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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(米国との環境保護協定)

[場所] ワシントン
[年月日] 1975年8月5日
[出典] 外務省条約局,条約集(昭和50年 二国間条約),729-736頁.
[備考] 
[全文]

昭和五十年八月五日 ワシントンで署名

昭和五十年八月五日 効力発生

昭和五十年八月二十三日 告示(外務省告示第一八一号)

 前文

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、

 両政府間の協力がそれぞれの国における環境の保護に関する同種の問題に対処する上で相互の利益となり、かつ、地球上の環境の保護及び改善に対するそれぞれの政府の責任を果たす上で不可欠であることを信じ、また、

 この協力を一層強化し及びその重要性を明らかにすることを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条 協力の維持及び促進

 両政府は、平等、相互主義及び相互の利益に基づき環境の保護の分野における協力を維持し、かつ、促進する。この協力は、次の形態により行うことができる。

(a) 特定の問題の技術的及び運用的側面につき探究し、討議し及び情報の交換を行うため並びに協力態勢により有益に実施することができる計画を識別するための、特に実務レベルの専門家によるものを含む各種の形態の会合

(b) 特定の又は一般的な問題に関する科学者、技術者その他専門家の訪問及び交流

(c) 合意された協力計画の実施

(d) 研究及び開発に関する活動、政策、慣行、法令及び実施中の計画の分析に関連する情報及び資料の交換

第二条 合同企画調整委員会の設置

 主要な環境政策問題を討議し、この協定に基づく活動及び成果を調整し及び再検討し並びにこの協定の実施について必要な勧告を両政府に行うために、合同企画調整委員会を設置する。委員会は、適当な場合には閣僚レベルで、原則として年一回日本国及びアメリカ合衆国において交互に会合する。

第三条 協力の分野

 協力は、環境の保護及び改善に関連する相互に合意する次の分野において行うことができる。

(a) 次のものを含む汚染の低減及び防止

 大気の汚染の防止(移動性及び固定性発生源からの排出の規制を含む。)、水質の汚濁の防止(都市及び工業の廃水の処理を含む。)、海洋汚染の防止、農業排水及び農薬の規制、固形廃棄物の管理及び資源の回収、有害物質の規制及び処理、騒音の低減、環境悪化の健康上、生物学上及び遺伝上の影響に関する研究

(b) その他の環境の保護及び改善に関する分野で今後合意されるもの

第四条 協力活動の実施取極

 第三条にいう分野における協力活動の細目及び手続を定める実施取極が、両政府の適当な機関の間で行われるものとする。

第五条 環境政策策定上の考慮事項

 両政府は、それぞれの環境政策を策定するに当たつて、両国が締約国である国際機関の勧告を考慮に入れることを再確認する。

第六条 協力活動から生ずる非所有権的性格の情報及び工業所有権の処理

1 いずれの一方の政府も、この協定に基づぐ協力活動から生ずる非所有権的性格の科学的及び技術的情報を、通常の経路を通じ、かつ、参加機関の正常な手続に従い、一般の利用に供することができる。

2 この協定に基づく協力活動から生ずる特許権、意匠権その他の工業所有権の処理は、第四条にいう実施取極において規定される。

第七条 この協定の他の取極への影響

 この協定のいかなる規定も、両政府間の協力のための他の取極又は将来の取極に影響を及ぼすものと解してはならない。

第八条 協定活動の実施

 この協定に基づく活動は、各国の予算及び関係法含に従うことを条件とする。

第九条 協定の終了

 この協定の終了は、第四条にいう実施取極に従つて行われ、かつ、この協定の終了の時に履行を完了していないいかなる計画の履行にも影響を及ぼすものではない。

第十条 効力発生、有効期間、終了及び延長

1 この協定は、署名により効力を生じ、五年間効力を有する。

 もつとも、いずれの政府も、他方の政府に対し、いつでもこの協定を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この協定は、そのような通告が行われた後六箇月で終了する。

2 この協定は、相互の合意により更に特定される期間延長することができる。

末文

 千九百七十五年八月五日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために

 宮澤喜一

 アメリカ合衆国政府のために

 ヘンリ・A・キッシンジャー

合意された議事録 協定第五条の規定に関する再確認

 日本国政府の代表者及びアメリカ合衆国政府の代表者は、本日署名された環境の保護の分野における協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の交渉において到達した次の合意を記録する。

 同協定第五条の規定を実施するに当たり、両政府は、経済協力開発機構の理事会によつて千九百七十二年に採択され、かつ、千九百七十四年に再確認された「環境政策の国際経済的側面に関する指針」及びそれを修正し若しくは補足する指針又は実施勧告が引き続きそれぞれの環境政策の策定のための一つの基礎であることを再確認することが合意される。

 千九百七十五年八月五日にワシントンで

 日本国政府のために

 宮澤喜一

 アメリカ合衆国政府のために

 ヘンリ・A・キッシンジャー