データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] インド洋災害に関する特別セッションの共通の声明〜より安全な未来に向けたリスク軽減〜

[場所] 神戸
[年月日] 2005年1月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 国連防災世界会議は、

 先般の津波災害の犠牲者及びその遺族、並びに被災諸国の国民及び政府に対し、深甚なるお悔やみを表明するともに、津波災害が経済面・社会面・心理面・環境面等においてもたらした被害及び影響に深い懸念を表明し、

 国内及び国際社会が、人類が直面する課題に共同で対処するとの団結及びコミットメントの精神の真の現れとして、救援活動に対する迅速で寛大な支持と貢献を行うことを賞讃し、

 自然災害、脆弱性及び国際防災戦略に関する2003年2月6日の総会決議57/256、2003年12月23日の総会決議58/214及び58/215、並びに2004年12月22日の総会決議59/231及び59/233を想起し、

 国連の支援を受けて2003年10月16日〜18日にボンで開催された、早期警戒に関する第二回国際会議の成果の履行を勧告する総会決議58/214についても想起し、

 更に、1994年5月23日〜27日に横浜(日本)で開催された国連防災世界会議で採択された、横浜戦略と「より安全な世界に向けた行動計画」を想起し、

 地震、洪水、台風、サイクロン、干ばつや津波といった深刻な自然災害が、国境に関係なくあらゆる人にとって甚大な脅威であり続けること、また、特に途上国において、社会的・経済的発展が阻害されることを認識し、

 災害の影響に効果的に対処するため、国家及び地域の能力構築の重要性を認識し、

 早期警戒システムを改善し災害を減らすための理解、団結及びコミットメントをうち立てるため、国際的及び域内の対話と議論を引き続き行う重要性を強調し、

 津波災害から得られたあらゆる教訓を包括的に評価する必要性について強調し、

 2005年1月6日にジャカルタで開催された、地震と津波被害に関するASEAN特別首脳会議において、インド洋及び東南アジア地域における地域津波早期警戒センターといった地域早期警戒システムを構築することに合意したことについても強調し、

 2005年1月10日〜14日にモーリシャスで開催された、小島嶼開発途上国の持続可能な開発のための行動計画の実施の評価に関する国際会合の成果、特に地球規模の早期警戒システムに向けた呼びかけが同会議において支持されたことに留意し、

 第59回国連総会再開会期までに、津波を含む地域早期警戒システムを構築するプロセスを立ち上げるべきとの要請に応じ、

 太平洋にある地域津波警報システムの経験を活用し、インド洋を含め、世界的な津波早期警戒能力の開発を促進する諸提案に留意し、

 インド洋地域諸国が個別に表明しているような、すでに検討中の津波早期警戒システム構築のための諸提案にも留意し、

 今回の国連防災世界会議の開催期間中に行われたテーマ別会合の成果を踏まえながら、インド洋津波災害に関する特別セッションにおける議論と結論、及び、この文脈で提出された諸提案を迅速に調整し吟味する必要性に留意し、

拡充された制度的取り決め、効果的な技術的機材による技術協力、及び、自然災害の影響に効果的に対処するための能力構築を含め、防災の取り組みにおける地域協力と調整の重要性を強調する。

インド洋における地震と津波によって引き起こされた惨状に示されたような、国内制度を強化するとともに、災害探知・早期警戒・予防・自然災害の評価に関する情報と最良事例とを共有するための既存のメカニズム、及び災害時の救援、災害後の復旧復興のための既存のメカニズムとを拡大する緊急の必要性につき認識する。

専門的で共同研究を行う地域センター、情報交換ネットワーク、早期警戒システム、データベースと知識管理の構築、現代科学技術の利用、及び災害リスクと自然災害から発生する影響を削減するための戦略を含め、すべての関連する自然災害を対象とした必要な地域防災メカニズムが、出来るだけ速やかに構築され強化されることを勧告する。

早期警戒システムの内容として、(i)地域社会が直面するリスクの事前周知、(ii)これらのリスクに対する技術的観測と警報サービス、(iii)リスクに直面している人々に対するわかりやすい警報の発信、及び(iv)知識、啓発及び行動のための備えから成ることについても認識する。

国連人道問題調整事務所、国連諸基金・計画、国連専門機関及びその他の国際機関等に対し、その作業計画に地域防災戦略を統合し、そのような戦略を実施する具体的なイニシアティブを編み出すよう促す。

国際防災戦略が先般の津波災害から得たあらゆる教訓を特定し、分析し、広める必要性について強調する。

国際防災戦略事務局に対し、各地域及び諸国間における様々なイニシアティブや進行中の議論または取り決めを考慮に入れつつ、防災のための地域メカニズムに関する報告書を作成し、経済社会理事会の2005年実質会期及び第60回国連総会に提出するよう要請する。

経済社会理事会に対し、地域防災メカニズムを2005年の実質会期における人道セグメントの議題に取り込むよう要請する。

事務総長に対し、地域防災メカニズムを第60回国連総会の議題に取り込むとともに、総会に対し本件に関する報告書を提出するよう促す。

2005年2月16日にブラッセル(ベルギー)で開催される閣僚級の第三回地球観測サミットにおいて、早期警戒を含む防災に優先度が置かれていることを歓迎する。

国連防災世界会議の成果を政治的に推進し、インド洋津波早期警戒システムの構築に必要とされる資源の動員を目指して、2005年1月28日〜29日にプーケット島において、津波早期警戒取り決めに関する地域協力閣僚会合を開催するとのタイ政府の提案を歓迎する。

2006年初頭にボンにおいて早期警戒に関する国連会議をホストするとの独の寛大な提案を歓迎するとともに、加盟国、すべての関連する国連機関、諸基金・計画、及びその他の国際・地域機関に対し、早期警戒促進プラットフォームの支援をうけつつ、 (i)2003年10月16日〜18日にボン(独)で開催された早期警戒に関する第二回国際会議において提案され、今回の国連防災世界会議で打ち上げられた、国際早期警戒プログラムを実施し、(ii)様々な災害に対する各国の脆弱性や、現行の支援、技術的制度的能力、関連主体の関与、実施上の欠点、ギャップや障害を含めた警戒システムの現状を考慮に入れた上で、早期警戒システム実施のための優先分野を特定し、(iii)効果的な早期警戒システムのための指針、基準や目標の策定・利用を含め、早期警戒システムの実施を評価しモニターすることを目的として参加するよう促す。

政府間海洋学委員会(IOC)やその他の関連する国際・地域機関の既存の調整メカニズムを活用し、国際的な地球観測グループ(GEO)の下での全球観測システム(GEOSS)の企画プロセスを活かし、災害探知・警報、対応計画の策定、住民教育プログラム、耐久シェルター、ライフライン、防御的インフラなどに加えて様々な先進技術システム(例えば、衛星を通じた高精度の動的海面測定、地震・海洋学的数値のリアルタイム測定を可能とする浮標)を含む津波リスク評価等の包括的な行動を含め、既存の太平洋津波早期警戒システムの経験を活用する必要性を認識する。

インド洋のための効果的で持続的な津波早期警戒システムの構築を呼びかける。

インド洋津波早期警戒システムは、国連の調整の下にインド洋特有の状況と個別の要請に合わせて作られ、これら諸国こそがシステムの形態や性格を決定することを強調する。

インド洋津波早期警戒システムを構築する将来戦略は、技術的検討のための予備会合、インド洋諸国からの要請に応じて行われるニーズの把握、必要に応じた地域セミナーと調整会合、地域的な企画会合、及び住民意識向上等の資料作成・普及などを含み得ることを勧告する。

インド洋の暫定的な津波早期警戒を提供すべく地域諸国が実施し、または実施しつつある対策を評価する。

インド洋での津波早期警戒システムの構築を支援するため、世界の主要国から提示された資金面・技術面での多くの寛大な申し出に感謝する。