データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 低炭素成長パートナーシップに関する日・ベトナム間の協力覚書

[場所] ハノイ
[年月日] 2013年7月2日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

1. 経済産業大臣を署名者とする日本側及び天然資源環境大臣を署名者とするベトナム側(以下「双方」という。)は,国連気候変動枠組条約(以下「条約」という。)第2条に言及される条約の究極的な目的及び持続可能な開発の達成を追求し,また2013年以降も協力して,引き続き気候変動に取り組むため,次のとおり低炭素成長パートナーシップを推進する。

2. 双方は,低炭素成長に向けた国連の下並びに地域的及び二国間枠組みでの協力のため,様々なレベルで緊密に政策協議を行う。

3. 双方は,ベトナム側における低炭素成長を実現するための投資並びに低炭素技術,製品,システム,サービス及びインフラの普及を促進するため,二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)を創設し,それぞれの国の関連する有効な国内法令に従って実施する。

4. 双方は,JCMを運営するため,合同委員会(Joint Committee)を設置する。

(1)合同委員会は,双方の代表者から構成される。

(2)合同委員会の委員の構成を含む合同委員会運営規則は,双方の協議を通じて定められる。

(3)合同委員会は,JCMに関する規則及びガイドライン類,排出削減又は吸収量の定量化のための方法論,第三者機関の指定に関する要件並びに必要に応じてその他のJCMの実施及び管理に関する事項を策定する。

(4)合同委員会は,定期的に会合を招集し,JCMの実施状況を評価する。

5. 双方は,JCMの下での緩和事業における認証された排出削減又は吸収量を,国際的に表明した日本側の温室効果ガス緩和努力及びベトナム側の国として適切な緩和行動(NAMA)の一部として使用できることを相互に認める。

6. 双方は世界的な温室効果ガスの排出削減又は吸収に向けた具体的行動を促進するために,JCMの堅固な方法論,透明性及び環境十全性を確保するとともに,JCMを簡易で実用的なものとする。

7. 温室効果ガスの排出削減又は吸収量のダブルカウントを回避するため,いずれの側も,JCMの下で登録された緩和事業を,他の国際的な気候緩和メカニズムの目的のためには使用しない。

8. 双方は,JCMを実施していく上で必要な資金,技術及びキャパシティビルディング支援の円滑化のため,緊密に協力する。特に,JCMの実施のため,日本側はベトナム側を支援する。

9. JCMは取引を行わないクレジット制度としてその運用を開始する。双方は,JCMの実施状況を踏まえつつ,取引可能なクレジット制度への移行のための協議を継続し,可能な限り早い段階でそうした協議の結論を得る。

10. 双方は,JCMが取引可能なクレジット制度に移行された後,JCMを通じ,途上国の適応努力を支援すべく,具体的な貢献を目指す。

11. 本パートナーシップは,本文書の署名から2020年に想定されている条約の下での新たな国際的な枠組みが効力を生じ得る時点までの期間を対象とする。双方は,とりわけ,国連の下での気候変動に関する交渉の進展を踏まえつつ,あり得る本パートナーシップの延長につき検討し,本パートナーシップの期限までに結論を得る。

12. 本文書の各内容は,双方間の相互の書面による同意によってのみ修正され得る。

13. 本パートナーシップの解釈,適用及び実施に関するいかなる相違も,双方間の協議によって解決する。

(了)