法によって軍隊を治め、軍隊を厳しく管理することを深く掘り下げて推進する。軍隊の革命化・現代化・正規化建設の全面的な強化に着目し、法によって軍隊を治める理論と実践を刷新、発展させ、完全な中国の特色ある軍事法治体系を構築し、国防と軍隊建設の法治化レベルを高める。

 軍事理論の刷新を推し進める。あくまで党の革新理論を導きとし、作戦問題の研究を強化し、現代の戦争で勝ちを制するメカニズムを深く模索し、機動的で柔軟な戦略・戦術を生み出し、新しい情勢下での軍隊建設の理論を発展させ、将来の戦争に勝利することにふさわしい先進的な軍事理論システムを形成する。

 戦略的管理を強化する。軍事委員会総部の指導機関の職能配置と機構設置を最適化し、各軍・兵種の指導管理体制を完全なものにし、需要が計画を牽引し、計画が資源配置を主導することを堅持する。計画と編制の統一的協調を強化し、計画と編制のシステムを健全化し、計画と管理の作業メカニズムを構築する。戦略的資源に対する統一的な監督・管理を強化し、重大プロジェクト実施過程の監督管理とリスクコントロールを強化する。戦略評価メカニズムを健全に整備し、評価システムと付属の基準・規範を確立し健全にする。

軍民の融合が深く発展する

軍隊と人民の結合、軍隊を人民の中に宿らせる方針を貫徹し、軍民融合式の発展を深く推進し、融合のメカニズムを絶えず完全なものにし、融合の形式を豊かにし、融合の範囲を広げ、融合のレベルを高め、要素がそろって、分野が多く、効果が高い、軍民融合が深く発展する枠組みの形成に力を入れる。

 重点建設分野における軍民融合式の発展を加速する。政策サポートの力を強め、基礎的分野、重点技術分野、主要業種の基準の軍民通用を全面的に推進し、国家教育システムに依託して軍の人材を育成することを模索、整備し、国防工業システムに依託して兵器・装備を発展させ、社会保障システムに依託して後方勤務社会化保障の方法とルートを推進する。軍隊と人民がインフラを共同建設し共用することを広く展開し、海洋・宇宙・空域・測量製図・ナビゲート・気象・周波数スペクトルなどの資源に対する軍隊と地方の合理的開発と協力使用を推進し、軍隊と地方の資源の相互交換・相互補完と相互使用を促進する。

 軍隊と地方が統一的に計画し建設し運行するパターンをより完全なものにする。国家レベルで軍民融合発展の統一的指導、軍と地方の協調、需要と供給の結合、資源共有のメカニズムを確立し、軍と地方の関係部門の管理職責を健全にし、軍民通用基準体系を完全なものにし、政府投入、税収インセンティブ、金融サポートの政策システムを模索、構築し、軍隊と地方が統一的に計画し建設することに対する立法作業プロセスを加速し、軍と地方が統一的に計画し、協調的に発展する全体的な枠組みを逐次形成する。軍事力と各分野の力の総合的運用を推進し、軍と地方が共同で重大危機と突発的事件に対応する行動メカニズムを確立し完全なものにする。

 国防動員の体制メカニズムを健全化する。国防教育を強化し、国民全体の国防観念を強化する。予備役の建設を強化し、予備役部隊の構造を最適化し、軍・兵種の予備役の力と支援保障任務を担当する力の比率を増加し、予備戦闘力の編成運用モデルを刷新する。国防動員の科学技術のレベルを高め、情報資源徴用の動員準備保障をしっかり行い、専門的保障人材の隊伍の建設を強化し、情報化戦争の勝利に適い、緊急事態への対応と戦争への対応が一体化した国防動員システムを構築する。

五、軍事闘争準備

 軍事闘争準備は軍隊の基本的な実践活動であり、平和を守り、危機を抑止し、戦争に勝利する重要な保障である。軍事闘争準備を拡張、深化するには、戦争ができ、戦争に勝利できるという要請を踏まえ、あくまで重点と難点の問題解決を導きとし、確実に準備し、常に備えを怠らず、軍の抑止力と実戦力を全面的に高めなければならない。

 情報システムに基づく体系的作戦能力を強化する。戦闘力生成モデルの転換を加速し、情報システムを運用して各種の作戦力、作戦ユニット、作戦要素を融合した総合的作戦能力にまとめあげ、作戦要素の継ぎ目のない連結、作戦プラットフォームが自主的に協力しあう一体化された共同作戦システムを徐々に構築する。体系的作戦能力を妨げる突出した矛盾と問題の解決に力を入れ、情報資源の掘り下げた開発と高効率の利用を推進し、偵察・早期警戒システムと指揮コントロールシステムの構築を強化し、中・長距離のピンポイント攻撃力を発展させ、総合的な保障体制を完全なものにする。権威・敏腕・敏捷・高効率の要請に基づき、軍事委員会合同作戦指揮機構と戦区合同作戦指揮体制を確立し健全化する。

 各方面各分野における軍事闘争準備を統一的に推進する。中国の地政学的戦略環境は複雑で、各戦略方向、各安全保障分野にはすべて異なる脅威と挑戦が存在しており、必ず全局を統一的に計画し、重点を突出させ、軍事闘争準備の全面的、協調的な発展を促し、戦略全体のバランスと安定を維持しなければならない。伝統的な安全保障分野と新しいタイプの安全保障分野の軍事闘争準備を統一的に計画し、国家の主権と安全を守り、国家の海洋権益を守り、武力衝突と突発事件に対応する準備をしっかり行う。兵器・装備の更新・世代交代と作戦様式の発展変化に適応し、戦場の配置をさらに最適化し、戦略のプリセットを強化する。

 常に怠りなく戦闘準備状態を維持する。日常戦闘準備のレベルを全面的に高め、高度の警戒態勢を維持し、国境警備・海上防衛・防空面のパトロールと職務執行を綿密に組織する。陸軍部隊は各戦略方向を結び、多兵種が連合し、作戦保障が一体化した戦闘準備システムの配置を構築し、即刻出動し効果的に対応できる良好な状態を保つ。海軍部隊は常態化した戦備パトロールを組織、実施し、関連海域での軍事的プレゼンスを保つ。空軍部隊は平時・戦時の一体化、全域反応、国土全域到達の原則を貫き、機敏かつ高効率な戦闘準備状態を保つ。第二砲兵部隊は平時は適度な警戒状態を保ち、平時・戦時の結合、常に準備を怠らず、随時作戦可能の原則を踏まえて、要素が統合され、機能がそろい、機敏かつ高効率な作戦当直システムを構築する。

 軍事訓練の実戦化レベルを高める。実戦化の軍事訓練を戦略的位置に置くことを堅持し、実践の需要から出発して難度を高め厳しく部隊を訓練し、厳格に要綱に基づいて訓練し、戦闘方法と訓練方法の革新を強化し、軍事訓練の基準と法規体系を完全なものにし、大型総合訓練基地の建設を加速し、実戦化された訓練環境を構築する。実戦の需要に基づいた実景シミュレーション訓練、情報技術に基づいたシミュレーション訓練、実戦の基準にかなった実兵対抗訓練を掘り下げて展開し、上級指導機関の指揮訓練と諸軍・兵種の合同訓練を強化し、複雑な電磁環境、複雑で不案内な地域、複雑な気象条件の下での訓練の強度を強める。訓練の監察・監督制度を確立整備し、訓練と実戦が一体化するよう努める。

 非戦争軍事行動の準備を組織する。災害救援、反テロ・安定維持、権益保護、安保・警戒、国際平和維持、国際救援などの非戦争軍事行動の任務を遂行することは、新しい時期の軍隊が職責と使命を履行する必然的要請であり、作戦能力を向上させる重要な手段である。非戦争軍事行動能力の建設を部隊の現代化建設と軍事闘争準備の全局の中に組み入れて計画実施し、応急指揮メカニズム、緊急対応能力の建設、専門人材の育成、適用装備の保障及び関係する政策・法規の整備などの方面の仕事をしっかりと行う。軍隊が突発事件を処置するさいの応急指揮メカニズムと国家の応急管理メカニズムの協調的運行を促進し、統一的に組織された指揮、科学的な兵力使用、速やかで効率的な行動、政策規定の厳守を堅持する。

六、軍事安全保障協力

 中国の軍隊は、共通の安全保障、総合安全保障、協調的安全保障、持続可能な安全保障という安全保障観を堅持し、非同盟、非対抗、第三者に矛先を向けることのない軍事協力関係を発展させ、公平で有効な集団安全保障メカニズムと軍事相互信頼メカニズムの構築を推し進め、軍事安全保障協力の可能性を積極的に広げ、国家の平和的発展に有利な安全保障環境を作る。

 対外軍事関係を全方位的に発展させる。中露両国の軍隊の全面的戦略パートナーシップの枠組み下での交流・協力を深化させ、全面的で多元的な、持続可能なメカニズムの枠組みを徐々に構築し、両軍の関係をより広い領域、より深いレベルへと発展させる。中米の新型大国関係にふさわしい新型軍事関係を構築し、防衛分野の対話・交流・協力を強化し、重大な軍事行動を行う際の相互通報信頼醸成措置のメカニズムと海域・空域における軍事安全行為準則を完全なものにし、相互信頼を増進し、リスクを予防し、危機を抑制する。「親密・誠実・恩恵・包容」の周辺外交理念に基づいて、周辺諸国との軍事関係を強固にし発展させる。ヨーロッパ諸国との軍事関係のレベルを高め、アフリカ・ラテンアメリカ・南太平洋諸国との伝統的友好軍事関係を発展させる。上海協力機構の防衛・安全保障協力を深化し、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)、ジャカルタ国際防衛会合、西太平洋海軍フォーラムなどの多国間対話と協力のメカニズムに参加し、香山フォーラムなどの多国間活動を開催し、アジア太平洋地域の平和・安定・繁栄に役立つ安全保障と協力の新たな枠組みの確立を推し進める。

 実務的な軍事協力を推進する。相互尊重、平等互恵、協力・ウインウイン基礎の上で、世界各国の軍隊と実務協力を展開することを堅持する。形勢の変化に応じて、協力の新しい分野、新しい内容、新しいモデルを絶えず模索し、多くの安全に対する脅威と挑戦に共同で対処する。外国の軍隊と防衛政策、軍・兵種の建設、学院・大学の教育、後方勤務建設などの分野で広く対話・交流を展開し、理解と相互信頼を増進し、互いに学び参考にする。関係国の軍隊と人員育成、軍事物資の援助、装備技術などの分野の協力を強化し、互いに支持し合い、それぞれの防衛作戦の能力を高める。多レベル、多分野、多軍・兵種の二国間及び多国間の合同演習・訓練を展開し、演習・訓練の科目を伝統的安全保障から非伝統的安全保障の分野に拡大し、共同行動の能力を高める。国際間の海上安全対話と協力に積極的に参与し、協力して海上における伝統的脅威と非伝統的脅威に対処することを堅持する。

 国際的な責任と義務を履行する。国連の平和維持活動に参与し、安保理に授与された権限を履行し、衝突の平和的な解決に力を尽くし、発展と復興を促進し、地域の平和と安全を守る。国際的な災害救援と人道主義援助に積極的に参加し、専門救援隊を被災国に派遣して救援活動を行い、救援物資や医療救助を提供し、救援・減災の国際交流を強化し、任務遂行能力と専門化のレベルを向上させる。国際義務を忠実に履行し、必要に応じてアデン湾などでの船舶護衛活動を展開し、複数の国の船舶護衛部隊との交流・協力を強化し、国際海上交通路の安全を共同で守る。地域的及び国際的な安全保障事務に広く参与し、突発事態の通報、軍事的危険の予防、危機衝突の管理・抑制などのメカニズムの確立を推進する。国力が絶えず増強するにつれ、中国の軍隊は国際平和維持、国際人道主義援助などに参与する程度を強め、自らの能力が及ぶ範囲でより多くの国際的な責任と義務を担い、より多くの公共安全製品を提供し、世界の平和を守り、共同の発展を促進するためにより大きな貢献を成し遂げる。