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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 地球環境戦略研究機関・国問研主催「気候変動及び環境問題に関する公開シンポジウム」山根外務副大臣 スピーチ

[場所] 東京
[年月日] 2012年3月3日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

本日は,地球環境戦略研究機関及び国際問題研究所の御尽力により,このようなシンポジウムが開催されたことを嬉しく思います。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災から,まもなく1年が経過しようとしております。これまで我が国は,国際社会の御支援も頂きながら,復興に全力で取り組んできました。この1年間に皆様から頂いた暖かい御支援と力強い激励の言葉に対し,日本国政府と日本国民を代表し,改めて感謝申し上げます。我が国としては,未曾有の自然災害に見舞われながらも,これまで繰り返し申し上げてきているとおり,気候変動という人類が直面している極めて深刻な問題に対し,真剣に取り組んでいく姿勢に,全く変わりはありません。

 一昨日と昨日には,日本とブラジルが共同議長となり,「気候変動に対する更なる行動に関する非公式会合」が開催されました。本日御出席のアティーヤ長官をはじめとする各国の交渉責任者の方々の間で,本年末のCOP18に向けた交渉の進め方について,活発な議論が行われたと伺っています。

 本年は,1992年の地球サミットで気候変動枠組条約が採択されて20年となる,節目の年です。また,6月には,ブラジルでリオ+20が開催されます。このような意味で,本年は気候変動・環境問題にとって重要な年であり,このシンポジウムの開催は時宜を得たものであると考えております。

 気候変動については,COP17議長国の重責を果たされてきた南アフリカの努力と,各国の政治的意思の結集により,ダーバンでは歴史的成果を得ることができました。ただ,これで気候変動問題が解決したわけではありません。我々は,ダーバンでの成果を基礎として,さらなる進展を目指さなければなりません。

 「ダーバン・プラットフォーム」については,本年,将来の枠組みに関する議論の土台を作り,新しい作業部会の作業を軌道に乗せなければなりません。また,真の地球益につながるような,公平かつ実効性のある枠組みとはどのようなものか,全ての国に適用される枠組みはどうあるべきか,といった視点から,今こそ,創造性と柔軟性を持って,2020年以降の新たな枠組みについて議論すべきです。

 新たな段階に移るために,ドーハのCOP18では,既存の作業部会で進めてきた作業を確実に終えることも重要です。また,「緑の気候基金」を始めとする途上国支援のための仕組み作りも,引き続き着実に進めるべきです。COP18に向けて,ダーバンで得られた政治的意思を維持しつつ作業を進めることが重要です。日本としても,積極的に貢献してまいります。

 本日のもう一つのテーマである世界の低炭素化については,6月のリオ+20を大きな契機として,国際社会全体で取り組んでいく必要があります。

 リオ+20の最大のテーマは,世界のグリーン経済への移行です。低炭素化については,資源効率の向上や生態系サービスの回復と並び,グリーン経済の重要な要素となっています。

 グリーン経済への移行のためには,再生可能エネルギーの普及,リサイクルの推進,持続可能な農業への投資などを行う必要があります。世界がグリーン経済に移行することは,地球温暖化や,資源の枯渇,食料価格の高騰など,現在の地球規模の課題への有効な解決策となります。

 リオ+20では,世界の首脳がグリーン経済への移行にコミットすると共に,その具体的な方法について合意することが期待されています。我が国は,グリーン経済への移行が,世界の持続可能な開発のために重要な手段であり,その実現の鍵となるのは,グリーン・イノベーションであると考えており,リオ+20の準備プロセスを通じて,このような主張を行っていきます。

 また,リオ+20においては,世界のグリーン経済への移行を促進するために,我が国の高いエネルギー効率,防災への取組,持続可能な町づくりなど,環境先進国である我が国の知見・経験を国際社会と共有していく考えです。

 このような,リオ+20に対する貢献も念頭に,COP17では,「世界低炭素成長ビジョン」を表明しました。これは,先進国・途上国が連携して,技術,市場及び資金を総動員し,官民一体となって世界低炭素成長を実現していくことを提案するものです。

 このビジョンに基づく具体的な取組として,本年4月の東京での「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」の開催や,アフリカ諸国との間で来年開催のTICAD Vに向けた「アフリカ・グリーン成長戦略」の策定などの地域協力を進めています。

 我が国は今後も,世界全体で低炭素成長を実現することを通じて,気候変動問題の真の解決を図るべく,我が国の技術,知見,経験を世界と共有し,貢献していきたいと考えています。

 本日のシンポジウムでは,今後の気候変動交渉や世界の低炭素化に向けた取組に関して,自由かつ率直な意見交換を行う場となることを願っております。また,このような意見交換が行われることで,相互の理解が深まり,今後の取組が促進される一助になることを祈念して,私のあいさつとさせていただきます。