データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 水と衛生に関するサイド・イベント川口順子政府代表ステートメント

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2008年9月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

議長、

御列席の皆様、

 私は、この水と衛生の問題にのみに焦点を当てた画期的なサイドイベントにおいて発言の機会を得ましたことを大変光栄に思います。しかしながら、このサイドイベントは、水と衛生の問題の意義に焦点が当てられる唯一の機会ではありません。むしろ、本年5月に横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)、7月のG8北海道洞爺湖サミット、明日開催されるMDGsハイレベル会合、2009年3月にイスタンブールで開催される第5回世界水フォーラムを含む一連の会合の一つと位置づけられます。

(MDG7の意義)

 2015年の期限までの達成を目指した8つのミレニアム開発目標(MDGs)は、いずれも、極めて重要です。また、いずれのMDGも、21世紀において国際社会が追求すべき目標である「人間の安全保障」にとっても不可欠です。それ故に、各方面における我々の努力にも拘わらず、MDGsの達成に遅れが生じていることは、残念です。MDGsの中で、最も重要な戦略的重要性を有するものはMDG7であり、それは、分野横断的な性質を持つ水と衛生の問題における進展を目標に設定しています。

(北海道洞爺湖サミットとTICAD IVにおける成果)

 だからこそ、我々は、G8北海道洞爺湖サミットと、それに先立つTICAD IVにおいて、水と衛生の問題に重点をおきました。サミット首脳宣言においては、これらの問題の解決に当たり、良い循環型水資源管理は極めて重要であることを確認した上で、国際的に合意された目標の達成を加速させるために水に関するG8専門家会合を設置することを発表しました。

 また、TICAD IVにおいては、我が国は、アフリカへ派遣する「水の防衛隊」の創設を表明し、既に着手しました。また、今後5年間で、650万のアフリカの人々に対して安全な飲料水を提供し、水資源管理分野において5000人の人材育成の実施を約束しました。

(循環型水資源管理-我が国の伝統及び取組)

議長、

 水と衛生の問題に積極的に取り組むに当たって、我が国は「循環型水資源管理」を推進しています。これは、水は稀少で、他の如何なる物質によっても代替不可能な資源である一方、持続的な利用も達成可能との認識に基づき、実施するものです。故に、我が国は、様々な水循環を包括的に管理し、水を繰り返し利用するということを目指します。

 我が国は、近代的な上下水道が配備される前から、汚水を浄化ないしは処理して何度も使用するという水循環システムを構築していました。薄い膜を濾過の際に使用するという膜処理技術、東京においては3.6%まで低減された驚異的に低い漏水率の実現は、稀少な水資源を管理する中で、我々の先人たちが培った経験と知恵の賜物です。

 このような知見、ノウハウ、技術を、我が国は、「循環型水資源管理」の実現を通じて、世界と共有したいと考えています。統合水資源管理、「水の良きガバナンス」等これまで提唱されてきた理念の価値は、良き循環型水資源管理の実践を通じて容易に示されます。

 また、衛生の重要性の認識の高まりから、水と衛生を一体として扱っていくことが必要となっています。この点も「循環型水資源管理」のアプローチに組み込まれています。我が国は、特にこの「国際衛生年」において、またその後においても、衛生の継続的な改善を達成することにコミットしています。

(結語)

議長、

 水と衛生の問題に上手く取り組むことによって、我々は、「人間の安全保障」を達成するための礎を築くべきです。それがひいては、グローバルな繁栄に繋がるでしょう。それ故に、1990年代以来、我が国は、水と衛生分野における途上国支援においてトップ・ドナーであり、そのコミットメントはこれからも変わりません。実際、我々は、「循環型水資源管理」の推進を通じて、また、この非常に重要なイベントに集まったすべての仲間と協働しつつ、この問題に取り組むため一層の努力に力を注ぐ決意です。

 ご清聴ありがとうございました。