データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第2回日本・メコン地域諸国首脳会議共同声明

[場所] ハノイ
[年月日] 2010年10月29日
[出典] 外務省仮訳
[備考] 
[全文]

 1.我々,日本国,カンボジア王国,ラオス人民民主共和国,ミャンマー連邦,タイ王国及びベトナム社会主義共和国の首脳は,2010年10月29日にベトナム・ハノイにおいて,第2回日本・メコン地域諸国首脳会議のため一同に会した。

 2.我々は,過去数年間、特に2009年11月に東京で開催された第1回日本・メコン地域諸国首脳会議以降,政治,経済及び開発協力等の様々な分野において日本とメコン地域諸国との関係及び協力が大きく進展していることを深い満足の意とともに確認した。我々は,2010年7月21日にハノイで開催された第3回日メコン外相会議及び2010年8月26日にダナンで開催された第2回日メコン経済大臣会合にて示された,日メコン関係を更に発展させるための関係省庁による協議及び協力的な取組を歓迎するとともに評価した。

 3.我々は,「東京宣言」,「日メコン行動計画63」及び第1回日本・メコン地域諸国首脳会議以降にメコン地域諸国から提案のあったその他の取組の実施において著しい進捗が見られていることを歓迎し,協力を促進することを決意した。また,我々は,共通の関心である地域及び国際情勢についても意見交換を行った。我々は,メコン地域及び東アジア地域の平和,発展及び繁栄に向けて,協力を継続するというコミットメントを強化した。

 4.メコン地域諸国首脳は,同地域における日本の重要かつ建設的な役割,特に日本の経済協力について謝意を表明した。また,日本はメコン地域諸国にとって長きにわたる,信頼できる,不可欠なパートナーであるという恒常的かつ共通の認識を,各国首脳は再確認するとともに,日本がメコン地域諸国との緊密な協力関係を維持することにつき,期待を表明した。日本の総理は,第1回日本・メコン地域諸国首脳会議で設定された目標を達成するため、日本がメコン地域諸国と協力していくとのコミットメントを継続することを改めて表明するとともに、メコン地域諸国による自助努力を高く評価した。

メコン地域の包括的かつバランスのとれた持続可能な開発に向けた日メコン協力

 5.我々は,メコン地域の開発は,地域統合の促進,環境保全と調和する持続可能な成長の達成,また,メコン地域諸国と域外国の双方が裨益する開発の模範となるべきであるとの認識を共有した。

 6.我々は,メコン地域においてハード及びソフト両面のインフラ整備を実施するため、資源を引き続き活用する意思を再確認した。我々は,日本及びメコン地域諸国の産業界からの政策提言に基づき策定したハード・インフラの整備,貿易円滑化・物流の改善,中小企業及び裾野産業育成・起業促進,サービス・新産業の育成に関する「日メコン経済産業協力イニシアティブ(MJ-CI)行動計画」を高く評価し,採択した。我々は「日メコン行動計画63」の下において,「MJ-CI行動計画」が経済活動を促進するとともに,メコン地域の「ミッシング・リンク」の解消を通じて,格差を是正すること,また,補完し,相乗効果を得ることを確認した。また,我々は,日本とタイの共催により2010年9月にバンコクで開催された東西・南部経済回廊に関する日メコン国際会議及び東京で開催されたワークショップの成果を歓迎した。これらの会合においては,経済回廊を最大限活用し,メコン地域における連結性を向上させるためには,ハード・インフラのみならず,ソフト面の取組が重要であることが強調された。

 7.我々は,様々な分野における協力案件を効果的に実施するため,官民協力を更に促進させることの必要性を確認した。このような観点から,メコン地域諸国及び日本は,2010年8月に第1回日メコン産業政府対話を開催し,MJ-CI行動計画を策定するため,産業界からの提言を取りまとめた。また,日本は,メコン地域における官民協力を促進するためのフォーラムを新たに立ち上げ,日本及びメコン地域諸国の官民セクターの参加を得て構成される官民協力・連携促進フォーラム日メコン全体会合を本年中に開催する。

 8.我々は,急増するメコン地域の経済開発に係る需要に対応するため,人材育成の重要性を認識した。我々は,日メコン職業訓練センターに関する初期段階の議論が行われていることに留意した。また,我々は,タイが「日メコン行動計画63」の実施を支援するための準備があること,特に,タイが高い能力を有する人材育成分野の支援をするための準備があり,その分野に高い能力を有していることを歓迎した。

 9.我々は,「緑あふれるメコン(グリーン・メコン)に向けた10年」イニシアティブを歓迎し,その行動計画を採択した。また,メコン地域が森林再生等の様々な効果的措置を通じて,豊かな森林,豊かな生物多様性及び自然災害への強靱性を有する「グリーン・メコン」を実現するため,環境保全に係る協力を強化するとの強い期待を表明した。

 10.我々は、第1回日本・メコン地域諸国首脳会議においてベトナム首相が言及したメコン河における水資源管理に係る協力推進の必要性を強調した。我々は、日本がメコン河委員会(MRC)の洪水及び渇水プロジェクトを支援するという日本の決定を高く評価した。

 11.我々は,メコン地域のバランスのとれた発展を達成するため、貧困削減、経済格差の縮小、食料安全保障の推進及び公衆衛生の改善に積極的に協力するというコミットメントを再確認した。また、我々は、景気減速や自然災害の影響を容易に受けやすい人々に対し支援を行うため、相互に協力する意思を表明した。さらに、我々は、地域産業育成、また、基礎保健や初等教育等の社会経済分野及び農業分野の開発の必要性を確認した。こうした観点から,日本の総理は,「カンボジア・ラオス・ベトナム(CLV)開発の三角地帯」の開発に係る支援継続の意思を表明した。メコン地域諸国首脳は,カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム(CLMV)及びエーヤワディー・チャオプラヤー・メコン経済協力戦略(ACMECS)のプロジェクトへの日本の協力を要請した。

 12.我々は,政治、安全保障、経済、文化、観光及び青少年交流等の幅広い分野における、草の根から首脳レベルまでの人的交流による実り多い成果を歓迎した。ベトナムが2009年12月にカントー市で「日メコン観光文化フェスティバル」を主催したこと、ラオスが2009年12月22日にルアンプラバン市で「日メコン女性議員会議」を開催したこと,及び2010年6月22日に奈良市において日本が「日メコン古都シンポジウム」を主催したことを高く評価した。メコン地域諸国の首脳は、2010年から3年間でメコン地域諸国より青少年を含め3万人を日本に招待する交流計画の実施を高く評価した。

 13.我々は、第17回ASEAN首脳会議においてASEAN各国首脳によって採択されたASEAN連結性に関するマスタープランを歓迎した。我々は、日メコン協力とASEAN連結性の相乗効果の重要性を強調し,メコン地域諸国におけるインフラ整備がASEAN及び東アジアのインフラ整備と調和した形で進められなければならないとの認識を共有した。日本の総理はASEAN連結性に関するマスタープランを支持し、物理的、制度的及び人と人との連結性を向上させるため、メコン地域諸国に対する日本の支援継続の意思を表明した。

共通の関心事項

 14.我々は,共通の関心である地域及び地球規模の課題につき,緊密な協力を促進し,また,地域の平和,安定及び繁栄を確保するため、既存の日メコン協力を拡大・深化することを再確認した。

 15.我々は、国連改革に対する支持を再確認し、この関連で安全保障理事会をより代表性,正統性及び実効性が備わったものにし,21世紀の国際社会の現実と要求により応えたものにするため,常任理事国及び非常任理事国枠双方の拡大及び作業工程の改善を含め安保理の早期改革への支持を改めて表明した。日本の総理は、安保理が拡大される際に日本が安保理常任理事国になることに対するメコン地域諸国による一貫した支持を高く評価した。

 16.我々は、2005年9月の六者会合共同声明及び関連の国連安保理決議に従った朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化に対する支持を再確認した。また、我々は、国際社会が有する人道上の懸念に取り組むことの重要性を強調した。我々は、関連の国連安保理決議を完全に遵守する必要性を再度強調した。

 17.我々は,2010年11月7日にミャンマーで実施される総選挙の重要性に留意し,この総選挙が自由,公正かつ開かれた方法で実施されるよう希望する旨表明した。

 18.我々は,海洋問題がアジア太平洋地域の平和,安定,発展のため,国際法に基づき,平和的な方法で解決されるべきであるということに同意した。

 19.我々は,過去数年間に日メコン協力が著しく進展したとの認識を共有した。我々は,ベトナムのもてなしと第2回日本・メコン地域諸国首脳会議に関するベトナムのすばらしいアレンジへ謝意を表明し,関連の日メコン協力の枠組を通じて更に協力を促進する決意を再確認した。我々は,2011年にインドネシアで第19回ASEAN関連首脳会議に際して、第3回日本・メコン地域諸国首脳会議,第4回日メコン外相会議及び第3回日メコン経済大臣会合が日本の主催により開催されることを期待した。