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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 水銀に関する水俣条約

[場所] 熊本、日本
[年月日] 2013年10月11日
[出典] 環境省
[備考] 仮訳文
[全文]

前文

この条約の締約国は、

 水銀が、その長距離にわたる大気中の移動、人為的に環境にもたらされた場合の残留性、生態系における生物蓄積能力並びに人の健康及び環境への重大な悪影響を理由として、世界的に懸念のある化学物質であることを認識し、

 効率的かつ効果的な一貫した方法で水銀を管理するための国際的行動を開始するとの国際連合環境計画管理理事会の二千九年二月二十日の決定二十五―五を想起し、

 人の健康及び環境に対する危険に対処するための水銀に関する法的拘束力のある国際的な文書についてのり

交渉の成功裡の結果を求めた国際連合持続可能な開発会議の成果文書「我々が求める未来」の の規定を想起し、

 国際連合持続可能な開発会議において環境及び開発に関するリオ宣言の諸原則、特に、共通に有しているが差異のある責任を再確認したことを想起し、また、各国の事情及び能力並びに世界的規模の行動をとる必要性を確認し、

 被害を受けやすい人々、特に女性、児童並びに女性及び児童を介した将来の世代の水銀への曝露{曝にばくとルビ}により、特に、開発途上国において生ずる健康上の懸念を認識し、

 水銀の食物連鎖による蓄積及び伝統的な食品の汚染による北極の生態系及び原住民の社会に特有のぜい弱性に留意し、並びに水銀の影響に関してより一般的に原住民の社会を憂慮し、

 水俣病の重要な教訓、特に水銀による汚染から生ずる健康及び環境への深刻な影響並びに水銀の適切な管理及び将来におけるこのような事態の防止を確保する必要性を認識し、

 水銀の管理に関する国の能力を強化し、及びこの条約の効果的な実施を促進するため、資金、技術及び能力形成に関する支援、特に開発途上国及び移行経済国に対する支援の重要性を強調し、

 水銀に関して人の健康を保護するための世界保健機関の活動並びに関連する環境に関する多数国間協定、特に有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約及び国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約の役割を認識し、

 この条約と環境及び貿易の分野における他の国際協定とが相互に補完的であることを認識し、この条約のいかなる規定も、現行の国際協定に基づく締約国の権利及び義務に影響を及ぼすことを意図するものではないことを強調し、このことは、この条約と他の国際文書との間に序列を設けることを意図するものではないことを了解し、

 この条約のいかなる規定も、締約国が、適用可能な国際法に基づく当該締約国の他の義務に従って、水銀への曝露{曝にばくとルビ}から人の健康及び環境を保護するために、この条約に適合する追加的な国内措置をとることを妨げるものではないことに留意して、

 次のとおり協定した。

 第一条 目的

 この条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出及び放出から人の健康及び環境を保護することを目的と

する。

 第二条 定義

この条約の適用上、

(a)「零細及び小規模の金の採掘」とは、採鉱を行う個別の者又は限られた資本の投資及び生産を行う小企業により実施される金の採掘をいう。

(b)「利用可能な最良の技術」とは、一の締約国又は当該締約国の領域にある一の設備に対する経済的及び技術的考慮を払いつつ、水銀の大気への排出並びに水及び土壌への放出並びにその環境に対する影響を全般的に防止し、又はこれが実行可能でない場合には、当該排出及び放出を削減するための最も効果的な技術をいう。この文脈において、

(i)「最良の」とは、環境全体の保護を全般的に高い水準で達成するに当たり最も効果的であることをいう。

(ii)「利用可能な」技術とは、一の締約国及び当該締約国の領域にある一の設備に関し、当該締約国の領域内で使用されるか否か又は開発されるか否かを問わず、当該設備において操作する者が利用可能であると当該締約国が決定することを条件として、費用及び効果を考慮して、経済的及び技術的に実行可能な条件の下で、関係する産業分野において実施することのできる規模で開発される技術をいう。

(iii)「技術」とは、使用される技術、操業上の慣行並びに設備が設計され、建設され、維持され、操作され、及び廃止される方法をいう。

(c)「環境のための最良の慣行」とは、環境に関する規制措置及び戦略を最適な組合せで適用したものをいう。

(d)「水銀」とは、水銀元素(ケミカル・アブストラクツ・サービス(CAS)番号七四三九―九七―六)をいう。

(e)「水銀化合物」とは、水銀の原子及び一又は二以上の他の元素の原子から成る物質であって、化学反応によってのみ異なる成分に分離することができるものをいう。

(f)「水銀添加製品」とは、意図的に添加された水銀又は水銀化合物を含む製品又は製品の部品をいう。

(g)「締約国」とは、この条約に拘束されることに同意し、かつ、自己についてこの効力が生じている国又は地域的な経済統合のための機関をいう。

(h)「出席し、かつ、投票する締約国」とは、締約国会議に出席し、かつ、賛成票又は反対票を投ずる締約国をいう。

(i)「水銀の一次採掘」とは、主として求める物質が水銀である採掘をいう。

(j)「地域的な経済統合のための機関」とは、特定の地域の主権国家によって構成される機関であって、その構成国からこの条約が規律する事項に関し権限の委譲を受け、かつ、その内部手続に従いこの条約の署名、批准、受諾若しくは承認又はこれへの加入について正当な委任を受けたものをいう。

(k)「許可される用途」とは、締約国によるこの条約に適合する水銀又は水銀化合物の用途をいう(次条から第七条までの規定に適合する用途を含む。)。

 第三条 水銀の供給源及び貿易

1 この条の規定の適用上、

(a)「水銀」という場合には、水銀と他の物質との混合物(水銀の合金を含む。)であって、水銀の濃度が全重量の九十五パーセント以上であるものを含む。

(b)「水銀化合物」とは、塩化第一水銀(甘汞{こうとルビ}と称することもある。)、酸化第二水銀、硫酸第二水銀、硝酸第二水銀、辰(しん)砂及び硫化水銀をいう。

2 この条の規定は、次のものについては、適用しない。

(a)実験室規模の研究のために又は参照の標準として使用される量の水銀又は水銀化合物

(b)水銀以外の金属、鉱石若しくは石炭を含む鉱物製品又はこれらの物質から得られる製品に含まれる天然の微量の水銀又は水銀化合物及び化学製品に含まれる意図的でない微量の水銀又は水銀化合物

(c)水銀添加製品

3 締約国は、この条約が自国について効力を生じた日に自国の領域において行われていなかった水銀の一次採掘を許可してはならない。

4 締約国は、この条約が自国について効力を生じた日に自国の領域において行われていた水銀の一次採掘に限り、この日から最長十五年の期間一次採掘を許可する。当該期間中、水銀の一次採掘から得られる水銀は、第四条の規定に基づく水銀添加製品の製造若しくは第五条の規定に基づく製造工程のためにのみ使用され、又は第十一条の規定に従い、回収、再生利用、回収利用、直接再利用若しくは代替的利用に結びつかない作業によって処分される。

5 締約国は、次のことを行う。

(a)自国の領域内において五十メートル・トンを超える量の水銀又は水銀化合物の個別の在庫及び年間十メートル・トンを超える量の在庫を発生させる水銀の供給源を特定するよう努めること。

(b)当該締約国がクロルアルカリ設備の廃棄から生ずる余剰の水銀が利用可能であると認める場合には、その水銀は、第十一条3(a)に規定する環境上適正な管理のための指針に従い、回収、再生利用、回収利用、直接再利用又は代替的利用に結びつかない作業によって処分されることを確保するための措置をとること。

6 締約国は、次の場合を除くほか、水銀の輸出を許可してはならない。

(a)書面による同意を輸出を行う締約国に提出した締約国に対して次の目的のためにのみ輸出する場合

(i)この条約に基づき輸入を行う締約国に許可された用途

(ii)第十条に規定する環境上適正な暫定的保管

(b)次のことを示す証明書を含む書面による同意を輸出を行う締約国に明示した非締約国に輸出する場合

(i)当該非締約国が、人の健康及び環境の保護を確保し、並びに第十条及び第十一条の規定を遵守することを確保する措置をとっていること。

(ii)水銀がこの条約に基づき締約国に許可される用途又は第十条に規定する環境上適正な暫定的保管のためにのみ使用されること。

7 輸出を行う締約国は、6の規定により必要とされる書面による同意として、輸入を行う締約国又は非締約国が事務局に提出する包括的な通告を利用することができる。当該包括的な通告は、輸入を行う締約国又は非締約国がその同意を与える条件を定める。当該包括的な通告は、当該締約国又は非締約国がいつでも撤回することができる。事務局は、全ての包括的な通告に関する公の登録簿を保管する。

8 締約国は、水銀が3又は5(b)の規定により許可されないと特定された供給源からのものではないことを示す証明書が自国が書面による同意を提出する非締約国から提出された場合を除くほか、当該非締約国からの水銀の輸入を許可してはならない。

9 7の規定に基づき同意に関する包括的な通告を提出する締約国は、水銀の輸出に対する包括的な規制を維持し、かつ、輸入された水銀が環境上適正な方法により管理されることを確保するための国内措置をとっていることを条件として、8の規定を適用しないことを決定することができる。当該締約国は、その決定の通告を自国の輸出制限及び国内の規制措置について記述されている情報並びに非締約国から輸入した水銀の量及び原産国に関する情報を含め、事務局に提出する。事務局は、全ての決定の通告に関する公の登録簿を維持する。実施及び遵守に関する委員会は、第十五条の規定に基づいて当該通告及び補助的な情報の再検討及び評価を行うものとし、適当な場合には、締約国会議に勧告することができる。

10 9に定める手続は、締約国会議の第二回会合の終了の時まで利用可能なものとする。その後、当該手続は、締約国会議が出席し、かつ、投票する締約国の単純多数による議決で別段の決定を行わない限り、締約国会議の第二回会合が終了する前に9の規定に基づいて通告を提出した締約国を除くほか、利用可能なものでなくなる。

11 締約国は、この条に定める要件が満たされていることを示す情報を第二十一条の規定に従って提出する報告に含める。

12 締約国会議は、その第一回会合において、この条の規定、特に5 、6及び8の規定に関する追加的な手引を作成するものとし、6 及び8に規定する証明書の必要とされる記載事項を作成し、及び採択する。

13 締約国会議は、特定の水銀化合物の貿易がこの条約の目的を損なうものであるか否かを評価し、並びに第二十七条の規定に従って採択される追加の附属書に特定の水銀化合物を掲げることによって、当該水銀化合物を6及び8の規定の対象とすべきか否かを検討する。

 第四条 水銀添加製品

1 締約国は、附属書Aにおいて適用除外を定める場合又は第六条の規定に従って当該締約国が適用除外を登録した場合を除くほか、附属書A第Ⅰ部に掲げる水銀添加製品に関して定める段階的廃止期限の後は、適当な措置をとることにより、当該水銀添加製品の製造、輸入又は輸出を許可しないものとする。

2 締約国は、1の規定を適用する代わりに、批准の時又は自国について附属書Aの改正が効力を生ずる時に、附属書A第Ⅰ部に掲げる製品に対処するための異なる措置又は戦略を実施することを明示することができる。締約国は、この代替手段を用いる旨の決定を事務局に通報する時に、附属書A第Ⅰ部に掲げる製品のうちの大多数の製造、輸入及び輸出をわずかな水準に既に削減していること並びに附属書A第Ⅰ部に掲げていない製品について水銀の使用を削減するための措置又は戦略を実施していることを証明することができる場合に限り、この代替手段を選択することができる。さらに、この代替手段を選択する締約国は、次のことを遵守する。

(a)達成した削減量を含む実施した措置又は戦略に関する説明を締約国会議に対して最初の機会に報告すること。

(b)附属書A第Ⅰ部に掲げる製品のうちわずかな水準に達していない製品について水銀の使用を削減するための措置又は戦略を実施すること。

(c)更なる削減を達成するための追加の措置を検討すること。

(d)この代替手段が選択された種類の製品について第六条の規定に基づく適用除外を請求する資格を有しないこと。

 締約国会議は、8の規定に基づく再検討の過程の一環として、この条約が効力を生じた日の後五年以内にこの2の規定に従ってとられた措置の進捗状況及び有効性を再検討する。

3 締約国は、附属書A第Ⅱ部に掲げる水銀添加製品について、同附属書第Ⅱ部の規定に従って措置をとる。

4 事務局は、締約国により提供される情報に基づき水銀添加製品及びその代替製品に関する情報を収集し、及び維持するものとし、また、当該情報を公に利用可能なものとする。事務局は、締約国により提出される他の関連する情報についても公に利用可能なものとする。

5 締約国は、この条の規定に従い自国について製造、輸入及び輸出が許可されていない水銀添加製品が組み立てられた製品に組み込まれることを防止する措置をとる。

6 締約国は、水銀添加製品の危険及び利益の評価によって環境又は人の健康に対する利益が明示されない限り、水銀添加製品の用途であって、自国についてこの条約が効力を生ずる日に先立って知られているものに該当しない水銀添加製品の製造及び商業上の流通を抑制する。締約国は、適当な場合には、当該水銀添加製品の環境及び人の健康に対する危険及び利益に関する情報を含む当該水銀添加製品に関する情報を事務局に提供する。事務局は、当該情報を公に利用可能なものとする。

7 締約国は、水銀添加製品を附属書Aに掲げるための提案を事務局に提出することができる。この提案には、4の規定に基づく情報を考慮して、水銀添加製品の代替製品であって水銀を含まないものに関する利用可能性、技術的及び経済的な実現可能性並びに環境及び健康に対する危険及び利益に関連する情報を含む。

8 締約国会議は、この条約が効力を生じた日の後五年以内に、附属書Aを再検討するものとし、第二十七条の規定に従って同附属書の改正を検討することができる。

9 締約国会議は、8の規定に基づいて附属書Aの規定を再検討するに当たり、少なくとも次のものを考慮する。

(a)7の規定に基づいて提出された提案

(b)4の規定に基づいて利用可能となった情報

(c)水銀を含まない代替製品であって、環境及び人の健康に対する危険及び利益を考慮に入れた技術的及び経済的に実現可能なものの締約国における利用可能性

 第五条 水銀又は水銀化合物を使用する製造工程

1 この条及び附属書Bの規定の適用上、水銀又は水銀化合物を使用する製造工程には、水銀添加製品を使用する工程、水銀添加製品を製造する工程又は水銀を含む廃棄物を処理する工程を含まない。

2 締約国は、次条の規定に従って当該締約国が適用除外を登録した場合を除くほか、個別の製造工程について附属書Bに規定する段階的廃止期限の後は、同附属書第Ⅰ部に掲げる製造工程における水銀又は水銀化合物の使用について、適当な措置をとることにより、許可しないものとする。

3 締約国は、附属書B第Ⅱ部に掲げる製造工程における水銀又は水銀化合物の使用を同附属書第Ⅱ部の規定に従って制限する措置をとる。

4 事務局は、締約国により提供される情報に基づき、水銀又は水銀化合物を使用する工程及びその代替となる工程に関する情報を収集し、及び維持するものとし、当該情報を公に利用可能なものとする。締約国は、他の関連する情報を提出することができ、事務局は、当該情報を公に利用可能なものとする。

5 附属書Bに掲げる製造工程において水銀又は水銀化合物を使用する一又は二以上の設備を有する締約国は、次のことを行う。

(a)当該設備からの水銀又は水銀化合物の排出及び放出について対処するための措置をとること。

(b)第二十一条の規定に基づいて提出する報告に、この5の規定に従ってとった措置に関する情報を含めること。

(c)附属書Bに掲げる製造工程において水銀又は水銀化合物を使用する自国の領域内における設備を特定することに努め、かつ、この条約が自国について効力を生じた日の後三年以内に、当該設備の数及び種類並びに当該設備において使用される水銀又は水銀化合物の年間使用量の見積りを事務局に提出すること。事務局は、当該情報を公に利用可能なものとする。

6 締約国は、自国についてこの条約が効力を生ずる日に先立って存在しなかった設備について、附属書Bに掲げる製造工程における水銀又は水銀化合物の使用を許可してはならない。当該設備は、適用除外の対象とならない。

7 締約国は、水銀又は水銀化合物が意図的に使用される他の製造工程であって、この条約が効力を生ずる日に先立って存在しないものが環境上及び健康上の重大な利益をもたらし、かつ、このような利益をもたらす技術的及び経済的に実行可能な水銀を含まない代替となる工程が利用可能でないことを締約国会議が満足するように当該締約国が証明することができる場合を除くほか、当該製造工程を用いる設備の開発を抑制する。

8 締約国は、関連する新たな技術的発展並びに経済的及び技術的に実行可能な水銀を含まない代替となる工程に関する情報並びに附属書Bに掲げる製造工程における水銀及び水銀化合物の使用並びに当該製造工程からの水銀及び水銀化合物の排出及び放出を削減し、及び実行可能な場合には廃絶するための可能な措置及び技術に関する情報を交換することが奨励される。

9 締約国は、水銀又は水銀化合物を使用する製造工程を掲げるために附属書Bを改正する提案を提出することができる。締約国は、当該製造工程に代わる水銀を含まない工程の利用可能性、当該工程の技術的及び経済的な実行可能性並びに当該工程の環境及び健康に対する危険及び利益に関連する情報を含める。

10 締約国会議は、この条約が効力を生じた日の後五年以内に、附属書Bを再検討するものとし、第二十七条の規定に従って同附属書の改正を検討することができる。

11 締約国会議は、10の規定に基づいて附属書Bを再検討するに当たり、少なくとも次のものを考慮する。

(a)9の規定に基づいて提出された提案

(b)4の規定に基づいて利用可能となった情報

(c)環境及び健康に対する危険及び利益を考慮に入れた技術的及び経済的に実行可能な水銀を含まない代替となる工程の締約国における利用可能性

 第六条 要請により締約国が利用可能な適用除外

1 いずれの国又は地域的な経済統合のための機関も、次のいずれかの時に事務局に対する書面による通告を行うことにより、附属書A及び附属書Bに掲げる段階的廃止期限の適用除外(以下「適用除外」という。)を一又は二以上登録することができる。登録には、締約国の適用除外の必要性を説明する文書を付する。

(a)この条約の締約国となる時

(b)附属書Aの改正により加えられた水銀添加製品又は附属書Bの改正により加えられた水銀を使用する製造工程の場合には、適用される改正がその締約国について効力を生ずる日まで

2 適用除外は、附属書A若しくは附属書Bに掲げる分類又はいずれかの国若しくは地域的な経済統合のための機関により特定される準分類のいずれかについて登録することができる。

3 一又は二以上の適用除外を有する締約国については、登録簿に掲げる。事務局は、この登録簿を作成し、及び維持し、並びに公に利用可能なものとする。

4 登録簿には、次のものを含む。

(a)一又は二以上の適用除外を有する締約国の表

(b)各締約国が登録した適用除外

(c)個別の適用除外が効力を失う日

5 締約国が登録簿に一層短い期間を示す場合を除くほか、1の規定に基づく全ての適用除外は、附属書A又は附属書Bに掲げる関連する段階的廃止期限の後五年で効力を失う。

6 締約国会議は、締約国の要請により、当該締約国が一層短い期間を要請しない限り、適用除外を五年の期間延長することを決定することができる。その決定を行うに当たり、締約国会議は、次のものを十分に考慮する。適用除外は、製品ごとの段階的廃止期限につき一回のみ延長することができる。

(a)適用除外の延長の必要性を正当化し、並びに適用除外の必要性をできる限り速やかに除去するために実施され、及び計画された活動の概要を示す締約国からの報告

(b)水銀を含まず、又は適用除外の製品若しくは製造工程における使用より少ない水銀を使用する代替製品及び代替の工程の利用可能性に関するものを含む入手可能な情報

(c)水銀の環境上適正な保管及び水銀廃棄物の処分を行うための計画されている又は進行中の活動

7 締約国は、事務局に対する書面による通告を行うことにより、いつでも適用除外を取り消すことができる。その取消しは、当該通告に指定する日に効力を生ずる。

8 1の規定にかかわらず、一又は二以上の締約国が附属書A又は附属書Bに掲げる製品又は工程に関する適用除外であって6の規定に基づいて延長されたものの登録を維持しない限り、いずれの国又は地域的な経済統合のための機関も、当該製品又は工程の段階的廃止期限から五年を経過した後に適用除外を登録することはできない。この場合において、国又は地域的な経済統合のための機関は、1(a)及び(b)に定める時に当該製品又は工程の適用除外を登録することができるが、この適用除外は、該当する段階的廃止期限の後十年で効力を失う。

9 いずれの締約国の適用除外も、附属書A又は附属書Bに掲げる製品又は工程の段階的廃止期限から十年を経過した後は、効力を有することができない。

 第七条 零細及び小規模の金の採掘

1 この条及び附属書Cに規定する措置は、鉱石から金を抽出するために水銀アマルガム法が使用される零細及び小規模の金の採掘及び加工について適用する。

2 自国の領域内においてこの条の規定の対象となる零細及び小規模の金の採掘及び加工を行う締約国は、当該採掘及び加工における水銀及び水銀化合物の使用並びに当該採掘及び加工から生ずる水銀の環境への排出及び放出を削減し、及び実行可能な場合には廃絶するための措置をとる。

3 締約国は、自国の領域内における零細及び小規模の金の採掘及び加工が軽微な量を超えたと認定する場合にはいつでも、事務局に通報する。当該締約国は、その認定を行った場合には、次のことを行う。

(a)附属書Cの規定に従って国の行動計画を作成し、及び実施すること。

(b)この条約が自国について効力を生じた日から三年後又は事務局に通報した日から三年後のうちいずれか遅い時までに、自国の行動計画を事務局に提出すること。

(c)その後は、この条の規定に基づく自国の義務の履行に向けての進捗状況について三年ごとに再検討し、及び第二十一条の規定に従って提出する報告にその再検討を含めること。

4 締約国は、この条の目的を達成するため、相互に及び関連する政府間機関その他主体と適当な場合には協力することができる。その協力には、次のものを含めることができる。

(a)零細及び小規模の金の採掘及び加工において使用する水銀又は水銀化合物の転用を防止する戦略の策定

(b)教育、広報及び能力形成のための自発的活動

(c)水銀を含まない持続可能な代替的な方法に関する研究の促進

(d)技術及び資金の援助の提供

(e)この条の規定に基づく約束の履行を支援するためのパートナーシップ

(f)環境上、技術上、社会上及び経済上実行可能な知識、環境のための最良の慣行及び代替技術を普及させる既存の情報交換についての制度の利用

 第八条 排出

1 この条の規定は、附属書Dに掲げる発生源の分類に該当する特定可能な発生源からの排出を規制するための措置を通じ、水銀及び水銀化合物(しばしば「総水銀」と表される。)の大気への排出を規制し、及び実行可能な場合には削減することに関するものである。

2 この条の規定の適用上、

(a)「排出」とは、水銀又は水銀化合物の大気への排出をいう。

(b)「関係する発生源」とは、附属書Dに掲げる発生源の分類の一に該当する発生源をいう。締約国は、いずれかの分類に関する基準が当該分類からの排出量の少なくとも七十五パーセントを含む場合に限り、選択により、附属書Dに掲げる発生源の分類の対象となる発生源を特定するための基準を定めることができる。

(c)「新規の発生源」とは、附属書Dに掲げる分類に該当する関係する発生源であって、次の(i)又は(ii)に規定する日の少なくとも一年後に建設又は実質的な改修が開始されるものをいう。

 (i)この条約が関係締約国について効力を生ずる日

 (ii)発生源が附属書Dの改正によってのみこの条約の対象となる場合において、当該改正が関係締約国について効力を生ずる日

(d)「実質的な改修」とは、排出の実質的な増加をもたらす関係する発生源の改修をいう。ただし、副産物の回収から生ずる排出に関する変化を除く。改修が実質的であるか否かの判断は、当該発生源がある締約国が行う。

(e)「既存の発生源」とは、新規の発生源でない関係する発生源をいう。

(f)「排出限度値」とは、特定可能な発生源から排出される水銀又は水銀化合物(しばしば「総水銀」と表される。)の濃度、質量又は排出率の上限値をいう。

3 関係する発生源を有する締約国は、排出を規制するための措置をとるものとし、当該措置並びに期待される対象、目標及び結果を定める自国の計画を作成することができる。締約国は、この条約が当該締約国について効力を生ずる日の後四年以内に自国の計画を締約国会議に提出する。締約国が第二十条の規定に従って実施計画を作成する場合には、当該締約国は、この3の規定に従って作成した自国の計画を当該実施計画に含めることができる。

4 各締約国は、新規の発生源に関し、排出を規制し、及び実行可能な場合には削減するため、できる限り速やかに、遅くともこの条約が自国について効力を生ずる日の後五年以内に、利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行の利用を義務付ける。締約国は、利用可能な最良の技術の適用に適合する排出限度値を使用することができる。

5 各締約国は、既存の発生源に関し、できる限り速やかに、遅くともこの条約が自国について効力を生ずる日の後十年以内に、次の措置のうち一又は二以上の措置を、自国の事情並びに当該措置の経済的及び技術的な実行可能性及び妥当性を考慮の上、自国の計画に含め、及び実施する。

(a)関係する発生源からの排出を規制するため及び実行可能な場合には排出を削減するための数量化された目標

(b)関係する発生源からの排出を規制するため及び実行可能な場合には排出を削減するための排出限度値

(c)関係する発生源からの排出を規制するための利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行の利用

(d)複数の汚染物質の規制に関する戦略であって、水銀の排出の規制について相互の利益をもたらすもの

(e)関係する発生源からの排出を削減するための代替的な措置

6 締約国は、全ての関係する既存の発生源に対して同一の措置を適用し、又は異なる発生源の分類に関して異なる措置を採択することができる。締約国により適用される措置は、長期的にみて排出の削減における合理的な進展を達成することを目的とする。

7 締約国は、できる限り速やかに、遅くともこの条約が自国について効力を生ずる日の後五年以内に、関係する発生源からの排出に関する目録を作成し、その後は維持する。

8 締約国会議は、その第一回会合において、次の手引を採択する。

(a)新規の発生源と既存の発生源との相違及び複数の環境媒体にまたがる影響を最小限にする必要性を考慮に入れた利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行に関する手引

(b)5に規定する措置の実施、特に目標の決定及び排出限度値の設定における締約国に対する支援に関する手引

9 締約国会議は、できる限り速やかに、次の手引を採択する。

(a)締約国が2(b)の規定に従って作成する基準に関する手引

(b)排出に関する目録の作成方法に係る手引

10 締約国会議は、8及び9の規定に従って作成する手引を常に再検討し、適当な場合には更新する。締約国は、この条の関連する規定を実施するに当たり、この手引を考慮する。

11 締約国は、第二十一条の規定に従って提出する報告に、この条の規定の実施に関する情報、特に4から7までの規定に従ってとる措置及びその効果に関する情報を含める。

 第九条 放出

1この条の規定は、この条約の他の規定の対象となっていない関係する特定可能な発生源からの水銀及び水銀化合物(しばしば「総水銀」と表される。)の土壌及び水への放出を規制し、及び実行可能な場合には削減することに関するものである。

2 この条の規定の適用上、

(a)「放出」とは、水銀又は水銀化合物の土壌又は水への放出をいう。

(b)「関係する発生源」とは、締約国が特定した重大かつ人為的な放出の特定可能な発生源であって、この条約の他の規定の対象となっていないものをいう。

(c)「新規の発生源」とは、この条約が関係締約国について効力を生ずる日の少なくとも一年後に建設又は実質的な改修が開始される関係する発生源をいう。

(d)「実質的な改修」とは、放出の実質的な増加をもたらす関係する発生源の改修をいう。ただし、副産物の回収から生ずる放出に関する変化を除く。改修が実質的であるか否かの判断は、当該発生源がある締約国が行う。

(e)「既存の発生源」とは、新規の発生源でない関係する発生源をいう。

(f)「放出限度値」とは、特定可能な発生源から放出される水銀又は水銀化合物(しばしば「総水銀」と表される。)の濃度又は質量の上限値をいう。

3 締約国は、この条約が自国について効力を生ずる日の後三年以内に及びその後は定期的に、関係する特定可能な発生源の分類を特定する。

4 関係する発生源を有する締約国は、放出を規制するための措置をとるものとし、当該措置並びに期待される対象、目標及び結果を定める自国の計画を作成することができる。締約国は、この条約が当該締約国について効力を生ずる日の後四年以内に自国の計画を締約国会議に提出する。締約国が第二十条の規定に従って実施計画を作成する場合には、当該締約国は、この4の規定に従って作成した自国の計画を当該実施計画に含めることができる。

5 4に規定する措置には、適当な場合には、次に掲げるもののうち一又は二以上のものを含める。

(a)関係する発生源からの放出を規制するため及び実行可能な場合には放出を削減するための放出限度値

(b)関係する発生源からの放出を規制するための利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行の利用

(c)複数の汚染物質の規制に関する戦略であって、水銀の放出の規制について相互の利益をもたらすもの

(d)関係する発生源からの放出を削減するための代替的な措置

6 締約国は、できる限り速やかに、遅くともこの条約が自国について効力を生ずる日の後五年以内に、関係する発生源からの放出に関する目録を作成し、その後は維持する。

7 締約国会議は、できる限り速やかに、次の手引を採択する。

(a)新規の発生源と既存の発生源との相違及び複数の環境媒体にまたがる影響を最小限にする必要性を考慮に入れた利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行に関する手引

(b)放出に関する目録の作成方法に係る手引

8 締約国は、第二十一条の規定に従って提出する報告に、この条の規定の実施に関する情報、特に3から6までの規定に従ってとる措置及びその効果に関する情報を含める。

 第十条 水銀廃棄物以外の水銀の環境上適正な暫定的保管

1 この条の規定は、第三条に定義する水銀及び水銀化合物であって次条に定める水銀廃棄物の定義に該当しないものの暫定的保管について適用する。

2 締約国は、3の規定に従って採択される指針を考慮し、及び同規定に従って採択される要件に従い、この条約によって締約国に許可される用途のための1に規定する水銀及び水銀化合物の暫定的保管が環境上適正な方法で行われることを確保するための措置をとる。

3 締約国会議は、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約に基づいて作成された関連する指針その他の関連する手引を考慮して、1に規定する水銀及び水銀化合物の環境上適正な暫定的保管に関する指針を採択する。締約国会議は、暫定的保管に関する要件を第二十七条の規定に従ってこの条約の追加の附属書において採択することができる。

4 締約国は、1に規定する水銀及び水銀化合物の環境上適正な暫定的保管に関する能力形成を促進するため、適当な場合には、相互に及び関連する政府間機関その他主体と協力する。

 第十一条 水銀廃棄物

1 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(以下この条において「バーゼル条約」という。)の関連する定義は、バーゼル条約の締約国に関し、この条約の対象となる廃棄物について適用する。バーゼル条約の締約国でないこの条約の締約国は、当該関連する定義をこの条約の対象となる廃棄物について適用する手引として使用する。

2 この条約の適用上、「水銀廃棄物」とは、締約国会議がバーゼル条約の関連機関との協力の下に調和のとれた方法で定める適切な基準値を超える量の次の物質又は物体であって、処分され、処分が意図され、又は国内法若しくはこの条約の規定により処分が義務付けられているものをいう。

(a)水銀又は水銀化合物から成る物質又は物体

(b)水銀又は水銀化合物を含む物質又は物体

(c)水銀又は水銀化合物に汚染された物質又は物体

  この定義は、締約国会議が定める基準値を超える水銀又は水銀化合物を含まない限り、採掘された表土、捨石及び尾鉱(水銀の一次採掘によるものを除く。)を除く。

3 締約国は、水銀廃棄物が次のように取り扱われるために適当な措置をとる。

(a)バーゼル条約に基づいて作成された指針を考慮し、かつ、第二十七条の規定に従って締約国会議が採択する追加の附属書の要件に従い、環境上適正な方法で管理すること。締約国会議は、要件を策定するに当たり、締約国の廃棄物管理のための規則及び計画を考慮する。

(b)この条約によって締約国に許可される用途又は(a)の規定に基づく環境上適正な処分のためにのみ、回収され、再生利用され、回収利用され、又は直接再利用されること。

(c)バーゼル条約の締約国については、この条の規定及びバーゼル条約に適合する環境上適正な処分を目的とする場合を除くほか、国境を越えて輸送されないこと。バーゼル条約が国境を越える輸送について適用されない場合には、締約国は、関連する国際的な規則、基準及び指針を考慮した後に限り、このような輸送を許可する。

4 締約国会議は、3(a)に規定する指針を適当な場合には再検討し、及び更新するに当たり、バーゼル条約の関連する機関と緊密に協力するよう努める。

5 締約国は、環境上適正な方法で水銀廃棄物を管理するための世界的な、地域的な及び国内の能力を開発し、及び維持するため、適当な場合には相互に及び関連する政府間機関その他主体と協力することが奨励される。

 第十二条 汚染された場所

1 締約国は、水銀又は水銀化合物により汚染された場所を特定し、及び評価するための適当な戦略を策定するよう努める。

2 汚染された場所がもたらす危険を減少させるための措置は、適当な場合には当該汚染された場所に含まれる水銀又は水銀化合物による人の健康及び環境に対する危険性の評価を取り入れ、環境上適正な方法で行われる。

3 締約国会議は、汚染された場所の管理に関する手引であって、次の事項に関する方法及び取組方法を含むものを採択する。

(a)場所の特定及び特性の評価

(b)公衆の関与

(c)人の健康及び環境に対する危険性の評価

(d)汚染された場所がもたらす危険の管理に係る選択肢

(e)効果及び費用の評価

(f)成果の検証

4 締約国は、汚染された場所を特定し、評価し、優先順位を決定し、管理し、及び適当な場合には修復するための戦略の策定及び活動の実施において協力することが奨励される。

 第十三条 資金及び資金供与の制度

1 締約国は、その能力の範囲内で、自国の政策、優先度及び計画に従い、この条約の実施を意図する各国の活動に関する資金を提供することを約束する。この資金には、関係する政策、開発戦略及び自国の予算を通じた国内の資金調達、二国間及び多数国間における資金調達並びに民間部門の関与を含むことができる。

2 開発途上締約国によるこの条約の実施の全般的な有効性は、この条の規定の効果的な実施に関連する。

3 多数国間、地域及び二国間の資金援助及び技術援助並びに能力形成及び技術移転に係る提供元は、資金、技術援助及び技術移転に関連するこの条約の実施において開発途上締約国を支援するに当たり、緊急性に基づいて、自己の水銀に係る活動を強化し、及び拡大することが奨励される。

4 締約国は、資金供与に関する措置をとるに当たり、開発途上にある島嶼{しよとルビ}国及び後発開発途上国である締約国の特定のニーズ及び特別な事情を十分に考慮する。

5 適当かつ予測可能な及び時宜を得た資金供与を行うための制度について、ここに定める。当該制度は、開発途上締約国及び移行経済締約国のこの条約に基づく義務の履行を支援するものである。

6 5に規定する制度には、次のものを含む。

(a)地球環境基金の信託基金

(b)能力形成及び技術援助を支援する特定の国際的な計画

7 地球環境基金の信託基金は、締約国会議が合意したこの条約の実施を支援するための費用を負担するため、新たな、予測可能かつ適当な及び時宜を得た資金を供与する。この条約の適用上、同信託基金は、締約国会議の指導の下に運営され、締約国会議に対して責任を負う。締約国会議は、全般的な戦略、政策、計画の優先度並びに資金へのアクセス及び資金の利用のための資格に関する手引を提供する。さらに、締約国会議は、同信託基金から支援を得ることができる活動の種類を示す一覧表に関する手引を提供する。同信託基金は、地球環境の利益に係る合意された増加費用及びこの条約の実施を可能にするための活動に係る全ての合意された費用に充てるための資金を供与する。

8 地球環境基金の信託基金は、活動への資金を供与するに際し、提案された活動の費用と比較した当該活動による水銀の削減の可能性を考慮すべきである。

9 この条約の適用上、6(b)に規定する計画は、締約国会議の指導の下に運営され、締約国会議に対して責任を負う。締約国会議は、その第一回会合において、当該計画を主催する既存の主体である機関を決定し、手引(当該機関が主催する期間に関するものを含む。)を提供する。全ての締約国その他の利害関係者は、当該計画への資金供与を任意に行うよう要請される。

10 締約国会議及び資金供与の制度を構成する主体は、締約国会議の第一回会合において、前記の規定を実施するための取決めについて合意する。

11 締約国会議は、その第三回会合が終了する時までに及びその後は定期的に、資金供与の水準、この条に基づいて設けられる資金供与の制度の運営を委託された主体に締約国会議が提供する手引、当該主体の有効性並びに当該主体が開発途上締約国及び移行経済締約国の変化するニーズに対処する能力について再検討する。締約国会議は、その再検討に基づき、当該制度の有効性を高めるために適当な措置をとる。

12 全ての締約国は、その能力の範囲内で、資金供与の制度への貢献が要請される。当該制度は、民間部門を含む他の提供元からの資金供与を奨励するものとし、また、支援する活動のためにその資金を活用するよう努める。

 第十四条 能力形成、技術援助及び技術移転

1 締約国は、その能力の範囲内で、開発途上締約国、特に後発開発途上国又は開発途上にある島嶼{しよとルビ}国である締約国及び移行経済締約国がこの条約に基づく義務を履行することを援助するため、適時のかつ適当な能力形成及び技術援助を提供するために協力する。

2 1及び前条の規定に基づく能力形成及び技術援助は、地域的な、小地域的な及び国内の取決め(既存の地域及び小地域のセンターに係るものを含む。)その他二国間及び多数国間の手段並びにパートナーシップ(民間部門が関与するパートナーシップを含む。)により提供することができる。化学物質及び廃棄物の分野における他の環境に関する多数国間協定との協力及び調整は、技術援助及びその提供の効果を高めるために追求されるべきである。

3 先進締約国その他の締約国は、その能力の範囲内で、開発途上締約国、特に後発開発途上国及び開発途上にある島嶼{しよとルビ}国並びに移行経済締約国がこの条約を効果的に実施する能力を強化するため、当該締約国のための最新の環境上適正な代替技術の開発、移転、普及及び取得の機会の提供について、適当な場合には民間部門その他の利害関係者の支援を得て促進し、及び円滑にする。

4 締約国会議は、その第二回会合までに及びその後は定期的に、締約国からの意見及び報告(第二十一条に規定する報告を含む。)並びに他の利害関係者によって提供された情報を考慮して、次のことを行う。

(a)代替技術に関連する既存の自発的活動及び進歩に関する情報について検討すること。

(b)締約国、特に開発途上締約国の代替技術に関するニーズについて検討すること。

(c)締約国、特に開発途上締約国が技術移転において直面する課題を特定すること。

5 締約国会議は、能力形成、技術援助及び技術移転をこの条に基づいていかなる方法で一層強化することができるかについて勧告する。

 第十五条 実施及び遵守に関する委員会

1 この条約の全ての規定の実施を促進し、及び遵守を再検討するため、締約国会議の補助機関としての委員会を含む仕組みをこの条約により設ける。委員会を含むこの仕組みは、円滑化を図るためのものとし、各締約国の能力及び事情に特別の注意を払う。

2 委員会は、この条約の全ての規定の実施を促進し、及び遵守を再検討する。委員会は、実施及び遵守に関する個別の及び組織的な事項を審査し、並びに適当な場合には締約国会議に勧告する。

3 委員会は、国際連合の五の地域に基づいて地理的に衡平に代表されることに妥当な考慮を払った上で、締約国によって指名され、締約国会議によって選出される十五人の委員により構成される。最初の委員は、締約国会議の第一回会合において選出され、その後は5の規定に基づいて締約国会議が承認した手続規則に従って選出される。委員会の委員は、この条約に関する分野における能力を有し、及び専門的知識の適当な均衡を反映させる。

4 委員会は、次のものに基づいて問題を検討することができる。

(a)締約国による自国の遵守に関する意見書

(b)第二十一条の規定に基づく各国の報告

(c)締約国会議による要請

5 委員会は、締約国会議の第二回会合において承認を得ることを条件として、当該委員会の手続規則を作成する。締約国会議は、委員会に関する更なる付託事項を採択することができる。

6 委員会は、コンセンサス方式により勧告を採択するためにあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらずコンセンサスに達しない場合には、勧告は、最後の解決手段として、定足数を委員の三 分の二とし、出席し、かつ、投票する委員の四分の三以上の多数による議決で採択する。

 第十六条 健康に関する側面

1 締約国は、次のことが奨励される。

(a)危険にさらされている人々、特に、被害を受けやすい人々を特定し、及び保護するための戦略及び計画の作成及び実施を促進すること。この戦略及び計画には、健康に関する科学的根拠に基づく指針であって、水銀及び水銀化合物への曝露{曝にばくとルビ}に関連するものの採択、適当な場合には水銀への曝露{曝にばくとルビ}を減少させるための目標の設定並びに公衆衛生その他の関係する分野の参加を得た公衆のための教育を含めることができる。

(b)教育及び予防に関する科学的根拠に基づく計画であって、水銀及び水銀化合物への業務上の曝露{曝にばくとルビ}に関するものの作成及び実施を促進すること。

(c)水銀又は水銀化合物への曝露{曝にばくとルビ}によって影響を受ける人々に対する予防、治療及び保護のための適当な保健サービスを促進すること。

(d)適当な場合には、水銀及び水銀化合物への曝露{曝にばくとルビ}に関連する健康上の危険の防止、診断、治療及び監視のため、制度的能力及び保健関係の専門的能力を確立し、及び強化すること。

2 締約国会議は、健康に関する事項又は活動を考慮するに当たり、次のことを行うべきである。世界保健機関、国際労働機関及び適当な場合には関連する他の政府間機関と協議し、及び協力すること。

(a)世界保健機関、国際労働機関及び適当な場合には関連する他の政府間機関との協調及び情報の交換を促進すること。

 第十七条 情報の交換

1 締約国は、次の情報の交換を円滑にする。

(a)水銀及び水銀化合物に関する科学的、技術的及び経済的な情報並びに法律に関する情報(毒物学上及び生態毒物学上の情報並びに安全性に関する情報を含む。)

(b)水銀及び水銀化合物の製造、使用、貿易、排出及び放出の削減又は廃絶に関する情報

(c)次に掲げるものの技術的及び経済的に実行可能な代替に関する情報(その代替に関する健康及び環境に対する危険並びに経済的及び社会的な費用及び効果についての情報を含む。)

(i)水銀添加製品

(ii)水銀又は水銀化合物を使用する製造工程

(iii)水銀又は水銀化合物を排出し、又は放出する活動及び工程

(d)水銀及び水銀化合物への曝露{曝にばくとルビ}に伴う健康に対する影響についての疫学的情報であって、世界保健機関及び適当な場合には関連する他の機関との緊密な協力におけるもの

2 締約国は、事務局を通じて直接に又は適当な場合には化学物質及び廃棄物に関する条約の事務局を含む関連する他の機関との協力を通じて、1に規定する情報を交換することができる。

3 事務局は、この条に規定する情報の交換における協力及び環境に関する多数国間協定の事務局その他国際的な自発的活動を含む関連する機関との協力を円滑にする。当該情報は、締約国からの情報のほかに、水銀の分野に専門的知識を有する政府間機関、非政府機関並びに国内的及び国際的な機関からの情報を含む。

4 締約国は、この条約に基づく情報の交換(輸入を行う締約国の第三条の規定に基づく同意に関するものを含む。)のための国内の一の中央連絡先を指定する。

5 この条約の適用上、人及び環境の衛生及び安全に関する情報は、秘密のものとされない。この条約に基づいて他の情報を交換する締約国は、相互の合意により秘密の情報を保護する。

 第十八条 公衆のための情報、啓発及び教育

1 締約国は、その能力の範囲内で、次の活動を促進し、及び円滑にする。

(a)次のものに関する入手可能な情報を公衆に提供すること。

(i)水銀及び水銀化合物の健康及び環境への影響

(ii)水銀及び水銀化合物の代替物質

(iii)前条1に規定する題材

(iv)次条の規定に基づく研究、開発及び監視の活動の結果

(v)この条約に基づく義務を履行するための活動

(b)適当な場合には、関連する政府間機関及び非政府機関並びに被害を受けやすい人々との協力の下に、水銀及び水銀化合物への曝露{曝にばくとルビ}が人の健康及び環境に及ぼす影響に関連する教育、訓練及び啓発

2 締約国は、人の活動を通じて排出され、放出され、又は処分される水銀及び水銀化合物の年間推定量に関する情報の収集及び普及のため、既存の制度を利用し、又は可能な場合には汚染物質の排出及び移動についての登録等の制度を設けることを考慮する。

 第十九条 研究、開発及び監視

1 締約国は、各締約国の事情及び能力を考慮して、次のものの開発及び改良のため協力することに努める。

(a)水銀及び水銀化合物の使用、消費、大気への人為的な排出並びに水及び土壌への人為的な放出に関する目録

(b)被害を受けやすい人々及び環境媒体(魚類、海産哺乳動物、うみがめ類、鳥類等の生物的な媒体を含む。)における水銀及び水銀化合物の水準の数理的モデル化及び地理的に代表的な監視並びに関連する適当なサンプルの収集及び交換における協力

(c)水銀及び水銀化合物による社会的、経済的及び文化的な影響(特に、被害を受けやすい人々に関するもの)に加え、人の健康及び環境に対する影響についての評価

(d)(a)から(b)までの規定に基づいて行われる活動のための調和のとれた手法

(e)生態系の範囲における水銀及び水銀化合物の環境サイクル並びに自然の作用による移動(長距離にわたる移動及び堆積を含む。)、変換及び運命に関する情報であって、水銀の排出及び放出が人為的であるか天然であるかの区別並びに歴史的な堆積からの水銀の再移動を適当に考慮したもの

(f)水銀及び水銀化合物並びに水銀添加製品の商取引及び貿易に関する情報

(g)水銀を含まない製品及び工程の技術的及び経済的な利用可能性に関する情報及び研究並びに水銀及び水銀化合物の排出及び放出の削減及び監視のための利用可能な最良の技術及び環境のための最良の慣行に関する情報及び研究

2 締約国は、適当な場合には、1に規定する活動の実施に当たり、既存の監視網及び研究計画を基礎とすべきである。

 第二十条 実施計画

1 締約国は、当初の評価の後、国内の事情を考慮して、この条約の義務を履行するために実施計画を作成し、及び実施することができる。当該実施計画は、作成の後、速やかに事務局に提出すべきである。

2 締約国は、国内の事情を考慮し、かつ、締約国会議による手引その他の関連する手引を参照して、自国の実施計画を再検討し、及び更新することができる。

3 締約国は、1及び2に規定する作業を行うに当たり、自国の実施計画の作成、実施、再検討及び更新を円滑にするため、国内の利害関係者と協議すべきである。

4 締約国は、また、この条約の実施を円滑にするため、地域の計画についても調整することができる。

 第二十一条 報告

1 締約国は、この条約を実施するためにとった措置並びにこの条約の目的を達成する上での当該措置の効果及び生じ得る課題について、事務局を通じて締約国会議に報告する。

2 締約国は、この条約の第三条、第五条及び第七条から第九条までに定める情報を自国の報告に含める。

3 締約国会議は、その第一回会合において、関連する他の化学物質及び廃棄物に関する条約との間で報告を調整することが望ましいことを考慮して、締約国が従う報告の時期と様式について決定する。

 第二十二条 有効性の評価

1 締約国会議は、この条約の効力発生の日から六年以内に及びその後は締約国会議が決定する間隔で定期的に、この条約の有効性を評価する。

2 評価を円滑にするため、締約国会議は、その第一回会合において、環境における水銀及び水銀化合物の存在及び移動に関する比較可能な監視に基づく資料並びに生物的な媒体及び被害を受けやすい人々に認められる水銀及び水銀化合物の水準の傾向について提供を受けるための取決めを行うことを開始する。

3 評価は、次のものを含む利用可能な科学、環境、技術、資金及び経済に関する情報に基づいて実施される。

(a)2の規定により締約国会議に提供される報告その他の監視の情報

(b)前条の規定により提供される報告

(c)第十五条の規定に従って提供される情報及び勧告

(d)この条約に従って設ける資金援助、技術移転及び能力形成の取決めを運用することについての報告その他の関連する情報

 第二十三条 締約国会議

1 この条約により締約国会議を設置する。

2 締約国会議の第一回会合は、国際連合環境計画事務局長がこの条約の効力発生の日の後一年以内に招集する。その後は、締約国会議の通常会合は、締約国会議が決定する一定の間隔で開催する。

3 締約国会議の特別会合は、締約国会議が必要と認めるとき又はいずれかの締約国から書面による要請がある場合において、事務局が当該要請を締約国に通報した後六箇月以内に締約国の少なくとも三分の一がその要請を支持するときに開催する。

4 締約国会議は、その第一回会合において、締約国会議及びその補助機関の手続規則及び財政規則並びに事務局の任務の遂行のための財政規定をコンセンサス方式により合意し、及び採択する。

5 締約国会議は、この条約の実施について絶えず再検討し、及び評価する。締約国会議は、この条約により課された任務を遂行するものとし、このため、次のことを行う。

(a)この条約の実施に必要と認める補助機関を設置すること。

(b)適当な場合には、能力を有する国際機関並びに政府間及び非政府の団体と協力すること。

(c)第二十一条の規定に基づいて締約国会議及び事務局に入手可能となった全ての情報を定期的に再検討すること。

(d)実施及び遵守に関する委員会が締約国会議に提出する勧告を検討すること。

(e)この条約の目的を達成するために必要な追加の措置を検討し、及びとること。

(f)第四条及び第五条の規定に従って附属書A及び附属書Bを再検討すること。

6 国際連合、その専門機関及び国際原子力機関並びにこの条約の締約国でない国は、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することができる。この条約が対象とする事項について認められた団体又は機関(国内若しくは国際の又は政府若しくは非政府のもののいずれであるかを問わない。)であって、締約国会議の会合にオブザーバーとして出席することを希望する旨事務局に通報したものは、当該会合に出席する締約国の三分の一以上が反対しない限り、オブザーバーとして出席することを認められる。オブザーバーの出席及び参加については、締約国会議が採択する手続規則に従う。

 第二十四条 事務局

1 この条約により事務局を設置する。

2 事務局は、次の任務を遂行する。

(a)締約国会議の会合及びその補助機関の会合を準備すること並びに必要に応じてこれらの会合に役務を提供すること。

(b)要請に応じ、締約国(特に開発途上締約国及び移行経済締約国)がこの条約を実施するに当たり、当該締約国に対する支援を円滑にすること。

(c)関係国際団体の事務局、特に他の化学物質及び廃棄物に関する条約の事務局との必要な調整を行うこと。

(d)この条約の実施に関する情報の交換について締約国を支援すること。

(e)第十五条及び第二十一条の規定に基づいて受領した情報その他の入手可能な情報に基づく定期的な報告を作成し、及び締約国に入手可能にすること。

(f)締約国会議の全般的な指導の下に、事務局の任務の効果的な遂行のために必要な事務的な及び契約上の取決めを行うこと。

(g)その他この条約に定める事務局の任務及び締約国会議が決定する任務を遂行すること。

3 この条約の事務局の任務は、締約国会議が、出席し、かつ、投票する締約国の四分の三以上の多数による議決により、一又は二以上の他の国際機関に事務局の任務を委任することについて決定しない限り、国際連合環境計画事務局長が遂行する。

4 締約国会議は、適当な国際団体と協議の上、事務局と他の化学物質及び廃棄物に関する条約の事務局との間の協力及び調整の拡充について定めることができる。締約国会議は、適当な国際団体と協議の上、この事項について追加的な指導を行うことができる。

 第二十五条 紛争の解決

1 締約国は、この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争を交渉又は紛争当事国が選択するその他の平和的手段により解決するよう努める。

2 地域的な経済統合のための機関でない締約国は、この条約の解釈又は適用に関する紛争について、同一の義務を受諾する締約国との関係において次の紛争解決手段の一方又は双方を義務的なものとして認めることをこの条約の批准、受諾若しくは承認若しくはこれへの加入の際に又はその後いつでも、寄託者に対し書面により宣言することができる。

(a)附属書E第Ⅰ部に規定する手続による仲裁

(b)国際司法裁判所への紛争の付託

3 地域的な経済統合のための機関である締約国は、2の規定に基づく手続による仲裁に関して同様の効果を有する宣言を行うことができる。

4 2又は3の規定に基づいて行われる宣言は、当該宣言に付した期間が満了するまで又は書面による当該宣言の撤回の通告が寄託者に寄託された後三箇月が経過するまでの間、効力を有する。

5 宣言の期間の満了、宣言の撤回の通告又は新たな宣言は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、仲裁裁判所又は国際司法裁判所において進行中の手続に何ら影響を及ぼすものではない。

6 紛争当事国が2又は3の規定に従って同一の紛争解決手段を受け入れている場合を除くほか、いずれかの紛争当事国が他方の紛争当事国に対して紛争が存在する旨の通告を行った後十二箇月以内にこれらの紛争当事国が1に規定する手段を通じて当該紛争を解決することができなかった場合には、当該紛争は、いずれかの紛争当事国の要請により調停委員会に付託される。附属書E第Ⅱ部に規定する手続は、この条に基づく調停について適用する。

 第二十六条 この条約の改正

1 締約国は、この条約の改正を提案することができる。

2 この条約の改正は、締約国会議の会合において採択する。改正案は、その採択が提案される会合の少なくとも六箇月前に事務局が締約国に通報する。事務局は、改正案をこの条約の署名国及び参考のため寄託者にも通報する。

3 締約国は、この条約の改正案につき、コンセンサス方式により合意に達するようあらゆる努力を払う。コンセンサスのためのあらゆる努力にもかかわらず合意に達しない場合には、改正案は、最後の解決手段として、締約国会議の会合に出席し、かつ、投票する締約国の四分の三以上の多数による議決で採択する。

4 採択された改正は、寄託者が全ての締約国に対し批准、受諾又は承認のために送付する。

5 改正の批准、受諾又は承認は、寄託者に対して書面により通告する。3の規定に従って採択された改正は、当該改正が採択された時に締約国であった締約国の少なくとも四分の三が批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後九十日目の日に、当該改正に拘束されることに同意した締約国について効力を生ずる。その後は、当該改正は、他の締約国が当該改正の批准書、受諾書又は承認書を寄託した日の後九十日目の日に当該他の締約国について効力を生ずる。

 第二十七条 附属書の採択及び改正

1 この条約の附属書は、この条約の不可分の一部を成すものとし、「この条約」というときは、別段の明示の定めがない限り、附属書を含めていうものとする。

2 この条約が効力を生じた後に採択される追加の附属書は、手続的、科学的、技術的又は事務的な事項に限定される。

3 この条約の追加の附属書の提案、採択及び効力発生については、次の手続を適用する。

(a)追加の附属書は、前条1から3までに定める手続を準用して提案され、及び採択される。

(b)締約国は、追加の附属書を受諾することができない場合には、その旨を、寄託者が当該追加の附属書の採択について通報した日から一年以内に、寄託者に対して書面により通告する。寄託者は、受領した通告を全ての締約国に遅滞なく通報する。締約国は、いつでも、先に行った追加の附属書を受諾しない旨の通告を撤回することを寄託者に対して書面により通告することができる。この場合において、当該追加の附属書は、の規定に従うことを条件として、当該締約国について効力を生ずる。

(c)追加の附属書は、寄託者による当該追加の附属書の採択の通報の日から一年を経過した時に、(b)の規定に基づく受領しない旨の通告を行わなかった全ての締約国について効力を生ずる。

4 この条約の附属書の改正の提案、採択及び効力発生については、この条約の追加の附属書の提案、採択及び効力発生と同一の手続に従う。ただし、附属書の改正が第三十条5の規定に従って当該附属書の改正に関する宣言を行った締約国について効力を生じない場合は、この限りでない。この場合には、当該改正は、その批准書、受諾書、承認書又は加入書を当該締約国が寄託者に寄託した日の後九十日目の日に当該締約国について効力を生ずる。

5 追加の附属書又は附属書の改正がこの条約の改正に関連している場合には、当該追加の附属書又は附属書の改正は、この条約の当該改正が効力を生ずる時まで効力を生じない。

 第二十八条 投票権

1 この条約の各締約国は、2に規定する場合を除くほか、一の票を有する。

2 地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲内の事項について、この条約の締約国であるその構成国の数と同数の票を投ずる権利を行使する。地域的な経済統合のための機関は、その構成国が自国の投票権を行使する場合には、投票権を行使してはならない。その逆の場合も、同様とする。

 第二十九条 署名

 この条約は、二千十三年十月十日及び十一日に日本国の熊本において、その後は、二千十四年十月九日ま

でニューヨークにある国際連合本部において、全ての国及び地域的な経済統合のための機関による署名のために開放しておく。

 第三十条 批准、受諾、承認又は加入

1 この条約は、国及び地域的な経済統合のための機関により批准され、受諾され、又は承認されなければならない。この条約は、この条約の署名のための期間の終了の日の後は、国及び地域的な経済統合のための機関による加入のために開放しておく。批准書、受諾書、承認書又は加入書は、寄託者に寄託する。

2 この条約の締約国となる地域的な経済統合のための機関でそのいずれの構成国も締約国となっていないものは、この条約に基づく全ての義務を負う。地域的な経済統合のための機関及びその一又は二以上の構成国がこの条約の締約国である場合には、当該地域的な経済統合のための機関及びその構成国は、この条約に基づく義務の履行につきそれぞれの責任を決定する。この場合において、当該地域的な経済統合のための機関及びその構成国は、この条約に基づく権利を同時に行使することができない。

3 地域的な経済統合のための機関は、この条約の規律する事項に関する自己の権限の範囲をこの条約の批准書、受諾書、承認書又は加入書において宣言する。また、地域的な経済統合のための機関は、その権限の範囲に関連する変更を寄託者に通報し、寄託者は、これを締約国に通報する。

4 国又は地域的な経済統合のための機関は、この条約の批准、受諾、承認又は加入の時に、この条約を実施するための自己の措置に関する情報を事務局に送付することが奨励される。

5 締約国は、自国の批准書、受諾書、承認書又は加入書において、附属書の改正がその批准書、受諾書、承認書又は加入書を寄託する場合にのみ自国について効力を生ずる旨の宣言を行うことができる。

 第三十一条 効力発生

1 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

2 この条約は、五十番目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の後にこれを批准し、受諾し、若しくは承認し、又はこれに加入する国又は地域的な経済統合のための機関については、当該国又は地域的な経済統合のための機関による批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託の日の後九十日目の日に効力を生ずる。

3 地域的な経済統合のための機関によって寄託される文書は、1及び2の規定の適用上、当該地域的な経済統合のための機関の構成国によって寄託されたものに追加して数えてはならない。

 第三十二条 留保

 この条約には、いかなる留保も付することができない。

 第三十三条 脱退

1 締約国は、自国についてこの条約が効力を生じた日から三年を経過した後いつでも、寄託者に対して書面による脱退の通告を行うことにより、この条約から脱退することができる。

2 1に規定する脱退は、寄託者が脱退の通告を受領した日から一年を経過した日又はそれよりも遅い日であって脱退の通告において指定されている日に効力を生ずる。

 第三十四条 寄託者

 国際連合事務総長は、この条約の寄託者とする。

 第三十五条 正文

 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とするこの条約の原本

は、寄託者に寄託する。

 以上の証拠として、下名は正当に委任を受けてこの条約に署名した。

 二千十三年十月十日に日本国の熊本で作成した。



附属書A 水銀添加製品

次の製品は、この附属書から除外する。

(a)市民の保護及び軍事的用途に不可欠な製品

(b)研究、計測器の校正及び参照の標準としての使用を目的とする製品

(c)水銀を含まない実現可能な代替製品によって交換することができない場合におけるスイッチ及び継電器、電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)並びに計測器

(d)伝統的な慣行又は宗教上の実践において使用される製品

(e)保存剤としてのチメロサールを含むワクチン

第Ⅰ部 第四条1の規定の適用を受ける製品

水銀添加製品 製造、輸入又は輸出が許可されなくなる期限(段階的廃止期限)
電池(水銀含有量二パーセント未満のボタン形亜鉛酸化銀電池及び水銀含有量二パーセント未満のボタン形空気亜鉛電池を除く。)   二千二十年
スイッチ及び継電器(極めて高い正確さの容量及び損失を測定するブリッジ並びに監視及び制御のための装置に用いる高周波無線周波数のスイッチ及び継電器であって、ブリッジ、スイッチ又は継電器当たりの水銀含有量が最大二十ミリグラムのものを除く。)   二千二十年
灯口当たりの水銀含有量が五ミリグラムを超える三十ワット以下の一般的な照明用のコンパクト形蛍光ランプ(CFLs)   二千二十年
次のものに該当する一般的な照明用の直管蛍光ランプ(LFLs)

(a)電球当たりの水銀含有量が五ミリグラムを超える六十ワット未満の三波長形蛍光体を使用したもの

(b)電球当たりの水銀含有量が十ミリグラムを超える四十ワット以下のハロリン酸系蛍光体を使用したもの

  二千二十年
一般的な照明用の高圧水銀蒸気ランプ(HPMV)   二千二十年
次のものに該当する電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極蛍光ランプ(EEFL)

(a)電球当たりの水銀含有量が三・五ミリグラムを超え、及び長さが五百ミリメートル以下のもの

(b)電球当たりの水銀含有量が五ミリグラムを超え、及び長さが五百ミリメートル超千五百ミリメートル以下のもの

(c)電球当たりの水銀含有量が十三ミリグラムを超え、及び長さが千五百ミリメートル超のもの

  二千二十年
化粧品(水銀含有量が一質量百万分率を超えるもの)。肌の美白用せっけん及びクリームを含むが、水銀を保存剤として使用する場合において効果的かつ安全な代替の保存剤 が利用可能でないときは、眼の周囲の化粧品を含まない。(注)   二千二十年
駆除剤、殺生物剤及び局所消毒剤   二千二十年
次に掲げる非電気式の計測器(水銀を含まない適当な代替製品が利用可能でない場合において大規模な装置に取り付けられたもの又は高精密度の測定に使用されるものを除く。)

(a)気圧計

(b)湿度計

(c)圧力計

(d)温度計

(e)血圧計

  二千二十年

注 微量の水銀が混入した化粧品、せっけん又はクリームを対象としないことを意図する。

第Ⅱ部 第四条3の規定の適用を受ける製品

水銀添加製品 規定
歯科用アマルガム 歯科用アマルガムの使用を段階的に削減するための締約国による措置については、当該締約国の国内の事情及び関連する国際的な手引を考慮するものとし、次に掲げる措置から二以上の措置を含める。

(i)う蝕{しよくとルビ}の予防及び健康の促進を目的とする国の目標を定め、それによって歯科治療の必要性を最小限にすること。

(ii)歯科用アマルガムの使用を最小限にするための国の目標を定めること。

(iii)歯科治療のための水銀を含まない代替製品であって、費用対効果が高く、かつ、臨床的に有効なものの使用を促進すること。

(iv)歯科治療のための水銀を含まない良質の材料の研究及び開発を促進すること。

(v)代表的な専門的機関及び歯科学校が、歯科治療のための水銀を含まない代替製品の使用及び管理のための最良の慣行の促進について歯科の専門家及び学生に教育及び訓練を行うよう奨励すること。

(vi)水銀を使用しない歯科治療よりも歯科用アマルガムを使用する歯科治療を有利に扱う保険政策及び保険制度を抑制すること。

(vii)歯科治療に関し、歯科用アマルガムの良質の代替製品の使用を有利に扱う保険政策及び保険制度を奨励すること。

(viii)歯科用アマルガムの使用を歯科用アマルガムカプセルに限定すること。

(ix)水銀及び水銀化合物の水及び土壌への放出を削減するため、歯科用施設における環境のための最良の慣行の利用を促進すること。



附属書B 水銀又は水銀化合物を使用する製造工程

第Ⅰ部 第五条2の規定の適用を受ける工程

水銀又は水銀化合物を使用する製造工程   段階的廃止期限
クロルアルカリ製造   二千二十五年
水銀又は水銀化合物を触媒として用いるアセトアルデヒド製造   二千十八年

第Ⅱ部 第5条3の規定の適用を受ける工程

水銀に使用する工程 規定
塩化ビニルモノマー製造 締約国がとる措置には、次のことを含むが、これらに限定されない。

(i)単位生産当たりの水銀の使用量を二千二十年までに二千十年に比して五十パーセント削減すること。

(ii)一次採掘から得られる水銀への依存を削減する措置を促進すること。

(iii)水銀の環境への排出及び放出を削減する措置をとること。

(iv)水銀を含まない触媒及び工程に関する研究及び開発を支援すること。

(v)既存の工程に基づく水銀を含まない触媒が技術的及び経済的に実現可能となったと締約国 会議が定めた日から五年を経過した後は、水銀の使用を許可しないこと。

(vi)第二十一条の規定に従い、代替となる工程を開発し、又は特定し、及び水銀の使用を段階的に廃止するための自国の努力について締約国会議に報告すること。

ナトリウム又はカリウムのメチラート又はエチラート 締約国がとる措置には、次のことを含むが、これらに限定されない。

(i)できる限り速やかに及びこの条約が効力を生じた後十年以内に水銀の使用を段階的に廃止することを目的として、水銀の使用を削減する措置をとること。

(ii)単位生産当たりの水銀の排出量及び放出量を二千二十年までに二千十年に比して五十パーセント削減すること。

(iii)一次採掘から新たに得られる水銀の使用を禁止すること。

(iv)水銀を含まない工程に関する研究及び開発を支援すること。

(v)水銀を含まない工程が技術的及び経済的に実行可能となったと締約国会議が定めた日から五年を経過した後は、水銀の使用を許可しないこと。

(vi)第二十一条の規定に従い、代替となる工程を開発し、又は特定し、及び水銀の使用を段階的に廃止するための自国の努力について締約国会議に報告すること。

水銀を含む触媒を用いるポリウレタンの製造 締約国がとる措置には、次のことを含むが、これらに限定されない。

(i)できる限り速やかに及びこの条約が効力を生じた後十年以内に水銀の使用を段階的に廃止することを目的として、水銀の使用を削減する措置をとること。

(ii)水銀の一次採掘から得られる水銀への依存を削減する措置をとること。

(iii)水銀の環境への排出及び放出を削減する措置をとること。水銀を含まない触媒及び工程に関する研究及び開発を奨励すること。

(v)第二十一条の規定に従い、代替となる工程を開発し、又は特定し、及び水銀の使用を段階的に廃止するための自国の努力について締約国会議に報告すること。

五条6の規定は、この製造工程については適用しない。



附属書C 零細及び小規模の金の採掘

国の行動計画

1 第七条3の規定の対象となる締約国は、国の行動計画に次のものを含める。

(a)国の目的及び削減目標

(b)次のものを廃絶するための措置

 (i)鉱石全体のアマルガム化

 (ii)アマルガム又は加工されたアマルガムの野外での焼却

 (iii)居住の用に供される地域におけるアマルガムの焼却

 (iv)堆積物、鉱石又は尾鉱のシアン化物の浸出(水銀の一次除去なしに水銀が加えられたもの)

(c)零細及び小規模の金の採掘に関する分野の形式化又は規制を円滑にする措置

(d)自国の領域内の零細及び小規模の金の採掘及び加工において使用される水銀の量及び用いられる慣行の基準となる推計

(e)零細及び小規模の金の採掘及び加工における水銀の排出及び放出並びに水銀への曝露{曝にばくとルビ}を減少させること(水銀を含まない方法を含む。)を促進する戦略

(f)零細及び小規模の金の採掘及び加工における使用のための国内及び国外の供給源からの水銀及び水銀化合物の貿易を管理し、及び転用を防止する戦略

(g)国の行動計画の実施及び継続的な発展において利害関係者を参加させるための戦略

(h)零細及び小規模の金の採鉱を行う者及びその地域社会の水銀への曝露{曝にばくとルビ}に関する公衆衛生についての戦略。この戦略には、特に、健康に関するデータの収集、保健に従事する者の訓練及び保健施設を通じた啓発を含めるべきである。

(i)被害を受けやすい人々、特に児童及び出産可能な年齢の女性(特に妊婦)の零細及び小規模の金の採掘において使用される水銀への曝露{曝にばくとルビ}を防止する戦略

(j)零細及び小規模の金の採鉱を行う者及びその影響を受ける社会への情報を提供する戦略

(k)国の行動計画の実施に係る計画

2 締約国は、自国の目的を達成するため、国の行動計画に、水銀を含まない零細及び小規模の金の採掘の基準並びに市場に基づく仕組み又はマーケティングのための手段の利用又は導入を含む追加の戦略を含めることができる。



附属書D 水銀及び水銀化合物の大気への排出に係る特定可能な発生源の一覧表

特定可能な発生源の分類

 石炭火力発電所

 産業用石炭燃焼ボイラー

 非鉄金属(注)製造に用いられる製錬及びばい焼の工程

 廃棄物の焼却設備

 セメントクリンカーの製造設備

注 この附属書の適用上、「非鉄金属」とは、鉛、亜鉛、銅及び工業金をいう。



附属書E 仲裁手続及び調停手続

第Ⅰ部 仲裁手続

 この条約の第二十五条2 の規定の適用上、仲裁手続は、次のとおりとする。

 第一条

1 締約国は、この条約の第二十五条の規定に従い、他の紛争当事国に対する書面による通告により、仲裁に付することができる。通告には、請求の陳述書及び証拠書類を添付する。通告には、仲裁の対象である事項を明示するものとし、特に、その解釈又は適用が問題となっているこの条約の条文を含む。

2 申立国である締約国は、自国がこの条約の第二十五条の規定に従って紛争を仲裁に付する旨を事務局に通告する。通告には、申立国である締約国の書面による通告、請求の陳述書及び証拠書類であって、1に規定するものを添付する。事務局は、受領した情報を全ての締約国に送付する。

 第二条

1 紛争が前条の規定に基づき仲裁に付される場合には、仲裁裁判所を設置する。仲裁裁判所は、三人の仲裁人で構成する。

2 各紛争当事国は、各一人の仲裁人を任命し、このようにして任命された二人の仲裁人は、合意により第三の仲裁人を指名し、第三の仲裁人は、仲裁裁判所において裁判長となる。二を超える当事国間の紛争については、同一の利害関係を有する紛争当事国が合意により共同で一人の仲裁人を任命する。裁判長は、いずれかの紛争当事国の国民であってはならず、いずれかの紛争当事国の領域に日常の住居を有してはならず、いずれの紛争当事国によっても雇用されてはならず、及び仲裁に付された紛争を仲裁人以外のいかなる資格においても取り扱ったことがあってはならない。

3 仲裁裁判所に空席が生じたときは、当該空席を生じさせた仲裁人の任命の場合と同様の方法によって補充する。

 第三条

1 紛争を提起された締約国が仲裁の通告を受領した日から二箇月以内にいずれかの紛争当事国が仲裁人を任命しない場合には、他方の紛争当事国は、国際連合事務総長にその旨を通報し、同事務総長は、引き続く二箇月の期間内に仲裁人を指名する。

2 第二の仲裁人が任命された日から二箇月以内に仲裁裁判所の裁判長が指名されなかった場合には、国際連合事務総長は、いずれかの紛争当事国の要請に応じ、引き続く二箇月の期間内に裁判長を指名する。

 第四条

 仲裁裁判所は、この条約及び国際法の規定に従い、その決定を行う。

 第五条

 紛争当事国が別段の合意をしない限り、仲裁裁判所は、その手続規則を定める。

 第六条

 仲裁裁判所は、いずれかの紛争当事国の要請に応じ、不可欠の暫定的保全措置を勧告することができる。

 第七条

 紛争当事国は、仲裁裁判所の運営に便宜を与えるものとし、全ての可能な手段を利用して、特に、次のことを行う。

(a)全ての関係のある文書、情報及び便益を仲裁裁判所に提供すること。

(b)必要に応じ、仲裁裁判所が証人又は専門家を招致し、及びこれらの者から証拠を入手することができるようにすること。

 第八条

 紛争当事国及び仲裁人は、仲裁手続の期間中に秘密のものとして入手した情報又は文書の秘密性を保護する義務を負う。

 第九条

 仲裁に付された紛争の特別の事情により仲裁裁判所が別段の決定を行う場合を除くほか、仲裁裁判所の費用は、紛争当事国が均等に負担する。仲裁裁判所は、全ての費用に関する記録を保持するものとし、紛争当事国に対して最終的な費用の明細書を提出する。

 第十条

 紛争の対象である事項につき仲裁の決定により影響を受けるおそれのある法律上の利害関係を有する締約

国は、仲裁裁判所の同意を得て仲裁手続に参加することができる。

 第十一条

 仲裁裁判所は、紛争の対象である事項から直接に生ずる反対請求について聴取し、及び決定することができる。

 第十二条

 手続及び実体に関する仲裁裁判所の決定は、いずれもその仲裁人の過半数による議決で行う。

 第十三条

1 いずれかの紛争当事国が仲裁裁判所に出廷せず、又は自国の立場を弁護しない場合には、他の紛争当事国は、仲裁裁判所に対し、仲裁手続を継続し、及び決定を行うよう要請することができる。いずれかの紛争当事国が欠席し、又は弁護を行わないことは、仲裁手続を妨げるものではない。

2 仲裁裁判所は、最終決定を行うに先立ち、申立てが事実及び法において十分な根拠を有することを確認しなければならない。

 第十四

 条仲裁裁判所は、完全に設置された日から五箇月以内にその最終決定を行う。ただし、必要と認める場合には、五箇月を超えない期間その期限を延長することができる。

 第十五条

 仲裁裁判所の最終決定は、紛争の対象である事項に限定されるものとし、その理由を述べる。最終決定には、参加した仲裁人の氏名及び当該最終決定の日付を付する。仲裁人は、別個の意見又は反対意見を最終決定に付することができる。

 第十六条

 最終決定は、紛争当事国を拘束する。最終決定により与えられるこの条約の解釈も、それが第十条の規定

に基づいて参加する締約国の参加の理由となった事項に関連する限度において、当該締約国を拘束する。最終決定は、紛争当事国が上訴の手続について事前に合意する場合を除くほか、上訴を許さない。

 第十七条

 最終決定の解釈又は履行の方法に関し前条の規定に従い最終決定に拘束される紛争当事国間で生ずる意見の相違については、いずれの紛争当事国も、当該最終決定を行った仲裁裁判所に対し、その決定を求めるため付託することができる。

第Ⅱ部 調停手続この条約の第二十五条6の規定の適用上、調停手続は、次のとおりとする。

 この条約の第二十五条6の規定の適用上、調停手続は、次のとおりとする

 第一条

 紛争当事国によるこの条約の第二十五条6の規定に基づく調停委員会の設置の要請は、他の紛争当事国のための写しを付して事務局に対して書面で行う。事務局は、その旨を直ちに全ての締約国に通報する。

 第二条

1 調停委員会は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、三人の委員で構成する。各紛争当事国は、それぞれ一人の委員を任命し、これらの委員は、共同で委員長を選任する。

2 二を超える当事国間の紛争については、同一の利害関係を有する紛争当事国が合意により共同で調停委員会の委員を任命する。

 第三条

 事務局が第一条に規定する書面による要請を受領した日の後二箇月以内に紛争当事国によるいずれかの委員の任命が行われなかった場合において、いずれかの締約国の要請があるときは、国際連合事務総長は、引き続く二箇月の期間内に当該任命を行う。

 第四条

 調停委員会の二人目の委員が任命された後二箇月以内に同委員会の委員長が選任されない場合において、いずれかの紛争当事国の要請があるときは、国際連合事務総長は、引き続く二箇月の期間内に委員長を指名する。

 第五条

 調停委員会は、紛争当事国が友好的な解決を図るため、独立の、かつ、公平な方法で当該紛争当事国を支援する。

 第六条

1 調停委員会は、紛争の事情及び迅速な解決の要請を含む紛争当事国が表明する見解を十分に考慮して、適当と認める方法で調停手続を行うことができる。調停委員会は、紛争当事国が別段の合意をしない限り、必要に応じてその手続規則を採択することができる。

2 調停委員会は、調停手続の期間中いつでも、紛争解決のための提案又は勧告を行うことができる。

 第七条

 紛争当事国は、調停委員会と協力する。紛争当事国は、特に、同委員会の要請に応じて、書面を提出し、証拠を提供し、及び会合に出席するよう努める。紛争当事国及び同委員会の委員は、同委員会の手続期間中に秘密のものとして入手した情報又は文書の秘密性を保護する義務を負う。

 第八条

 調停委員会は、委員の過半数による議決で決定を行う。

 第九条

 紛争が既に解決した場合を除くほか、調停委員会は、完全に設置された日から十二箇月以内に紛争の解決のための勧告を付して報告を行い、紛争当事国は、この報告を誠実に検討する。

 第十条

 調停委員会が付託された事案を検討する権限を有するか否かに関する意見の相違については、同委員会が裁定する。

 第十一条

 締約国が別段の合意をする場合を除くほか、調停委員会の費用は、紛争当事国が均等に負担する。同委員会は、全ての費用に関する記録を保持するものとし、紛争当事国に対して最終的な費用の明細書を提出する。