データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 橋本アクションプラン 国連「水と衛生に関する諮問委員会」

[場所] メキシコ
[年月日] 2006年3月
[出典] 国際連合
[備考] 国際連合仮訳
[全文]

目次

1.諮問委員会議長によるメッセージ

2.水事業体パートナーシップ

3.資金調達

4.衛生

5.モニタリングと報告

6.統合水資源管理

7.水と災害

8.国連水賞

9.諮問委員会について

1.諮問委員会議長によるメッセージ

世界が水危機に直面している兆候は、あらゆるところに見られます。干ばつ、水質汚染、地下水面の低下、枯れた農作物、侵食された土地、飛散する土砂、例を見ない洪水などです。全世界の水のたった2.5%だけが淡水であり、私たちはそれ以上の水を毎年使っています。多くの地域で、一人当たり利用できる水の量が激減しています。毎年20億人以上が衛生施設のない屈辱に苦しみ、きれいな水を手に入れることができないために、10億人の健康や生活に支障がでています。また、毎日6,000人が水に関連した病気により亡くなっています。その大部分は貧しい国の人々です。この状況に対し、直ちに一致団結した行動が必要であり、それが不可能であると信じる理由はありません。

水は生命であり、人生における多く出来事にとって重要なものです。十分な栄養、教育、貧困の撲滅、環境に関するミレニアム開発目標を達成する上で基本となるものです。現在の進捗状況は十分ではなく、抜本的な改革が必要となっています。

国連事務総長は2003年、水に関するミレニアム開発目標を達成するために、いかにして支援を拡大し、行動を働きかけることができるか、ということについて助言するためのハイレベルな委員会の議長を私に依頼されました。諮問委員会は、政治や財政、行政機関や研究機関、労働組合、NGO、公共事業者、私企業のような、広い分野の背景をもつ委員で構成されています。ひとつの行動提案の作成の過程で、ものの見方や視点の違いが時には激しい議論を生み、意見を衝突させることもありました。それにも関わらず、より多くの人々のために、よりよい水資源管理を行い、もっときれいな水と衛生を供給しなければならないという共通の信念が、私たちの合意に至る原動力となりました。

私たちは、新しい決議や分析を行ったのではありません。多くの会議における合意から得られたものです。この行動計画「ユア・アクション、アワ・アクション」は、6つの重要な分野において、世界が直面している問題に突破口を切り開こうとするものです。6つの重要な分野とは、資金調達、水事業体の能力開発、衛生、モニタリングと報告、統合水資源管理、そして水と災害です。諮問委員会は今後、実施とフォローアップに目を向けていきたいと考えています。ユア・アクションは主要な行動主体が取るべき行動を、時には名指しで指し示しています。アワ・アクションは諮問委員会が全体で、あるいはそれぞれの委員が、国際目標達成を阻む障壁や障害を取り除くために、主要な行動主体と共同で取っていく行動を示しています。まず重要な象徴的要求から始めたいと思います。

√ 私たちは国連事務総長に対して、国連水賞を創設し、水の10年の間の毎年、水と衛生の分野での輝かしい功績に対して表彰するように求めます。

水事業体パートナーシップ

第一に、水を供給している水事業体を支援しなければなりません。公営の水サービスは、現在、世界で90%以上もの水供給を行っています。諮問委員会は、非営利を基本とした相互支援の考え方に基づいて、新たな仕組みであり、組織化された協力プログラムである水事業体パートナーシップ(WOPs)を提案します。

√ 諮問委員会は水事業体間の新たな協力の仕組みを提案します。

√ 国連水関連機関調整委員会は、水事業体パートナーシップに対する国連関係機関からの支援を調整すべきである。

√ 諮問委員会は、アクションプログラムを作り、その実現のために体制整備を提案します。

資金調達

次に、水に必要な資金調達を確保しなければなりません。水と衛生のインフラと設備はただではありません。建設と運営に費用を必要とします。私たちは、地方自治体が、水事業者のためにより多くの資金を得ることができるようになることに焦点をあてています。ほとんどの政府は、地方レベルでの必要なシステムの構築と維持を保証する、適切な資金調達の仕組みを構築しなければなりません。そのためには、適切な料金体系と補助金の組合せが必要です。現在の不公平な料金体系を改正し、公平で、しっかりとした料金体系を確立する必要があります。

水のための資金の活用性は、重大な問題ではありません。資金は、環境が好ましく収入が十分であれば、最も安定し、よく運営された水・衛生システムに流れます。重要なことは、適正なタイプの資金を得て、能力開発を通して、十分に機能していない施設を改善することです。支払い可能な利率による地元の資金の借用に対する事業者のアクセスを改善する、国の資金制度の枠組みが必要です。十分な料金と適正な補助金による持続可能な費用回収政策が必要となります。

諮問委員会は、各国政府が直ちに行動を起こすことを求めます。

√ 能力開発に関係する地域機関は、水サービスにおけるよりよいガバナンスと透明性を築き上げるために、持続的なプログラムを設定すべきです。

√ 地域の金融機関と世界銀行は、新たな資金源に関する地方の事業体の知識と意識を向上させる(その逆の関係も同様)ための継続的なプログラムを創設すべきです。

√ 資金関係機関は、地方の資金市場を開発するプログラムを設定すべきです。

√ 援助機関は、これらの分野に資金を提供すべきです。

衛生

世界は、衛生教育の促進、家庭の衛生設備、汚水処理という3つの局面それぞれにおいて、衛生に関する国際目標を達成するための軌道に乗っていません。衛生に対して十分に留意するという意識と政治的な意志、が欠落しており、能力も不足しています。世界レベルでの広報や啓蒙も重要ですが、地域やサブ地域機関は、資金提供やマーケティング、技術や組織的支援、指導の提供を支援するための共同キャンペーンを行うべきです

政治的な意志を高めるために、「水の10年」を通じていくつかステップが必要になります。

√ 2008年を「国際衛生年」とします

√ 地方の衛生サービスで活動を行う人々にスポットライトをあてるために「国連水賞」の枠の中に「国連衛生賞」を設けます

√ 必要な政策や体制が改善されているかを確認し促すために、2008年の国際衛生年に、国連地域事務所が各地域でハイレベルな会議を開催します

√ 国連「生命のための水10年」の総括として、進捗状況を確認するために国連が「国際衛生会議」を開催します

また、こうした一連の活動と同時に、能力を向上させる活動が地域機関の主眼に据えられることが求められます。

√ 国連地域事務所は、ウォッシュ(WASH)やエコサン(Ecosan)といった既存のイニシアチブやキャンペーンと協力し、能力向上のためのプログラムを構築することが求められます

√ 国際金融機関や国連機関は、保健の専門家や科学者を含めた利害関係者と、技術、資金調達、コミュニティー組織に関連した問題を議論する地域、サブ地域レベルでのワークショップを開催することが求められます

諮問委員会は援助機関や関係機関、政府などと協力して、衛生に対する優先度が向上するよう活動します。

モニタリングと報告

モニタリングは、水関連の目標達成を目指した各国政府や国際社会による投資の実際の効果を評価し、理解する上で基本となるものです。各国政府には、その計画を適切に管理するための目標とモニタリング、報告のシステムが必要です。このためには国際目標のお守り役である国連が、進捗状況の計測に必要な、方法論や信頼できるデータを提供することに責任を持たなければなりません。WHOとUNICEFのジョイント・モニタリング・プログラムに、より大きな注意を向ける必要があります。水問題における確かな進捗あるいは欠如しているものを得るための継続的な努力において、リーダーとしての役割を果たすため、国連水関連機関調整委員会に十分な資金が提供されるべきです。

√ 国連事務総長は国連機関の幹部と共同して、ジョイント・モニタリング・プログラムにふさわしい予算や人員の配分についての優先度を高めます

√ 国連水関連機関調整委員会に、国際レベルのモニタリングや報告をまとめるための、はっきりした役割を与えます

√ モニタリング・システムを改善する努力を支援し、それぞれの国の水と衛生へアクセスできる人の数をアクセスの種別ごとに毎年計測し、報告するよう各国政府に求めます。

√ 援助機関は、サービス目標達成のための自身の貢献度を計測するよう求められます。

√ OECDは、多国間金融機関と協力し、あらゆる水関連支出に関する十分な知識を持つように求められます。

諮問委員会は国連を始めとした関係機関がこれらの改善・変革を実現できるよう、国際社会や金融機関に働きかけていきます。

統合水資源管理

各国政府による統合水資源管理と水効率化計画の作成が、着実に進んでいると諮問委員会は考えています。このため、私たちは2008年に開催される国連持続可能な開発に関する委員会第16回会合において、統合水資源管理と水効率化計画の達成状況に関する報告を全ての国連加盟国が提出すること、ならびにこれらの教訓が世界中で共有されるよう、国連がデータベースを構築することを提案します。

√ 国連事務総長は、すべての国連加盟国に、各国のIWRM及び水効率化計画の進捗状況とその実施のためにとった行動を詳しく調査し、2008年の国連持続可能な開発に関する委員会第16回会合において報告するよう要請するよう求められます。

√ 国連水関連機関調整委員会と援助機関は、越境機関を支援し相互の協力を促進するよう求められます。

√ 国連経済社会局(UNDESA)は行動計画や戦略から学んだ教訓が活かされるよう、データベースを構築することが求められます

√ 国連地域事務所は、地域銀行と協力しIWRMの実施のためにあらゆるレベルで能力開発を強化するよう求められます。

そのため諮問委員会は、国連事務総長や国連、そして必要ならば各国政府とも対話を行います。

水と災害

水は生命です。そして水は生命への脅威でもあります。人為的な災害や自然災害に対処するためには、国際社会が、犠牲者の数を著しく減少させるような予防のための実証された技術にもっと熱心に焦点をあてなければなりません。

√ 諮問委員会は、国連国際防災戦略(UNISDR)に対し、関連諸国と共に水に関連した災害を予測し、予防し、準備するための知識・経験を収集し、国家、及び地方レベルでの各国の計画、統合水資源管理、水効率化計画について知らせるよう要請します。

√ 諮問委員会は、世界的な認識や約束を創り出すような施策について検討するよう、専門家を促し、生命や生活上の損失を削減することを第一とした国際的合意の得られる目標の理論的根拠を明確にし、確立することを促します。

√ 国と地方の政府は、災害中あるいは災害後の安全な飲料水と衛生の即時の提供を確保すべきです。

諮問委員会はそうした目標を設定し、国際社会がそうした共通の目標を採択する方向に向けて関係者と協力して努力していきます。

行動の時

諮問委員会は、多くの関係者によって行動の約束がかわされてきたことを認識しています。そのいくつかを挙げれば、世界銀行や地域開発銀行による地方レベルへの融資を拡大。越境協力を強化する計画、特にアフリカにおいて。主催国であるメキシコで数年前に始まった資金援助を再活性化する事業。多くの国における改革措置とアフリカ開発銀行による革新的な性別を考慮した農村水・衛生イニシアチブの開始などです。これらすべての行動を含めた多くの行動は、支援し模倣するに値するものです。

私たちの仕事のための国連事務総長の行動やいくつかの国の政府の支援に感謝します。私たち諮問委員会は行動をおこします。そして皆さんが行動をおこすよう要請します。水行動が、生命を救い生活の質を高めるだけでなく、私たちがすべての生命や自分たちの家庭を守り、そしてこの壊れ易い地球を守るためには不可欠なものです。

{署名略}

橋本龍太郎

議長

国連「水と衛生に関する諮問委員会」

2.水事業体パートナーシップ(WOPs)

公的事業体の機能を向上させるために

水事業体間の協力、つまり水事業体パートナーシップ(WOPs)は、公的水事業体の能力開発を支援するための有効な仕組みとして機能する。公的分野の事業が大半を占めるという現実を考えれば、ほとんどの事業パートナーシップは公的事業体間で構築されると考えられる。しかしながら、民間の事業体、NGO,非営利を基本として公的水事業の運営に貢献できる団体を排除するものではない。諮問委員会は、水事業体パートナーシップ(WOPs)を促進するために、諮問委員会、国連、国際機関、政府、その他の利害関係者のとるべきいくつかの行動を明確にした。

目標:

‐ 水事業体パートナーシップ(WOPs)を通して地方サービスを強化し、WOPsが国際的合意を得た目標を達成する上で重要な手段であると認知されるように努力する。

1.あなたたちの行動

‐ 諮問委員会は、各国政府がその実施を支援するよう具体的な働きかけをすることを含め、次の方法で水事業体パートナーシップ計画を強力に支援する。

・国際金融機関に支援を要請するメッセージを送る。

・国連機関、国連の部署に対し、地域事務所からのものも含め、必要に応じて支援を要請する指示を出す。

・ミレニアム開発目標(MDGs)に関連する会議にメッセージを送る。

・メディアへのメッセージ。

‐ 国連水関連機関調整委員会(UN Water)は、国連機関からの支援を調整する

‐ 国連経済社会局(UNDESA)は、適切な機関と協力して、WOPs運営のためのデータベースとインターネット・インターフェースを構築する。このインターネットのシステムは、他の地域にまで適用範囲を広げる前に実地テストを行う。

‐ 連携の経験のある公共事業体とWOPsは連絡を取り、プロジェクトについての意見を交換し、経験を共有し、提案を強化する助けをし、実施に参加する。

‐ 各国の水関連省庁は、公共事業体に参加を促し、財政担当の省庁は、適切な試みに資金が活用できるように手配する。

‐ 該当する国際金融機関は、財政的・技術的支援も含め、WOPsの実施の支援をすることが望まれる。

2.私たちの行動

・パートナーシップの活動が本格的に動きだすまで、関係機関にアピールし、参加を説得すること

・メディアを通じて、関心を高めること

・ハイレベルで組織と個人をネットワーキングすること(WOPsに関連する人々や団体の紹介し、WOPsに関する対話のための機会を設ける)

・発展中のWOPsの仕組みについて助言し、WOPsの行動を促進すること

‐ 諮問委員会は、世界水フォーラムの場や国連事務総長への助言の中で、WOPsの認知度を高めるよう努める。

‐ 諮問委員会事務局は、関連する公共事業団体と協力して、WOPsの運営に適合したデータベースやインターネット・インターフェースの原型を構築する。

‐ 諮問委員会はWOPsモデルの強化とWOPsの整備へ金融機関の関与を促すために、国際金融機関との話し合いを始める。

‐ 水専門家団体は、インターネットを利用したシステム構築に貢献し、かれらのネットワークをWOPsを立ち上げようをしている水事業体が利用できるようにする。

‐ 諮問委員会は、WOPsの利用を推奨し、その重要性と利益を示し、WOPsの基本的な仕組みを説明し、次のような活動を通して開始段階のプロセスを支援することである。

‐ 諮問委員会は、WOPsの成果を毎年見直し、委員会の貢献度を評価する。

3.資金調達

資金調達は、水と衛生に関する国際的合意を得た目標を達成する上で、主要な問題の1つである。諮問委員会は、施設の所有者となる立場にはない。水事業の90%以上は公的なものであり、水事業体の運営能力と財政的持続性が確保されることが重要である。諮問委員会のとるべき活動の3つの分野が明確にされた。それは国家政策策定レベル、金融界・援助機関、水と衛生サービスを地方自治体レベルへ移管しようと活動している関係者である。

(1)各国政府水部門の金融活動

目標1:

‐ 各国政府は、水と衛生施設への支出のために、水と衛生に関する具体的な目標、及び具体的な資金目標を立てなければならない。

‐ 各国政府は、水と衛生の利用を拡大する政策策定のために、必要に応じて貧困削減戦略ペーパー(PRSP)を参考にして、資金の枠組みや収入・支出予測を明確にしなければならない。

‐ 各国政府は、地方自治体が必要とする資金を入手できるように手助けする責任を負うべきである。

‐ 国家政策には、追加的資金の大半は水利用者と納税者から徴収すべきであるということを受け入れるべきである。現状の不公平な利用者料金体系を改正し、実行可能な公平なシステムに変更しなければならない。費用の全面的回収は目的ではないが、料金政策によって持続的に費用回収が出来るようにしなければならない。内部補助金の整備や直接最貧層に向けた補助も含め、予想される公的援助のレベルを具体的に示さなければならない。

あなたたちの行動:

‐ 水と衛生に関する国際的合意を得た目標の達成に努めている人々も含め、国家政府は、次のような重要な局面に適用される国家政策を策定しなければ、水事業体、特に大多数の公的事業体に必要な資金を確保することはできない。

‐ 各国政府は計画の策定に当たり、水への資金調達を優先すべきである。貧困削減戦略ペーパー(PRSP)のある国においては、それを考慮に入れる。さらに次の点も考慮する。

・水サービス費用の持続的な費用回収政策

・水サービスに対する効率的な料金体系、必要に応じて貧困層には内部補助を行う。

・水サービス提供者の立場を改善する計画を奨励する政策の枠組み。

・財政の地方移管に関する政策、及び税制の改善。

・たとえば、水や衛生事業体が収入を確保できるような了解済みの取り決め

・水部門における汚職に対処する施策

・水への資金調達計画に関連して、資本市場の改善及び低い貯蓄率、資本逃避、不健全な銀行制度への対応。

・資金の吸収能力を向上させ、それを水と衛生分野に確実に反映させること。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、国家予算および貧困削減戦略ペーパー(PRSP)における水と衛星に対する優先度を評価するために、IMFや国際復興開発銀行(IBRD)との政策討議を実施する。

‐ 事務局は、各国政府の水分野における資金計画の現状をモニターし、諮問委員会が公表する。

(2)金融界・援助機関

目標2:

‐ 二国間援助機関と国際金融機関は、主に次のような目的にODA資金を割り当てるべきである。制度構築;インフラ事業のためのプロジェクトの立ち上げ;発展途上国の水事業体が資金を確保し、既存の約束を実行する能力を高めるための施策。

‐ 二国間援助機関、国際金融機関、技術支援団体は、能力向上を最優先に捉えるべきである。それによって地方自治体や水事業体は年金資金も含め資本市場を利用することができるようになる。

‐ 国際金融機関は、水事業体の効率的で透明性のある運営を支援し、地方の金融市場、税金、利用者の出資などにより財政的な健全性を確保できるようにすることが重要な役割であることを認識すべきである。開発途上国に対し、内部資金や外部資金の入手方法をアドバイスすべきである。

‐ 二国間援助団体と国際金融機関は、融資の限度を査定しODAのあり方を見直すべきである。

・MDG達成への軌道に乗っていない国への資金提供を優先する。

・技術支援、維持管理、サービスのための助成金。

・水分野にODA以外の資金を利用する形での資金提供。

・MDGs達成への彼ら自身の貢献度を評価し、報告すること

あなたたちの行動:

‐ OECDはDACの下に「水と衛生に関する特別チーム」を結成し、会員国政府を招集し、とりわけ上記の点に取り組むためにOECDの「水開発援助政策ガイドライン」を再検討する。

‐ OECD DACは、2007年の「水と開発大臣級会議」のようなハイレベルな水と衛生に関する特別なセッションを開催し、ガイドラインを採択する。

‐ 関係国政府は早期に、エビアン・サミット行動計画の水のための資金調達に関する具体的な提案を必要に応じて行動を追加し更新し見直すことを要請すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、2006年7月、パリにおける第6回会合にあわせて、OECDとの対話セッションを計画する。エビアン・サミット行動計画の適切なフォローアップも含めて行う。

‐ 諮問委員会は、2006年7月から12月の間に、国際金融機関や二国間援助機関に加えて個々のOECDのメンバーとフォローアップの対話を実施する。

‐ 委員会議長は今後1年半の間にこのような提案に関して国際金融機関の代表と話合いを行う。

(3)地方サービス向上のための新たな金融メカニズム

目標3:

‐ 地方自治体は、自らの業績の向上、透明性の確保、基準に基づいた評価、資金提供者を引き付けることができるようなその他の方法に全責任を負うべきである。

‐ 各国政府は、地方自治体や地方の水事業体が、簡易かつ安価に地方および必要に応じて国際資本市場にアクセスすることができるようにする手段を設けること。

‐ 各国政府は、国際復興開発銀行(IBRD)や地域開発銀行(RDB)の支援を得て、地方自治体が資金借入できるように支援する。特に次のようなことに注目する。

・地方の金融市場を発達させること。

・地方自治体に対し資金を得るための手段や適切な方法について助言する。

・通貨危機から守ること。

・地方自治体に対し、長期で支払い可能な利率での貸付。

・地方自治体の信用格付けを上げることができるように、資金のプール・システムを明確にする、または作り上げる。

・地方自治体がローンを返済できる能力を確保する。

・透明性と健全な法的環境を提供する。

‐ 国内において、地域開発銀行または専門金融機関は、自治体、業績を向上させたNGOを含め、水事業体に外部また中央政府のファンドを仲介する役割をすること。

‐ 地域開発銀行または専門金融機関は、貸付可能な環境を作るために、地方自治体に助言を与える役割をすること。(ドナー政府はOECD経由で支援することを要請される)

‐ 国連の開発調整官は、適切で的を絞った情報を収集し、会議を開催することにより、かれらの計画を上記の行動と結び付けること。

‐ 国家政府および地方政府は、特に衛生に関して費用を削減するために革新的かつ雇用を創出する労働集約的な方法を開発すること。

あなたたちの行動:

‐ 国際金融機関と地域開発銀行は、理事会との議論も含め、上記の役割や行動を可能にする能力があるかどうかを評価するべきである。都市・自治体連合(UCLG)を含め都市・地方自治体の団体との関係を作るために直接行動を取るべきである。

‐ 地域開発銀行は、格付け機関の運営も含め、上記の点に関する技術支援研究を、できれば2006年に開始すべきである。

‐ 国連は、駐在調整官や国際金融機関、地域開発銀行の支援を通して、水事業体の経営能力を向上させるために、国家・地域を基盤とした持続的な能力開発プログラムを策定すべきである。

‐ 事務局は、国連世界食糧計画(WFP)その他の機関に相談し、革新的で低コスト労働集約的手法(例:衛生事業)に関する彼らの経験が水供給・下水プロジェクトに応用可能かをアドバイスする。

‐ 関係機関は、地方自治体が低利で資金を借入できるように、地方開発機関や資金のプール・システムに関するデータを提供すること。

‐ 国際金融機関と地域開発銀行は、当該の国連地域事務所と協力し、上記の点について討議するために、2006/2007年に地域レベルまたは国際レベルで、計画・財務関連大臣との特別な会議を開催すべきである。

‐ 地域開発銀行(AsDBアジア開発銀行のような)は、UNDPと協力し、地方の資金を呼び込む力を向上させるために、資金提供者から要求される規則や基準に関して、市長、知事、公共事業運営者のためのサブ地域ワークショップや技術支援を開催すべきである。

‐ 国際金融公社(IDC)は通貨危機保証を含め、部分保証に関する経験について、資金提供者のワークショップを開催すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、特別な会議や一連のサブ地域ワークショップ、技術支援の準備のために、国際金融機関、地域開発銀行や計画/財務大臣にと接触する。

‐ 諮問委員会議長やメンバーは、討論に参加し、提案を与えることにより、会議を促進する。

‐ 諮問委員会は、各国・各機関とのハイレベルな対話による会議の成果をフォローアップする。

‐ 諮問委員会は、資金調達に関する重要な成果および目標達成に向けた各国の進捗状況を公表する。

4.衛生

衛生はミレニアム開発目標(MDG)やヨハネスグルグ実行計画(JPOI)の達成において、遅れている分野である。「衛生を軌道に乗せる」ために政治的認知度を高め、共同行動をとることが急務である。諮問委員会、国連、国際機関、その他の利害関係者のとるべき行動の2つの重要な目標領域が明確にされた。

目標1:

‐ 次の3つの側面において、衛生に関心を向けることが急務であるとの認識を高めること。衛生教育推進、家庭の衛生設備、下水設備という3つの側面である。

‐ 衛生に関するMDGやJPOIを達成するために行動を加速すること。

‐ 資金、マーケティング、技術、組織的支援、指導を提供して、各国を支援する共同キャンペーンを行うために、地域、サブ地域組織の能力を開発し、その能力を適用すること。

あなたたちの行動:

‐ 国連は、メンバーの国々、および関連する国際機関と協力して「国際衛生年」を制定するべきである。

‐ 国連は、「国連水賞」の枠組みの中で「衛生賞」を創設すべきである。

‐ 国連は、「改善された衛生」の定義の更新も含め、データ(指標)の一貫性を維持した形でMDGの衛生目標に関するデータベースを注意深く見直し、一方で改善点を明確に示すべきである。

‐ 支援の提供の第一義的責任を地域レベルに移管する目的で:

・当該の地域開発銀行は、国連地域事務所、国連の関係部署、国連の駐在調整官と協議し、ウォッシュ(WASH)やエコサン(Ecosan)のような既存の計画や運動と連携して、保健の専門家や科学者も交えた地域、サブ地域レベルのワークショップにおいて、能力開発のプログラムを策定すべきである。

・国連地域事務所は、特に「国際衛生年」に地域のハイレベル会合を開催し、政策や組織改革の必要性を検討し促すべきである。

・地域ワークショップの結果は、「国連水の十年」の終わりに、国連によって開催される「世界衛生会議」の場でフォローアップが行われる。

・国際会議の場で、持続可能な再利用を目指す衛生の認知度を高め、それを保健、農業など関連する分野の政策に盛り込むべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、「国際衛生年」の制定と「衛生賞」の創設、地域会議や「世界衛生会議」への国連地域事務所の参加を国連事務総長に提言する。

‐ 諮問委員会は、元首や国際機関の代表に「国際衛生年」の制定、地域事業や「世界衛生会議」への支援を要請する。

‐ 諮問委員会は、「第2次生命のための水10年」(2005 ‐ 15)に関連して、主要関係者に要請する。

‐ 諮問委員会は、WASHのような既存の計画や運動と連携して、衛生のMDGを達成するための行動を起こすために、地域・国際機関に要請する。各メンバーは、主に取り掛かりを作るために、特定の地域や特定の機関に対して責任を負うことになる。

目標2:

各国政府は、経済的、社会的、環境的状況に合わせて、明確で戦略的な衛生の政策と計画を策定すること。

あなたたちの行動:

‐ 援助機関と各国政府はレポートや政策において、衛生を水から識別すべきである。一方で統合水資源管理(IWRM)のような全体的概念の下で、水供給と衛生のようなサブ部門間の政策統合を維持する。

‐ 各国政府は、MDGやヨハネスブルグ実施計画(JPOI)達成の観点から、衛生に関する各国の政策や計画を評価すべきである。

‐ 国際金融機関、地域開発銀行、また二国間援助機関は、特定の国々から開始する、家庭に衛生設備を設置するための無担保小口融資の奨励のような、戦略的な衛生に関する政策や計画のために、適切な選択肢やモデルの研究を促進または実施すべきである。

‐ 衛生に関する家庭、地域社会を基盤とした活動を強力に支援するための運動への参加を目指し、UNICEF、WHO、FAOと言った国連機関の資源を動員すべきである。

‐ UNEP、UNESCOのような国連機関は、優先地域おけるワークショップの開催に協力し、小規模で環境に優しい衛生設備、葦床、小水分離技術などに絞ったその地域に(地方に)適切な衛生政策モデルや技術的解決法を明確にし共有するべきである。

‐ 学界(科学界)は、衛生における研究開発(R&D)や技術革新を加速し、国連機関はこれを支援すべきである。その結果地域社会が、地方の状況に合った効率的で、環境に優しい方法を採用できるようにすべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、援助機関や他の適切な機関との対話を通じて、国々の経済的、社会的、環境的状況に合わせた計画や戦略の選択肢についての研究や調査を促進する。

‐ 諮問委員会は、地域の共同行動計画や最終的には国連衛生会議を実現するために、国際金融機関、地域の機関、援助機関、政府と対話を行うべきである。

‐ 諮問委員会は、環境に優しい衛生(エコサニテーション)、バキュームカー、汚水処理プラント・システム、小水分離のような、衛生を改善するための代替モデルと技術に関する研究を加速するために、学界や科学界に呼びかける。

‐ 諮問委員会は、国家の援助戦略と水部門への資金提供(水施設など)のいずれにおいても、二国間または多国間協力の際に、衛生に高い優先権を与えるよう要請する。

‐ 諮問委員会は上記に述べた行動を実現するために、国連機関とのハイレベルな討論を行う。

‐ 諮問委員会事務局は、特に行動の進捗の報告と活動参加者間の意思疎通を促す点で、それぞれの行動計画(ユア・アクション、アワ・アクション)のつながりを確保すべきである。

5.モニタリングと報告

水政策の目標を達成するために、適切なモニタリングの方法が必要である。目標への進捗状況を評価し、結果を報告することが、すべての利害関係者の行動を管理する上で極めて重要である。飲料水と衛生に関するMDGを達成するためには、目標1に詳述したとおり、WHO‐UNICEFのジョイント・モニタリング・プログラムを更に支援する必要がある。国家レベルの行動には、目標2で詳述している通り、適切な評価・報告方法が必要である。水資源、水サービス、水経済に関する地方、国家、世界レベルの水データは、様々な機関によって策定されている。それゆえ、目標3は、既存のより良い統合的モニタリング・システムとその効果の高め方について述べる。世界レベルでは、他の場で詳述しており、目標4で触れているように、IWRM計画についても報告を改善する必要がある。

目標1:

水供給と衛生へのアクセスに関する世界の進展のモニタリング国連は、水と衛生に関する国際的に合意された目標に向けた、進展に関する正確なモニタリングを成し遂げるために必要不可欠であるジョイント・モニタリング・プログラム(JMP)の強化に、さらに高い優先度を設定する。

あなたたちの行動:

・水と衛生に関するミレニアム開発目標とヨハネスブルグ実施計画の達成に関するJMPの重要性を認識し、WHOとUNICEFはJMPのユニットを強化するために、資金・人材を緊急に増加させるべきである。

・援助機関は、JMPの成果の改善に直接関与するような、JMPの活動の支援を強化すべきである。

・WHOとUNICEFは、現行のシステムの精度と方法論を改良するためのワークショップを開催すべきである。

・国連水関連機関調整委員会(UN‐Water)は、加盟機関のネットワークや、特に現場レベルにおける専門的知識を提供することで、JMPを支援すべきである。

私たちの行動:

・諮問委員会は文書や対話によって、上記の項目を実行するために、WHOやUNICEFの事務総長を強く促す。

・諮問委員会は、JMPへの資源提供の拡大について、国連事務総長と議論する。

・諮問委員会はドナーに、ワークショップの成果に従って具体的な方法で、JMPの支援強化を要請する。

‐ 諮問委員会は、JMPの改善について再調査し、結果を公表する。

目標2:国家政府:水供給と衛生

‐ それぞれの国の水供給と衛生部門における実際の提供能力をモニタリングするために、各国政府によって協調努力がなされ、また、国連や援助機関によって必要に応じて支援されるべきである。

‐ 水供給と衛生サービスを改善するために、更に多くの資源をモニタリングに割り当てるべきである。

あなたたちの行動:

‐ 各国政府は、水と衛生部門の業績のモニタリングに高い優先順位を与えるべきである。

‐ 各国政府は、各国の水と衛生にアクセスできる人々の数をアクセス種別に測定し、年次報告すべきである。

‐ 貧困削減戦略文書のある国々では、各国政府は、水サービスへの権利を提供する目標人数と、具体的な時間枠を、貧困削減戦略文書の中に組み込むべきである。

‐ OECDは彼らのウェブサイトにおいて、水のドメインの構築を考案すべきである。

‐ 援助機関は次の事項について報告すべきである。

・かれらの投資計画によって水と衛生へのアクセスを提供された人の数

・パートナー国における具体的なIWRMの支援方法

‐ UNDESAは、国家水政策、統合水資源管理、水効率化計画、貧困削減戦略文書に水を組み込むこと、などに関するデータベースを構築すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、モニタリングに関する上記の問題を、国家政府や地方行政体とのハイレベルの対話で取り上げる。

‐ 諮問委員会は、モニタリングの問題が一般に広く理解され、水問題の解決への努力が支援されるよう、メディアと連絡をとる。

‐ 諮問委員会は、サービス状態に関する情報を含むことにより、すべてのモニタリング・システムが改善されることを要請する。特に、これはJMPの改善が必要となる。

目標3:モニタリング・報告の統合と強化

‐ 世界レベルでは、効率化のために、現在の水部門のモニタリング・報告活動を調和させる必要がある。

‐ 国家レベルでは、活動を促進するために政府や他の利害関係者によって、モニタリング方法を発展、強化し、世界的なシステムとの一貫性を保つべきである。

‐ 世界レベルでは、水部門の全支出について、明確な知識を持つ必要がある。

あなたたちの行動

‐ UN‐Waterは、世界の様々な機関を調整して、水と衛生に関する標準化されたデータをまとめ、共有するために、基盤形成において指導的な役割を果たすべきである。UN‐Waterは第一段階として、世界のモニタリング計画の情報を共有するためのワークショップを開催すべきである。

‐ 各国政府は、水と衛生に関するモニタリング方法を改善するためのあらゆる努力を支援すべきである。それによって次のような目標を達成できる。

・各国の水政策の目標

・地方政府や市民社会を含めた多様な利害関係者の要求

‐ 水と衛生のためのJMPの実行団体であるUNICEFとWHOは、国レベルのモニタリング・システムの強化のために政府を支援し、世界レベルのシステムとの一貫性があるようにすべきである。

‐ OECDは、多国間金融機関と協調して、公的・私的インフラ投資、経営、維持管理、家庭の支出も含めて、すべての水への支出について、より明確な知識を持つべきである。

私たちの行動

‐ 諮問委員会はUN Waterと協力して、世界の水データの進捗状況を再調査する。

‐ 諮問委員会はWHOやUNICEFと協力し、水供給と衛生のための国家レベルのモニタリング・システムの開発の進捗状況を再調査する。

‐ 諮問委員会は、水部門のための経済関連データを構築するプログラムに関して、OECDと話し合う。

目標4:水資源管理

‐ 国連事務総長は、全ての国々から、統合水資源計画に関する報告書を求めるべきである。

‐ 水災害への準備を、これらの報告書に含めるべきである。

‐ IWRMと水効率計画のデータベースを構築すべきである。

あなたたちの行動

第6章IWRMの目標1参照

6.統合水資源管理

統合水資源管理(IWRM)は、従来の一機関による政策決定から移行した国際的に認識された取組みである。IWRMの取組みは、加速された開発を支えるための水資源管理の改善、また、主な水問題やミレニアム開発目標を含む課題に対する解決策を見出すために用いられるべきである。IWRMは第一に、水管理における決定権を有するハイレベルに至るまでの関係者を一つにまとめなければならない。IWRMは実際の問題や物理的な水資産管理に関わらなければならない。水資源はすでに気候変動や汚染、人口増加、水をめぐる競争など、深刻な危機に直面しており、あらゆるレベルにおいて緊急にIWRMが実行されなければならない。

主要機関と諮問委員会の行動に対して2つの目標が設定された。

目標1:

すべての国家政府が、IWRMおよび水効率化計画の現状や実行のための具体的な行動を報告する。

あなたたちの行動:

‐ 各国政府は、2008年の第16会期持続可能な開発委員会(CSD)において、IWRMおよび水効率化計画の作成だけでなく実施についても報告すべきである。

‐ UNDESAは、各政府が各自のIWRMと水効率化計画を、第13会期持続可能な開発委員会における決定のフォローアップとして登録できるように、国のIWRM計画についてのデータベースを構築すべきである。

‐ 国連事務総長は2006年に、IWRMと水効率化計画の報告を求める書簡を全ての国々に送り、とりわけモニタリングの足跡を証明するための彼らの努力と成果に関する報告を、促すべきである。

‐ 国連事務総長は、各国政府のIWRM計画の作成と実施に関する報告を、統一された様式によって各国の駐在調整官に要請すべきである。

‐ 地域の国連機関や地域銀行は、各国がIWRM計画に関する情報を交換できるようにするためのワークショップを開催し、計画準備において国々と連携すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は上記の行動を国連事務総長に提言する。

‐ 諮問委員会は、各政府のIWRMおよび水効率化計画の作成と実施を促進するために、地域政府機関とのハイレベルの対話を実施する。

‐ 諮問委員会はUNDPやUNDESA、その他の国連機関が上述の行動の実施し、事務総長にそれらの行動を報告することを促す。

‐ 諮問委員会は、データベースおよびUNの駐在調整官への報告書の登録情報に基づき、各国のIWRMと水効率化計画の作成および実施を公表する。

‐ 諮問委員会は、各国政府がIWRMに関して優れた進捗状況を示した事例、その過程に利害関係者を関与させた包括的方法を採用した事例を明確に示す。

目標2:

‐ IWRMの原則が、越境河川の管理状況においても適用されること。

あなたたちの行動:

‐ UN‐Waterは関係する国連機関、金融機関、援助機関とワークショップ(円卓会議)を開催し、越境団体を支援して、相互の協力を促すことができる方法を検討すべきである。

‐ 国際金融機関、地域開発銀行、二国間援助機関は、IWRMのコンセプトで越境の水プロジェクトを実施するため、資金のプールなどの方策を検討すべきである。

‐ 国際金融機関、地域開発銀行、OECDは、共通の方法、IWRMの観点を共有するために、主要な国際的水プロジェクトの評価および実施に用いるIWRMのチェックシートを再検討すべきである。

‐ 国家政府は、国際河川の流域管理にIWRMのコンセプトを適用するために、国連総会で、1997年5月21日採択された国連決議51/229「国連国際水路の航行以外の使用の法令」を批准すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、越境の水プロジェクトのための資金のプールや、IWRMプロジェクト評価・実施のチェックシートといったIWRMを促進するためのツールやシステムを開発するために、国際金融機関と地域開発銀行、OECDとの対話を実施すべきである。

‐ 諮問委員会は、「国際水路の航行以外の使用の法令」の批准を促すために、国家政府のハイレベルと意見交換する。

‐ 諮問委員会は、「国際水路の航行以外の使用の法令」の批准の重要性を認識させるために、国際立法機関との対話を申し入れ、実施する。

7.水と災害

水は生命である。水は生命にとって脅威でもある。水関連の災害は過去10年、規模、頻度において激増し、生命・生活の糧を奪い、短期・長期的に社会・経済的な負の影響を及ぼしてきた。水関連の災害に対する予防、準備、管理対策を充実させることが緊急の課題である。このような行動には、地域社会や組織の持つ知識、経験、能力を取り入れなければならない。「兵庫行動枠組み」のようなイニシアチブを補足するための、目標やシステムも必要である。

目標1:

国際社会が、世界的に統一された政治的な意志に基づき、水の災害に起因する生命・生活の損失削減に向けた世界行動の指針を表明した明確な目標を設定する必要がある。

あなたたちの行動:

‐ 目標を設定し、提案された目標の論理的根拠を、社会的・経済的側面から定義するために、UNISDRを中心に関係国の協力を得て、国連機関によるハイレベルな作業グループを組織するべきである。

‐ 作業グループは次のような会議を主催する。

・専門家、国際救援団体、国家レベルの災害対策グループ、NGOを含むその他の関連団体を含めた多様な利害関係者のワークショップの開催。そのような目標に必要な基準や手順を策定する

・地方や地域社会レベルでワークショップを開催し、水災害に対する経験、伝統的知識、ローカルアクションを共有する。

・国際会議の開催。とりわけ、目標の採択を含めて水災害の軽減に向けた政治的な意志の確認と将来の戦略的行動を策定する。

‐ 国連加盟国は目標を採択し、将来の行動を議論すべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、上記の行動を支援し、それらが具体化するように主要な機関、利害関係団体との対話などを通して意思疎通を図る。

‐ 諮問委員会は、目標が設定された際に、目標の達成に向けた行動を呼びかける。

‐ 諮問委員会は、提案された目標の実現に向けて国際的な意識向上活動に従事する。

目標2:

災害時および災害後に、安全な水と衛生の迅速な供給を確保する。

あなたたちの行動:

‐ 国連人道問題調整事務所(UNOCHA)は、次のような活動のための行動を調整する。

‐ 各国政府および地方自治体は、災害対応・管理計画における主要な行動の一つに、災害時における飲料水と衛生の供給を含めるべきである。

‐ 国際社会や各国政府は、とりわけ災害管理者と水管理の専門家のつながりを、地方、国家、国際レベルにおいて確保すべきである。

‐ 災害後、被害を受けた地域の査定と救援のために活用できるように、水と衛生に関するモニタリグデータを保存すべきである。そのような活動における地方自治体、市民社会、国際救援団体の重要な役割を認識すべきである。

‐ 水事業体パートナーシップは、緊急時に水と衛生の提供を改善させるために、災害救済と復旧活動における水事業体の間での連携システムを含めるべきである。

‐ 各国政府および地方自治体は、水と衛生の許容力を、危機に対して強く、回復力のあるものするための政策を策定し実行すべきである。その際には、国、地域の災害対策機関と協調して行うべきである。

私たちの行動:

‐ 諮問委員会は、災害救済・復旧における水と衛生の供給を確保するためにハイレベルでの対話を、政府や地方自治体と実施すべきである。

‐ 諮問委員会は、災害時の水と衛生に関する提言に関して意識向上活動を率先して奨励する。

‐ 諮問委員会は、災害が生じた際に、災害管理者やボランティアとデータを積極的に共用するために、データの所有者を促してモニタリング調整システムを構築する。

‐ 諮問委員会は、水事業体パートナーシップ参加者を災害対策・救済活動に関与させるように努力する。

8.国連水賞

1.賞の名称

持続可能な開発のための国連水賞:水と衛生を通じたミレニアム開発目標の達成のために

2.賞の目的

本賞は、地方(ローカル)レベルでの水関連のミレニアム開発目標達成のための行動を高く評価することによって、それらを促進すること、また世界の持続可能な開発のためには、水関連のミレニアム開発目標を達成することが非常に重要であるという認識を高めることを目的とする。

3.対象とする分野

「水供給」および「衛生」

4.賞の授与者

国連事務総長

5.受賞者と授与されるもの

●本賞は年に一回、二団体に授与される。一団体は水供給の分野、一団体は衛生の分野の功労者とする。

●受賞者は毎年国連水の日(3月22日)に国連事務総長より盾を授与される。

6.賞の申し込み締切と告知

●申し込みは毎年国連水の日に開始する。

●締切は9月末とする。

●広報活動は主要な水および持続可能な開発関連の国際会議で行われる。(例:持続可能な開発委員会(CSD)、ストックホルム水シンポジウム、世界水フォーラム)

7.賞の対象者

水関連のミレニアム開発目標達成のための具体的な活動を行った地方自治体。

8.推薦と申し込みの手順

●地方自治体の首長による自薦。

●ただし、少なくともそれぞれ一名の有識者(団体)による推薦状を申込書に添付する。

9.評価基準

賞の委員会により毎年それぞれの賞に対する評価基準を検討する。しかしながら、以下の点については、毎年の共通評価基準として適用されることとする。

・多数のステークホルダーの参加・目に見える成果が挙がっていること(可能であれば定量的なもの)

・他の地方自治体への適用可能性

10.体制

a) 賞委員会

・委員会は5名からなり、委員は国連「水と衛生のための諮問委員会」による推薦を受け、国連事務総長によって任命される。

・委員の任期は3年とする。

b) 事務局

・賞の事務局は「生命のための水」10年の事務局が務める。(ただし、10年の事務局が設立されるまでは国連経済社会局(UNDESA)が事務局を代行する

9.諮問委員会について

 世界の水問題解決は、貧困の根絶と持続可能な発展の達成という世界の願いを実現するにあたり重要な課題である。

 国連「水と衛生に関する諮問委員会」は、2004年3月、コフィ・アナン国連事務総長により設立され、水と衛生問題に関するグローバルアクションを活性化させるために働きかける独立諮問機関である。橋本龍太郎元総理が議長を務めるほか、豊富な経験をもつ多分野の著名人、専門家、個人が新しいアイディアを提示し、政府組織を動員し、またメディア、民間企業、市民社会と協同する。

諮問委員一覧

橋本龍太郎(議長) 元内閣総理大臣

ウシ・アイト(副議長) ドイツ連邦議会議員、前ドイツ連邦経済協力開発省政務次官

マフムード・アブ・ザイド エジプト国水資源灌漑大臣

ディビッド・ボーイズ 国際公務員労連(PSI)公営企業担当オフィサー

ミシェル・カムドシュ アフリカに関する大統領個人代表、元国際通貨基金代表理事

フアニタ・カスターニョ 前コロンビア国外務次官

マーガレット・カトレイ・カールソン 世界水パートナーシップ総裁

ジョスリン・ダウ 元女性環境開発機構総裁

ジョルジョ・ジャコメリ ハイドロエイド総裁、元国連事務次長

アンヘル・グリア 経済協力開発機構(OECD)事務総長、元メキシコ財務大臣、外務大臣

ロニー・カスリルス 南アフリカ共和国情報大臣

オリビア・ラ・オ・カスティーヨ アジア太平洋持続可能な消費生産円卓会議総裁

アントニオ・ミランダ 元ブラジル地方水衛生事業体連盟代表

ポール・ニールソン 前欧州連合開発・人道援助担当委員

エリック・オダダ ナイロビ大学地質学部長

ジェラール・ペイヤン 国際民営水事業体連合会長、前スエズ社上級副社長

ジュディス・リース ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス副学長

ヨルダン・ウズノフ 元ブルガリア環境副大臣

ワン・シェチュン 中華人民共和国水利部長

ピーター・ヴォイケ 前国際金融公社(世界銀行グループ)総裁