データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 生物多様性条約第10回締約国会議 ハイレベル・セグメント 議長総括

[場所] 名古屋
[年月日] 2010年10月29日
[出典] 環境省
[備考] 
[全文]

 別紙1

 2010年10月27日より2日半にわたり行ってまいりましたハイレベル・セグメントでは、各国の首脳や閣僚、国際機関やNGO、ビジネス、先住民、女性等のステークホルダーの代表を集め、生物多様性の保全と持続可能な利用の推進を希求しようとする熱意のこもった議論を行いました。論点は多岐にわたりましたが、今後の取組みを強化するための重要な課題についての認識を共有することができました。

 生物多様性の保全と持続可能な利用にかかる施策について、貧困の削減、持続可能な開発の実現、グリーン経済の推進に関する政策と統合する重要性が繰り返し指摘されました。

 新戦略計画、特に、ポスト2010年目標については、意欲的かつ現実的で、さらには測定可能な具体的数値目標を含むものでなければならないという点が強調されました。

 生物多様性と気候変動については、持続可能な森林および生態系の管理を通じ、生物多様性や炭素吸収源の保全を進めながら、先住民や地域社会の住民の生計改善を進めることの重要性が強調されました。

 生物資源の持続可能な利用を通じて生計を改善することの重要性が指摘されました。優良事例に関する情報共有などの意義が強調されるとともに、「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ」のような取組を国際的にイニシアティブとして進めていくことについて多くの代表から支持が表明されました。

 条約の効果的な実施を進めるために、先住民、地域住民、地方自治体、ビジネス、国会議員など、多様な主体の積極的な参加が不可欠であることが強調されるとともに、情報発信、教育、啓発活動の重要性が指摘されました。2011年から2020年までを「国連生物多様性のための10年」とする我が国の提案について、多くの代表から支持が表明されました。

 条約実施の体制について、科学と政策の連携を向上させることの重要性が強調され、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の設立作業を支援する発言がなされました。

 資金動員については、数々の先進国や国際機関から、地球環境ファシリティー第5次増資、ODAの増額、生物多様性分野へのODA資金割合の引き上げ、ABS議定書の実施支援に向けた資金協力を行っていくとのコミットメントが表明され、各国から賛意が表明されました。

 遺伝資源へのアクセスと利益配分を確保する重要性が強調されました。その重要性にかんがみ、多くの代表から、COP10でABS議定書が採択されるよう、合意に向け各国が協力するよう強い呼びかけがなされました。議定書が生物資源の盗用の規制や遵守確保の改善につながることへの期待が表明されました。

 私たちは、こども達から托されているこの地球を、生物多様性の恩恵を持続的に享受できる豊かな地球として、こども達に引き継いでいかなければなりません。そのためには、このCOP10で、緊急かつ効果的な行動を起こすことに合意し、全ての関係者が具体的な行動をとることが必要です。

 この重要な使命を全うすべく、各国代表団が最後の力をふりしぼっていただけるよう切にお願いし、私の総括としたいと思います。