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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] コペンハーゲン合意

[場所] コペンハーゲン
[年月日] 2009年12月18日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 コペンハーゲンでの2009年国連気候変動会議に出席している次に掲げる締約国の元首、政府の長、閣僚その他の代表団の長は:[締約国のリスト]

 条約第2条に定められた条約の究極的な目的を達成するため、

 条約の原則及び規定を指針とし、

 二つの特別作業部会による作業の結果に留意し、

 条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)に関する決定x/CP.15及び京都議定書の下での付属国I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)にその作業を継続するよう要請する決定x/CMP.5を支持して、

 直ちに実施されるこのコペンハーゲン合意に合意した。

1. 我々は、気候変動が我々の時代における最大の課題の一つであることを強調する。我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則に従って気候変動に早急に対処するという強固な政治的意思を強調する。気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるという条約の究極的な目的を達成するため、我々は、世界全体の気温の上昇が摂氏2度より下にとどまるべきであるとの科学的見解を認識し、衡平の原則に基づき、かつ、持続可能な開発の文脈において、気候変動に対処するための長期的協力の行動を強化する。我々は、気候変動の悪影響を特に受けやすい国における気候変動の死活的な影響及び対応措置の潜在的な影響を認識し、国際的な支援を含む包括的な適応計画を作成する必要性を強調する。

2. 我々は、科学に基づき、また、世界全体の気温の上昇が摂氏2度より下にとどまるよう世界全体の排出量を削減することを視野に入れたIPCC第4次評価報告書に示されているとおり、世界全体の排出量の大幅な削減が必要であることに同意し、科学に沿って、かつ、衡平の原則に基づいて、この目的を達成するための行動をとる。我々は、開発途上国におけるピークアウトのための期間はより長いものであることを認識し、また、社会・経済開発及び貧困撲滅が開発途上国の最優先の課題であること並びに低排出開発戦略が持続可能な開発にとって不可欠であることに留意し、世界全体及び各国の排出量のピークアウトを可能な限り早期に実現するために協力すべきである。

3. 気候変動の悪影響及び対応措置の潜在的な影響への適応は、すべての国が直面する課題である。開発途上国、特に脆弱な開発途上国(なかんずく後発開発途上国、小島嶼開発途上国及びアフリカ)において、脆弱性の減少及び回復力の構築を目的とした適応のための行動の実施を可能とし、並びにこれを支援することによって条約の実施を確保するため、適応に関する強化された行動及び国際協力が緊急に必要とされている。我々は、先進国が、開発途上国における適応のための行動の実施を支援するため、十分な、予測可能なかつ持続可能な資金、技術及び能力の開発を提供することに同意する。

4. 付属国I国は、個別に又は共同して、2020年に向けた経済全体の数量化された排出目標を実施することをコミットする。付属国I国は、この排出目標を、INF文書に取りまとめるため、2010年1月31日までに付表Iに定める様式により事務局に提出する。これにより、京都議定書の締約国である付属国I国は、京都議定書によって開始された排出削減を更に強化する。先進国による削減の実施及び資金の提供については、既存の及び締約国会議によって採択される追加的な指針に従って、測定され、報告され、及び検証されるとともに、このような目標及び資金の計算方法が厳密な、強固なかつ透明性のあるものであることを確保する。

5. 条約の非付属国I国は、条約第4条1及び第4条7の規定に従い、かつ、持続可能な開発の文脈において、緩和のための行動を実施する。これらの緩和のための行動は、INF文書に取りまとめるため、非附属書I国が2010年1月31日までに付表IIに定める様式により事務局に提出するものを含む。後発開発途上国及び小島嶼開発途上国は、自発的にかつ支援を基礎として、行動をとることができる。非付属国I国が後に行う緩和のための行動及び行うことが想定されている緩和のための行動(国別目録を含む。)は、締約国会議によって採択される指針に基づき、条約第12条1(b)の規定に合致した国別報告書を通じて、2年ごとに通報される。国別報告書その他の方法で事務局に送付されるこれらの緩和のための行動は、付表IIに掲げる一覧表に追記される。非付属国I国が行う緩和のための行動は、それぞれの国内的な測定、報告及び検証の対象となり、その結果は、国別報告書を通じて、2年ごとに報告される。非付属国I国は、各国の主権の尊重を確保する明確に定められた指針の下での国際的な協議及び分析に供するため、国別報告書を通じて自国の行動の実施に関する情報を送付する。国内的に適当な緩和のための行動であって国際的な支援を必要とするものは、関連する技術、資金及び能力の開発の支援とともに登録簿に記録される。これらの支援を受けた行動は、付表IIに掲げる一覧表に追記される。これらの支援を受けた国内的に適当な緩和のための行動は、締約国会議によって採択される指針に従い、国際的な測定、報告及び検証の対象となる。

6. 我々は、森林の減少及び劣化に由来する排出を削減することの重要な役割並びに森林による温室効果ガス排出の吸収を強化する必要性を認識し、先進国からの資金の調達を可能とするため、REDDプラスを含む制度を直ちに創設することにより、こうした行動に対して積極的な奨励措置をとる必要があることについて同意する。

7. 我々は、緩和のための行動の費用対効果を高め、及びこれを促進するため、市場を活用する機会を含む種々の方法を追求することを決定する。開発途上国、特に低排出経済である開発途上国については、低排出の経路で発展を継続するため、奨励措置がとられるべきである。

8. 条約の実施を強化するため、拡充された、新規のかつ追加的な資金であって、予測可能かつ十分なもの及び改善されたアクセスが、緩和(森林の減少及び劣化に由来する排出を削減する(REDDプラス)ための相当量の資金を含む。)、適応、技術の開発及び移転並びに能力の開発のための強化された行動を可能にし、並びに支援するため、条約の関連規定に従い、開発途上国に対して供与される。先進国は、新規のかつ追加的な資金(林業及び国際機関を通じた投資を含む。)を供与することを、先進国全体としてコミットし、この資金は、適応と緩和との間で均衡のとれた配分が行われ、2010年から2012年までの期間に300億米ドルに近づくものとする。適応のための資金については、後発開発途上国、小島嶼開発途上国及びアフリカ諸国のような最も脆弱な開発途上国に優先的に配分される。先進国は、意味のある緩和のための行動及び実施の透明性の文脈において、開発途上国のニーズに対応するため、2020年までに年間1,000億米ドルを共同で調達するという目標にコミットする。この資金は、代替の資金源を含め、公的な及び民間の並びに二国間及び多国間の幅広い資金源から調達される。適応のための新たな多国間の資金は、先進国及び開発途上国が衡平に代表される管理の仕組みを有する効果的かつ効率的な資金上の措置を通じて提供される。こうした資金の相当な部分は、「コペンハーゲン緑の気候基金」を通じて提供されるべきである。

9. このため、代替の資金源を含む潜在的な収入源からの拠出について検討する「ハイレベル・パネル」が、この目標の達成に向け、締約国会議の指針の下で、また、締約国会議に対して責任を負うものとして設置される。

10. 我々は、開発途上国における緩和(REDDプラスを含む。)、適応、能力の開発並びに技術の開発及び移転に関連した事業、計画、政策その他の行動を支援するため、条約の資金供与の制度の実施機関として、「コペンハーゲン緑の気候基金」を設立することを決定する。

11. 我々は、技術の開発及び移転のための行動を強化するため、各国の主導による手法を指針として、かつ、自国の事情及び優先順位に基づいてとられる適応及び緩和のための行動を支援するための技術の開発及び移転を促進する「技術メカニズム」を設立することを決定する。

12. 我々は、条約の究極的な目的の観点を含め、この合意の実施に関する評価を2015年までに完了させることを要請する。この評価は、気温が摂氏1.5度上昇することとの関連を含め、科学によって提示される種々の問題に関する長期の目標の強化について検討することを含む。

{表は省略}