データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日英首脳共同声明:環境問題に取り組むための日英協力

[場所] 箱根
[年月日] 2003年7月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 小泉純一郎日本国内閣総理大臣及びトニー・ブレア英国首相は、本日箱根で会談を行った。両首脳は、環境問題を議論し、中でもとりわけ気候変動が今日人類が直面している最大かつ緊急の問題であることに焦点を当てた。

(京都議定書への支持)

 両首脳は、京都議定書は偉大な業績であり、また、気候変動への取組の重要な第一歩であることについて見解を共にした。両首脳は、議定書への全面的な関与及びその早期発効と早急な実施の重要性を再確認し、ロシアに対して可能な限り速やかに批准するよう呼びかけた。

(気候変動の長期目標に向けて)

 両首脳は、気候変動は国際社会全体によって取り組まれるべき深刻な脅威であることから、今後、すべての国が温室効果ガス排出量を削減させていくために行動する必要があることを強調した。ブレア首相は、英国が2050年までに二酸化炭素排出量の60%削減を約束していることを説明した。小泉総理は、日本はOECD諸国内で最も高いレベルにあるエネルギー効率の向上等の手段により、排出量削減のために最大限の努力を継続することを説明した。両首脳は、気候変動への取組に際して、個々の状況と行動能力に基づきすべての国が参加する国際的な制度に基づく、地球的規模の行動を確立するため、可能なあらゆる努力を行うことを約束した。

 両首脳は、気候変動への取組に対する行動は、環境と経済の双方に資することが可能であり、またそうすべきであり、この過程において科学技術の活用が鍵となっていることを強く確信している。

(具体的な協力:未来に向かって)

 両首脳は、WSSDのフォローアップによる進歩とエビアンで採択された「持続可能な開発のための科学技術G8行動計画」を歓迎し、科学面、技術面、政策面で引き続き革新を促進するために、一層の日英間の協力が必要であるとした。両首脳は、以下を決定した。

(環境科学)

-海洋科学技術センター(JAMSTEC)横浜研究所の地球シミュレータを用いた気候変動予測モデリング分野での日英間の協力を継続する。

-日英の若く優秀な学生が相互に相手国において環境政策問題の研究を行うことを可能にするため、英国のチーブニング奨学制度と日本の(財)地球環境戦略研究機関(IGES)のインターンシップ・プログラムを活用する。

(排出量削減)

-京都メカニズム(共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)、国際排出量取引)の実際の活用に関して、互いの国において実施中の施策や、同メカニズムの活用戦略等の情報を共有する。

-このため、在本邦英国大使館は、試行的なクリーン開発メカニズム共同実施クレジット移行事業の検討を行う経済産業省のパイロット・スキームに参加し、また、排出量取引の活用に関する研究を行う環境省の試行事業について情報交換を行う。

-英国大使館はまた、独自のパイロット・プロジェクトとして、温室効果ガス排出レベルを明らかにし、将来、排出削減プロジェクトを行うためのエネルギー監査を実施する。

(エネルギー効率及び再生可能エネルギー)

-空調機器(エアコン)、扇風機、冷蔵庫、ポンプ、デジタル・テレビやその他情報通信機器といったエネルギー消費機器の基準や業界目標に関し、より効率的な製品の開発や安定した投資環境創造のための革新や競争を促すよう協力する。

-再生可能エネルギー及び国内送配電に接続される電力の一層の拡大に関する課題をより理解するために、情報及び経験の交換を行う。

-日英がともにパートナーとなっているエネルギー理解促進イニシアティブや再生可能エネルギー及びエネルギー効率に関するパートナーシップ(REEEP)等を通じて再生可能エネルギーを国際的に推進していくために共同して作業を行う。

(自動車)

-大気汚染を改善し、二酸化炭素排出を削減するため、排出ガスがクリーンでエネルギー効率の高い自動車の開発・普及を促進することが重要であることを認識し、将来の代替自動車及び燃料に関する情報交換と、相互協力及び研究開発における投資の可能性を探求する機会を提供する目的で、英国の主催により、両国の政府関係者、科学者、産業界等によるフォーラムを開催する。両国は、クリーンでエネルギー効率の高い自動車の市場として欧州が重要であることを認識し、欧州委員会及びその他の国からの少数の専門家の参加を招請する。

(違法伐採)

-森林の保全の重要性及び森林の二酸化炭素吸収源としての貴重な役割を認識し、両国は、アジア森林パートナーシップ(AFP)、国際熱帯木材機関(ITTO)その他関連多数国間、二国間取極等を通じて、とりわけアジアにおける違法伐採問題にともに取り組む。

(その他)

-内分泌攪乱化学物質:「内分泌攪乱化学物質等に関する日英共同研究実施取極」の下で、日英共同研究を継続し、本年の「内分泌攪乱化学物質問題に関する国際シンポジウム」に英国も参加する。

-来年のG8環境大臣会合の前に、資源生産性の改善、持続可能な生産・消費パターンに関して相互の戦略より学ぶことを目的とした行事を日本国において開催する。

2003年7月19日 箱根

日本国総理大臣

小泉純一郎

英国首相

トニー・ブレア