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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 低炭素成長パートナーシップに関する日本政府とケニア共和国政府との間の協力覚書

[場所] ナイロビ
[年月日] 2013年6月12日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

前文

在ケニア共和国日本国大使館によって代表される日本政府と環境・水・天然資源省によって代表されるケニア共和国政府(以下「両政府」という。)は,国連気候変動枠組条約(以下「条約」という。)第2条に言及される条約の究極的な目的及び持続可能な開発の達成を追求し,また2013年以降も協力して,引き続き気候変動に取り組むため,次のとおり低炭素成長パートナーシップを推進する。

1. 協力分野

(i)両政府は,低炭素成長に向けた国連の下並びに地域的及び二国間枠組みでの協力のため,様々なレベルで緊密に政策協議を行う。

(ii)両政府は,ケニアにおける低炭素成長を実現するための投資並びに低炭素技術,製品,システム,サービス及びインフラの普及を促進するため,二国間オフセット・クレジット制度(以下「JCM」という。)を創設し,それぞれの関連する有効な国内法令に従って実施する。

2. JCMの組織

(i)両政府はJCMを運営するため,合同委員会(Joint Committee)を設置する。

 ・ 合同委員会は,両政府の代表者から構成される。

 ・ 合同委員会の委員の構成を含む合同委員会運営規則は,両政府の協議を通じて定められる。

 ・ 合同委員会は,JCMに関する規則及びガイドライン類,排出削減又は吸収量の定量化のための方法論,第三者機関の認定に関する要件並びに必要に応じてその他のJCMの実施及び管理に関する事項を策定する。

 ・ 合同委員会は,定期的に会合を招集し,JCMの実施状況を評価する。

(ii)両政府は,ダブルカウントを回避しつつ,JCMの下での緩和事業における認証された排出削減又は吸収量を,国際的に表明したそれぞれの温室効果ガス緩和努力の一部として使用できることを相互に認める。

(iii)両政府は世界的な温室効果ガスの排出削減又は吸収に向けた具体的行動を促進するために,JCMの堅固な方法論,透明性及び環境十全性を確保するとともに,JCMを簡易で実用的なものとする。

(iv)温室効果ガスの排出削減又は吸収量のダブルカウントを回避するため,いずれの政府も,JCMの下で登録された緩和事業を,他の国際的な緩和メカニズムには使用しない。

(v)両政府は,JCMを実施していく上で必要な資金,技術及びキャパシティビルディング支援の円滑化のため,緊密に協力する。

(vi)JCMは取引を行わないクレジット制度としてその運用を開始する。両政府は,JCMの実施状況

を踏まえつつ,取引可能なクレジット制度への移行のための協議を継続し,可能な限り早い段階で結論を得る。

(vii)両政府は,JCMが取引可能なクレジット制度に移行された後、JCMを通じ,途上国による適応努力を支援すべく,具体的な貢献を目指す。

(viii)JCMの運営方法に関しては,国連気候変動交渉の進展を踏まえつつ,両政府間の書面による同意によって修正される。

3. 期間

本MOCは,賛同する高官による署名の日から,条約の下での新たな国際的な枠組みが効力を生じ得る時点までの期間を対象とする。

両政府は,とりわけ,国連の下での気候変動に関する交渉の進展を踏まえつつ,あり得る本パートナーシップの延長につき検討し,本パートナーシップの期限までに結論を得る。

4. 守秘義務

各政府は,他方の政府から得た情報の機密を守り,当該情報を他方の政府の書面による事前了解を得ずに第三者に提供しない。

本MOCが終了した場合,両政府は本MOCの下で実施されている活動に対して守秘義務の適用を継続する。

5. 紛争解決

本MOCの解釈,適用,実施から生じるいかなる紛争も,両政府間の協議によって解決される。

(了)