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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ「ビジョン声明」

[場所] ビエンチャン
[年月日] 2005年7月28日
[出典] 環境省
[備考] 環境省仮訳
[全文]

 開発や貧困撲滅は喫緊で、優先的な国際的目標である。持続可能な開発に関する ヨハネスブルク・サミットは、クリーンで安定的なエネルギーへのアクセス増加の必要性を指摘し、また、気候変動及び持続可能な開発に関するデリー宣言では、気候変動対策の検討に当たって、開発政策を考慮することの重要性を指摘している。

 我々は、それぞれ異なる天然資源の保有状況や、持続可能な開発-エネルギー戦略を持っているが、既に、共通の目標実現のために協力しており、今後も続ける。二国間及び多国間のイニシアティブを基盤に、今後、協力を強化し、増加するエネルギー需要やそれに伴う諸課題への対応を図る。課題には、大気汚染、エネルギー安全保障、温室効果ガス濃度が含まれる。

 この観点から、我々は国別の状況に応じ、国内の汚染物質削減、エネルギー安全保障や気候変動対策として、クリーンかつ省エネの技術の開発、普及、移転に資する新たなパートナーシップを形成する。本パートナーシップは、国連気候変動枠組条約の原則に則ったものである。

 本パートナーシップは、現実的な成果を得るべく、具体的かつ実質的な協力の下、既存の及び開発過程にある費用効果的でクリーンな技術等の開発、普及、移転を促進する環境を整備するためのものである。協力分野は、例えば、省エネ、クリーン石炭技術、天然ガス、炭素隔離、メタン回収、原子力発電、及びバイオ、水力等の再生可能エネルギー等(一部省略)の分野における地域協力の推進である。

 また、本パートナーシップはより長期的視点に基づき、温室効果ガス排出の大幅削減をしつつ、経済成長を促すようなエネルギー変革のための諸技術の開発、普及、移転についても協力を図っていく。協力する技術分野には、例えば、水素、ナノテク、最先端バイオテクノロジー、次世代原子力発電、核融合などが挙げられる。

 本パートナーシップでは、各国の持続可能な開発・エネルギー戦略の形成、実施過程における経験を共有することで、各国の温室効果ガス削減を図るための可能性を探求する。

 我々は、拘束力のない協定を策定し、本声明において共有しているビジョンの要素や、その達成へ向けた対策等をさらに明確化する。具体的には、本パートナーシップの枠組みを形成し、これに制度上及び財政上の支援措置を盛り込むとともに、他の関心ある国々の参加についても規定する。

 本パートナーシップは、参加国における人材育成や制度面の強化を支援することで協力を促進するとともに、民間の関与を促す機会を探求する。我々は、本パートナーシップの実効性を確保するため、定期的に本パートナーシップの見直しを図っていく。

 本パートナーシップは、気候変動枠組条約に基づく取組と整合的であり、かつ貢献するものであり、京都議定書を代替するものではなく、補完するものである。