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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 玄葉光一郎外務大臣 特別寄稿:「グリーン・イノベーションを国際社会で主導する」

[場所] 
[年月日] 2012年6月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 リオ+20でグリーン・イノベーションを主導する。

 環境に優しく災害に強い社会の最先端モデルを提示する。

 1992年の「国連環境開発会議(地球サミット)」から今年で20 年の節目を迎えます。その間を振り返ると,エネルギーや資源の有限性など地球の限界がより明確になり,今日,世界経済をエネルギー・資源効率に優れたグリーン経済に転換していくことが緊急の課題になっています。また,我が国は,この20年間で2度の大震災を経験しましたが,災害が持続可能な成長の大きな阻害要因となるとの認識が深まっています。

 一方,この20 年間に世界経済を取り巻く状況は大きく変化しています。新興国や民間セクターの役割なくして持続可能な開発を考えることは不可能になっています。

 「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の場において,日本は,先進国と途上国という旧来の二分法を乗り越え,すべてのステークホルダーが持てる能力を最大限活用し,いわばフルキャストで世界が直面する課題に取り組むことの重要性を訴えていきます。また,人間一人ひとりが能力を発揮し,より良い社会づくりに参画することが持続可能な開発の実現にとって重要です。日本は引き続き人間の安全保障を推進していきます。

 リオ+20の主要テーマの1つであるグリーン経済への移行については,日本は「新成長戦略」においてグリーン・イノベーションを成長の柱と位置づけており,政府と企業との連携を強化し,「グリーン経済先進国」として国際社会におけるグリーン・イノベーションを主導していきます。

 日本政府がグリーン成長を実現するための取り組みとして昨年12月に提唱した「世界低炭素成長ビジョン」では,先進国,途上国が連携して,技術,市場,資金を総動員し,官民一体となって世界全体で低炭素成長を実現する必要性を強調しています。その一環として「東アジア低炭素成長パートナーシップ対話」や「アフリカ・グリーン成長戦略」の策定などのイニシアティブも立ち上げています。世界低炭素成長ビジョンに基づき,さらなる排出削減に向けた技術革新や低炭素技術の普及・促進など途上国への支援を引き続き実施しています。

 また,途上国を中心に都市人口が急増しており,途上国の大都市の低炭素化,3R(リデュース,リユース,リサイクル)の推進などが重要です。昨年12月には,我が国において被災地を含む11都市が「環境未来都市」に認定されたように,我が国は環境未来都市構想を推進しています。また,本年3月に国際エネルギー・セミナーを開催し被災地復興に向けたスマートコミュニティー提案を行うなど,先進的なまちづくりにも積極的に取り組んでいます。スマートグリッドや再生可能エネルギー,省エネルギー,といった日本の誇るエネルギー・環境技術を導入し,豊かな社会を構築するための最先端モデルを提示していく考えです。

 リオ+20においては,グリーン経済への移行,環境未来都市のほかにも,東日本大震災を経験した我が国として災害に強い強じんな社会づくりに貢献する姿勢を示したいと考えます。持続可能な開発を効果的かつ効率的に実現していくために,今後とも,課題解決のトップランナーとして,オールジャパンでこれらの取り組みを一層推進していきたいと考えています。

(2012年6月8日 日経ビジネス 日経エコロジー「リオ+20」特別版に掲載)