データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 水分野における日仏協力

[場所] 京都
[年月日] 2003年3月17日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 2015年までに安全な飲料水を利用できない人々の割合を半減する目標は、国連ミレニアム・サミットの際に国連ミレニアム宣言に盛り込まれた。更に、2015年までに基本的な衛生を利用できない人々の割合を半減するとの新たな目標が、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の実施計画において採択された。これらの目標により、国際社会は水関連の課題への取組みに向けて最大限の努力を動員しようとしている。

 2003年、日本は、3月に京都、滋賀及び大阪において第3回世界水フォーラム及び閣僚級会議を、9月末には第3回アフリカ開発会議(TICAD III)を開催し、一方、フランスは6月にエヴィアンにおいてG8首脳会合を開催する。水はこれら3つの会議全てにおいて優先課題である。両国の水供給と衛生分野への開発援助は、合計すると、世界全体の同分野における二国間及び多国間ODAの総額の40%(1999年から2001年の平均値)にのぼる。また、日本とフランスの両国は、地球レベルの広範囲の課題に対処する上で必要とされる専門的知識と技術を有している。

 国際社会にとっての水問題の重要性、及び両国が有している優位性に鑑み、日本とフランスは水に関する様々な問題の解決のため、日本とフランスは協力を強化し改善することを決定した。両国は、この協力により、水分野において両国が個別に行ってきたことが相乗効果により倍加されるものと確信する。

 日本とフランスは、水分野でのあり得るべき協力についての協議を開始した。地球規模で協力することを目的として、両国は、最初の共同の努力の一環として以下の活動を特定した。両国は、その他の開発途上地域に協力を拡大するため更なる協議を行う。両国は、このイニシアティブの目的を達成するために、現地レベルで協力するとともに、他のドナーと協議しつつ様々な援助関係団体と協力していく。

●セネガル川流域

 日本とフランスは、水資源管理と農業用水の生産性の改善に重点を置いて、協議と情報交換を行うことにより、セネガル川流域*(注1)*の開発についての協力を強化する。これらの協議は、セネガル、モーリタニア、マリによって構成されたセネガル川流域の開発を監理するために設立された地域機関である「セネガル川開発機構(OMVS)」と緊密に協力して行われる。

 両国は、地域及び国家当局のオーナーシップ、及び地域レベルで既に存在する水供給管理のための枠組みを十分に尊重しつつ、水供給プロジェクトとその結果として必要となるキャパシティ・ビルディング(能力開発)についての活動を協調して行う。

●ジブチ

 ジブチ国内の水供給源の増加に貢献することを目的として、日本とフランスは、ジブチの帯水層の塩水化*(注2)*に関する問題に取り組むために協力する。

●ラオス人民民主共和国

 日本とフランスは、ラオス人民民主共和国の首都であるビエンチャンの水不足に取り組むため共同作業に着手した。日本は、水供給システムの能力と持続性を強化するために、ビエンチャンにおける水供給マスタープラン調査を既に開始した。両国は、マスタープラン調査を踏まえ、具体的プロジェクトの可能性を調査するその進め方について対話を始めた。

*(注1)* 西アフリカに位置するセネガル川流域は、長さ1,800kmのセネガル川及びその主要な支流によって構成され、ギニア、マリ、モーリタニア、セネガルにまたがっている。

*(注2)* 帯水層は、井戸或いは水源へ向けて水が通過する地層帯を意味している。ジブチでは、この帯水層は、その含有塩分のためにしばしば飲料水源として不適切となっている。