データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 兵庫宣言

[場所] 神戸
[年月日] 2005年1月21日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 我々、国連防災世界会議への諸国代表団は、1995年1月17日の阪神・淡路大震災から目覚しい復興を遂げた兵庫県神戸市に、2005年1月18日から22日まで、集まった。

 我々は、被災者及び被災地域、特に2004年12月26日に発生した地震と津波がインド洋にもたらした未曾有の災害の被災者及び被災地域に対し、深い哀悼と連帯を表明する。我々は、被災者、被災国政府及び国際社会が、この惨事に対応し乗り越えるために行っている努力を讃える。2005年1月6日にジャカルタで開催された「地震及び津波被害後のASEAN緊急首脳会議」にこたえ、我々は、防災に関する適切な措置を含め、支援の手を差し伸べることを表明する。

 我々はまた、この災害から学ぶ教訓は、他の地域にも意味を持つと考える。このような考えにより、国連防災世界会議において、今回の地震及び津波の被害に関する特別セッションを行い、リスクの軽減の見地からこの災害を検証し、「インド洋災害に関する特別セッションの共通の声明:より安全な将来へ向けてのリスクの軽減」を成果として発表した。

 我々は、国際防災の10年と、それに続く国際防災戦略(ISDR)を通じ、国際社会は災害リスクの軽減に関する多くの経験を積み重ねてきたと認識する。特に、「より安全な世界に向けての横浜戦略と行動計画」に沿った具体的措置をとることを通じて、1994年の横浜会議以来、達成されなかった諸点と課題を含め、多くのことを学んできた。しかしながら、我々は、様々な災害のために、世界中の地域社会において、尊い人命や価値ある財産が奪われ続けているだけでなく、重傷者や大量の難民が生じ続けていることを深く憂慮する。

 災害が開発投資の結果を短期間に大きく損ない、そしてそれゆえ、持続可能な開発と貧困撲滅にとって大きな障害になっていると信じる。我々はまた、災害リスクを適切に考慮しない開発投資は、災害への脆弱性を増すことになると考える。したがって、国の持続可能な開発を実現し、強化していく上で、災害に取り組み、災害を軽減することは、国際社会が直面する最重要な課題のひとつである。

 我々は、あらゆるレベルにおける国際協力、連帯、パートナーシップそして良い統治が重要であることを十分に念頭において、災害のもたらす、人命の損失及びその他の社会的、経済的、環境的な資産の損失を、世界各地において減らしていく決意である。

 災害リスクの軽減における国連システムの果たす重要な役割を我々は確認する。そして、我々は、次のとおり宣言する。

我々は、21世紀の世界的な防災活動を強化するために、関連の国際約束及び枠組、また、ミレニアム宣言の中にある目標を含め、国際的に合意された発展の目標に取り組んでいく。災害は、貧困削減へ向けたあらゆるレベルの努力を著しく損なう影響を持つ。災害の影響は、依然として持続可能な開発にとっての大きな課題である。

我々は、防災、持続可能な開発、そして特に貧困撲滅の三者の密接不可分な関係を認識し、また、政府、地域国際機関及び国際機関、金融機関、NGOとボランティアを含む市民社会、民間部門、そして科学者を含むすべての関係者を防災に関与させることが重要であることを認識する。したがって、我々は、今回の会議及びその準備の過程において行われたすべての関連する行事及び貢献を歓迎する。

個人から国際的なものに至るあらゆるレベルにおいて、災害予防の文化が強化されねばならない、また、災害の発生前にとる措置は健全な投資であり、強化されねばならない。人間は、自然がもたらす危険な状況とともに生きていかねばならない。しかしながら、我々は、災害のもたらす衝撃に対し備え、また、その衝撃を軽減することに決して無力ではない。我々は、社会の脆弱性を減らすことにより、自然のもたらす苦痛を軽減することができるし、そうしなければならない。人間中心の早期警戒システム、リスク評価、教育、そして、行動を重視し、また統合された、災害横断的で分野横断的な、その他のアプローチを防災サイクルの文脈においてとることを通じ、災害に強い国や社会をさらに築くことができるし、また、そうしなければならない。このような防災サイクルには、予防、準備、緊急対応だけでなく、復旧及び復興が含まれる。災害のリスク及びその影響は脅威であるが、適切な対応をとれば、将来のリスクと脆弱性の削減へつながり得るし、またそうあるべきである。

我々は、すべての国々が領域内の国民と財産を災害から守る第一義的な責任を持っており、したがって、国の政策において、利用できる能力や資源に応じた形で、災害リスク削減に高い優先順位をおくことが、きわめて重要であると信じる。我々は、地域社会レベルでの適切な防災措置が、コミュニティと人々の災害に対する脆弱性を著しく軽減することを考慮し、地域社会において災害リスクを軽減するコミュニティレベルの能力を高めることが極めて重要であると考える。災害は、人々や社会、特に貧しい人々や社会の生存、尊厳、生活及び安全に対する主要な脅威である。したがって、災害を受けやすい途上国、特に最貧国及び小島嶼開発途上国が災害に対応できる能力を、その国自身の努力、そして、技術協力及び資金協力を含む二国間、地域間、さらに国際的な協力の強化を通じて強化する緊急な必要性がある。

我々は、したがって、今後十年間の防災の指針となる枠組みとして、期待される成果、戦略目標、優先行動、実施戦略、そしてフォローアップを盛り込んだ「兵庫行動枠組2005-2015」を採択した。

災害リスクと脆弱性を軽減するためには、「兵庫行動枠組」があらゆるレベルにおいて実際の行動に移され、また、その達成度がISDRによって点検されることが、極めて重要である。我々はまた、行動のための兵庫枠組みに示された期待される成果と戦略目標を実現するための一環として、個別の能力と状況に応じ、災害リスク軽減のための活動の進み具合を図る指標を作成する必要があることを認識する。

 我々は、多様な関係者間の協力的な連携を強化し、防災に関する自発的なパートナーシップを促進する必要があることを強調する。我々はまた、防災を進めるための計画、イニシアティブ、最良の事例、教訓及び技術に関する情報を共有するメカニズムをさらに開発し、国際社会が、そのような努力の成果と恩恵を共有できるようにしなければならない。

我々は、国連防災世界会議の成果の実現は、今後十年で世界を災害のリスクからより安全な姿にして、その世界を将来の世代に手渡すという共通責任があり、将来への投資としての我々のたゆまぬ努力にかかっていることを認識し、関連する専門的能力と経験を求め、今ここで、あらゆる関係者に行動を呼びかける。

我々は、国連防災世界会議を開催していただいた日本の政府及び国民に深い謝意を表するとともに、特に、兵庫県の県民の皆様に、その暖かいおもてなしに感謝する。

2005年1月22日、日本国兵庫県神戸市において採択。