データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約(有害廃棄物規制バーゼル条約)

[場所] バーゼル
[年月日] 1989年3月22日
[出典] 外務省条約局,条約集(平成5年 多数国間条約)237‐277頁
[備考] 
[全文]

平成元年三月二十二日 バーゼルで作成

平成四年五月五日 効力発生

平成四年十二月十日 国会承認

平成五年九月十七日 加入の閣議決定

平成五年九月十七日 加入書寄託

平成五年十二月六日 公布及び告示(条約第七号及び外務省告示第六〇一号)

平成五年十二月十六日 我が国について効力発生

 前文

 この条約の締約国は、

 有害廃棄物及び他の廃棄物並びにこれらの廃棄物の国境を越える移動によって引き起こされる人の健康及び環境に対する損害の危険性を認識し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生の増加及び一層の複雑化並びにこれらの廃棄物の国境を越える移動によってもたらされる人の健康及び環境に対する脅威の増大に留意し、これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護する最も効果的な方法は、これらの廃棄物の発生を量及び有害性の面から最小限度とすることであることに留意し、

 諸国が、処分の場所のいかんを問わず、有害廃棄物及び他の廃棄物の処理(国境を越える移動及び処分を含む。)を人の健康及び環境の保護に適合させるために必要な措置をとるべきであることを確信し、

 諸国が、処分の場所のいかんを問わず、発生者が有害廃棄物及び他の廃棄物の運搬及び処分に関する義務を環境の保護に適合する方法で履行することを確保すべきであることに留意し、

 いずれの国も、自国の領域において外国の有害廃棄物及び他の廃棄物の搬入又は処分を禁止する主権的権利を有することを十分に認め、

 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分を他の国特に開発途上国において行うことを禁止したいとの願望が増大していることを認め、

 有害廃棄物及び他の廃棄物は、環境上適正かつ効率的な処理と両立する限り、これらの廃棄物の発生した国において処分されるべきであることを確信し、

 これらの廃棄物の発生した国から他の国への国境を越える移動は、人の健康及び環境を害することのない条件並びにこの条約の規定に従う条件の下で行われる場合に限り許可されるべきであることを認識し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動の規制を強化することが、これらの廃棄物を環境上適正に処理し、及びその国境を越える移動の量を削減するための誘因となることを考慮し、

 諸国が有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動に関する適当な情報交換及び規制を行うための措置をとるべきであることを確信し、

 種々の国際的及び地域的な協定が危険物の通過に関する環境の保護及び保全の問題を取り扱っていることに留意し、

 国際連合人間環境会議の宣言(千九百七十二年ストックホルム)、国際連合環境計画(UNEP)管理理事会が千九百八十七年六月十七日の決定十四‐三十により採択した有害廃棄物の環境上適正な処理のためのカイロ・ガイドライン及び原則、危険物の運搬に関する国際連合専門家委員会の勧告(千九百五十七年に作成され、その後二年ごとに修正されている。)、国際連合及びその関連機関において採択された関連する勧告、宣言、文書及び規則並びに他の国際的及び地域的な機関において行われた活動及び研究を考慮し、

 第三十七回国際連合総会(千九百八十二年)において人間環境の保護及び自然資源の保全に関する倫理的規範として採択された世界自然憲章の精神、原則、目的及び機能に留意し、

 諸国が、人の健康の保護並びに環境の保護及び保全に関する国際的義務の履行に責任を有し、並びに国際法に従って責任を負うことを確認し、

 この条約又はこの条約の議定書の規定に対する重大な違反があった場合には、条約に関する関連国際法が適用されることを認め、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を最小限度とするため、環境上適正な廃棄物低減技術、再生利用の方法並びに良好な管理及び処理の体制の開発及び実施を引き続き行うことの必要性を認識し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動を厳重に規制することの必要性について国際的な関心が高まっていること並びに可能な限りそのような移動を最小限度とすることの必要性を認識し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える不法な取引の問題について懸念し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物を処理する開発途上国の能力に限界があることを考慮し、

 現地で発生する有害廃棄物及び他の廃棄物の適正な処理のため、カイロ・ガイドライン及び環境保護に関する技術の移転の促進に関するUNEP管理理事会の決定十四‐十六の精神に従い、特に開発途上国に対する技術移転を促進することの必要性を認め、

 有害廃棄物及び他の廃棄物が、関連する国際条約及び国際的な勧告に従って運搬されるべきであることを認め、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動は、これらの廃棄物の運搬及び最終的な処分が環境上適正である場合に限り許可されるべきであることを確信し、

 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生及び処理から生ずることがある悪影響から人の健康及び環境を厳重な規制によって保護することを決意して、

 次のとおり協定した。

第一条 条約の適用範囲

1 この条約の適用上、次の廃棄物であって国境を超える移動の対象となるものは、「有害廃棄物」とする。

(a) 附属書Iに掲げるいずれかの分類に属する廃棄物(附属書IIIに掲げるいずれの特性も有しないものを除く。)

(b) (a)に規定する廃棄物には該当しないが、輸出国、輸入国又は通過国である締約国の国内法令により有害であると定義され又は認められている廃棄物

2 この条約の適用上、附属書IIに掲げるいずれかの分類に属する廃棄物であって国境を越える移動の対象となるものは、「他の廃棄物」とする。

3 放射能を有することにより、特に放射性物質について適用される国際文書による規制を含む他の国際的な規制の制度の対象となる廃棄物は、この条約の適用範囲から除外する。

4 船舶の通常の運航から生ずる廃棄物であってその排出について他の国際文書の適用があるものは、この条約の適用範囲から除外する。

第二条 定義

 この条約の適用上、

1 「廃棄物」とは、処分がされ、処分が意図され又は国内法の規定により処分が義務付けられている物質又は物体をいう。

2 「処理」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物の収集、運搬及び処分をいい、処分場所の事後の管理を含む。

3 「国境を越える移動」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物が、その移動に少なくとも二以上の国が関係する場合において、一の国の管轄の下にある地域から、他の国の管轄の下にある地域へ若しくは他の国の管轄の下にある地域を通過して、又はいずれの国の管轄の下にもない地域へ若しくはいずれの国の管轄の下にもない地域を通過して、移動することをいう。

4 「処分」とは、附属書IVに掲げる作業をいう。

5 「承認された場所又は施設」とは、場所又は施設が存在する国の関係当局により、有害廃棄物又は他の廃棄物の処分のための作業を行うことが認められ又は許可されている場所又は施設をいう。

6 「権限のある当局」とは、締約国が適当と認める地理的区域内において、第六条の規定に従って有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動に関する通告及びこれに関係するすべての情報を受領し並びに当該通告に対し回答する責任を有する一の政府当局として締約囲によって指定されたものをいう。

7 「中央連絡先」とは、第十三条及び第十六条に規定する情報を受領し及び提供する責任を有する第五条に規定する締約国の機関をいう。

8 「有害廃棄物又は他の廃棄物の環境上適正な処理」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物から生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するような方法でこれらの廃棄物が処理されることを確保するために実行可能なあらゆる措置をとることをいう。

9 「一の国の管轄の下にある地域」とは、人の健康又は環境の保護に関し、国際法に従って一の国が行政上及び規制上の責任を遂行する陸地、海域又は空間をいう。

10 「輸出国」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物の自国からの国境を越える移動が計画され又は開始されている締約国をいう。

11 「輸入国」とは、自国における処分を目的として又はいずれの国の管轄の下にもない地域における処分に先立つ積込みを目的として、有害廃棄物又は他の廃棄物の自国への国境を越える移動が計画され又は行われている締約国をいう。

12 「通過国」とは、輸出国又は輸入国以外の国であって、自国を通過する有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動が計画され又は行われているものをいう。

13 「関係国」とは、締約国である輸出国又は輸入国及び締約国であるかないかを問わず通過国をいう。

14 「者」とは、自然人又は法人をいう。

15 「輸出者」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出を行う者であって摘出国の管轄の下にあるものをいう。

16 「輸入者」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物の輸入を行う者であって輸入国の管轄の下にあるものをいう。

17 「運搬者」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物の運搬を行う者をいう。

18 「発生者」とは、その活動が有害廃棄物又は他の廃棄物を発生させる者をいい、その者が不明であるときは、当該有害廃棄物又は他の廃棄物を保有し又は支配している者をいう。

19 「処分者」とは、有害廃棄物又は他の廃棄物がその者に対し運搬される者であって当該有害廃棄物又は他の廃棄物の処分を行うものをいう。

20 「政治統合又は経済統合のための機関」とは、主権国家によって構成される機関であって、この条約が規律する事項に関しその加盟国から権限の委譲を受け、かつ、その内部手続に従ってこの条約の署名、批准、受諾、承認若しくは正式確認又はこれへの加入の正当な委任を受けたものをいう。

21 「不法取引」とは、第九条に規定する有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動をいう。

第三条 有害廃棄物に関する国内の定義

1 締約国は、この条約の締約国となった日から六箇月以内に、条約の事務局に対し、附属書I及び附属書IIに掲げる廃棄物以外に自国の法令により有害であると認められ又は定義されている廃棄物を通報し、かつ、その廃棄物について適用する国境を越える移動の手続に関する要件を通報する。

2 締約国は、更に、1の規定に従って提供した情報に関する重要な変更を事務局に通報する。

3 事務局は、1及び2の規定に従って受領した情報を直ちにすべての締約国に通報する。

4 締約国は、3の規定に従い事務局によって送付された情報を自国の輸出者に対し利用可能にする責任を有する。

第四条 一般的義務

1(a) 有害廃棄物又は他の廃棄物の処分のための輸入を禁止する権利を行使する締約国は、第十三条の規定に従ってその決定を他の締約国に通報する。

(b) 締約国は、(a)の規定に従って通報を受けた場合には、有害廃棄物及び他の廃棄物の輸入を禁止している締約国に対する当該有害廃棄物及び他の廃棄物の輸出を許可せず、又は禁止する。

(c) 締約国は、輸入国が有害廃棄物及び他の廃棄物の輸入を禁止していない場合において当該輸入国がこれらの廃棄物の特定の輸入につき書面により同意しないときは、その輸入の同意のない廃棄物の輸出を許可せず、又は禁止する。

2 締約国は、次の目的のため、適当な措置をとる。

(a) 社会的、技術的及び経済的側面を考慮して、国内における有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を最小限度とすることを確保する。

(b) 有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理のため、処分の場所のいかんを問わず、可能な限り国内にある適当な処分施設が利用できるようにすることを確保する。

(c) 国内において有害廃棄物又は他の廃棄物の処理に関与する者が、その処理から生ずる有害廃棄物及び他の廃棄物による汚染を防止するため、並びに汚染が生じた場合には、人の健康及び環境についてその影響を最小のものにとどめるために必要な措置をとることを確保する。

(d) 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動が、これらの廃棄物の環境上適正かつ効率的な処理に適合するような方法で最小限度とされ、並びに当該移動から生ずる悪影響から人の健康及び環境を保護するような方法で行われることを確保する。

(e) 締約国特に開発途上国である国又は国家群(経済統合又は政治統合のための機関に加盟しているもの)に対する有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出は、これらの国若しくは国家群が国内法令によりこれらの廃棄物のすべての輸入を禁止した場合又はこれらの廃棄物が締約国の第一回会合において決定される基準に従う環境上適正な方法で処理されないと信ずるに足りる理由がある場合には、許可しない。

(f) 計画された有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動が人の健康及び環境に及ぼす影響を明らかにするため、当該移動に関する情報が附属書VAに従って関係国に提供されることを義務付ける。

(g) 有害廃棄物及び他の廃棄物が環境上適正な方法で処理されないと信ずるに足りる理由がある場合には、当該有害廃棄物及び他の廃棄物の輸入を防止する。

(h) 有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理を改善し及び不法取引の防止を達成するため、有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動に関する情報の提供その他の活動について、直接及び事務局を通じ、他の締約国及び関係機関と協力する。

3 締約国は、有害廃棄物又は他の廃棄物の不法取引を犯罪性のあるものと認める。

4 締約国は、この条約の規定を実施するため、この条約の規定に違反する行為を防止し及び処罰するための措置を含む適当な法律上の措置、行政上の措置その他の措置をとる。

5 締約国は、有害廃棄物又は他の廃棄物を非締約国へ輸出し又は非締約国から輸入することを許可しない。

6 締約国は、国境を越える移動の対象となるかならないかを問わず、南緯六十度以南の地域における処分のための有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出を許可しないことに合意する。

7 締約国は、更に、次のことを行う。

(a) 有害廃棄物又は他の廃棄物の運搬又は処分を行うことが認められ又は許可されている者を除くほか、その管轄の下にあるすべての者に対し、当該運搬又は処分を行うことを禁止すること。

(b) 国境を越える移動の対象となる有害廃棄物及び他の廃棄物が、こん包、表示及び運搬の分野において一般的に受け入れられかつ認められている国際的規則及び基準に従ってこん包され、表示され及び運搬されること並びに国際的に認められている関連する慣行に妥当な考慮が払われることを義務付けること。

(c) 有害廃棄物及び他の廃棄物には、国境を越える移動が開始される地点から処分の地点まで移動書類が伴うことを義務付けること。

8 締約国は、輸出されることとなる有害廃棄物又は他の廃棄物が輸入国又は他の場所において環境上適正な方法で処理されることを義務付ける。この条約の対象となる廃棄物の環境上適正な処理のための技術上の指針は、締約国の第一回会合において決定する。

9 締約国は、有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動が次のいずれかの場合に限り許可されることを確保するため、適当な措置をとる。

(a) 輸出国が当該廃棄物を環境上適正かつ効率的な方法で処分するための技術上の能力及び必要な施設、処分能力又は適当な処分場所を有しない場合

(b) 当該廃棄物が輸入国において再年利用産業又は回収産業のための原材料として必要とされている場合

(c) 当該国境を越える移動が締約国全体として決定する他の基準に従って行われる場合。ただし、当該基準がこの条約の目的に合致することを条件とする。

10 有害廃棄物及び他の廃棄物を発生させた国がこの条約の下において負う当該有害廃棄物及び他の廃棄物を環境上適正な方法で処理することを義務付ける義務は、いかなる状況においても、輸入国又は通過国へ移転してはならない。

11 この条約のいかなる規定も、締約国が人の健康及び環境を一層保護するためこの条約の規定に適合しかつ国際法の諸規則に従う追加的な義務を課することを妨げるものではない。

12 この条約のいかなる規定も、国際法に従って確立している領海に対する国の主権、国際法に従い排他的経済水域及び大陸棚において国が有する主権的権利及び管轄権並びに国際法に定められ及び関連する国際文書に反映されている航行上の権利及び自由をすべての国の船舶及び航空機が行便することに何ら影響を及ぼすものではない。

13 締約国は、他の国特に開発途上国に対して輸出される有害廃棄物及び他の廃棄物の量及び汚染力を減少させる可能性について定期的に検討する。

第五条 権限のある当局及び中央連絡先の指定

 締約国は、この条約の実施を円滑にするため、次のことを行う。

1 一又は二以上の権限のある当局及び一の中央連絡先を指定し又は設置すること。通過国の場合において通告を受領するため、一の権限のある当局を指定すること。

2 自国についてこの条約が効力を生じた日から三箇月以内に、中央連絡先及び権限のある当局としていずれの機関を指定したかを事務局に対し通報すること。

3 2の規定に従い行った指定に関する変更をその決定の日から一箇月以内に事務局に対し通報すること。

第六条 締約国間の国境を越える移動

1 輸出国は、書面により、その権限のある当局の経路を通じ、有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動の計画を関係国の権限のある当局に対し通告し又は発生者若しくは輸出者に通告させる。その通告は、輸入国の受け入れ可能な言語により記載された附属書VAに掲げる申告及び情報を含むし各関係国に対し送付する通告は、一通のみで足りる。

2 輸入国は、通告をした者に対し、書面により、移動につき条件付若しくは無条件で同意し、移動に関する許可を拒否し又は追加的な情報を要求する旨を回答する。輸入国の最終的な回答の写しは、締約国である関係国の権限のある当局に送付する。

3 輸出国は、次の事項を書面により確認するまでは、発生者又は輸出者が国境を越える移動を開始することを許可してはならない。

(a) 通告をした者が輸入国の書面による同意を得ていること。

(b) 通告をした者が、廃棄物について環境上適正な処理がされることを明記する輸出者と処分者との間の契約の存在につき、輸入国から確認を得ていること。

4 締約国である通過国は、通告をした者に対し通告の受領を速やかに確認する。当該通過国は、更に、通告をした者に対し、六十日以内に、移動につき条件付若しくは無条件で同意し、移動に関する許可を拒否し又は追加的な情報を要求する旨を書面により回答する。輸出国は、当該通過国の書面による同意を得るまでは、国境を越える移動を開始することを許可してはならない、ただし、いかなる時点においても、締約国が、有害廃棄物又は他の廃棄物の通過のための国境を越える移動に関し、書面による事前の同意を一般的に若しくは特定の条件の下において義務付けないことを決定し、又は事前の同意に係る要件を変更する場合には、当該締約国は、第十三条の規定に従い他の締約国に直ちにその旨を通報する。事前の同意を義務付けない場合において通過国が通告を受領した日から六十日以内に輸出国が当該通過国の回答を受領しないときは、当該輸出国は、当該通過国を通過して輸出を行うことを許可することができる。

5 特定の国によってのみ有害であると法的に定義され又は認められている廃棄物の国境を越える移動の場合において、

(a) 輸出国によってのみ定義され又は認められているときは、輸入者又は処分者及び輸入国について適用する9の規定は、必要な変更を加えて、それぞれ輸出者及び輸出国について適用する。

(b) 輸入国によってのみ又は輸入国及び締約国である通過国によってのみ定義され又は認められているときは、輸出者及び輸出国について適用する1、3、4及び6の規定は、必要な変更を加えて、それぞれ輸入者又は処分者及び輸入国について適用する。

(c) 締約国である通過国によってのみ定義され又は認められているときは、4の規定を当該通過国について適用する。

6 輸出国は、同一の物理的及び化学的特性を有する有害廃棄物又は他の廃棄物が、輸出国の同一の出国税関及び輸入国の同一の入国税関を経由して、並びに通過のときは通過国の同一の入国税関及び出国税関を経由して、同一の処分者に定期的に運搬される場合には、関係国の書面による同意を条件として、発生者又は輸出者が包括的な通告を行うことを許可することができる。

7 関係国は、運搬される有害廃棄物又は他の廃棄物に関する一定の情報(正確な量、定期的に作成する一覧表等)が提供されることを条件として、6に規定する包括的な通告を行うことにつき書面により同意することができる。

8 6及び7に規定する包括的な通告及び書面による同意は、最長十二箇月の期間における有害廃棄物又は他の廃棄物の二回以上の運搬について適用することができる。

9 締約国は、有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動に責任を有するそれぞれの者が当該有害廃棄物又は他の廃棄物の引渡し又は受領の際に移動書類に署名することを義務付ける。締約国は、また、処分者が、輸出者及び輸出国の権限のある当局の双方に対し、当該有害廃棄物又は他の廃棄物を受領したことを通報し及び通告に明記する処分が完了したことを相当な期間内に通報することを義務付けるこれらの通報が輸出国において受領されない場合には、輸出国の権限のある当局又は輸出者は、その旨を輸入国に通報する。

10 この条の規定により義務付けられる通告及び回答は、関係締約国の権限のある当局又は非締約国の適当と認める政府当局に送付する。

11 有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越えるいかなる移動も、輸入国又は締約国である通過国が義務付けることのある保険、供託金その他の保証によって担保する。

第七条 締約国から非締約国を通過して行われる国境を越える移動

 前条1の規定は、必要な変更を加えて、締約国から非締約国を通過して行われる有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動について適用する。

第八条 再輸入の義務

 この条約の規定に従うことを条件として関係国の同意が得られている有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動が、契約の条件に従って完了することができない場合において、輸入国が輸出国及び事務局に対してその旨を通報した時から九十日以内に又は関係国が合意する他の期間内に当該有害廃棄物又は他の廃棄物が環境上適正な方法で処分されるための代替措置をとることができないときは、輸出国は、輸出者が当該有害廃棄物又は他の廃棄物を輸出国内に引き取ることを確保する。このため、輸出国及び締約国である通過国は、当該有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出国への返還に反対し、及びその返還を妨害し又は防止してはならない。

第九条 不法取引

1 この条約の適用上、次のいずれかに該当する有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動は、不法取引とする。

(a) この条約の規定に従う通告がすべての関係国に対して行われていない移動

(b) 関係国からこの条約の規定に従う同意が得られていない移動

(c) 関係国の同意が偽造、虚偽の表示又は詐欺により得られている移動

(d) 書類と重要な事項において不一致がある移動

(e) この条約の規定及び国際法の一般原則に違反して有害廃棄物又は他の廃棄物を故意に処分すること(例えば、投棄すること。)となる移動

2 有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動が輸出者又は発生者の行為の結果として不法取引となる場合には、輸出国は、輸出国に当該不法取引が通報された時から三十日以内又は関係国が合意する他の期間内に、当該有害廃棄物又は他の廃棄物に関し次のことを確保する。

(a) 輸出者若しくは発生者若しくは必要な場合には輸出国が自国に引き取ること又はこれが実際的でないときは、

(b) この条約の規定に従って処分されること。

 このため、関係締約国は、当該有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出国への返還に反対し、及びその返還を妨害し又は防止してはならない。

3 有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動が輸入者又は処分者の行為の結果として不法取引となる場合には、輸入国は、当該不法取引を輸入国が知るに至った時から三十日以内又は関係国が合意する他の期間内に、輸入者若しくは処分者又は必要なときは輸入国が当該有害廃棄物又は他の廃棄物を環境上適正な方法で処分することを確保する。このため、関係締約国は、必要に応じ、当該有害廃棄物又は他の廃棄物を環境上適正な方法で処分することについて協力する。

4 不法取引の責任を輸出者若しくは発生者又は輸入者若しくは処分者のいずれにも帰することができない場合には、関係締約国又は適当なときは他の締約国は、協力して、輸出国若しくは輸入国又は適当なときは他の場所において、できる限り速やかに当該有害廃棄物又は他の廃棄物を環境上適正な方法で処分することを確保する。

5 締約国は、不法取引を防止し及び処罰するため、適当な国内法令を制定する。締約国は、この条の目的を達成するため、協力する。

第十条 国際協力

1 締約国は、有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理を改善し及び達成するため、相互に協力する。

2 締約国は、この日的のため、次のことを行う。

(a) 要請に応じ、二国間であるか多数国間であるかを問わず、有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理(有害廃棄物及び他の廃棄物の適切な処理のための技術上の基準及び実施方法の調整を含む。)を促進するため、情報を利用できるようにすること。

(b) 有害廃棄物の処理が人の健康及び環境に及ぼす影響を監視することについて協力すること。

(c) 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を実行可能な限り除去するため、並びに有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理を確保する一層効果的かつ効率的な方法(新たな又は改善された技術の採用が経済上、社会上及び環境上及ぼす影響についての研究を含む。)を確立するため、新たな環境上適正な廃棄物低減技術の開発及び実施並びに既存の技術の改善につき、自国の法令及び政策に従って協力すること。

(d) 有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理に関係する技術及び処理方式の移転につき、自国の法令及び政策に従って積極的に協力すること。また、締約国、特にこの分野において技術援助を必要とし及び要請する締約国の技術上の能力の開発について協力すること。

(e) 適当な技術上の指針又は実施基準の開発について協力すること。

3 締約国は、第四条2の(a)から(d)までの規定の実施について開発途上国を援助するため、適当な協力のための手段を用いる。

4 開発途上国の必要を考慮して、公衆の意識の向上、有害廃棄物及び他の廃棄物の適正な処理の発展並びに新たな廃棄物低減技術の採用を特に促進するため、締約国と関係国際機関との間の協力が奨励される。

第十一条 二国間の、多数国間の及び地域的な協定

1 第四条5の規定にかかわらず、締約国は、締約国又は非締約国との間で有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動に関する二国間の、多数国間の又は地域的な協定又は取決めを締結することができる。ただし、当該協定又は取決めは、この条約により義務付けられる有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理を害するものであってはならない。当該協定又は取決めは、特に開発途上国の利益を考慮して、この条約の定める規定以上に環境上適正な規定を定めるものとする。

2 締約国は、1に規定する協定又は取決め及びこの条約が自国に対し効力を生ずるに先立ち締結した二国間の、多数国間の又は地域的な協定又は取決めであって、これらの協定又は取決めの締約国間でのみ行われる有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動を規制する目的を有するものを事務局に通告する。この条約のいかなる規定も、これらの協定又は取り決めがこの条約により義務付けられる有害廃棄物及び他の廃棄物の環境上適正な処理と両立する限り、これらの協定又は取決めに従って行われる国境を越える移動に影響を及ぼすものではない。

第十二条 損害賠償責任に関する協議

 締約国は、有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動及び処分から生ずる損害に対する責仕及び賠償の分野において適当な規則及び手続を定める議定書をできる限り速やかに採択するため、協力する。

第十三条 情報の送付

1 締約国は、有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動又はその処分が行われている間に、他の国の人の健康及び環境に危害を及ぼすおそれがある事故が発生した場合において、その事故を知るに至ったときはいつでも、当該他の国が速やかに通報を受けることを確保する。

2 締約国は、相互に、事務局を通じ、次の通報を行う。

(a) 権限のある当局又は中央連絡先の指定の変更に関する第五条の規定による通報

(b) 有害廃棄物の国内の定義の変更に関する第三条の規定による通報

 また、できる限り速やかに、次の事項を通報する。

(c) 自国の管轄の下にある地域における有害廃棄物又は他の廃棄物の処分を目的とする輸入につき全面的又は部分的に同意しない旨の決定

(d) 有害廃棄物又は他の廃棄物の輸出を制限し又は禁止する旨の決定

(e) 4の規定に従って送付の義務を負うその他の情報

3 締約国は、自国の法令に従い、事務局を通じ、第十五条の規定により設置する締約国会議に対し、各暦年の終わりまでに、次の情報を含む前暦年に関する報告を送付する。

(a) 第五条の規定に従い締約国によって指定された権限のある当局及び中央連絡先

(b) 締約国が関係する有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動に関する次の事項を含む情報

(i) 輸出された有害廃棄物及び他の廃棄物の量、分類、特性、目的地及び通過国並びに通告に対する回答に記載された処分の方法

(ii) 輸入された有害廃棄物及び他の廃棄物の量、分類、特性、発生地及び処分の方法

(iii) 予定されたとおりに行われなかった処分

(iv) 国境を超える移動の対象となる有害廃棄物及び他の廃棄物の量の削減を達成するための努力

(c) この条約の実施のために締約国がとった措置に関する情報

(d) 有害廃棄物又は他の廃棄物の発生、運搬及び処分が人の健康及び環境に及ぼす影響について締約国が作成した提供可能かつ適切な統計に関する情報

(e) 第十一条の規定に従って締結した二国間の、多数国間の及び地域的な協定及び取決めに関する情報

(f) 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動及び処分が行われている間に発生した事故並びにその事故を処理するためにとられた措置に関する情報

(g) 管轄の下にある地域において用いられた処分の方法に関する情報

(h) 有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を削減し又は無くすための技術の開発のためにとられた措置に関する情報

(i) 締約国会議が適当と認めるその他の事項

4 特定の有害廃棄物又は他の廃棄物の国境を越える移動により自国の環境が影響を受けるおそれがあると認めるいずれかの締約国が要請した場合には、締約国は、自国の法令に従い、当該移動に関する通告及びその通告に対する回答の写しを事務局に対し送付することを確保する。

第十四条 財政的な側面

1 締約国は、各地域及び各小地域の特別の必要に応じ、有害廃棄物及び他の廃棄物を処理し並びに有害廃棄物及び他の廃棄物の発生を最小限度とすることに関する訓練及び技術移転のための地域又は小地域のセンターが設立されるべきであることに同意する。締約国は、任意の性質を有する資金調達のための適当な仕組みを確立することについて決定を行う。

2 締約国は、有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を超える移動により又は有害廃棄物及び他の廃棄物の処分中に発生する事故による損害を最小のものにとどめるため、緊急事態における暫定的な援助を行うための回転基金の設立を検討する。

第十五条 締約国会議

1 この条約により締約国会議を設置する。締約国会議の第一回会合は、UNEP事務局長がこの条約の効力発生の後一年以内に招集する。その後は、締約国会議の通常会合は、第一回会合において決定する一定の間隔で開催する。

2 締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請のある場合において事務局がその要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。

3 締約国会議は、締約国会議及び締約国会議が設置する補助機関の手続規則並びに特にこの条約に基づく締約国の財政的な参加について定める財政規則をコンセンサス方式により合意し及び採択する。

4 締約国は、その第一回会合において、この条約の規定の範囲内で海洋環境の保護及び保全に関する責任を果たす上で役立つ必要な追加的措置を検討する。

5 締約国会義は、この条約の効果的な実施について絶えず検討し及び評価し、更に、次のことを行う。

(a) 有害廃棄物及び他の廃棄物による人の健康及び環境に対する害を最小のものにとどめるための適当な政策、戦略及び措置の調整を促進すること。

(b) 必要に応じ、利用可能な科学、技術、経済及び環境に関する情報を特に考慮して、この条約及びその附属書の改正を検討し及び採択すること。

(c) この条約の実施並びに第十一条に規定する協定及び取決めの実施から得られる経験に照らして、この条約の目的の達成のために必要な追加的行動を検討し及びとること。

(d) 必要に応じ、議定書を検討し及び採択すること。

(e) この条約の実施に必要と認められる補助機関を設置すること。

6 国際連合及びその専門機関並びにこの条約の締約国でない国は、締約国会議の会合にオブザーバーを出席させることができる。有害廃棄物又は他の廃棄物に関連のある分野において認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは非政府のもののいずれであるかを問わない。)であって、締約国会議の会合にオブザーバーを出席させることを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーを出席させることを認められる。オブザーバーの出席及び参加は、締約国会議が採択する手続規則の適用を受ける。

7 締約国会議は、この条約の効力発生の三年後に及びその後は少なくとも六年ごとに、この条約の有効性について評価を行い、並びに必要と認める場合には、最新の科学、環境、技術及び経済に関する情報に照らして有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動の完全な又は部分的な禁止措置の採用について検討を行う。

第十六条 事務局

1 事務局は、次の任務を遂行する。

(a) 前条及び次条に規定する会合を準備し及びその会合のための役務を提供すること。

(b) 第三条、第四条、第六条、第十一条及び第十三条の規定により受領した情報、前条の規定により設置される補助機関の会合から得られる情報並びに適当な場合には関連する政府間機関及び非政府機関により提供される情報に基づく報告書を作成し及び送付すること。

(c) この条約に基づく任務を遂行するために行った活動に関する報告書を作成し及びその報告書を締約国会議に提出すること。

(d) 他の関係国際団体との必要な調整を行うこと。特に、その任務の効果的な遂行のために必要な事務的な及び契約上の取決めを行うこと。

(e) 第五条の規定に従い締約国が指定した中央連絡先及び権限のある当局との間の連絡を行うこと。

(f) 国内の有害廃棄物及び他の廃棄物の処分のために利用可能な締約国の認められた場所及び施設に関する情報を収集し及びその情報を締約国に送付すること。

(g) 要請に応じ、締約国を援助するため、次の情報を締約国から受領し、締約国に伝達すること。

 技術援助及び訓練の提供元

 利用可能な技術上及び科学上のノウハウ

 助言及び専門的知識の提供元

 資源の利用可能性

前記の援助は、次のような分野を対象とする。

 この条約の通告制度の運用

 有害廃棄物及び他の廃棄物の処理

 有害廃棄物及び他の廃棄物に関する環境上適正な技術(例えば、廃棄物低減技術及び廃棄物無発生化技術)

 処分能力及び処分場所の評価

 有害廃棄物及び他の廃棄物の監視

 緊急事態への対応

(h) 締約国が、有害廃棄物又は他の廃棄物が環境上適正な方法で処理されないと信ずるに足りる理由がある場合において要請するときは、国境を越える移動に関する通告、当該有害廃棄物若しくは他の廃棄物の運搬が通告に従っていること又は当該有害廃棄物若しくは他の廃棄物のために予定されている処分施設が環境上適正であることを審査することにつき当該締約国を援助することができ、かつ、必要な技術能力を有するコンサルタント又はコンサルタント会社に関する情報を当該締約国に提供すること。このような審査の費用は、事務局が負担するものではない。

(i) 不法取引の事実を確認するため要請に応じ締約国を援助し及び不法取引に関して入手した情報を関係締約国に対し直ちに送付すること。

(j) 緊急事態が発生した国に対し迅速な援助を行うため、専門家及び機材の提供につき締約国及び権限のある関係国際機関と協力すること。

(k) 締約国会議が決定するところに従い、この条約の目的に関係する他の任務を遂行すること。

2 事務局の任務は、前条の規定に従って開催される締約国会議の第一回会合が終了するまでは、UNEPが暫定的に遂行する。

3 締約国会議は、第一回会合において、この条約に基づく事務局の任務を遂行する意思を表明した既存の適当な政府間機関の中から事務局を指定する。締約国会議は、また、同会合において、暫定の事務局が課された任務、特に1に規定する任務の実施状況を評価し、及びこれらの任務に適した組織を決定する。

第十七条 この条約の改正

1 締約国は、この条約の改正を提案することができるものとし、また、議定書の締約国は、当該議定書の改正を提案することができる。改正に当たっては、特に、関連のある科学的及び技術的考慮を十分に払うこととする。

2 この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。議定書の改正は、当該議定書の締約国の会合において採択する。この条約及び議定書の改正案は、当該議定書に別段の定めがある場合を除くほか、その採択が提案される会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、改正案をこの条約の署名国にも参考のために通報する。

3 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、当該会合に出席しかつ投票する締約国の四分の三以上の多数票による議決で採択するものとし、寄託者は、これをすべての締約国に対し批准、承認、正式確認又は受諾のために送付する。

4 3に定める手続は、議定書の改正について準用する。ただし、議定書の改正案の採択は、当該会合に出席しかつ投票する当該議定書の締約国の三分の二以上の多数票による議決で足りる。

5 改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書は、寄託者に寄託する。3又は4の規定に従って採択された改正は、改正を受け入れた締約国の少なくとも四分の三又は改正を受け入れた関連議定書の締約国の少なくとも三分の二の批准書、承諾書、正式確認書又は受諾書を寄託者が受領した後九十日目の日に、当該改正を受け入れた締約国の間で効力を生ずる。改正は、他の締約国が当該改正の批准書、承認書、正式確認書又は受諾書を寄託した後九十日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。ただし、関連議定書に改正の発効要件について別段の定めがある場合を除く。

6 この条の規定の適用上、「出席しかつ投票する締約国」とは、出席しかつ賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。

第十八条 附属書の採択及び改正

1 この条約の附属書又は議定書の附属書は、それぞれ、この条約又は当該議定書の不可分の一部を成すものとし、「この条約」又は「議定書」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。附属書は、科学的、技術的及び事務的な事項に限定される。

2 この条約の追加附属書又は議定書の附属書の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。ただし、議定書に当該議定書の附属書に関して別段の定めがある場合を除く。

(a) この条約の追加附属書及び議定書の附属書は、前条の2から4までに定める手続を準用して提案され及び採択される。

(b) 締約国は、この条約の追加附属書又は自国が締約国である議定書の附属書を受諾することができない場合には、その旨を、寄託者が採択を通報した日から六箇月以内に、寄託者に対して書面により通告する。寄託者は、受領した通告をすべての締約国に遅滞なく通報する。締約国は、いつでも、先に行った異議の宣言に代えて受諾を行うことができるものとし、この場合において、これらの附属書は、当該締約国について効力を生ずる。

(c) これらの附属書は、寄託者による採択の通報の送付の日から六箇月を経過した時に、(b)の規定に基づく通告を行わなかったこの条約又は関連議定書のすべての締約国について効力を生ずる。

3 この条約の附属書及び議定書の附属書の改正の提案、採択及び効力発生は、この条約の附属書及び議定書の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。附属書の作成及び改正に当たっては、特に、関連のある科学的及び技術的考慮を十分に払うこととする。

4 附属書の追加又は改正がこの条約又は議定書の改正を伴うものである場合には、追加され又は改正された附属書は、この条約又は当該議定書の改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。

第十九条 検証

 いずれの締約国も、他の締約国がこの条約に基づく義務に違反して行動し又は行動したと信ずるに足りる理由がある場合には、その旨を事務局に通報することができるものとし、その通報を行うときは、同時かつ速やかに、直接又は事務局を通じ、申立ての対象となった当該他の締約国にその旨を通報する。すべての関連情報は、事務局が締約国に送付するものとする。

第二十条 紛争の解決

1 この条約又は議定書の解釈、適用又は遵守に関して締約国間で紛争が生じた場合には、当該締約国は、交渉又はその選択する他の平和的手段により紛争の解決に努める。

2 関係締約国が1に規定する手段により紛争を解決することができない場合において紛争当事国が合意するときは、紛争は、国際司法裁判所に付託し又は仲裁に関する附属書VIに規定する条件に従い仲裁に付する。もっとも、紛争を国際司法裁判所へ付託し又は仲裁に付することについて合意に達しなかった場合においても、当該締約国は、1に規定する手段のいずれかにより紛争を解決するため引き続き努力する責任を免れない。

3 国及び政治統合又は経済統合のための機関は、この条約の批准、受諾、承認若しくは正式確認若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、同一の義務を受諾する締約国との関係において紛争の解決のための次のいずれかの手段を当然にかつ特別の合意なしに義務的であると認めることを宣言することができる。

(a) 国際司法裁判所への紛争の付託

(b) 附属書VIに規定する手続に従う仲裁

 その宣言は、事務局に対し書面によって通告するものとし、事務局は、これを締約国に送付する。

第二十一条 署名

 この条約は、千九百八十九年三月二十二日にバーゼルにおいて、千九百八十九年三月二十三日から同年六月三十日まではベルンにあるスイス連邦外務省において、及び千九百八十九年七月一日から千九百九十年三月二十まではニュー・ヨークにある国際連合本部において、国、国際連合ナミビア理事会により代表されるナミビア及び政治統合又は経済統合のための機関による署名のために開放しておく。

第二十二条 批准、受諾、正式確認又は承認

1 この条約は、国及び国際連合ナミビア理事会により代表されるナミビアによって批准され、受諾され又は承認されなければならず、また、政治統合又は経済統合のための機関によって正式確認され又は承認されなければならない。批准書、受諾書、正式確認書又は承認書は、寄託者に寄託する。

2 この条約の締約国となる1の機関で当該機関のいずれの構成国も締約国となっていないものは、この条約に基づくすべての義務を負う。当該機関及びその一又は二以上の構成国がこの条約の締約国である場合には、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく義務の履行についてそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該機関及びその構成国は、この条約に基づく権利を同時に行使することができない。

3 1の機関は、この条約の規律する事項に関する当該機関の権限の範囲をこの条約の正式確認書又は承認書において宣言する。当該機関は、また、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

第二十三条 加入

1 この条約は、この条約の署名のための期間の終了後は、国及び国際連合ナミビア理事会により代表されるナミビア並びに政治統合又は経済統合のための機関による加入のために開放しておく。加入書は、寄託者に寄託する。

2 1の機関は、この条約の規律する事項に関する当該機関の権限の範囲をこの条約への加入書において宣言する。当該機関は、また、その権限の範囲の実質的な変更を寄託者に通報する。

3 前条2の規定は、この条約に加入する政治統合又は経済統合のための機関についても適用する。

第二十四条 投票権

1 2の規定の適用がある場合を除くほか、この条約の各締約国は、一の票を有する。

2 政治統合又は経済統合のための機関は、第二十二条3の規定及び前条2の規定により宣言されたその権限の範囲内の事項について、この条約又は関連議定書の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。当該機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

第二十五条 効力発生

1 この条約は、二十番目の批准書、受諾書、正式確認書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、二十番目の批准書、受諾卓、承諾書、正式確認書又は加入書の寄託の後にこれを批准し、受諾し、承認し若しくは正式確認し又はこれに加入する国及び政治統合又は経済統合のための機関については、当該国又は当該機関による批准書、受諾書、承認書、正式確認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

3 政治統合又は経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該機関の構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。

第二十六条 留保及び宣言

1 この条約については、留保を付することも、また、適用除外を設けることもできない。

2 1の規定は、この条約の署名、批准、受諾、承認若しくは正式確認又はこれへの加入の際に、国及び政治統合又は経済統合のための機関が、特に当該国又は当該機関の法令をこの条約に調和させることを目的として、用いられる文言及び名称のいかんを問わず、宣言又は声明を行うことを排除しない。ただし、このような宣言又は声明は、当該国に対するこの条約の適用において、この条約の法的効力を排除し又は変更することを意味しない。

第二十七条 脱退

1 締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この条約から脱退することができる。

2 脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した後一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。

第二十八条 寄託者

 国際連合事務総長は、この条約及び議定書の寄託者とする。

第二十九条 正文

 この条約のアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語の原本は、ひとしく正文とする。

 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 千九百八十九年三月二十二日にバーゼルで作成した。