データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国連防災世界会議開会式村田吉隆日本政府代表団長挨拶

[場所] 神戸
[年月日] 2005年1月18日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

天皇陛下、皇后陛下、

ヤン・エグランド国連人道問題担当事務次長、

各国代表及びご列席の皆様

 本日は、かくも大勢の方々のご列席を得て、国連防災世界会議が開催されますことをお慶び申し上げます。開催国日本を代表して、ご出席の皆様方に心より歓迎の意を表します。また、会議の開催に尽力された国連事務局をはじめ関係者の皆様のご努力に対し、心より感謝申し上げます。

 会議の開催に当たり、昨年末のスマトラ島沖地震とこれに伴う津波災害によりお亡くなりになられた方々に対し、哀悼の意を表するとともに、多数の被災者の方々に対し、お見舞いを申し上げます。この悲劇に対し、国際社会は強い団結を示しております。日本も、アジアの一員として、最大限の支援を提供しております。被災地が一日も早くこの災害から立ち直り、復旧・復興が進められることを祈念しております。

 世界では、様々な災害により多くの被害が発生しており、持続可能な開発の大きな障害となっています。我が国でも、昨年は、近年稀に見る多数の災害に見舞われ、また、昨日、阪神・淡路大震災から10年を迎えました。こうした中で、国内外において、防災の重要性に対する関心が高まっており、この会議において、皆様方と災害に強い国・コミュニティづくりについて語り合うことは、誠に意義深いものと確信します。

 我々は、自然の脅威のリスクと共存しなければなりません。しかし、社会の脆弱性を減らすことにより、災害被害を軽減することは可能です。我が国では、戦後荒廃した脆弱な国土において、防災体制が不十分な時代には、大きな台風が襲うたびに、数千人規模の犠牲者が出ておりました。以来、災害の教訓に学び、防災体制を強化し、防災への投資を進めてきた結果、今日では、台風による犠牲者数を大幅に減らせるようになりました。

 日本では、「防災」は、内閣の最も重要な政策の一つとなっています。私が務める防災担当大臣という役職は、内閣の重要政策に関する特命担当大臣の一つであり、災害対策全般に渡り、政府全体の総合的な取組みを推進する任務を担っています。また、この「防災」に関して、強いリーダーシップのもとに、効率的で効果的な対策を推進するため、内閣総理大臣を長とする中央防災会議という多部門間調整の仕組みを構築しており、私自身、総理を補佐しつつ、緊急対応時のみならず、平常時から、災害に強い国づくりを進めています。

 しかし、社会は絶えず変化し、自然もまた思わぬ課題を突きつけます。我が国では、都市化の拡大や高齢化の進展等の社会状況の変化により、災害への脆弱性の質も変化し、新たな課題に絶えず対処する必要があります。このことは、私自身、昨年の一連の大災害を経験する中で、痛感いたしました。常に、社会の実情に応じて、脆弱性の原因を探り、関係者の共通認識の下、具体的な減災対策を講じることが重要です。

 我が国は、幾多の災害を経験して培った知識や技術を活用し、政府開発援助や多国間の枠組みにより国際防災協力を積極的に推進してきました。この会議での議論を踏まえ、今後の防災分野での協力の効果的な進め方を追及していきたいと考えています。

 この会議が、防災に関する加盟各国の強い自覚の下、関係主体との協力関係を深め、世界全体の災害被害の軽減に向けた取組みが大いに前進する有意義なものとなることを強く期待します。

 ご静聴ありがとうございました。