[文書名] 生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書
この議定書の締約国は、
生物の多様性に関する条約(以下「条約」という。)の締約国として、
遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分が条約の中核的な三つの目的の一つであることを想起し、及びこの議定書が条約の枠組みにおけるこの目的の実現を追求することを認識し、
諸国が自国の天然資源に対して及び条約に従って有する主権的権利を再確認し、
さらに、条約第十五条の規定を想起し、
条約第十六条及び第十九条の規定に従い、開発途上国における遺伝資源に価値を付加するための研究及びイノベーションの能力を開発するための技術移転及び協力が持続可能な開発に果たす重要な貢献を認識し、
生態系及び生物の多様性の経済的価値について公衆を啓発すること並びにこの経済的価値を生物の多様性の管理者と公正かつ衡平に配分することが、生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用を奨励する重要な措置であることを認識し、
取得の機会及び利益の配分が生物の多様性の保全及び持続可能な利用、貧困の撲滅並びに環境の持続可能性に貢献し、これにより、ミレニアム開発目標の達成に貢献する潜在的な役割を有することを認め、
遺伝資源の取得の機会の提供と当該遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分との間の相互関係を認め、
遺伝資源の取得の機会の提供及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する法的な確実性を提供することの重要性を認識し、
さらに、遺伝資源の提供者と利用者との間の相互に合意する条件についての交渉における衡平及び公正を促進することの重要性を認識し、
また、取得の機会及び利益の配分において女子が不可欠の役割を果たすことを認識し、並びに生物の多様性の保全のための政策の決定及び実施の全ての段階における女子の完全な参加が必要であることを確認し、
取得の機会及び利益の配分に関する条約の規定の効果的な実施を更に支援することを決意し、
遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的な知識であって、国境を越えた状況で存在するもの又は事前の情報に基づく同意を与えること若しくは得ることができないものの利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に対処するため、革新的な解決策が必要とされることを認識し、
食糧安全保障、公衆衛生、生物の多様性の保全並びに気候変動の緩和及び気候変動に対する適応にとって遺伝資源が重要であることを認識し、
農業に係る生物の多様性の特別の性質、他と異なる特徴及び特有の解決策を必要とする問題を認識し、
食料及び農業のための遺伝資源に関する全ての国の相互依存関係並びに当該遺伝資源が貧困の軽減及び気候変動の関連における世界的規模の食糧安全保障の達成及び農業の持続可能な開発にとって有する特別の性
質及び重要性を認識し、また、この点に関し、食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約及び国際連合食糧農業機関の食料及び農業のための遺伝資源に関する委員会の基本的な役割を認め、
世界保健機関の国際保健規則(二千五年)並びに公衆衛生に係る準備及び対応のために人の病原体の取得の機会を確保することの重要性に留意し、
取得の機会及び利益の配分に関連する他の国際的な場において進められている作業を認め、
食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約の下で構築された取得の機会及び利益の配分に関する多数国間の制度が条約と調和するものとして策定されたことを想起し、
取得の機会及び利益の配分に関する国際文書が条約の目的を達成するために相互に補完的であるべきことを認識し、
条約第八条(j)の規定が遺伝資源に関連する伝統的な知識及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分について有する関連性を想起し、
遺伝資源と伝統的な知識との間の相互関係、原住民の社会及び地域社会にとってそれらが不可分であるという性質並びに生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用のため並びにこれらの社会の持続可能な生存のために伝統的な知識が有する重要性に留意し、
原住民の社会及び地域社会において遺伝資源に関連する伝統的な知識を保ち、又は有している状況の多様性を認識し、
原住民の社会及び地域社会がこれらの社会の遺伝資源に関連する伝統的な知識を正当に有する者をこれらの社会内において特定する権利を有することに留意し、
さらに、各国において遺伝資源に関連する伝統的な知識が口承、文書その他の形態により特有の状況の下で保たれていること並びにこれらの状況が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関連する豊かな文化遺産を反映するものであることを認識し、
先住民族の権利に関する国際連合宣言に留意し、
この議定書のいかなる規定も原住民の社会及び地域社会の既存の権利を減じ、又は消滅させるものと解してはならないことを確認して、
次のとおり協定した。
第一条 目的
この議定書の目的は、遺伝資源の利用から生ずる利益を公正かつ衡平に配分すること(遺伝資源及び関連のある技術についての全ての権利を考慮に入れた当該遺伝資源の取得の適当な機会の提供及び当該関連のある技術の適当な移転並びに適当な資金供与により配分することを含む。)並びにこれによって生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用に貢献することである。
第二条 用語
条約第二条に定義する用語は、この議定書に適用する。さらに、この議定書の適用上、
(a)「締約国会議」とは、条約の締約国会議をいう。
(b)「条約」とは、生物の多様性に関する条約をいう。
(c)「遺伝資源の利用」とは、遺伝資源の遺伝的又は生化学的な構成に関する研究及び開発を行うこと(条約第二条に定義するバイオテクノロジーを用いて行うものを含む。)をいう。
(d)条約第二条に定義する「バイオテクノロジー」とは、物又は方法を特定の用途のために作り出し、又は改変するため、生物システム、生物又はその派生物を利用する応用技術をいう。
(e)「派生物」とは、生物資源又は遺伝資源の遺伝的な発現又は代謝の結果として生ずる生化学的化合物(遺伝の機能的な単位を有していないものを含む。)であって、天然に存在するものをいう。
第三条 適用範囲
この議定書は、条約第十五条の規定の範囲内の遺伝資源及びその利用から生ずる利益について適用する。
この議定書は、また、遺伝資源に関連する伝統的な知識であって条約の範囲内のもの及び当該伝統的な知識の利用から生ずる利益について適用する。
第四条 国際協定及び国際文書との関係
1 この議定書は、現行の国際協定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすものではない。ただし、当該締約国の権利の行使及び義務の履行が生物の多様性に重大な損害又は脅威を与える場合は、この限りでない。この1の規定は、この議定書と他の国際文書との間に序列を設けることを意図するものではない。
2 この議定書のいかなる規定も、締約国が他の関連する国際協定(取得の機会及び利益の配分に関する他の専門的な協定を含む。)を作成し、及び実施することを妨げるものではない。ただし、当該国際協定が条約及びこの議定書の目的を助長し、かつ、これらに反しない場合に限る。
3 この議定書は、この議定書に関連する他の国際文書と相互に補完的な方法で実施する。当該国際文書及び関連する国際機関の下での有用なかつ関連する実施中の作業又は慣行について、妥当な考慮が払われるべきである。ただし、当該作業又は当該慣行が条約及びこの議定書の目的を助長し、かつ、これらに反しない場合に限る。
4 この議定書は、条約の取得の機会及び利益の配分に関する規定を実施するための文書である。取得の機会及び利益の配分に関する専門的な国際文書であって条約及びこの議定書の目的と適合し、かつ、これらに反しないものが適用される場合には、この議定書は、当該文書が対象とする特定の遺伝資源に関しては、当該文書の適用のため、当該文書の締約国については適用しない。
第五条 公正かつ衡平な利益の配分
1 遺伝資源の利用並びにその後の応用及び商業化から生ずる利益は、条約第十五条3及び7の規定に従い、当該遺伝資源を提供する締約国(当該遺伝資源の原産国であるもの又は条約の規定に従って当該遺伝資源を獲得した締約国であるものに限る。)と公正かつ衡平に配分する。その配分は、相互に合意する条件で行う。
2 締約国は、遺伝資源についての原住民の社会及び地域社会の確立された権利に関する国内法令に従ってこれらの社会が保有する遺伝資源の利用から生ずる利益が、当該原住民の社会及び当該地域社会と相互に合意する条件に基づいて公正かつ衡平に配分されることを確保するため、適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。
3 締約国は、1の規定を実施するため、適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。
4 利益は、金銭的及び非金銭的な利益(附属書に掲げるものを含むが、これらに限らない。)を含むことができる。
5 締約国は、遺伝資源に関連する伝統的な知識の利用から生ずる利益が当該伝統的な知識を有する原住民の社会及び地域社会と公正かつ衡平に配分されるよう、適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。
第六条 遺伝資源の取得の機会の提供
1 遺伝資源の利用のための取得の機会が与えられるためには、天然資源に対する主権的権利の行使として、かつ、取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則に従い、当該遺伝資源を提供する締約国(当該遺伝資源の原産国であるもの又は条約の規定に従って当該遺伝資源を獲得した締約国であるものに限る。)が事前の情報に基づいて同意することを必要とする。ただし、当該締約国が別段の決定を行う場合を除く。
2 締約国は、国内法令に従い、原住民の社会及び地域社会が遺伝資源の取得の機会を提供する確立された権利を有する場合における当該遺伝資源の取得の機会の提供について、当該原住民の社会及び当該地域社会の事前の情報に基づく同意又は承認及び参加が得られることを確保するために適当な措置をとる。
3 事前の情報に基づく同意を得ることを要求する締約国は、1の規定に従い、次のことを行うために適宜、必要な立法上、行政上又は政策上の措置をとる。
(a)取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則に法的な確実性、明確性及び透明性を与えること。
(b)遺伝資源の取得の機会の提供に関する公正な、かつ、恣意的でない規則及び手続を定めること。
(c)事前の情報に基づく同意を申請する方法に関する情報を提供すること。
(d)国内の権限のある当局が費用対効果の大きな方法で、かつ、合理的な期間内に、明確な、かつ、透明性のある書面による決定を行うことについて定めること。
(e)事前の情報に基づく同意を与えるとの決定及び相互に合意する条件の設定を証明するものとして、取得の機会の提供の際に許可証又はこれに相当するものを発給することについて定め、及び取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに通報すること。
(f)必要な場合には、国内法令に従い、遺伝資源の取得の機会の提供について原住民の社会及び地域社会の事前の情報に基づく同意又は承認及び参加を得るための基準又は手続を定めること。
(g)相互に合意する条件を要求し、及び設定するための明確な規則及び手続を確立すること。当該条件は、書面により明示されなければならず、及び特に次の事項を含むことができる。
(i)紛争解決条項
(ii)利益の配分に関する条件(知的財産権に関するものを含む。)
(iii)第三者によるその後の利用がある場合には、当該利用に関する条件
(iv)必要な場合には、目的の変更に関する条件
第七条 遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得の機会の提供
締約国は、国内法令に従い、遺伝資源に関連する伝統的な知識であって原住民の社会及び地域社会が有するものについて、当該原住民の社会及び当該地域社会の事前の情報に基づく同意又は承認及び参加を得て取得されること並びに相互に合意する条件が設定されていることを確保するために適当な措置をとる。
第八条 特別の考慮事項
締約国は、取得の機会及び利益の配分に関する自国の法令又は規則を定め、及び実施するに当たり、次のことを行う。
(a)特に開発途上国において、生物の多様性の保全及び持続可能な利用に貢献する研究を促進し、及び奨励するための条件(非商業的な目的の研究のための取得の機会の提供について、当該研究の目的の変更に対処する必要性を考慮しつつ、簡易な措置によることとすることを含む。)を整えること。
(b)人、動物又は植物の健康に脅威又は損害を与える現在の又は差し迫った緊急事態であると国内的又は国際的に決定された事態に妥当な考慮を払うこと。締約国は、遺伝資源の迅速な取得の機会の提供及びその利用から生ずる利益の迅速、公正かつ衡平な配分(特に開発途上国において、治療を必要とする者が適切な治療を受けることができることを含む。)の必要性を考慮することができる。
(c)食料及び農業のための遺伝資源の重要性並びにそれらが食糧安全保障に果たす特別な役割を考慮すること。
第九条 保全及び持続可能な利用への貢献
締約国は、利用者及び提供者に対し、遺伝資源の利用から生ずる利益を生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用に充てるよう奨励する。
第十条 地球的規模の多数国間の利益の配分の仕組み
締約国は、遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的な知識であって、国境を越えた状況で存在するもの又は事前の情報に基づく同意を与えること若しくは得ることができないものの利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に対処するため、地球的規模の多数国間の利益の配分の仕組みの必要性及び態様について検討する。遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的な知識の利用者がこの仕組みを通じて配分する利益は、生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用を地球的規模で支援するために利用される。
第十一条 国境を越える協力
1 同一の遺伝資源が二以上の締約国の領域内の生息域内において認められる場合には、当該二以上の締約国は、この議定書を実施するため、適当なときは、必要に応じ関係する原住民の社会及び地域社会の参加を得て、協力するよう努める。
2 複数の締約国にわたる一又は二以上の原住民の社会及び地域社会によって遺伝資源に関連する同一の伝統的な知識が共有されている場合には、当該複数の締約国は、この議定書の目的を実現するため、適当なときは、関係する原住民の社会及び地域社会の参加を得て、協力するよう努める。
第十二条 遺伝資源に関連する伝統的な知識
1 締約国は、この議定書に基づく義務の実施に当たり、国内法令に従い、遺伝資源に関連する伝統的な知識について、必要に応じ原住民の社会及び地域社会の慣習法、慣例及び手続を考慮する。
2 締約国は、関係する原住民の社会及び地域社会の効果的な参加を得て、遺伝資源に関連する伝統的な知識の潜在的な利用者に対し当該潜在的な利用者の義務(伝統的な知識の取得の機会の提供及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する措置であって、取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターを通じて参照することができるものを含む。)を知らせるための仕組みを確立する。
3 締約国は、適当な場合には、原住民の社会及び地域社会(これらの社会に属する女子を含む。)が次のことを行うことを支援するよう努める。
(a)遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する慣例を発展させること。
(b)遺伝資源に関連する伝統的な知識の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を確保するための相互に合意する条件に関する最小限の要件を定めること。
(c)遺伝資源に関連する伝統的な知識の利用から生ずる利益の配分のための契約の条項のひな型を作成すること。
4 締約国は、この議定書の実施に当たり、条約の目的に従い、原住民の社会及び地域社会の内部並びにこれらの社会の間における遺伝資源及び関連する伝統的な知識の利用慣行及び交換をできる限り制限しない。
第十三条 国内の中央連絡先及び権限のある当局
1 締約国は、取得の機会及び利益の配分に関する国内の中央連絡先を指定する。当該中央連絡先は、次の情報を利用可能にするとともに、事務局との連絡について責任を有する。
(a)遺伝資源の取得の機会を求める申請者に対しては、事前の情報に基づく同意を得るため及び相互に合意する条件(利益の配分を含む。)を設定するための手続に関する情報
(b)遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得の機会を求める申請者に対しては、可能な場合には、原住民の社会及び地域社会の事前の情報に基づく同意又は適当なときは承認及び参加を得るため並びに相互に合意する条件(利益の配分を含む。)を設定するための手続に関する情報
(c)国内の権限のある当局、関係する原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者に関する情報
2 締約国は、取得の機会及び利益の配分に関する一又は二以上の国内の権限のある当局を指定する。当該権限のある当局は、適用のある国内の立法上、行政上又は政策上の措置に従い、取得の機会を提供する責任又は必要な場合には取得のための要件が満たされていることを証明する文書を発給する責任を有し、並びに事前の情報に基づく同意を得るため及び相互に合意する条件を設定するための適用のある手続及び要件について助言する責任を有する。
3 締約国は、中央連絡先及び権限のある当局の双方の任務を遂行する単一の組織を指定することができる。
4 締約国は、この議定書が自国について効力を生ずる日までに、事務局に対し、自国の中央連絡先及び権限のある当局の連絡先を通報する。締約国は、二以上の権限のある当局を指定する場合には、その通報とともにこれらの当局のそれぞれの責任に関する関連情報を事務局に送付する。当該関連情報においては、必要な場合には、少なくとも、どの権限のある当局が求められる遺伝資源について責任を有しているかを特定する。締約国は、中央連絡先の指定の変更又は権限のある当局の連絡先若しくはその責任の変更を直ちに事務局に通報する。
5 事務局は、4の規定により受領した情報を取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターを通じて利用可能にする。
第十四条 取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センター及び情報の共有
1 取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターは、条約第十八条3の規定に基づく情報交換の仕組みの一部として設置する。同センターは、取得の機会及び利益の配分に関する情報の共有のための手段としての役割を果たす。特に、同センターは、この議定書の実施に関して締約国によって利用可能とされる情報へのアクセスを提供する。
2 締約国は、秘密の情報の保護を妨げられることなく、この議定書によって必要とされている情報及びこの議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議による決定に従って必要とされる情報を取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに提供する。これらの情報には、次のものを含める。
(a)取得の機会及び利益の配分に関する立法上、行政上及び政策上の措置
(b)国内の中央連絡先及び権限のある当局に関する情報
(c)事前の情報に基づく同意を与えるとの決定及び相互に合意する条件の設定を証明するものとして取得の機会の提供の際に発給された許可証又はこれに相当するもの
3 追加的な情報には、入手可能であり、かつ、適当な場合には、次のものを含めることができる。
(a)原住民の社会及び地域社会について権限を有する関係当局並びに決められている場合には広報について権限を有する関係当局
(b)契約の条項のひな型
(c)遺伝資源について監視するために開発された方法及び手段
(d)行動規範及び最良の実例
4 取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターの活動の態様(その活動に関する報告を含む。)については、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の第一回会合において検討し、及び決定し、その後継続して検討する。
第十五条 取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則の遵守
1 締約国は、自国の管轄内で利用される遺伝資源に関し、取得の機会及び利益の配分に関する他の締約国の国内の法令又は規則に従い、事前の情報に基づく同意により取得されており、及び相互に合意する条件が設定されていることとなるよう、適当で効果的な、かつ、均衡のとれた立法上、行政上又は政策上の措置をとる。
2 締約国は、1の規定に従ってとられた措置の不履行の状況に対処するため、適当で効果的な、かつ、均衡のとれた措置をとる。
3 締約国は、可能かつ適当な場合には、1に規定する取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則の違反が申し立てられた事案について協力する。
第十六条 遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則の遵守
1 締約国は、遺伝資源に関連する伝統的な知識であって自国の管轄内で利用されるものに関し、原住民の社会及び地域社会が所在する他の締約国の国内の法令又は規則であって取得の機会及び利益の配分に関するものに従い、事前の情報に基づくこれらの社会の同意により又はこれらの社会の承認及び参加を得て取得されており、並びに相互に合意する条件が設定されていることとなるよう、適宜、適当で効果的な、かつ、均衡のとれた立法上、行政上又は政策上の措置をとる。
2 締約国は、1の規定に従ってとられた措置の不履行の状況に対処するため、適当で効果的な、かつ、均衡のとれた措置をとる。
3 締約国は、可能かつ適当な場合には、1に規定する取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則の違反が申し立てられた事案について協力する。
第十七条 遺伝資源の利用の監視
1 締約国は、遵守を支援するため、適当な場合には、遺伝資源の利用について監視し、及び透明性を高めるための措置をとる。当該措置は、次のことを含む。
(a)次のことを踏まえ、一又は二以上の確認のための機関を指定すること。
(i)指定された確認のための機関は、適当な場合には、事前の情報に基づく同意、遺伝資源の出所、相互に合意する条件の設定又は適当なときは遺伝資源の利用に関する関連情報を収集し、又は受領すること。
(ii)締約国は、適当な場合には、指定された確認のための機関の性格に応じて、遺伝資源の利用者に対し、当該関連情報を指定された確認のための機関に提供することを要求すること。締約国は、不履行の状況に対処するため、適当で効果的な、かつ、均衡のとれた措置をとること。
(iii)当該関連情報(利用可能な場合には、国際的に認められた遵守の証明書から得られる情報を含む。)は、秘密の情報の保護を妨げられることなく、関連する国内当局、事前の情報に基づく同意を与える締約国及び適当な場合には取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに提供すること。
(iv)確認のための機関は、効果的なものでなければならず、及びこの(a)の規定の実施に関連する機能を有すべきであり、並びに遺伝資源の利用又は関連情報(特に、研究、開発、イノベーション、商業化前又は商業化の全ての段階に関連するもの)の収集と関連を有しているべきであること。
(b)遺伝資源の利用者及び提供者に対し、相互に合意する条件に当該条件の実施に関する情報の共有(報告の義務によるものを含む。)のための規定を含めることを奨励すること。
(c)費用対効果の大きい通信手段及び通信システムの利用を奨励すること。
2 第六条3(e)の規定に従って発給され、取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに提供された許可証又はこれに相当するものは、国際的に認められた遵守の証明書とする。
3 国際的に認められた遵守の証明書は、当該証明書が対象とする遺伝資源について、事前の情報に基づく同意を与えた締約国の国内の法令又は規則であって取得の機会及び利益の配分に関するものに従い、事前の情報に基づく同意により取得されており、及び相互に合意する条件が設定されていることを証明する役割を果たす。
4 国際的に認められた遵守の証明書は、次の情報が秘密のものではない場合には、少なくとも当該情報を含む。
(a)発給した当局
(b)発給日
(c)提供者
(d)当該証明書の固有の識別記号
(e)事前の情報に基づく同意が与えられた個人又は団体
(f)当該証明書が対象とする事項又は遺伝資源
(g)相互に合意する条件が設定されたことの確認
(h)事前の情報に基づく同意が得られたことの確認
(i)商業的又は非商業的な利用
第十八条 相互に合意する条件の遵守
1 締約国は、第六条3(g)(i)及び第七条の規定の実施に当たり、遺伝資源又は遺伝資源に関連する伝統的な知識の提供者及び利用者に対し、次の(a)から(c)までに規定するものを含む紛争解決を対象とする規定を適当な場合には相互に合意する条件に含めることを奨励する。
(a)紛争解決手続において提供者及び利用者が服する裁判権
(b)準拠法
(c)仲介、仲裁その他の裁判外の紛争解決の選択肢
2 締約国は、相互に合意する条件から生ずる紛争の事案について、適用される管轄権の要件に従い、自国の法制度の下で訴訟を提起することができることを確保する。
3 締約国は、適当な場合には、次の事項について効果的な措置をとる。
(a)司法手続の利用
(b)外国における判決及び仲裁判断の相互承認及び執行に関する制度の利用
4 この条の規定の有効性は、第三十一条の規定に従い、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が再検討する。
第十九条 契約の条項のひな型
1 締約国は、適当な場合には、相互に合意する条件に関する分野別の及び分野横断的な契約の条項のひな型の作成、更新及び利用を奨励する。
2 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、分野別の及び分野横断的な契約の条項のひな型の利用について定期的に審査する。
第二十条 行動規範、指針及び最良の実例又は基準
1 締約国は、適当な場合には、取得の機会及び利益の配分に関する任意の行動規範、指針及び最良の実例又は基準の作成、更新及び利用を奨励する。
2 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、任意の行動規範、指針及び最良の実例又は基準の利用について定期的に審査し、並びに特定の行動規範、指針及び最良の実例又は基準の採択について検討する。
第二十一条 啓発
締約国は、遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的な知識の重要性並びに関係する取得の機会及び利益の配分に関する事項について啓発するための措置をとる。当該措置には、特に、次のことを含めることができる。
(a)この議定書(その目的を含む。)の普及を促進すること。
(b)原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者の会合を開催すること。
(c)原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者のための相談窓口を設置し、及び維持すること。
(d)国内の情報交換センターを通じて情報を普及すること。
(e)原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者と協議しつつ、任意の行動規範、指針及び最良の実例又は基準の普及を促進すること。
(f)適当な場合には、国内で並びに地域的及び国際的に経験を交換することを促進すること。
(g)遺伝資源及び遺伝資源に関連する伝統的な知識の利用者及び提供者が取得の機会及び利益の配分について負う義務に関し、当該利用者及び当該提供者を教育し、及び訓練すること。
(h)この議定書の実施に原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者を参加させること。
(i)原住民の社会及び地域社会の慣例及び手続について啓発すること。
第二十二条 能力
1 締約国は、開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国におけるこの議定書の効果的な実施のため、既存の世界的、地域的及び小地域的な並びに国内の団体及び組織を通ずる方法を含め、能力の開発及び向上並びに人的資源及び制度的能力の強化について協力する。このため、締約国は、原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者(非政府機関及び民間部門を含む。)の参加を容易にすべきである。
2 条約の関連規定に基づく資金に関する開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国のニーズは、この議定書の実施のための能力の開発及び向上に当たり十分に考慮される。
3 この議定書の実施に関連する適当な措置の基礎として、開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国は、自国の能力の自己評価を通じて、自国の能力に関するニーズ及び優先事項を特定すべきである。これを行うに当たり、それらの締約国は、女子の能力に関するニーズ及び優先事項に重点を置きつつ、原住民の社会及び地域社会並びに関係する利害関係者の能力に関するニーズ及び優先事項であって、これらの社会及び利害関係者によって特定されたものについて支援すべきである。
4 この議定書の実施を支援するに当たり、能力の開発及び向上については、特に次の重要な分野を取り扱うことができる。
(a)この議定書を実施し、及びその義務を遵守する能力
(b)相互に合意する条件について交渉する能力
(c)取得の機会及び利益の配分に関する国内の立法上、行政上又は政策上の措置を策定し、実施し、及び執行する能力
(d)自国の遺伝資源に価値を付加するための自国の固有の研究の能力を向上させるための国の能力
5 1から4までの規定に基づく措置は、特に、次の事項を含むことができる。
(a)法令及び制度の整備
(b)交渉における衡平及び公正の促進(例えば、相互に合意する条件について交渉するための訓練)
(c)遵守の監視及び確保
(d)取得の機会及び利益の配分に関する活動のための利用可能な最良の通信手段及びインターネット・システムの利用
(e)評価の手法の開発及び利用
(f)生物内の有用な資源の探査、関連する調査及び分類の研究
(g)技術移転並びに技術移転を持続可能にするための基盤及び技術的能力
(h)取得の機会及び利益の配分に関する活動が生物の多様性の保全及びその構成要素の持続可能な利用に果たす貢献の強化
(i)取得の機会及び利益の配分に関して、関係する利害関係者の能力を向上させるための特別な措置
(j)遺伝資源又は遺伝資源に関連する伝統的な知識の取得の機会に関し、原住民の社会及び地域社会に属する女子の能力の強化に重点を置きつつ、これらの社会の能力を向上させるためにとられる特別な措置
6 能力の開発及び向上に関する自発的活動であって1から5までの規定に従って国内的、地域的及び国際的に実施されるものに関する情報は、取得の機会及び利益の配分に関する能力の開発及び向上についての相乗作用及び調整を促進するため、取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに提供されるべきである。
第二十三条 技術移転、共同及び協力
締約国は、条約第十五条、第十六条、第十八条及び第十九条の規定に従い、この議定書の目的を達成する手段として、技術的及び科学的な研究開発計画(バイオテクノロジーの研究活動を含む。)において共同し、及び協力する。締約国は、条約及びこの議定書の目的を達成するための健全かつ存立可能な技術的及び科学的基礎の構築及び強化を可能とするため、開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国による技術の利用並びにこれらの開発途上締約国及び移行経済締約国に対する技術移転を促進し、及び奨励する。そのような共同の活動は、可能かつ適当な場合には、遺伝資源を提供する締約国(当該遺伝資源の原産国であるもの又は条約の規定に従って当該遺伝資源を獲得した締約国であるものに限る。)において当該締約国と共に実施される。
第二十四条 非締約国
締約国は、非締約国に対し、この議定書に参加し、及び適当な情報を取得の機会及び利益の配分に関する情報交換センターに提供することを奨励する。
第二十五条 資金供与の制度及び資金
1 締約国は、この議定書の実施のための資金について検討するに当たり、条約第二十条の規定を考慮する。
2 条約の資金供与の制度は、この議定書の資金供与の制度となる。
3 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、第二十二条に規定する能力の開発及び向上に関し、締約国会議による検討のために2に規定する資金供与の制度についての指針を提供するに当たり、資金に関する開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国のニーズ並びに原住民の社会及び地域社会(これらの社会に属する女子を含む。)の能力に関するニーズ及び優先事項を考慮する。
4 1の規定に関し、締約国は、この議定書を実施するための能力の開発及び向上の必要性を特定し、及び満たすための開発途上締約国(特にこれらの締約国のうちの後発開発途上国及び島嶼国)及び移行経済締約国の努力におけるこれらの国のニーズも考慮する。
5 締約国会議の関連する決定(この議定書が採択される前に合意されたものを含む。)における条約の資金供与の制度に関する指針は、この条の規定について準用する。
6 先進締約国は、二国間の、地域的な及び多数国間の経路を通じて、この議定書の実施のための資金その他の資源を供与することもできるものとし、開発途上締約国及び移行経済締約国は、これらを利用することができる。
第二十六条 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議
1 締約国会議は、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす。
2 条約の締約国であってこの議定書の締約国でないものは、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合の議事にオブザーバーとして参加することができる。締約国会議がこの議定書の締約国の会合としての役割を果たすときは、この議定書に基づく決定は、この議定書の締約国のみが行う。
3 締約国会議がこの議定書の締約国の会合としての役割を果たすときは、条約の締約国であってその時点でこの議定書の締約国でないものを代表する締約国会議の議長団の構成員は、この議定書の締約国によってこの議定書の締約国のうちから選出された構成員によって代わられる。
4 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この議定書の実施状況を定期的に検討し、及びその権限の範囲内でこの議定書の効果的な実施を促進するために必要な決定を行う。この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この議定書により与えられる任務を遂行し、及び次のことを行う。
(a)この議定書の実施のために必要な事項について勧告すること。
(b)この議定書の実施のために必要と認められる補助機関を設置すること。
(c)適当な場合には、能力を有する国際機関並びに政府間及び非政府の団体による役務、協力及び情報の提供を求め、並びにこれらを利用すること。
(d)第二十九条の規定に従って提出される情報の送付のための形式及び間隔を決定すること並びにそのような情報及び補助機関により提出される報告を検討すること。
(e)必要に応じ、この議定書の実施のために必要と認められるこの議定書及びその附属書の改正並びにこの議定書の追加附属書を検討し、及び採択すること。
(f)この議定書の実施のために必要なその他の任務を遂行すること。
5 締約国会議の手続規則及び条約の財政規則は、この議定書の下で準用する。ただし、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議がコンセンサス方式により別段の決定を行う場合を除く。
6 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の第一回会合は、この議定書の効力発生の日の後に開催される最初の締約国会議の会合と併せて事務局が招集し、及び開催する。この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議のその後の通常会合は、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が別段の決定を行わない限り、締約国会議の通常会合と併せて開催する。
7 この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の特別会合は、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請がある場合において事務局がその要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。
8 国際連合、その専門機関及び国際原子力機関並びにこれらの国際機関の加盟国又はオブザーバーであって条約の締約国でないものは、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この議定書の対象とされている事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは非政府のもののいずれであるかを問わない。)であって、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席については、この条に別段の定めがある場合を除くほか、5に規定する手続規則に従う。
第二十七条 補助機関
1 条約によって設置された補助機関は、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議の決定に基づく任務その他の任務をこの議定書のために遂行することができる。当該決定は、遂行されるべき任務を特定する。
2 条約の締約国であってこの議定書の締約国でないものは、1に規定する補助機関の会合の議事にオブザーバーとして参加することができる。条約の補助機関がこの議定書の補助機関としての役割を果たすときは、この議定書に基づく決定は、この議定書の締約国のみが行う。
3 条約の補助機関がこの議定書に関する事項についてその任務を遂行するときは、条約の締約国であってその時点でこの議定書の締約国でないものを代表する当該補助機関の議長団の構成員は、この議定書の締約国によってこの議定書の締約国のうちから選出された構成員によって代わられる。
第二十八条 事務局
1 条約第二十四条の規定によって設置された事務局は、この議定書の事務局としての役割を果たす。
2 事務局の任務に関する条約第二十四条1の規定は、この議定書について準用する。
3 この議定書のために提供される事務局の役務に係る費用は、区別することができる範囲において、この議定書の締約国が負担する。このため、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、その第一回会合において必要な予算措置について決定する。
第二十九条 監視及び報告
締約国は、この議定書に基づく自国の義務の履行状況を監視し、及びこの議定書を実施するためにとった措置につき、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が決定する一定の間隔及び様式で、この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議に報告する。
第三十条 この議定書の遵守を促進するための手続及び制度
この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、その第一回会合において、この議定書の規定を遵守することを促進し、及び不履行の事案に対処するための協力についての手続及びそのための組織的な制度を検討し、及び承認する。これらの手続及び制度には、適当な場合には、助言又は支援を行うための規定を含める。これらの手続及び制度は、条約第二十七条の規定に基づく紛争解決のための手続及び制度とは別個のものであり、また、これらに影響を及ぼすものではない。
第三十一条 評価及び再検討
この議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議は、この議定書の効力発生の四年後に及びその後はこの議定書の締約国の会合としての役割を果たす締約国会議が決定する間隔で、この議定書の有効性についての評価を行う。
第三十二条 署名
この議定書は、二千十一年二月二日から二千十二年二月一日まで、ニューヨークにある国際連合本部において、条約の締約国による署名のために開放しておく。
第三十三条 効力発生
1 この議定書は、条約の締約国である国又は地域的な経済統合のための機関による五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。
2 この議定書は、1の規定に基づく五十番目の文書の寄託の後にこれを批准し、受諾し、若しくは承認し、又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は当該機関が批准書、受諾書、承認書若しくは加入書を寄託した日の後九十日目の日又は条約が当該国若しくは当該機関について効力を生ずる日のいずれか遅い日に効力を生ずる。
3 地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該機関の構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。
第三十四条 留保
この議定書には、いかなる留保も付することができない。
第三十五条 脱退
1 締約国は、この議定書が自国について効力を生じた日から二年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この議定書から脱退することができる。
2 1の脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日の後一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定される日に効力を生ずる。
第三十六条 正文
アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの議定書の原本は、国際連合事務総長に寄託する。
以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けて、それぞれ明記する日にこの議定書に署名した。
二千十年十月二十九日に名古屋で作成した。
附属書 金銭的及び非金銭的な利益
1 金銭的な利益は、次のものを含むことができるが、これらに限らない。
(a)取得の機会に関する料金及び採取その他の方法によって取得した試料ごとの料金
(b)前払いによる支払
(c)段階ごとの支払
(d)ロイヤルティの支払
(e)商業化の場合におけるライセンス料
(f)生物の多様性の保全及び持続可能な利用を支援する信託基金に支払われる特別の料金
(g)相互に合意する場合には、給与及び特恵的な条件
(h)研究資金
(i)合弁事業
(j)関連する知的財産権の共同保有
2 非金銭的な利益は、次のものを含むことができるが、これらに限らない。
(a)研究及び開発の成果の共有
(b)科学的な研究及び開発の計画(特に、可能な場合には遺伝資源を提供する締約国におけるバイオテクノロジーの研究活動)における共同、協力及び貢献
(c)製品開発への参加
(d)教育及び訓練における共同、協力及び貢献
(e)遺伝資源の生息域外保全のための施設への立入り及びデータベースの利用
(f)遺伝資源の提供者に対する公正で最も有利な条件(合意する場合には、緩和されたかつ特恵的な条件を含む。)の下での知識及び技術(特に、バイオテクノロジーその他の遺伝資源を利用する知識及び技術又は生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関連する知識及び技術)の移転
(g)技術移転のための能力の強化
(h)制度的能力の開発
(i)取得の機会に関する規則を実施し、及び執行するための能力を強化するための人的資源及び物的資源
(j)遺伝資源の提供国の十分な参加を得て、可能な場合には遺伝資源の提供国において行われる遺伝資源に関する訓練
(k)生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する科学的な情報(生物の目録及び分類の研究を含む。)へのアクセス
(l)地域経済への貢献
(m)遺伝資源を提供する締約国内における遺伝資源の国内的利用を考慮して、保健、食糧安全保障その他の優先度の高いニーズのために行われる研究
(n)取得の機会の提供及び利益の配分に関する合意から生ずる組織上及び職業上の関係並びにその後の共同活動
(o)食糧安全保障及び生計の確保に関する利益
(p)社会的な認知
(q)関連する知的財産権の共同保有