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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)第一回閣僚会議 コミュニケ

[場所] シドニー
[年月日] 2006年1月12日
[出典] 経済産業省
[備考] 経済産業省仮訳
[全文]

 クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップの第一回閣議2006年1月11-12日に、シドニーで開催された。

 我々は、2005年7月28日にビエンチャンで発表したパートナーシップのビジョン・ステートメント実施のために、その枠組を定める憲章を採択した。このビジョンの中核には、開発と貧困撲滅の追及が緊急に必要であるとの我々の信念がある。我々が共に協力し合うことで、エネルギー需要の増大やそれに伴う課題、たとえば大気汚染、エネルギー安全保障、温室効果ガスの原単位といった課題により良く対応することができる。

 我々のエネルギー需要は、急速に伸びつつあり、今後数十年間にわたる大規模な投資を必要とする。我々は、再生可能エネルギー及び原子力が世界のエネルギー供給に占める割合が増加していくことを認識した。我々は、化石燃料が我々の経済を支えており、現在の世代からその後にいたるまでこの現実が持続することを認識した。このため、大気汚染物質や温室効果ガス排出の問題に取り組む一方で、化石燃料の使用を引き続き経済的なものとするクリーンで低排出の技術の開発、実証、実施に向け、我々は共に協力し合うことが極めて重要である。我々は、このパートナーシップを通じ、より高いエネルギー効率、より低い大気汚染と温室効果ガスの原単位をもたらす有望な技術の普及に協力して取り組む。

 エネルギー安全保障は、もう一つの重要な懸念である。信頼性があり安価な幅広いエネルギー供給源へのアクセスは、経済発展と改善された生活水準を支え、エネルギー安全保障の主要な決定要因となる。そのため、広範な化石燃料の温室効果ガス原単位を削減する我々の努力は、我々全てに対して重要なエネルギー安全保障上の利益を提供する。

 我々は、気候変動をとりわけ重大な問題と考え、意義ある行動をとることを長期にわたり約束する必要があると考える。パートナーシップは、気候変動枠組条約の下で我々が行う努力に整合し、それに貢献するとともに、京都議定書を代替するものではなく、これを補完する。

 我々は、各国政府が実施しているクリーン開発と気候に関する既存の国家プログラムやプロジェクトについて広範に検証した。各パートナーは、このパートナーシップに重要な価値をもたらすことになる。また、各国政府は、パートナーシップのプロジェクト及び活動に対し、真摯な約束を誓った。我々は、民間部門をこの努力に極めて重要と考えており、官民双方から、相当の資金、人的資源、その他の資源を調達する。本パートナーシップは、可能な限り最善の実施環境を準備することを通じ、国内外の投資をクリーンで低排出な技術に振り向けることを目指す。パートナーシップが発展するにつれ、我々はパートナーシップの活動に対する投資が増大し続けることを期待する。

 我々は、パートナーシップ作業計画を策定した。これは、持続可能な開発を促進するために、我々の民間部門、研究者社会及び政府部門の活力を利用する新しい手法を探求するものである。我々は、これらの課題に対処するために、各国経済の公共、民間、研究部門における主要な専門家を結集する。また、我々は、関連する事項として、国民の安全と健康を確保する労働現場の安全性や技術に関する経験などを共有する。

 パートナーシップ作業計画は、我々の経済における発電部門および主要産業部門に焦点を当てる。我々は、次の分野を対象とした8つの官民の分野別タスクフォースを設立した。

(1) よりクリーンな化石エネルギー、(2) 再生可能エネルギーと分散型電源、(3) 発電及び送電、(4) 鉄鋼、(5) アルミニウム、(6) セメント、(7) 石炭鉱業、(8) 建物及び電気機器。

 我々は、タスクフォースに対し、ベストプラクティスを改善すること、また、広範な技術を開発し繰り返し実証することにより、規模の拡大とコストの削減を図れるようにすることを指示した。

 この点について、我々はそれぞれのタスクフォースに次の業務を依頼した:

・クリーン開発と気候に関して、各分野の現状を検証する。

・どのように効率を向上させることができるかについて、知識、経験、良い実施の例を共有する。

・適切で、関連する既存及び新規の技術について系統的な道筋を描く。

・協力に関する具体的な機会を特定する行動計画及び可能な場合は野心的かつ現実的な目標を策定する。

 パートナーシップは、先ずいくつかの特定の分野に焦点を絞ることとした。ビジョン声明では、パートナーシップが発展していくにつれて、我々が協力を探求していくこととなる輸送部門といった他の様々な分野を詳述した。また、技法交流など、現在のタスクフォースを越えてクリーン開発と気候を促進する分野横断的な機会も存在する。この点について、我々は、エネルギー監査プログラムとフォローアップのプロジェクトの開発及び実施に焦点をあてた「アジア太平洋エネルギー技術協力センター」の設立を前向きに検討する。我々は、将来の会合において、こうした他の関心分野と分野横断的な課題を取り扱うとともに、我々の持続的開発とエネルギー戦略を開発し実施する上での経験を共有する場を提供する。

 本パートナーシップは、気候変動、エネルギー安全保障及び大気汚染といった深刻かつ長期的な課題に持続可能な経済発展を支持するようなやり方で対処するため、重要な国々のグループを結集した。我々は、結集することで、地球規模のクリーン開発と気候に意義ある貢献ができる。