データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] EANET政府間会合決定

[場所] 新潟
[年月日] 2000年10月26日
[出典] EANET
[備考] 暫定事務局仮訳
[全文]

決定1;EANET試行稼働のレビュー

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

 1998年4月以降、東アジア10ヶ国により実施されたEANETの試行稼働をレビューし、またEANETにおいて、対処能力向上、モニタリング地点の選定方法、モニタリング地点数、モニタリング手法、精度管理・精度保証の強化等、さらに改善すべき問題が多数残っていることを認識した上で、

1.EANETの試行稼働は、EANETの実施可能性を実証すること、関連する技術文書の改善を行うこと、各国におけるモニタリング体制の整備及び強化のために時間的余裕を与えること、EANETのさらなる発展のための政策的提言を行うことという点で、成功裡に行われたと結論する。

2.参加各国が、酸性雨モニタリング本格稼動を開始する基盤をつくりあげたものと結論する。

3.2000年7月31日・8月1日にフィリピンのマニラで開催された第3回暫定科学諮問グループ会合において採択された「EANET試行稼働におけるモニタリング報告書-その結果、問題点及びその克服の方法-」(EANET/ISAG 3/4/2 rev.1)を、EANET試行稼働の成果の一つとして承認するとともに、暫定ネットワークセンターに対し、この報告書を出版するよう要請する。

決定2;EANETのさらなる実施

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

1.EANET本格稼働を開始するため、「EANET実施に関する共同声明」(EANET/IG 2/5/2)を発する。

2.「EANETの暫定的な設計」(EANET/IG 2/5/3)は、今後の政府間会合にてさらに見直される文書であることに留意する。

3.参加国に対し、共同声明に記述された活動を継続・強化するよう求める。

4.EANET活動のために、事務局及び[又は]ネットワークセンターへの人材派遣を含む任意の資金拠出及び現物拠出を行うことを、参加国に対し促す。

5.また、他の関係機関に対しても、EANETの活動に貢献することを呼びかける。

6.EANET活動の実施に際し、有益なノウハウ及び技術を持つ参加国に対して、その他の参加国への技術支援を継続するよう促す。

7.国連アジア太平洋経済社会委員会、国連環境計画、世界気象機関、長距離越境大気汚染条約、その他の国際機関に対し、EANET活動推進への協力を呼びかける。

決定3;EANET事務局の指定

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)及び国連環境計画(UNEP)が、要請された場合にはEANET事務局となる用意があるとする意思を表明していることに鑑み、

1.UNEPを、下記を条件として、EANET事務局に指定する。

- UNEPは、政府間会合の指導及び政府間会合で採択される事業計画に基づき、事務局業務を遂行すること

- 事務局は、アジア太平洋環境評価プログラム(EAP.AP)事務所に置くこと

- UNEPは、事務局業務を遂行するに当たり、ESCAPと緊密に協力すること

- EANETの会計は、政府間会合の指導の下に、他の会計とは分離して扱うこと

- 事務局の専門職員を雇用する際には、参加国の国民を優先すること

- EANETを代表する者が、EAP.APの政策諮問委員会に招かれること

2.UNEP及び暫定事務局に対し、事務局に適用される規則・規程、信託基金の設立、事務局職員の雇用その他事務局のために必要な準備作業を協力して検討することを要請する。これにより、第3回政府間会合においてこれらを決定し、その後できる限り早期にUNEPが事務局として機能することができるようにする。

3.本会合の議長に対し、1.で記述する条件を担保するとともに、2.に記述する要請を行うため、政府間会合を代表し、UNEPに書簡を出す権限を付託し、これを行うよう要請する。

4.UNEPが事務局機能を担い始めるまでの間、日本国環境庁が、政府間会合の指導の下、また政府間会合で採択された事業計画に基づき、暫定事務局として機能するとの日本の提案を受諾する。

決定4;ネットワークセンターの指定

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

 ネットワークセンターとして酸性雨研究センター(ADORC)の指定を求める日本の誘致提案(EANET/WG 5/8/3及びこれを補足するEANET/WG 6/5/2)を踏まえ、

1.ネットワークセンター業務は、政府間会合の指導の下、また政府間会合で採択される事業計画に基づき、透明性をもって、かつ参加国からの専門家の参画をできる限り確保しつつ遂行されるとの条件の下、日本国新潟に位置するADORCをネットワークセンターに指定する。

2.暫定事務局に対し、ADORCが2001年1月からネットワークセンターとして機能できるよう、ネットワークセンターとしての活動の実施に関するADORCとの必要な取り決めを行うことを要請する。

3.ホスト国に対し、ネットワークセンター誘致提案に沿って、ネットワークセンター活動に対する資金拠出及び現物拠出を行うよう促す。

4.ADORCに対し、2001年1月からネットワークセンターとして機能し始めるまでの間、政府間会合の指導の下、また政府間会合で採択される事業計画に基づき、暫定ネットワークセンターとしての機能継続を要請する。

決定5;EANETのための技術文書

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

 2000年3月13日~15日にインドネシアのジャカルタで開催された第2回暫定科学諮問グループ会合で、EANETのためのモニタリングガイドライン、技術マニュアル、QA/QCプログラム、データ報告手順及び様式(EANET/ISAG 2/4/1-8 rev.。以下、「技術文書」という。)が採択されたことを踏まえ、

1.EANETのモニタリング活動が準拠すべき技術文書を承認する。

2.参加国に対し、各国の状況を適切に考慮し、必要な場合には修正を加えた上で技術文書を有効に活用することにより、酸性雨モニタリング活動の改善に向けて努力するよう求める。

3.科学諮問委員会に対し、最新の科学面・技術面での向上とEANETの経験を適切に考慮した上で技術文書を見直し更新していくことを要請する.。

決定6;EANETの2001年の事業計画及び予算

 2000年10月25・26日、新潟で開催された東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に関する第2回政府間会合は、

1.「EANETの2001年事業計画及び予算」(EANET/IG 2/7/2)を承認する。

2.参加国、科学諮問委員会(又は暫定科学諮問グループ)、事務局(又は暫定事務局)、ネットワークセンター(又は暫定ネットワークセンター)及びその他の関係する機関に対し、この事業計画に記述する活動を協力して実施するよう努めることを求める。

3.上記文書に記述する事務局予算及び中核的予算はEANET活動の実施のために不可欠であることを再確認し、参加国に対し、これら予算への積極的な貢献及び追加的な貢献の検討を要請する。