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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第10回ASEM外相会合議長声明ー"非伝統的安全保障の課題への共同の取組み"

[場所] グドゥルー
[年月日] 2011年6月7日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1. ハンガリーは,2011年6月6日から7日,グドゥルーにおいて行われた第10回ASEM外相会合を主催した。48のASEMパートナーが参加したこの会合は,ハンガリー首相のヴィクトール・オルバン閣下によって開会が宣言され,外務安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長のキャサリン・アシュトン閣下とハンガリー外相のマルトニ・ヤーノシュ閣下が共同議長を務めた。

2. 第10回外相会合の全体テーマは“非伝統的安全保障の課題への共同の取り組み”であるが,このテーマは,外相に,この重要な分野に関連する共通の関心事項に対処する機会を提供した。この分野は,国境をまたがる性格の故に,アジア・欧州双方の繁栄,安全及び安定に対して実質的な影響を有し,したがって,ASEMの多面的なパートナーシップを通じての共同の対応を要請するものである。

3. 外相は,2010年10月4日から5日にブリュッセルで開催されたASEM8首脳会合で扱われたテーマに特別の注意を払いつつ,地域及びグローバルな課題に関して実質的な議論を行った。外相はまた,2012年のラオス,ヴィエンチャンでの次回ASEM首脳会合の準備として,ASEM協力の3つの柱である政治,経済及び社会文化面における協力を概観した。

4. 外相は,本年がASEM設立15周年にあたることを強調した。外相は,これまでの間,ASEMは地域間協力のための,広範な基盤を有する効果的なフォーラムとして確立してきたことを満足をもって認識した。外相は,ASEMは現在,世界人口の半分以上,世界貿易額の60%以上,世界GDPの半分以上を構成するパートナーが関与しているが,ASEMイニシアティブが15年以上にわたる平等,互恵を基礎とした地域間協力に重要な機会を提供したことを再表明した。ASEMプロセスは,アジア・欧州間の,また,より広範なグローバルな視点での協力とパートナーシップにおいて,主要な漸進的役割を果たしている。外相は,信頼と一貫性に基づいた長期的な戦略的地域関係の構築を目的に,ASEMプロセスを促進するための努力を強化することを求めた。

5. 外相は,地域的な相互依存関係が,両地域においてますます重要になりつつあり,アジアと欧州が,グローバルな事象において,一層重要で先見的な役割を果たす,より一層統合された活発な地域の主体となりつつあるとの見方を共有した。アジアと欧州の間のより深く,より広い地域間の関係は,特にASEMパートナーシップの枠組みにおいて協力する多くの機会を提供する。ASEMは,アジアと欧州のより深い協力のための十分なフォーラムと広範な機会を提供する。

I.グローバルな課題と国際的発展

非伝統的安全保障の課題とその影響

6. 外相は,アジアと欧州が直面している広範な非伝統的安全保障の課題が,地域のそしてグローバルな経済成長と人々の生活に深刻な挑戦となり,両地域が切望している安定,安全及び繁栄に対して深刻な影響を与える可能性があることに同意した。不足する食糧・エネルギー・水資源の社会的影響,テロ組織の活動と国境を越える組織犯罪,サイバーセキュリティ,人間の安全保障の侵害,気候変動の悪影響,人道支援と災害準備並びに災害救援と災害管理に関する国際協力の効率性等々は,アジアと欧州双方のあらゆる国に深刻な影響を与える。

7. 環境の悪化,気候変動,生物多様性の損失,天然資源の過剰な採取及び自然環境に対するその他の人的圧力は,新たに表出しつつある安全保障上の多くの脅威の根本的な要因である。外相は,経済成長と社会の発展と並行して持続可能な開発を追求するとのコミットメントを再確認した。外相はまた,2012年6月にブラジルで開催が予定されている国連持続可能な開発会議(リオ+20)の重要性を強調した。

8. 最近の不安定な原材料価格は,懸念を高め,グローバル経済を危険に晒し,社会平和に深刻な直接的影響を持つ可能性がある。欧州とアジアは共に,グローバルな商品,食料,及びエネルギー市場の機能,結果としての食糧供給及び如何なる方策が右への対処に有効かについてより良く理解し,これらの分野における価格の不安定性による負の影響を減じ,持続可能な開発を促進することが重要であることを認識した。欧州とアジアのパートナーは,エネルギー,農産品及びその他の主要な物品の価格を安定化させるために執られている,非貿易歪曲的な政策への理解と支持を表明した。外相は,エネルギー,農業,研究,開発,貿易政策及び金融規制といった相互に関連する様々な政策領域の間の調整の必要性に留意した。外相は,本件に関するG20のアプローチを支持した。

自然災害

9. 外相は,本年初頭の自然災害の結果,いくつかのASEMパートナー諸国において発生した大規模な人命の損失,深刻な被害に対して深甚なる弔意を伝達し,被災者との連帯を表明した。外相は,東日本大震災及び津波による供給網への影響が,グローバルな規模での深い経済統合を想起させたことを再表明した。

10. 外相は,人道活動が,人道,公平,中立,独立という原則によって導かれるべきであることを強調した。外相は,また,災害救助に対する資金援助,さらに兵庫行動枠組2005-2015及び関連する国連決議に沿ったローカルな能力構築や災害への事前準備の改善に係る課題について検討した。外相は,ASEM内の協力,特にリスク評価,ジェンダー包摂的なアプローチに特に留意したリスク軽減戦略,早期警戒メカニズム,リスク管理能力,捜索・救助能力,災害予防・救助・復旧に関連したインフラ開発,及びその他の緊急援助活動に関する協力の強化を要請した。外相は,自然災害の悪影響の克服に関する国際的な経験の活用及び人道支援の重要性を強調した。外相は,これまで行われた能力開発活動を歓迎し,特にリスクの高い国における活動の継続を慫慂した。外相は,ASEAN事務局及び,本格的な運営が開始されたASEAN災害対応人道支援調整(AHA)センターと,欧州委員会の人道援助・市民保護局(ECHO)との間の協力強化を支持した。外相はまた,2011年4月にジャカルタで開催された地域の災害管理に対処するための日ASEAN特別外相会合を歓迎した。

原子力安全

11. 外相は,最近の日本での事態に関して,全ての関連する情報と事態の推移に関する説明,対応策について共有するとの日本の姿勢を賞賛した。外相は,また,最近の日本での出来事に対して,支援の手を差し伸べ人道援助を提供したASEMパートナーの迅速な対応への評価を表明した。外相は,この経験から教訓を導き出し,徹底的に見直し,必要であれば,原子力施設の安全性を更に強化することが不可欠であると強調した。

12. 外相は,世界中の全ての原子力発電所の安全性が,包括的で透明性のある安全性の再評価に基づき再検討され,強化されるべきであることを再確認した。外相は,日本の福島原子力発電所での最近の事故が,原子力安全の重要性と,この分野におけるグローバルな協力,特に国際的な法的枠組みの改善における協力の強化の必要性を更に強調した。外相はまた,国際原子力機関(IAEA)が,世界における最高水準の原子力安全の更なる促進に関し中心的な役割を果たすべきであることを強調し,またこの文脈において,全ての原子力施設の安全性の再点検を実施することを視野にいれた原子力安全に関するハイレベル会合を開催するとのIAEAによるイニシアティブを歓迎した。最高水準の原子力安全は,IAEAにしたがい,全てのASEM諸国において,また,国際的に不断に促進されるべきである。外相は,十分な科学的根拠に基づき物品及び人の流れを含む対応をとることが重要であるとの認識で一致した。これに関し外相は,2012年前半における原子力安全の問題に関するASEMセミナーの開催を歓迎した。

エネルギー安全保障

13. 外相は,2009年6月にブリュッセルで開催されたエネルギー安全保障に関するASEM閣僚会合によって強調されたように,エネルギー安全保障が持続可能な開発の実現に重要な役割を果たすことを強調し,経済のファンダメンタルズを反映した価格での,供給源,ルート及び種類の多様化による,十分で信頼に足る,環境に責任のあるエネルギー供給を確保することの重要性を認識した。低炭素技術及び再生可能エネルギーを含む他の選択肢の活用は,エネルギー安全保障及び温室効果ガス排出削減目標に到達するために役割を果たすことが可能である。これに加えて,外相は,ASEMが長期的に再生可能エネルギー及びその他の非化石エネルギー源の活用を推進することによって,低炭素グリーン成長の促進に貢献することを強調した。

14. 外相は,エネルギー効率と経済の全ての分野を通じた再生可能エネルギーの利用の拡大が,気候変動の課題に対応する一方で,同時にエネルギー供給における安全を強化する上での貢献として重要性を増していくことを強調した。外相は,公共政策により後押しされるのであれば,世界のエネルギー供給の大部分は,今世紀半ばまでに再生可能エネルギーによって充足が可能であるとの気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及び他の機関の最近の声明に留意した。この文脈で,国際的な再生可能エネルギー及びエネルギー効率に関する協力強化を目的とするイニシアティブは,持続可能な開発,エネルギー安全保障及び低炭素社会にとって貴重な貢献である。これらの課題はグローバルな特質を有し,産出国,消費国と輸送国の間の相互依存関係は増大しており,ASEMパートナーと他の関係者が参加する対話とパートナーシップの強化が求められる。

環境と開発に関する国連会議

15. 外相は,環境の観点から持続可能な経済成長,社会的進歩,環境保護の実現のための共通の指標として,持続可能な開発に対するコミットメントを表明した。外相は,2012年6月4日から6日に行われた国連持続可能な開発会議(UNSCDまたはRio+20)の重要性を強調するとともに,この会議の二つのテーマ,すなわち持続可能な開発と貧困撲滅の文脈におけるいわゆるグリーン・エコノミー,及び持続可能な開発のための組織的枠組み,の分野横断的かつ中心的な特徴を強調した。この文脈において外相は,持続可能な開発が,環境と開発に関するリオ宣言,アジェンダ21,アジェンダ21の更なる実施のためのプログラム,持続可能な開発に関するヨハネスブルク宣言,及び持続可能な開発に関する世界首脳会合実施計画に則り,3つの柱,すなわち経済開発,社会開発,及び環境保護の間のバランスを実現し,を維持すべきであると再表明した。外相は,リオ+20会議の目的を再確認した。

気候変動

16. 国際社会全体にとってグローバルな意義を有する最も重要な問題として,外相は,グローバルな課題としての気候変動が,環境問題であるのみならず,社会・経済開発及び国際的な安全保障に対する深刻な影響を及ぼす可能性が高いことを再確認した。食料,水,エネルギー,気候安全保障は相互に関連しており,切り離すことはできない。これら4つの要素は,グローバルな安全保障,繁栄,及び公平性を支えている。気候変動の影響を評価及び対処し,気候への我々の影響を減少させることは,欧州とアジアの優先事項であり続け,そのために,共通に有しているが差異のある責任の原則に基づき,適応と緩和の分野においてこの分野での共同行動を執ることを必要とする。外相は,開発途上国における具体的活動を支援するための短期資金及び長期資金の実現の重要性を認識した。現在行われている国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での交渉に照らして,欧州とアジアのパートナーは,ダーバンでの第17回UNFCCC締約国会合の具体的な成果について一致しなければならない。この点に関し,ASEMパートナーは,現場での迅速かつ具体的な行動につながり,合意された制度的構造を2011年中に更に発展させ実施するための強固な基礎を提供し,2013年以降の実効的で,グローバルで,公平で,バランスの取れた包括的な枠組みのための基礎を築く,積極的で前向きなカンクン会議の成果(「カンクン合意」)を歓迎した。外相は,カンクン合意の全ての要素を完全に実施するよう要請し,ダーバン気候会議においてバランスのとれた進展及び具体的でしっかりとした成果を生むために前向きな機運に基づいて物事を進めるよう求めた。外相は,バリ・ロードマップのマンデートの下での公平,実効的及び包括的な法的拘束力を有する成果を目指すことを表明した。外相は,グローバルな気候変動を緩和する既存の市場メカニズムの重要な役割と,これを更に強化し,また,新たに分野別あるいはその他の拡大された市場メカニズムを構築することの必要性を強調した。

17. カンクン合意で決定されたような長期的な協力行動のための共有されたビジョンを補完することの重要性を強調した。外相は,産業化以前と比較して世界全体の気温の上昇を2度より下に保つという目標を強調し,全体的な野心のレベルを高める必要性を強調した。意義ある緩和の文脈において,外相は,各国が共通に有しているが差異のある責任に基づき,集団的な努力に貢献すべきとの基本的原則に留意した。低排出開発戦略は,持続可能な開発に不可欠である。

18. 外相は,ASEMの先進国と開発途上国の間でベストプラクティスを交換し,先進的で,手頃な,安全で環境に優しいエネルギー技術と知見(政策と規制の側面を含む)の開発,移転,展開,普及及び適用を促進するために,UNFCCCの関連条項にしたがって,国際協力を最大限に活用するとのASEM8の要請を再確認した。

19. 農業セクターは,特に水資源の利用可能性における気候誘因による変化に脆弱であるが,気候変動の緩和に貢献することも可能である。最善の農業慣行と森林ガバナンスは更に促進されるべきである。森林分野については,気候変動への適応を強化するために,違法伐採への対処に関する協力を含め,持続可能な森林管理を更に促進すべきである。

食料と水の安全保障

20. 外相は,供給に関する混乱及びグローバルな消費量の増加によって,食料市場が世界的にますます脆弱になりつつあることを強調した。外相は,近年見られる食料価格の上昇,特にその最貧国への影響に対する懸念を強調した。外相は,世界の人口動態に照らし,食料需要が将来も増加すると認識した。食料生産と消費の分配がますます不均衡となっていることが,グローバルな経済にとって,社会不安と政治的不安定を生む可能性をもつ重大な課題となっている。食料問題は全世界の問題であることから,外相は,グローバルで包括的な対応が必要であることを強調した。外相は,全てのASEM諸国が食料安全保障を確保できるように,農業と食料生産の効率改善のための効果的な対策をとること,食料市場に関する国際政策調整と透明性を強化すること,そして貿易保護主義を避けることの重要性を強調した。その規模と深刻さにより,この問題は農業,金融サービス規制,開発協力といった様々な分野における多面的な協力を必要とする。ASEMパートナーは,食料安全保障にグローバルなレベルで対処する上で指導的役割を果たすべきであり,農業生産及び生産性を向上させる農業セクターへの長期的かつ責任ある投資,開発途上国における水管理の強化と農村開発に関する要請を含む,G20がこの重要な案件について執ったアプローチを支持する。外相は関連分野における専門的技能及びベストプラクティスを共有する良好なガバナンスが重要であることを強調する。農村の発展及び農業セクターの持続的発展は食料安全保障を裏付けするために極めて重要である。これらは,農業システムの構築,研究開発,動物の飼育,植物の栽培,及び適用方法に関する経験の共有を含む。

21. 水は,経済的,社会的及び環境的側面を横断する問題である。気候変動は,自然の水循環に対する影響とともに,水に関する緊張を更に悪化させる。外相は,特に洪水と干ばつの管理に関し,気候変動への耐性をもつ水管理の利益を拡大するために,国際的な開発協力における持続可能な水資源管理の役割が大きくなっていることに留意した。外相は,ASEM8首脳協議において承認されたASEM水資源研究開発センターの設置に関する進展に留意した。安全な水と衛生へのアクセスは,ミレニアム開発目標(MDG)の一つである。水管理に関する支援は,浄水場や汚水処理施設等のインフラ改善,統合された水と土地の利用計画といった,比較的発展していない分野に提供されるべきである。更に,外相は,いくつかの国にとって水供給は,地域河川の流域に大きく依存している可能性があることにつき検討した。利用可能な水資源の希少性が増大していることから,協力的アプローチをもって対応しなければ,水不足と地域紛争の究極的なリスクが予見可能なまま残されることとなる。この観点から,外相は,2011年10月10日から11日にウランバートルにおいて,水と森林の持続可能な管理に関する第4回ASEM環境大臣会合を主催するとのモンゴルのイニシアティブを歓迎した。

22. 外相は,自主的ガイドラインの枠組みの中での,十分な食料に対する権利の漸進的実現を確保する農業政策とプログラムを支持した。外相は,国家主導の持続可能な食料安全保障政策と国際協調を支持する上で,国連食糧農業機関(FAO)内の世界食料安全保障委員会が中心的構成要素となっている,農業,食料安全及び栄養に関するグローバル・パートナーシップの重要性を認識した。外相は,インフラ開発,責任ある農業投資イニシアティブ(RAI)に示された責任ある投資,そしてアクセスに関しては,土地の借地権及び他の天然資源の責任あるガバナンスに関するFAOの自主的ガイドラインに想定されている,地元コミュニティを支援し,コミュニティ内で機能し,既存の権利を尊重する責任ある投資,並びに持続可能な農業生産を増加させ,飢餓と貧困の闘いにおいて不可欠なものと認識され,助成の役割が適切に考慮されるべき地方開発の促進を視野に入れた科学研究の強化を奨励した。農業生産の持続可能な形態を確保するために,外相は,良好に機能するグローバルな及び国内の農業市場の必要性を強調した。この文脈において,外相はタイのチェンマイで2011年5月9日から11日にかけて開催された食料安全保障に関するASEMハイレベル会合を歓迎した。同会合でASEMパートナー及びFAOといった国際機関は,見解を共有し政策調整,情報共有,データベース開発,ベストプラクティスと2007年から2008年の食料危機から得られた教訓の交換,市場の透明性と責任ある農業投資の促進,研究開発,技術協力及び基準の調和と同等性の強化を含む,持続可能な形での食糧安全保障の確保を目的とした協力の強化に向けたガイドラインを提案した。

世界金融経済危機,国際金融システムの改革

23. 外相は,世界経済は回復しつつあるが,それが国家間及び国内で不公平かつバランスを欠いた形での回復となっているとの見方を共有した。外相は,回復は全てのエコノミーにおいて,十分な雇用と成長率へと転化されていないことについて深い憂慮を表明した。いくつかの先進経済において,失業率は依然として高く,財政健全化の遅々とした進捗状況,国家債務危機,及び金融セクターの修復と改革の実施といった財政,金融の脆弱性が残されている。いくつかの新興経済は,景気過熱及び過剰な短期資金の流入リスクに晒されており,多くの国が,2008年に見られたような高いレベルでの不安定な食料及び燃料価格の脅威に直面している。外相は,これらの重要問題に関して,より効果的なグローバルな協力と協調の緊急の必要性を強調した。

24. ASEMは,G20によって設定された,全ての国の利益を考慮した形で現在進行中のグローバルな経済課題に対処し集合的な解決策を提供するとの目標を支持する。世界経済は,強固で持続可能かつ均衡ある成長に向けて進展し,過去75年間で,最も急速,深刻且つ同時的な不況から回復し始めている一方で,未だ脆弱であり下方リスクが残されている。ASEMは,世界経済を強く且つ将来の危機への耐性を備えたものとすることに資するG20による取り組み及びイニシアティブへの支持を継続することにコミットしている。

25. 外相は,2010年に,世界銀行とIMFが,我々の主要な国際金融機関の近代化に関し重要な成果となる,その効率性,効果,説明責任を強化し,新興市場の重要性の増加を反映し,他の開発途上国及び移行期にある諸国の影響力拡大につながるような,広範なガバナンス改革に合意したことに留意し,開かれた透明で,能力本意の選考プロセスを通じて,これらの機関の幹部を任命するとのG20の全会一致の合意を再確認した。外相は,アジアと欧州の政府が,相互の経済関係の緊密化の促進を越えて,金融システムと共に国際通貨システムを全般的に改革し,2008年から2009年に生じた危機と同様の規模を有する新たな危機を避けることを目的としたより効率的な国際経済ガバナンスの構築にコミットしていることを強調した。

26. 外相は,開放的で,公正かつルールに基づいた機能的な国際貿易システムを維持することの重要性を強調した。外相は,特に経済危機の際に保護主義的圧力を軽減するというWTOが担った有用な役割を認識した。WTOのルールに関する既存の枠組みとその協議メカニズムは,世界経済の回復の開始への貢献において極めて重要であった。外相は,現下のいまだ脆弱な世界経済にあって,市場を開放し,成長を継続するために,貿易及び投資に関する障壁の導入及びこれを高めることを差し控えることがこれまで以上に重要であることを強調した。

27. 外相は,これまでの進展を基礎として,その開発マンデートとの整合性をとりつつ,ドーハ開発アジェンダを包括的でバランスのとれた開発志向の妥結に導くことへのコミットメントを再確認した。外相は,交渉の現状に鑑み,全てのWTOメンバーから,懸案となっている問題の解決に向けた今後の道筋を見出すために全ての交渉の選択肢を探求すべく最善を尽くすとの強固なコミットメントが求められるとの見解を共有した。

28. 外相は,貿易と投資の自由化を通じた経済及び地域統合を促進するために,様々な地域的及び二国間の取り決め,イニシアティブ及び進行中の交渉を想起した。外相は,そのような合意が,多国間システムとの完全に整合性がとれる形で計画且つ実施されるべきであり,国際貿易と経済成長の回復に対する実質的で追加的な刺激となるであろうことを強調した。

アジアと欧州の間の経済協力

29. 外相は,アジアが過去数年間,世界経済において疑いなく最も成長著しい地域であり,したがって危機の負の影響を緩和する世界経済の回復を支えているとの見方を共有した。外相は,アジアと欧州の各国政府とビジネス・パートナーに,両地域の間のモノ,投資及びサービスのより迅速な交換及び更なる流入を確保し促進するために,共に取り組みを継続するよう慫慂した。外相は,互恵的なアジア欧州経済パートナーシップを強化する必要性を強調し,アジアと欧州の貿易自由化と経済協力を強化することを目的とした更なる努力の促進の重要性を強調した。

30. 外相は,この協力が,“新興産業(sunrise sector)”の分野,研究開発主導のグリーン・テクノロジーと技術集約的で財政的に健全なビジネスにおいて,特に重要であることに留意した。

31. 外相は,2011年2月にブリュッセルで行われた貿易と投資に関する高級実務者(SOMTI)の最近の非公式会合の報告を歓迎した。この会合において,高級実務者は,持続可能な発展のための大陸間の貿易,投資を拡大する新たな活動の可能性につき更に議論することの共通の関心を表明した。外相は,ASEM参加国に対し,早期にASEM経済大臣会合を再び開催するように奨励した。この目的のために,来年(2012年)早々に公式SOMTI会合を開催し,持続可能な貿易と投資に関する将来の可能な取り組みに関するASEMパートナーの意向と計画を更に議論すべきである。

32. 欧州とアジアは,急速に進展するグローバル化の環境に対し順応する能力を維持する一方で,複雑な経済社会モデルの好ましい特徴を維持することを追求する。我々の地域の双方とも,かつて深刻な経済,通貨及び銀行危機に見舞われていることから,パートナーは経済及び金融のグローバル化の力をより良く規制するという同様の野心を共有する。外相は我々の発展を続ける相互依存関係が,これらの問題に関して共に取り組むことを不可欠なものとすることを認識した。

33. 欧州とアジアはまた,経済,開発,あるいは社会保障及び人間の安全保障のいずれに関係するかにかかわらず,多くの共通のグローバルな課題及び政策的課題に直面している。政治,経済及び社会文化面といった3つの柱におけるASEMの議題により,パートナーは,これらの問題と課題に対し,共通の,そしてそれ故に効果的かつ生産的なアプローチをもって対応することを可能にする。特に貿易,マクロ経済監督,経常収支支援及び金融セクターの強化といった分野において,地域統合とともに地域間及びグローバルな協力を深化させることによって持続可能な成長を回復させるために,解決策の共有と建設的意見交換が必要である。これらの努力は,国際的経済金融システムの未来にとって,広範な影響を持ちうる。

地域的相互依存

34. 欧州とアジアの相互依存関係により,運輸網の最適化は不可欠となっている。現在,相互の空と海のリンクは十分に発展しているが,運輸手段の更なる多様化,拡大,深化は,より良く広範で,同時により効率的且つ持続可能な運輸網,及びさらなる大陸間の交流のための両大陸の紐帯の緊密化に貢献し得る。陸上運輸とエネルギー・インフラの改善は,鉄道路線の強化及び内陸部の運送,あるいは高速道路やパイプラインの建設によって実現できる。このために,陸上運輸の促進は,2つの大陸の連結の緊密化という目標を達成するために不可欠である。外相は,欧州とアジアの関係者に対し,この分野における協力を強化するよう促した。この文脈で,外相は,2011年10月24,25日に四川省の成都において第2回ASEM運輸大臣会合を開催するとの中国のイニシアティブを歓迎した。

35. 外相は,地域的及び準地域的メカニズムとイニシアティブが,経済発展と貧困削減に関する効率的で結果志向の協力に重要な潜在性を有し,アジアと欧州の間の協力と投資活動に対して高い潜在性を有していることを認識した。

36. 外相は,内陸国間の連携及び知識の共有を通じて,アジアと欧州協力の新しい分野を促進する格好の機会の1つとして,国連の支援によるウランバートルにおける内陸開発途上国のための国際シンクタンクの設立を歓迎した。この点,外相は,欧州の内陸国が,貿易及び運輸の円滑化の観点からアジアの開発途上地域を支援するための十分な経験と知識を有していることに留意した。

37. メコン河やドナウ河のような世界最大の河川は,その大きさによる共通の特徴と,その当然の結果としての国際的性格から共通の特徴を有する。グローバルな気候変動の恐ろしい陰で,水資源の開発とより良い利用,洪水管理及び洪水リスク・マッピング,水量・水質モニタリング,湿地及び水に関係する生息環境保全,都市飲料水及び汚水供給計画と管理,統合的河川流域管理計画,地下水及び水源保護及びその他の国境を越えた水問題に関する国家間の協力が死活的に重要である。ドナウ河流域のためのEU戦略の文脈において,外相はその実施のための適切な協力枠組みに関するハンガリー議長国期間中の進展に留意した。メコン河イニシアティブやドナウ河イニシアティブのようなアジアと欧州における同様の地域協力は,共有すべき有益な経験とベスト・プラクティスを有するであろう。この目的のために外相は,ドナウ河-メコン河協力イニシアティブを立ち上げるとの提案に留意した。

包括的な成長及び貧困削減

38. アジアと欧州は,持続可能な高成長を促進し各国の福祉向上と貧困削減を可能とする,安定化を志向し,効果的,かつより国際社会を代表する国際的な経済金融システムの創出について共通の関心を有している。EUは,賢明,包摂的かつ持続可能な成長を基礎としたEU2020という新戦略を採択した。アジアは,今日世界経済の最も躍動的な地域として,何百万もの人の貧困を解消し,回復における主要な役割を果たしている。今こそ,我々の経験に基づき,特に後開発途上国及び脆弱国に特別の焦点を置きつつ,貧しい人々の利益となるような包括的な成長を通じて,貧困撲滅,所得格差の削減,適切な仕事の促進,及びミレニアム開発目標(MDGs)の開発課題並びに社会的結束の促進といった長期間未解決であるグローバルな課題の解決に向けて,新たな機運を生み出す時である。ASEMパートナーは,これらの努力に関して,重要な役割を有している。

39. 世界的な金融危機及び公共財政に対するその影響の結果としての圧力の高まりにより開発予算が減少しているが,外相はMDGsを2015年までに達成できるように,開発協力の援助レベル目標と目的を達成し結果を出すことに対するコミットメントを再確認した。

40. 外相は,貧困との闘い及びMDGsの達成の鍵として,持続可能な開発及び包括的な成長へのコミットメントを再確認した。外相は,最近の世界的な危機にもかかわらず大きな進展があったが,発展は不均衡であり,全ての関係者間の協力が包括的な成果を生み出すためには不可欠であることを認識した。外相は,2010年9月20日から22日にかけてニューヨークで開催されたMDGs国連首脳会合に関するフォローアップ,特にODAコミットメントを予定どおり実行し,真に効果的な方策を特定することの重要性,また,2011年5月9日から13日にイスタンブールにて行われた第4回国連後発開発途上国会議,6月2日から3日に東京で開催されたMDGsフォローアップ会合,2011年11月に韓国の釜山で開催される援助効果向上に関する第4回ハイレベルフォーラムの重要性についても強調した。外相は,また,昨年11月のG20ソウルサミットで採択されたG20ソウル開発合意と,複数年行動計画の成功裏の実施に関し,包括的で衡平な成長を実現するグローバルな努力に貢献するものとして,その重要性を強調した。

41. 昨年の9月にニューヨークで開催されたMDGs国連首脳会合は,ミレニアム宣言以来多くが達成されたが,地域間,地域内,そして国家レベルにおいて大きな地域格差があると結論づけた。特定の目標の実現に関しても,大きな差異がある。2000年から2007年の間に,力強い世界的な成長により,世界中の貧困削減,基礎教育へのアクセス向上,初等教育におけるジェンダー平等,及び水へのアクセス向上に関して進展がみられたが,2008年,2009年の複合的な世界危機及び気候変動の影響により,こうした進展が危機に晒され,あるいは逆行した。今日,未だ10億人が飢餓の犠牲となっており,開発途上地域の4分の1の子どもたちが標準体重に達していない状況にある。乳幼児死亡率の削減及び妊産婦の健康の改善のためになすべきことは多い。したがって国際社会は,2015年という目標期限までにMDGsを達成するために進展を加速すること,すなわちすべての開発パートナーによる努力を再度倍増しなければならないことを強調する。この点に関し,援助効果の改善,ドナー間のより良い調整は不可欠である。外相は,持続可能な形で最も困窮している国々を貧困から救い,人々の生活水準を高めるあらゆる政策の実施に引き続きコミットしている。

42. 外相は,持続可能な経済成長,特に若者の失業率の削減,及び貧困の撲滅のために,生活の質を向上させることの重要性を強調した。

43. 外相は,ASEMパートナー間での合法的な移民の互恵を拡大させることも含め,労働移民に対して特別な注意を払うべきであると一致した。開発と移民の間の関連性を認識しつつ,外相は移民の持つ開発に対するプラスの効果を最大化し,潜在的なマイナスの効果を減少させることを視野に,ベストプラクティスを共有し,包括的なアプローチを追求するよう求めた。合法移民の権利,不規則/不法移民,移民に関する一貫した広範な政策は,共通の関心事項として特定された。

44. 外相は,教育及び保健分野における対話と協力の特別な重要性を認識した。特にコミュニティレベルにおける能力開発を通じたものも含む個人のエンパワメント(能力強化)は,MDGsに向けた持続可能な進捗に大いに貢献することができる。保健及び教育分野における遅々とした進捗状況に鑑み,外相はこれらの分野において更に努力する必要があることを強調した。教育及び保健分野は,MDGsの達成に大きな貢献を果たすことが可能である。開発支援の多くは,教育分野に向けられるべきである。保健分野の能力強化に関しても相当の貢献が必要である。外相はまた,人間の安全保障及び衡平性の観点に焦点を当てた効果的なアプローチをとることの重要性を強調した。

45. 外相は,危機時における経済安定化装置として社会的安全網及び社会保護システムの重要性を認識し,この関連で,2011年4月18日から19日にハノイに於いてフィンランドと協力してベトナムによって開催された社会的安全網に関するASEMフォーラム(危機後の課題に対処するための協力の強化)を歓迎した。外相は,ASEMパートナーとのあり得べき協調の機会に関する本フォーラムの提言を評価した。外相は,社会的結束及び包括的成長に対して特別な注意を払うべきとの見方を共有した。不平等を削減し,最も恵まれていない人々を支援することで,社会的保護は人的資本投資を促進し,生産性を拡大し,社会的・政治的安定性を向上させる。持続可能な開発と社会的結束に焦点を置いた包括的成長に関する課題は支持されるべきである。外相は,オランダのライデンで開催されたASEM閣僚会議において発出されたライデン宣言にある社会問題・雇用担当閣僚によるコミットメントを再確認し,2012年にベトナムで開催が予定されている第4回ASEM労働雇用大臣会合を歓迎した。

多国間主義,国連改革,人権

46. 外相は,グローバルな課題に対処する上で,また,国際的な平和と安全を維持するにあたっての,多国間主義的アプローチ及び集団的行動の重要性を再確認した。2004年にアイルランドにおいてASEM外相によって採択された多国間主義に関するASEM宣言を想起し,外相は,国連憲章に規定されている原則に基づいた国際紛争の解決,国際的な平和と安全の維持,人権の促進,及び国家間の協力の中核にある,多国間主義と国連及びその機構を含む国際的な多国間システムの重要な役割を強化していくことに対するASEMのコミットメントを再確認した。

47. 外相は,国連が今日のグローバルな課題に最も効果的に対処するために,また,開発途上国のニーズに対応することも含め,加盟国への効果的な支援を確保するために,国連の包括的な改革が引き続き優先事項であるとの見方を共有した。国連システム全体の一貫性と国際社会の一部としての主体性を強化するために,活性化された国連総会,経済社会理事会,機能的な事務局,及び効果的で洗練された専門機関の重要性と共に,より代表性を有し,より効率的かつ効果的な安全保障理事会を実現するために現在の改革プロセスを追求することの重要性が強調された。

48. 外相は,1998年以来毎年開かれている人権に関する非公式ASEMセミナーを通じてASEMパートナーによって実施されている対話を評価した。外相は,国連憲章,世界人権宣言及び国際法にしたがい,男女平等も含む人権の促進・保護に関する協力と民主的統治の支持に対するコミットメントを再確認した。外相は,アジア欧州基金の調整の下に,1998年以来毎年開催されている人権に関する非公式ASEMセミナーを通じたパートナーによる対話への満足の意を表明した。外相は,人権の促進・保護に関する問題について協力を強化することへのコミットメントを強調した。外相は,人権の促進・保護に向けた初の重要な地域的取り組みとして,人権に関するASEAN政府間委員会(AICHR)の設置を歓迎し,ASEAN人権宣言の起草を支持した。外相はまた,2011年5月23日から27日のAICHRによるEUへの調査訪問につき,満足の意をもって留意した。外相は,人権理事会及び国連総会第3委員会といったフォーラムにおける協力を推進するとの希望を表明した。この文脈において,外相は世界の全ての国の人権状況に関する包括的な外観を提供する普遍的・定期的レビュー・メカニズムの重要性を強調し,右への建設的な参加に対するコミットメントを再確認した。

49. 外相は,民主主義教育の推進,市民社会の促進及び強化,民主主義共同体とバリ民主主義フォーラムといった地域協力や民主的発展に関するベストプラクティス及び経験の交換の強化を通じて,民主的価値を確固たるものとし,民主的機関を強化するための国際社会の努力とコミットメントの重要性を強調した。この文脈において外相は,任期を終えようとしているリトアニア議長国及び2011年から2013年の期間に議長を務めるモンゴルの民主主義共同体を再活性化するための努力を歓迎した。

文化と文明の対話

50. 外相は,文化多様性を維持し,文化遺産を保護することの必要性を再確認し,多元的社会,発展経路,文化における相互理解,寛容,平和的共存を支持した。外相は,国際社会との調和,理解,そして協力に資する環境の創出と強化に貢献するASEM信仰間対話,文化間対話の重要性を強調した。外相は,多国間制度を信仰,文化,人々の間の理解を促進するための国家努力と組み合わせることの重要性を強調した。この文脈において,外相は,国連文明の同盟(AOC),国連平和のための信仰間協力に関する3者フォーラム,及びこの分野における様々な国連教育科学文化機関(UNESCO)プログラムのようなイニシアティブの価値についても留意した。外相は,ポーランドのポズナンで開催された2010年ASEM文化大臣会合で示された理解に則して,共通の文化遺産に関する認識と関心の高まりは,文化及び文明の間の対話と協力を強化するとの信念を表明した。

51. 外相は,2010年5月にリオ・デ・ジャネイロで開かれた第3回文明の同盟フォーラムの結果及び国連文明の同盟が国際対話及び協力において主要な国際的参考事由となっていることに留意した。外相は,2011年12月に文明の同盟の次回会合を主催するとのカタールのイニシアティブを歓迎した。

52. 外相は,非伝統的な安全保障上の課題に直面している状況下にあって,様々な文化及び文明の代表者間における平和と寛容の文化,多様性の尊重と,信仰間,信仰内,文化間の対話の促進を目的とする,宗教コミュニティ及び市民社会のプログラム及び活動の発展について対話することの重要性が増していることを強調した。信仰間対話は,スペインのマドリッド,トレドで開催された第6回ASEM信仰間対話で2010年に表明された通り,文化間の側面に関する市民社会プログラムの策定作業において重要な役割を果たすべきである。

53. 外相は,2010年を文化の和解のための国際年として祝すための最大の政府間会合となった,2010年3月にマニラで開催された平和と開発のための信仰間対話及び協力に関する非同盟運動特別閣僚会合の結果を歓迎し,宗教,信仰,文化,社会の多様性の尊重を促進するための努力を強化することの重要性を強調した平和と開発のための信仰間対話及び協力に関するマニラ宣言並びにプログラムの採択を歓迎した。

54. 外相は,信仰間及び文明間対話を通じた移民の有用性の活用と課題への対処というテーマの下,2011年10月にマニラにおいてフィリピンが第7回ASEM信仰間対話を主催することを歓迎した。外相は,文化間,信仰間対話と協力を通じて,移民コミュニティとこれを受け入れる社会,そして移民コミュニティ内部において調和と相互理解を促進することが,移民コミュニティを受け入れる社会の社会構造を豊かにし,また移民コミュニティの社会構造も豊かにすると合意した。外相は,この会合の目的に積極的に貢献すべく代表団を派遣することにコミットした。

テロリズム,海賊,及び国境を越えた組織犯罪

55. 外相は,あらゆる形態・理由で行われるテロが,国際的な平和と安全にとって最も深刻な課題の1つであり続けていることを再確認した。外相は,国際社会の脅威となっているテロとの闘いへのコミットメントを強調し,あらゆる形態のテロに対抗し,予防し,鎮圧するための包括的アプローチの必要性を強調した。外相は,テロの犠牲者を援護・支援する方策の重要性を強調し,2011年に次回テロ対策会議を主催するインドネシアを歓迎した。

56. 外相は,テロとの闘いにおける国連の主導的な役割を確認し,国連憲章及び人権法,難民法並びに人道法を含む国際法を最大限に尊重しながらテロリズムに対処する主要な国連条約及び議定書を遵守することの必要性を強調しつつ,国連グローバルテロ対策戦略及び関連する国連安保理決議に沿った形で国際的なテロとの闘いへの実効的なステップを踏むことへのコミットメントを再確認した。

57. 外相は,本年のニューヨークにおける国連包括テロ防止条約の交渉状況に留意し,すべての国連加盟国に対し条約の早期妥結に向けて取り組むよう要請した。テロリズムは,全ての国と国際的・地域的機関の積極的な協力による継続した包括的アプローチによってのみ打ち負かすことが可能である。

58. 外相は,ベストプラクティスの普及,国際的コミットメントと国内法に沿った情報共有,技能・知見・技術の開発途上地域への移転といった能力構築を含むテロ対策活動に関する地域協力の強化,並びに時宜に適う効果的な個別及び集団的対応へのASEMのコミットメントを再確認した。

59. 新たに生じつつある最も複雑な安全保障上の課題の一つは,世界規模での対応が求められるサイバー犯罪を含むサイバーセキュリティである。外相は,インターネットの安全を実現するために表現の自由を犠牲にしてはならないことを強調した。

60. 外相は,不正薬物取引,武器密輸,資金洗浄,人身取引,臓器売買及び腐敗といった平和・安全保障・人権の脅威となる国境を越える組織犯罪の拡大に関し懸念を表明した。

61. 外相は,モンゴルのウランバートルで2011年9月5日から7日にかけて,アジアと欧州の間の移民の流れに関する第10回ASEM移民担当局長会議を主催するとのモンゴル政府の決定を歓迎した。

62. ソマリア沖及び公海における海賊並びに武装強盗は,国際的な海上の安全,特に,船員の安全,国際貿易,及び影響を受ける諸国の安全と繁栄に対する大きな安全保障上の脅威となっている。外相は,望ましくは国連の傘下での,統一的な国際的取組によって連携のとれた包括的な形で海賊及び関連犯罪に対処することが不可欠であることに合意した。また外相は,海賊及び武装強盗犯の実効的な逮捕,訴追及び収監は,公海における航海の自由及び安全の確保における重要な構成要素である点を強調した。この問題に対する持続的な解決のためにはソマリアにおける法と秩序の確立に加え,影響を受ける地域の安全と法の支配の構築を通じた根源的な原因の除去と経済成長を可能とする環境の創出を含む当該地域の継続的な経済発展に資する追加的な具体的政策及び対策による海賊対策の取組が支援・補完されなければならない。国際的な取組は,国連の傘下で統一されることが望ましい。外相は,海賊によって人質とされた船員及びその他の者の安全と早期解放を確保するための更なる国際的協力の重要性を強調した。長期的なアプローチの発展に加えて,情報共有,職員の訓練,及び適時における海軍の共同演習といった具体的な活動を通じた能力構築の分野を含む,地域協力の枠組への支援に焦点を当てるべきである。外相は,海賊行為及び拘束時における船員に対する暴力の増加を非難し,船員及び海賊に抑留された者の安全と早期解放を確保するための更なる国際協力の重要性を強調した。外相はまた,人権法規に則したより実効的な海賊の訴追に向けた取組の前進として最近の国連安保理決議1976号の採択を歓迎した。

核不拡散と軍縮

63. 外相は,大量破壊兵器とその運搬手段の拡散は国際の平和と安全に対する脅威であることを強調した。外相は,核軍縮と核不拡散という相互に補完し合う目標を進展させることの重要性を認識し,核兵器及び他の大量破壊兵器のない世界の実現という目標へのコミットメントを再確認した。外相は,テロリスト及び他の非国家主体が,大量破壊兵器並びにその関連技術及び物資を取得することを防止することの決意を確認した。

64. 外相は,核兵器及び他の大量破壊兵器並びにその運搬手段の拡散に対抗するために,国際的及び国家的努力を更に強化し,多国間の軍縮機関の作業,特に軍縮会議の議題に上っている問題に関して作業を再活性化し,多国間の軍縮交渉を進展させる必要性を強調した。外相は,国連安全保障理事会の全ての関連決議を完全に履行することの必要性を強調した。

65. 外相は,核兵器不拡散条約(NPT)の全ての締約国に対し,2010年NPT運用検討会議で採択された行動計画を実施するよう要請した。外相は,ASEM8首脳会合の議長声明のパラグラフ60を想起した。外相は,2012年に予定されている中東における非核兵器及び非大量破壊兵器地帯構想に関する国際会議への支持を表明した。

66. 外相は,ロシア連邦と米国の間の新STARTの発効を歓迎した。外相は,軍縮プロセスに貢献する包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効への支持を再確認し,残る付属書2の数か国に見られるCTBT批准に向けた新たな政治的機運を歓迎した。また,外相は軍縮会議に参加している全ての国に対して,その合意された,包括的でバランスのとれた作業計画において,核兵器あるいは他の核爆発装置のための分裂性物質の生産を禁止する条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT))の早期交渉開始を求めた。

67. 外相は,国際的な核不拡散体制の維持及び原子力エネルギーの平和的利用の検認におけるIAEAとその保障措置制度の重要性を認識し,その権限内の全ての事項に関する完全な協力を呼びかけた。外相は,特に,包括的保障措置協定の追加議定書の普遍的な遵守及び可能な限り早期の締結に向けた関係国による動きを支持した。

68. 外相は,非差別的に且つ透明性を維持しつつ,NPT締約国の同条約に則って平和的目的のための原子力エネルギーを開発する権利に影響を与えることなく,核燃料供給保証のための自発的な多国間メカニズム及び核燃料サイクルのバックエンドを扱うスキームにつき更に議論を継続することの重要性を強調した。

II.地域情勢

69. 外相は,全ての国々の正統な利益の考慮と,様々な地域的組織とフォーラムのパートナーシップのために,アジアと欧州における相互信頼と公平な扱いに基づく効果的な地域的アーキテクチャの重要性を強調した。外相は,地域の協力メカニズムは,平和,安定,繁栄,社会的発展及び統合の推進力であるとの見方を共有した。外相は,地域において新たな協力アーキテクチャを形作ることに向けたプロセス(例えば東アジア首脳会議の発展,拡大ASEAN国防相会議の設立)を歓迎した。外相はまた,アジア太平洋地域における強化された安全保障に関する様々なイニシアティブに留意した。

70. 外相は,相手側の地域において行われている協力プロセスへの支持,及び,この精神において,東南アジア友好協力条約(TAC)に加入するとのEUの確認されたコミットメントを歓迎した。この目的のために,外相は,TACを修正する第三議定書の早期発効に向けて取り組むことを約束した。

71. 外相は,東アジアにおいて発展しつつある地域アーキテクチャにおけるASEANの中心性への認識を再確認した。外相は,ASEANとそのパートナーの既存の対話パートナーシップを通じての,より強化された交流と協力への願望を強調しつつ,ASEANの中心性を強化することを支持した。外相はまた,かかる地域協力は互恵的かつ相互補完的であることを認識した。外相は,経験や教訓を共有するためのさらなる努力を奨励した。外相は,2015年までに強靱で活発かつ持続可能なASEAN共同体を実現し,またASEANとパートナーとの関係を深化する上で,ASEANの統合を加速するために行われた重要な努力を歓迎した。外相はまた,ASEAN主導の地域協力プロセスにおいて,包括的な地域対話と協力を意図する数多くの本質的な進展を歓迎した。

72. 外相は,リスボン条約の発効は,欧州統合の改革における大きな前進であり,アジアのパートナーを含む他のパートナーとの関係と協力を発展させる上で信頼できる効果的なパートナーとしてのEUを強化するであろうとの見方で一致した。

73. 世界経済・金融危機により,経済成長,雇用,社会統合といった側面において世界が深刻な挑戦に面していることに留意し,外相は,EUが将来の危機により効果的に対応できることを保証するために,経済協調を補強し,財政規律とユーロ圏に関する統制を強化することに向けたEUの最近の努力を認識した。欧州2020戦略の効果的な実施は,経済成長を持続的なものとし,危機からの回復を不可逆的なものとすることに貢献する。外相は,市場開放や自由貿易協定を通じての,単一市場の強調やより多くの国際貿易を歓迎した。経済,社会,政治及び制度的により強力な欧州は,国際経済の安定と成長にも貢献するため,外相は,共通の政策を強化することを通じ“より強い欧州”を創造するとのEUのコミットメントを歓迎した。

74. 外相は,北アフリカと中東の幾つかの国における進展に留意した。同時に外相は,人々の苦しみに特に注意を払いつつ,地域が直面する複合的な問題への懸念も表明した。外相はまた,自らの社会におけるより良い経済的機会及び政治的見識を求めて,また,人権状況を改善するために自由,尊厳,民主主義を求めて格闘する,平和と安定を渇望する勇気ある人々への敬意を強調した。外相は,適切な政治体制と発展の方途を模索する地域の諸国の人々への支持を強調した。外相は,民主主義と共栄のためのパートナーシップを設立することにより,南側の隣国と協力するとのEUの努力を支持した。

75. 外相は,西バルカン地域の安定は,欧州の平和と安全における不可欠な要素であることで一致した。外相は,より強化された地域協力と善隣関係が,地域の安定の定着にとって不可欠であることを強調しつつ,西バルカンの諸国家間の永続的な和解に向けたさらなる取組を歓迎し奨励した。外相は,ベオグラード・プリシュティナ間の対話の開始に言及しつつ,地域の平和,安全,安定の要素として国連総会決議64/298を歓迎し,プロセスを前進させることの重要性を強調した。

76. EUの外相は,西バルカン諸国にとり,EUへの明確な展望は,民主的改革プロセスを完了させ,法の支配を定着させるための彼らの努力の強力なインセンティブとなることを強調した。

77. 外相は,イランが,関連する国連安保理決議やIAEA理事会の要求の下,核計画に関する国際的な義務を完全に遵守し,IAEAと完全に協力する必要性を確認した。外相は,原子力の平和的利用に関する核不拡散条約(NPT)に基づくイランの正統な権利を認識しつつも,かかる権利は,イランを含む全てのNPT締約国が尊重しなければならない義務を伴うことを想起した。外相は,イランの核計画の完全に平和的な性質に対する国際社会の信頼を回復するための交渉を通じた包括的な解決への支持を強調した。外相は,EUにより支持されたP5+1(中国,フランス,ドイツ,英国,ロシア,米国)が示した対話の再開への継続的なコミットメントを歓迎した。

78. 外相は,朝鮮半島の平和と安定は,北東アジアにおいて最も重要であるとの見方を共有した。外相は,2005年の共同声明の目標を包括的に達成することを目的とする,六者会合における外交的努力への支持を確認した。外相は,北朝鮮の核計画,特に北朝鮮が主張しているところのウラン濃縮計画に関する懸念を表明した。この文脈において外相は,これらの全ての核兵器及び核計画が,完全な,検証可能な,かつ,不可逆的な方法で放棄されなければならないことを規定する,関連する全ての国連安保理決議を完全に履行することの重要性を強調した。外相は,真摯なかつ建設的な南北対話が必須なまでに重要であることを強調し,六者会合の再開に資する環境を醸成するための具体的行動をとることの重要性を強調した。外相はまた,国際社会が有する人道上の懸念に対応することの重要性を強調した。

79. 外相は,アラブ世界において展開している歴史的進展について意見を交換した。外相は,このような進展は,自由と法の支配が普及している社会で暮らすことに関心がある人々の意志を反映しているとの見方を示した。このような変革のためのリーダーシップは,諸国の内部に由来しなければならない。しかしながら,国際社会は,より自由で,開放的であり,反映し,寛容な社会を作るために積木を重ねていきたいと願う人々を助けるために果たすべき重要な役割を負っている。国際社会が果たす役割は前向きかつ建設的であるべきであり,また固有の事情や国別の状況が完全に考慮されるべきである。

80. 外相は,イエメン情勢及び同国を非常に長期にわたり揺るがしている危機への一層の懸念を表明した。外相は,イエメン全土にわたる平和的な抗議への対応に武力が行使されたことを非難した。外相は,湾岸協力理事会による努力を賞賛し,野党の建設的な反応を評価した。外相は,イエメンに政治・社会的改革をもたらし,平和的で秩序だった移行へとつながるべき包括的なプロセスを支持し続ける。

81. 外相は,シリアにおける進展についての懸念を表明した。外相は,シリアの指導者に対し,非暴力的な市民の抗議に対応する際の武力の行使を停止し,またシリアの人々の利益のために宣言された経済・社会的改革を加速することを要請した。外相はまた,より自由で開放的かつ繁栄した社会に向けた法的及び民主的移行を模索する上での当局と抗議者の間のより良い理解を保証する唯一の方途として,幅広い参加と積極的な参加を得た国民的対話の必要性を確認した。この関連で外相は,国連人権理事会の4月25日の決議を,これが実行されるという理解の下に,留意した。

82. 国連安保理決議第1970号及び第1973号について,これらの実施は国際社会の優先事項として厳格に監視されなければならない。外相は,国連安保理決議第1973号に沿って,リビアにおいて全ての関係者による検証可能な停戦及び暴力並びに市民に対する全ての攻撃と虐待を完全に停止することを要求した。外相は,市民に対する攻撃に責任を有する者の責任を問う必要性を強調した。外相は,現在の危機の解決を模索するための努力における国連の主要な役割を国際社会が支持すべきであると強調し,また国際司法裁判所の努力に留意した。あらゆる解決は,リビアの人々の意志を反映しなければならない。リビアの独立,主権及び領土の一体性は保全されなければならず,またリビアの人々の民主的願望は満たされなければならない。

83. 外相は,中東和平プロセスが地域における劇的な変化の文脈における不透明性の犠牲になってはならないと確信する。和平プロセスを前進させ,イスラエル・パレスチナ間の紛争の解決及びパレスチナの人々の法的権利の回復のための取組を継続するための努力は倍加されなければならない。イスラエル人とパレスチナ人の国家的願望を満たし,安全で保証されたイスラエル国家と,主権を有し,独立し,民主的で,持続可能で,一体的なパレスチナ国家が,相互に及び地域の隣国とともに平和で安全に共存する唯一の道である,合意された土地交換を伴う1967年の国境に沿った二国家解決に向けた意味のある進展が必要である。現在の行き詰まり状況を打破し,両者の間の実質的な交渉を行うための方途が見いだされなければならない。この関連で,外相はオバマ米国大統領が5月19日に示したイスラエル・パレスチナ和平に向けたビジョンに対する強い支持を表明した。外相は,カルテットに対し,直接和平対話の再開と成功に意味のある貢献を果たし,イスラエルとパレスチナが地域の持続的な平和に向けた道程におけるモメンタムを達成することを可能にし,それを支援することを求めた。カルテットは,交渉再開の基礎として,国境,安全,エルサレム,及び難民問題についての明確な枠組みを定めるために,可及的速やかに再招集されなければならない。外相は,5月4日にカイロで署名されたパレスチナ和解に関する合意を歓迎し,また,パレスチナ自治政府に対し,非暴力の原則を堅持し,イスラエルの正統な生存権を含む従来の合意や義務を受諾しつつ,二国家解決の達成及びイスラエル・パレスチナ紛争の交渉を通じた平和的な解決に引き続きコミットすることを求めた。

84. 外相は,国民融和に向けた決定的な取組を行い,国家が直面する課題に取り組むことができるであろうことを期待して,イラクにおけるパワー・シェアリング合意及び政府の形成を歓迎した。外相は,民主的で,安全で,反映した未来へイラクが移行していく上で,国際社会がイラクに実質的な支援を提供し続けなければならないことを強調した。

85. 外相は,国際社会はアフガニスタン政府が永続的な安定と安全を確保し,ガバナンスとあらゆるレベルにおける行政機構を強化し,人権とりわけ女性の人権と法の支配を改善するのを支援し,アフガニスタン政府が腐敗,薬物の不正取引,テロリズム及び過激主義と闘うことを奨励することの必要性を強調した。

86. 外相は,グローバルな課題に取り組み,国際的な平和と安全を維持する上で,集団的な行動を継続する必要性を強調した。外相は,アフガニスタンに関するロンドン及びカブール会議にて合意された条件を尊重するアフガニスタン主導で包括的かつ透明な政治プロセス及び人権と法の支配の原則の一部として,アフガニスタンのオーナーシップ主導の下でのアフガン主導による治安維持への不可逆的かつ成功裏の権限委譲の重要性,及び国民和解と再統合の促進へ集団的な支持を強調した。外相は,2011年12月5日にボンで開催される外相レベルのアフガニスタン国際会議において,これらの課題に取り組み,アフガニスタンを支持する上での国際社会による長期的な関与について議論する機会を歓迎した。

87. 外相は,アルカーイダ,タリバン,その他の暴力・過激テロリスト,不法武装集団,犯罪者並びに不法薬物の生産,不正取引又は貿易に関与する者による暴力及びテロ行為を強く非難した。ウサマ・ビン・ラーディンの死は,タリバ-ン及びその他の過激集団にとり,過去との決定的な決別を果たし,武器を放棄し,平和的な政治プロセスに参加する戦略的な機会を提供するものである。外相は,国境の両側における安定を達成するためのパキスタンとアフガニスタンとのより改善された協力の重要性を強調した。外相はパキスタン政府に対し,継続するテロリズムの苦難と闘い,地域の安全を実現するために,経済改革を継続し,地域及び国際的枠組みを通じて国際社会との関与を増大することを求めた。

88. 外相は,持続可能で長期的な発展を保証するための,アフガニスタンの安定と復興を強化に向けた彼らの支持を強調した。外相はまた,市民に対し少なくとも基本的な安全,統治,機能する行政機構,司法及び基本的な公共サービスを保証する継続的な制度構築なくしては,あらゆる発展は成し遂げられないことを認識した。外相は,援助の有効性といった相互説明責任に関する国際的な関連原則に照らし,人権と法の支配に基づきアフガニスタンにおいて安定を構築することを支援するために全ての支援国と密接に協力することをASEM諸国に要請した。

89. アフガニスタンの近隣国は,特にテロとの闘い,薬物の不正取引,不法移民といった領域における地域の課題について協力を強化し,アフガニスタンとの経済関係を強化する決意を表明した。

90. 外相は,ミャンマーにおける最近の進展について意見を交換した。外相は,平和的な民主的変革,より一層進んだ多元主義及び経済発展のための,ミャンマーにおける新政府及び新制度の潜在的に重要な役割を強調した。しかしながら外相は,2010年11月7日に行われた選挙は幾つかの特定の懸念を惹起したことに留意した。外相は,新政府が立憲的な文民的な統治システムを創造するために必要な措置をとることへの期待を表明した。

91. 外相は,国連事務総長による仲介努力の継続を支持し,ミャンマーに対し国連及び国際社会により一層関与し彼らと協力することを呼び掛けた。外相は,包括的な国民和解のプロセスにおいて,ミャンマーの政府が関連する全ての当事者と対話によって関与する必要性を強調した。外相はまた,アウン・サン・スー・チー女史の問題にも触れた。依然として拘束されている者を時宜を逃さずに釈放することは,このプロセスに重大な貢献をもたらすであろう。外相は,国民和解及びミャンマーの人々の経済・社会的状況の改善という目的を達成する上で建設的に関与し続ける用意があることを表明した。外相は,ミャンマーの主権と領土の一体性に対するコミットメント及びミャンマーの未来が同国の人々の手に委ねられているとの見方を強調した。

III.ASEM協力

91. 外相は,参加国の急速な増加及び他の国々によるASEMへの参加希望表明によって示される関心の高さから,ASEMプロセスの成功が明らかであることについて感謝の意を表した。ASEMの拡大と共に,このフォーラムの効果及び効率が高まり,AECF2000によって定められている通り,地域間協力の2極モデル(欧州とアジア)が維持されなければならない。

92. 外相は,別添のASEM拡大に関するASEM高級実務者の報告書を承認し,第9回ASEM外相会合での授権にしたがった取り組みを彼らに課した。

93. 外相は,別添のASEMの作業方法に関するノンペーパーを採択し,高級実務者に対して適切に取り組むよう求めた。

94. 外相は,人的交流もアジア欧州パートナーシップの非常に重要な要素を構成することを再確認した。外相は,ASEMをより市民と市民社会に近いものとするために,また,地域のプログラムに資金を拠出することによってアジアと欧州の人々により接近するために更に十分な努力をしなければならないことを強調した。この点に関して,アジア欧州基金(ASEF)は,ASEMプロセスにおいて唯一の恒久的な機関として重要な役割を果たす。ASEFは,人的交流,知的及び文化的な対話に関与し,これを支援する不可欠なパートナーであるだけでなく,ASEMのその他の2つの柱,すなわち政治及び経済に関するASEMの取り組みに市民社会の立場を反映させる機会となる。したがって,ASEFの財政的安定を確保することは,これまで以上に全てのASEMパートナーにとって基本的な政治的義務となっている。外相は,ASEM参加国に対し,定期的な貢献によりASEFプログラムの長期的な財政の安定性を確保するように要請した。外相は,新たなASEM参加国に対して,ASEFの活動への貢献と積極的な参加を慫慂した。外相は,2011年5月のヴィルニュスASEF理事会における,ASEFへの貢献を20%増加させ,2012年にASEF理事会を主催するとのインドの申し出を歓迎した。パートナーシップの可視性とASEMプロセスの透明性を強化するために努力を惜しむべきではない。

95. 外相は,グローバル及び地域の非伝統的な安全保障上の課題に対処する能力に関連して,教育及び訓練の果たす重要な役割を強調した。外相は,交流,質の保証,共通の基準,及び人的資源開発の分野における高等教育協力の拡大を歓迎した。外相は,現在のグローバル経済における技術・職業教育訓練の魅力及び雇用可能性の改善に焦点を置いた,2011年1月11日から12日に中国の青島で開催されたASEM技術職業教育シンポジウムの結果を歓迎した。外相は,イノベーション,起業家精神,数学的能力,自然科学に焦点を置いた,2011年5月にデンマークで開催された第3回ASEM教育大臣会合も賞賛した。同会合では,質の保証・認識,ビジネス及び産業界の教育への関与,バランスのとれた交流,職業教育及び訓練を含む生涯学習に関して集中的に議論がなされた。外相は,ASEMUNDUSイニシアティブ,ASEM DUOフェローシップ・プログラム及びASEM教育事務局,並びにASEM教育ハブを強く支持した。

96. 外相は,共通の課題に対し目に見える進展を達成する上で,共同科学技術イニシアティブが果たす中心的な役割を再確認した。外相は,S&T協力を推進し,右の可視性を高め,研究開発活動とともに政治対話を強化することを目的として予定されているEU・南東アジア科学年2012を歓迎した。

2012年ラオスにおけるASEM9首脳会合の準備

97. ラオス人民共和国は,2012年11月にヴィエンチャンで開催が予定されているASEM9首脳会合の準備について説明した。外相は,感謝の意を表し,ASEMパートナーに対しASEM9の成功裏の実施及び主催に関するラオスの努力を支援するよう奨励した。

ASEM協力の将来,新たなイニシアティブ及び将来の会合

98. 外相は,広範で躍動的なアジア欧州パートナーシップと協力を反映した,多くの現在進行中のASEMイニシアティブ及び協力に留意した。

99. 外相は,2013年に第11回ASEM外相会合を主催するとのインドの申し出を歓迎した。

付属文書1:ASEMの拡大に関する第10回ASEM外相会合への高級実務者報告書

付属文書2:2011年から2013年のASEM作業プログラム

付属文書3:2011年から2012年のASEMイニシアティブ

付属文書4:ASEM8のフォローアップ,ASEM活動マトリックス作業

付属文書5:2011年2月15日から16日にブリュッセルで行われた貿易と投資に関する高級実務者(SOMTI)による非公式会合の報告書