データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 持続可能な開発に関する世界首脳会議 持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言

[場所] ヨハネスブルグ
[年月日] 2002年9月4日
[出典] 環境省
[備考] 環境省仮訳
[全文]

我々の起源から将来へ

1.我々、世界の諸国民の代表は、2002年9月2日から4日にかけて南アフリカのヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議に集い、持続可能な開発への公約を再確認する。

2.我々は、万人のための人間の尊厳の必要性を認識した、人間的で、公正で、かつ、思いやりのある地球社会を建設することを公約する。

3.この首脳会議の始めに、世界の子供たちは我々に対し、素朴であるがはっきりとした口調で未来の世界は彼らのものであると語りかけ、我々すべてに対して、我々の行動を通じて、彼らが貧困、環境破壊及び持続可能でない開発形態が引き起こす屈辱も不当もない世界を相続することを確保するよう求めた。

4.我々の未来全体を代表するこれらの子供たちに対する回答の一環として、世界の隅々から集い、異なる生活体験を持つ我々全員は、緊急に新しくより明るい希望の世界を作り上げなければならないとの深い意識により結束し、動かされている。

5.したがって、我々は、持続可能な開発の、相互に依存しかつ相互に補完的な支柱、即ち、経済開発、社会開発及び環境保護を、地方、国、地域及び世界的レベルで更に推進し強化するとの共同の責任を負うものである。

6.人類発祥の地であるこの大陸から、我々は、互いに対する、より大きな生命共同体と我々の子供たちに対する責任を、実施計画とこの宣言を通じて宣言する。

7.我々は、人類が今分岐点に立っていることを認識し、貧困撲滅と人類の発展につながる現実的で目に見える計画を策定する必要に応じるために、確固たる取組みを行うとの共通の決意で団結した。

ストックホルムからリオ・デ・ジャネイロを経てヨハネスブルグへ

8.30年前に、我々は、ストックホルムにおいて環境悪化の問題に緊急に対処する必要性について合意した。10年前に、リオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議において、我々は、リオ原則に基づき、環境保全と社会・経済開発が、持続可能な開発の基本であることに合意した。そのような開発を達成するために、我々はアジェンダ21及びリオ宣言という地球規模の計画を採択したが、我々はこの計画への公約を再確認する。リオ会議は、持続可能な開発のための新しいアジェンダを決定した重要な画期的出来事であった。

9.リオとヨハネスブルグとの間に、世界の国々は、ドーハ閣僚会議のみならずモンテレイで行われた開発資金国際会議を含む国際連合の主導の下のいくつかの主要な会議に、集った。これらの会議は、世界のために、人類の未来の包括的なヴィジョンを明示した。

10.ヨハネスブルグ・サミットで、我々は、持続可能な開発のヴィジョンを尊重し実施する世界に向けて、共通の道のために建設的な探求を行う中で諸国民と様々な意見を織り交ぜたタペストリーを織り上げるために、多くのことを達成した。ヨハネスブルグではまた、地球のすべての国民の間で地球規模の合意とパートナーシップを達成することに向けた重要な前進があったことが確認された。

我々が直面する課題

11.我々は、貧困削減、生産・消費形態の変更、及び経済・社会開発のための天然資源の基盤の保護・管理が持続可能な開発の全般的な目的であり、かつ、不可欠な要件であることを認める。

12.人間社会を富める者と貧しい者に分断する深い溝と、先進国と開発途上国との間で絶えず拡大する格差は、世界の繁栄、安全保障及び安定に対する大きな脅威となる。

13.地球環境は悪化し続けている。生物多様性の喪失は続き、漁業資源は悪化し続け、砂漠化は益々肥沃な土地を奪い、地球温暖化の悪影響は既に明らかであり、自然災害はより頻繁かつ破壊的になり、開発途上国はより脆弱になり、そして、大気、水及び海洋の汚染は何百万人もの人間らしい生活を奪い続けている。

14.グローバリゼーションは、これらの課題に新しい側面を加えた。急速な市場の統合、資本の流動性及び世界中の投資の流れの著しい増加は、持続可能な開発を追及するための新たな課題と機会をもたらした。しかしながら、グローバリゼーションの利益とコストは不公平に分配され、これらの課題に対処するに当たり開発途上国が特別な困難に直面している。

15.我々は、これらの地球規模の格差を固定化する危険を冒しており、また、我々が貧困層の生活を根本的に変えるような方法で行動しない限りは、世界の貧困層は、彼らの代表と我々が公約している民主的制度に対する信頼を失い、その代表者たちを鳴り響く金管楽器かじゃんじゃんと鳴るシンバル以外の何ものでもないとみることになるかもしれない。

持続可能な開発への我々の公約

16.我々は、我々の集合的な力である豊かな多様性が、変革のための建設的なパートナーシップのために、また、持続可能な開発の共通の目標の達成のために用いられることを確保する決意である。

17.人類の連帯を形成することの重要性を認識し、我々は、人種、障害、宗教、言語、文化、伝統にかかわりなく、世界の文明・国民間での対話と協力を促進するよう求める。

18.我々は、ヨハネスブルグ・サミットが人間の尊厳の不可分性に焦点をあてていることを歓迎し、目標、予定表及びパートナーシップについての決定を通じて、清浄な水、衛生、適切な住居、エネルギー、保健医療、食料安全保障及び生物多様性の保全といった基本的な要件へのアクセスを急速に増加させることを決意する。同時に、我々は、互いに、資金源へのアクセスを獲得し、市場開放からの利益を得て、キャパシティー・ビルディングを確保し、開発をもたらす最新の技術を使用し、また、低開発を永遠に払いのけるための技術移転、人材開発、教育及び訓練を確保できるよう共に取り組む。

19.我々は、人々の持続可能な開発にとって深刻な脅威となっている世界的な状況に対する闘いに特に焦点を置き、また、優先して注意を払うとの我々の約束を再確認する。これらの世界的状況には、慢性的飢餓、栄養不良、外国による占領、武力衝突、麻薬密売問題、組織犯罪、汚職、自然災害、武器密輸取引、人身売買、テロリズム、不寛容と人種的・民族的・宗教的及びその他の扇動、外国人排斥、並びに特にHIV/AIDS、マラリア及び結核を含む風土病、伝染性・慢性の病気が含まれる。

20.我々は、女性への権限付与、女性の解放及び性の平等が、アジェンダ21、ミレニアム開発目標及び持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画に含まれるすべての活動に統合されることを確保することを約束する。

21.我々は、地球社会がすべての人類の直面している貧困撲滅と持続可能な開発という課題に対処するための手段を持ち資金を与えられているとの現実を認識する。我々は共に、これらの利用可能な資金が人類の利益のために利用されることを確保するために更なる手段を講ずる。

22.この点に関し、我々の開発目標の達成に貢献するために、我々は、政府開発援助が国際的に合意されたレベルに達していない先進国に対し、具体的努力を行うよう要請する。

23.我々は、地域的協力を振興し、国際協力を改善し、持続可能な開発を推進するために、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)のような、より強力な地域集団や同盟の出現を歓迎し、支援する。

24.我々は、小島嶼開発途上国やLDCの開発ニーズに対し引き続き特別の注意を払うこととする。

25.我々は、持続可能な開発における先住民の極めて重要な役割を再確認する。

26.我々は、持続可能な開発が長期的視野とあらゆるレベルにおける政策形成の際の広範な参加、意思決定及び実施が必要であることを認識する。社会的パートナーとして、我々は、主たるグループの役割の独立した重要な役割を尊重しつつ、これらすべてのグループとの安定したパートナーシップのために引き続き尽くすつもりである。

27.我々は、大企業も小企業も含めた民間部門が、合法的な活動を追求するに際し、公正で持続可能な地域共同体と社会の発展に貢献する義務があることに同意する。

28.我々はまた、「労働における基本的原則及び権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」を考慮しつつ、所得を生みだす雇用機会を増大するために支援を行うことに合意する。

29.我々は、民間部門の企業が透明で安定した規制環境の中で実行されるべき企業の説明責任を強化する必要があることに合意する。

30.我々は、アジェンダ21、ミレニアム開発目標及び持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画の効果的な実施のために、あらゆるレベルでガバナンスを強化し改善することを約束する。

多国間主義が未来である

31.持続可能な開発の目標を達成するためには、我々は、より効果的、民主的かつ責任のある国際的な及び多国間の機関を必要としている。

32.我々は、国連憲章と国際法の原則と目的並びに多国間主義の強化に対する我々の公約を再確認する。持続可能な開発を推進するのに最も適した立場にある世界で最も普遍的で代表的な機関である国際連合の主導的役割を支持する。

33.我々は更に、我々の持続可能な開発の目標と目的の達成に向け、進捗状況を定期的に監視することを約束する。

ことを起こせ!

34.我々は、これがこの歴史的なヨハネスブルグ・サミットに参加したすべての主なグループと政府を含んだ包含的プロセスでなくてなならないことについて合意している。

35.我々は、地球を救い、人間の開発を促進し、そして世界の繁栄と平和を達成するという共通の決意により団結し、共同で行動することを約束する。

36.我々は、持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画及び、その中に含まれる時間制限のある、社会・経済的・環境的目標の達成を促進することを約束する。

37.人類のゆりかごであるアフリカ大陸から、我々は、世界の諸国民と地球を確実に受け継ぐ世代に対し、持続可能な開発の実現のための我々の結束した希望が実現することを確保する決意であることを厳粛に誓う。

(了)